祇園で7人死亡事故!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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祇園で7人死亡事故!?

2012年04月13日


自動車事故で、7人死亡という深刻な事故が起きました。

2012年4月12日、京都市東山区の祇園で軽ワゴン車が、赤信号を無視した上で、歩行者を次々とはねて男女7人が死亡した事故がありました。11人が傷害を負ったそうです。

車を運転していた男も死亡しましたが、男はてんかんの持病があり、医者から運転を禁止されていたということです。


http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye5002694.html

被疑者本人が死亡しているので、刑罰を科すことはできませんが、被疑者死亡のまま書類送検されるでしょう。

容疑は、自動車運転過失致死傷罪と危険運転致死傷罪の可能性があります。

自動車運転過失致死傷罪は、7年以下の懲役or禁錮or100万円以下の罰金で、危険運転致死傷罪(死亡の場合)は、1年以上20年以下の懲役ですから、かなり刑罰に差があります。

危険運転致死傷罪は、次の要件を満たす事故を対象としています。

1)アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状態で走行

2)進行を制御することが困難高速度で走行

3)進行を制御する技能を有しないで走行

4)人又は車の通行を妨害する目的で走行中の自動車の直前に進入その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転

5)赤色信号等を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転

今回は、上記のうち、(5)にあたるかどうか、ということになります。

ちなみに、てんかん発作による事故は、(1)にはあたりません。アルコールによる影響でも、薬物の影響でもないためです。

栃木県鹿沼市で2011年4月、クレーン車が歩道に突っ込み小学生6人が死亡した事故がありましたが、運転手にはてんかんの持病があり、医師から運転しないように指導されていたにもかかわらず、事故前日に薬の服用を怠り、運転をした、ということでした。

この事件では、運転手は、危険運転致死傷罪ではなく、自動車運転過失致死罪に問われ、2011年12月19日、懲役7年の判決が言い渡されました。

危険運転致死傷罪のどの要件にも該当しないため、危険運転致死傷罪にとえなかったためです。

危険運転致死傷罪は、自動車事故のうち、特に危険な行為を抽出して重い罪として規定しているものですが、他にも危険な行為があるのではないか、ということで見直しの議論がなされているところです。

また、論議を呼びそうです。

以上は、刑事ですが、それとは別に、死傷した被害者やご遺族からは、運転手の相続人、勤務先会社、加害車両の保有者などに民事の損害賠償請求ができます。

加害車両が任意保険に入っていればよいのですが、保険会社は多額の賠償金を支払うことになるでしょう。

任意保険に入っていなかったら?

まず被害者側の任意保険を確認し、無保険者傷害特約に加入しているかどうかを調べます。

この特約があれば自分の保険会社から保険金が支払われる可能性があります。

それもなかったら?

加害車両の自賠責保険に被害者請求をし、その後は、運転手の相続人、勤務先会社、加害車両の保有者などに損害賠償請求をしていくしかありません。

医師から自動車の運転を禁止されている人に運転免許を与えた国の責任を追及する人も出てくるかもしれません。

そうなると、運転免許制度自体も論議を呼びそうです。

最後に、道路を歩いていただけで事故に巻き込まれ、尊い命を落とした7名の被害者の方々のご冥福をお祈りいたします。