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他人の毛を無断で抜くと傷害罪?切ると暴行罪?


2016年6月21日

人を傷つける罪として、刑法には「傷害罪」と「暴行罪」があります。

今回は、この2つの罪の違いについて、「抜く」と「切る」をテーマに解説します。

一体、何を抜くのでしょうか? 何を切るのでしょうか?

「電車で女性の髪切った疑い 高2男子逮捕、神奈川」(2016年6月20日 産経新聞)

神奈川県警緑署は、電車内で女性(25)の髪をはさみで切ったとして、横浜市旭区の高校2年の男子生徒(17)を暴行の疑いで現行犯逮捕しました。

事件が起きたのは、6月20日午前7時40分頃。
JR横浜線の中山-鴨居間を走行中の電車内で、男子生徒が立っていた女性会社員の髪を背後からはさみで切ったところ、これに気づいた女性が鴨居駅で降りた男子生徒を取り押さえ、駅員に引き渡したようです。

男子生徒は、「性的欲求を満たすためにやった」と容疑を認めているということです。

性的欲求は人それぞれですね。

それは、ともかく
では、条文を見てみましょう。

「刑法」
第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
傷害罪とは、「人の身体を傷害する」ことで成立する罪です。

通常、傷害というと肉体を傷つけることと思う人が多いでしょう。
ところが、刑法では「身体」とは肉体と精神的機能の両方をいいます。
そして、「傷害」とは、人の生理機能に障害を与えること、または人の健康状態を不良に変更することとされます。

過去の判例には次のようなものがあります。

・皮膚の表皮離脱(大判大11・12・16集1-799)
・中毒症状・めまい・嘔吐させた(大判昭8・6・5集12-736)
・病毒の感染(最判昭27・6・6集6-6-795)
・陰毛の毛根からの脱取(大阪高判昭29・5・31高集7-5-752)
・失神させた(大判昭8・9・6集12-1593)
・処女膜の裂傷(大判大3・7・4録20-1403)
・無言電話等により人を極度に恐怖させて精神衰弱症に陥らせた(東京地判昭54・8・10判時943-122)
・自宅から隣家に居住する被害者に向けてラジオの音声や目覚まし時計のアラーム音を鳴らし続けて精神的ストレスを生じさせ、慢性頭痛症、睡眠障害等を負わせた(最決平17・3・29集59-2-54)

一方、カミソリで髪を根元から切り取った場合は、傷害罪よりも軽い暴行罪と認められた判例もあります(大判明45・6・20録18-896)。

「刑法」
第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
毛を抜けば生理機能に障害を生じるが、切っただけでは生理機能に障害が発生することにはならないと判断されるということです。

ということは、他人の髪の毛でも眉毛でも鼻毛でも、すね毛でも胸毛でも、故意に抜いたら傷害罪、切ったら暴行罪になる可能性があるわけですね。
ちなみに、爪も同様です。

ただし、髪を切った事例で傷害罪にあたるとした判例もあり(東京池判昭和38・3・23)、髪を切った場合に傷害罪なのか、暴行罪なのか、はっきりしません。

法律って、わかりにくいですね~。

生卵を投げて書類送検…軽犯罪と暴行罪の違いとは


2015年11月20日

スーパーマーケットの入り口にいた女性の頭上から生卵が落ちてきて、肩に当たったそうです。

ニワトリが産み落とした…わけではありません。
人が投げ落としたなら犯罪になる可能性があります。

一体、犯人は誰だったのでしょうか?

「高層マンションから生卵30個投げつける 慶大生を書類送検“就活うまくいかず”」(2015年11月19日 産経新聞)

川崎市中原区の高層マンションから東急東横線の線路内など地上に向けて生卵を投げつけたとして、神奈川県警中原署はマンションの住人である慶応大4年の男子学生(22)を軽犯罪法違反(危険物投注)の疑いで書類送検しました。

大学生の男は、今年の10月26日~11月11日の間に、計7回30個の生卵を自宅マンションのベランダから東急東横線の線路内や商業施設の敷地内に向けて投げつけたと供述。
「就職活動がうまくいかず、むしゃくしゃしてやってしまった」と容疑を認めているようです。

現場は、東急東横線の武蔵小杉駅に近い高層マンションが立ち並ぶ人気のエリア。

卵が肩に当たった女性にケガはなかったということです。
では早速、「軽犯罪法」の条文を見てみましょう。

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

11.相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者
拘留とは、受刑者を1日以上30日未満で刑事施設に収容する刑罰で、科料とは、1000円以上、1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰です。

1948(昭和23)年に施行された軽犯罪法は、軽微な秩序違反行為に対する法律で、騒音や迷惑行為、のぞき、露出、虚偽申告など33の行為を罪として規定しています。

軽犯罪法については以前にも解説しました。
詳しい解説はこちら⇒「犯罪になるストレス発散法とは!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1309

これは、女性の顔につばを吐きかけた男が暴行容疑で逮捕された事件を取り上げたものでした。

ところで、この記事でも解説したのですが、じつは軽犯罪法でも26号で、つばを吐く行為を禁止しています。
しかし、逮捕容疑は暴行罪でした。

今回の事件でも、投げた生卵が女性に当たっているわけですから、暴行罪が適用されてもいいのではないか、という疑問が湧いてきます。
さて、この違いは何なのでしょうか? 条文から考えてみましょう。

「刑法」
第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
法律上の「暴行」とは、人の身体に向けた「不法な有形力の行使」と定義され、相手が傷害を負わなければ暴行罪、傷害を負えば「傷害罪」となります。

第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
次にポイントとなるのは、「故意」であったかどうかです。
暴行罪の場合、条文に「人の身体に向けた」とあるように、今回の事件で容疑者は「人を狙って」生卵を投げたのかどうかが焦点となってきます。

容疑者は、線路内や敷地内に向かって投げていた、ということで、「人にぶつけようとして投げた」とは言っていません。

また、状況から考えても人にぶつけようとして投げているようには見えなかったのでしょう。

今のところ、人にぶつける意思があったことが認定できないので、暴行の故意が欠け、他人の身体又は物件に害を及ぼすおそれのある場所に生卵を投げた、ということで軽犯罪法となったものと思われます。

今後、人を狙った旨の供述が出てくれば、幸い女性にケガがなかったことから傷害罪ではなく暴行罪になる可能性もあるということですね。

ちなみに、今年6月には東京都中央区の自宅マンションから2リットルの水が入ったペットボトルを投げ、通行人にケガをさせた高校生(16)が逮捕されるという事件が起きています。

こちらは、人がケガをしていることと、高校生が「投げればケガをさせることは想像した」と容疑を認めたことから傷害容疑での逮捕となったのでしょう。

就職活動がうまくいかなかったとしても、生卵を投げるなどして他人に迷惑をかけてはいけませんね。

投げるなら、せいぜい就職を諦めてさじを投げるくらいにして欲しいものです。

お後がよろしいようで。M(_ _)m

スパンキングは暴行罪か!?


2014年10月31日

スパンキングというものがあります。

これは子供の躾や体罰として、お尻を叩くスパンキングと、それとは別に、お尻を叩くこと、叩かれることで性的興奮を感じる愛好者たちがいるスパンキングというものもあるそうです。

人の好みは十人十色といいますから、人に迷惑をかけない範囲で楽しむのは個人の自由ですが、夫婦間の趣味的プレイなのかどうなのか?

お尻をめぐる暴行事件が起きました。

「中高一貫コース主任の国語教諭、妻の尻蹴り逮捕」(2014年10月27日 読売新聞)

静岡県警焼津署は25日、私立の中高一貫校の教諭の男(44)を暴行の疑いで現行犯逮捕しました。

報道によると、同日午後11時頃、男は同居する妻と口論となり尻を蹴ったということで、男は容疑を認めているようです。

妻が、だらしのない、仕事をしない旦那の尻を叩いて仕事をさせる、というのは昔からよくあることで許されます。

しかし、夫が妻の尻を蹴ったら逮捕されるのです!

これは、気をつけなければなりませんね。

世の中には、家庭内の暴力はある程度許されると思っている人がいるようです。

しかし、法律的には犯罪です。

夫婦間の暴力行為で逮捕される例が増えているように思います。

では早速、条文から見てみましょう。

「刑法」
第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
ここで、「暴行」と「傷害」の違いは何なのかと疑問を持つ人がいるかもしれませんが、簡単に言うと、人に対してケガに至らない暴行を加えると「暴行罪」、人を傷つけケガをさせると「傷害罪」(刑法第204条)となります。

尻を蹴っただけだと「暴行罪」、尻にアザができたら「傷害罪」ということですね。

ちなみに電車などで尻を触ると、迷惑防止条例や、場合によっては強制わいせつ罪となります。

ところで以前、浮気の証拠をつかむために、配偶者のメールを盗み見るのは「不正アクセス禁止法」違反になる可能性があることを解説しました。

詳しい解説はこちら⇒「アダムとイブと不正アクセス禁止法」
https://taniharamakoto.com/archives/1326

「親しき仲にも礼儀あり」ということわざがあるように、夫婦だからといって超えてはいけない一線があるでしょう。
「ほどほどに愛しなさい。長続きする恋は、そういう恋だよ」
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』より)

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