持病で免取・免停された人が年間7711人!
病気のために自動車運転免許の取り消し、停止をされる人が年々増加しているようです。
今回は、自動車運転と病気の関係について解説します。
「持病で免停・取り消し7711件…法改正1年」(2015年7月16日 読売新聞)
警察庁は、病気などを理由に運転免許の取り消し・停止などの行政処分を受けたケースが昨年6月からの1年間で7711件あり、前年同期の約2.5倍に上ったと発表しました。
これは、てんかんなどの運転に支障を及ぼす可能性のある病状の申告を義務化した改正道交法が昨年6月に施行され、1年が経過した5月末時点での全国の状況を集計したもの。
7711件の内訳は、最多が「てんかん」の2313件、次いで「認知症」の1165件、「統合失調症」は1006件、「再発性の失神」が926件など。
処分内容は、免許の「取り消し」が4214件、「停止」が3461件で、免許取得時に保留されたケースなどが36件あったということです。
2014年6月の改正道路交通法が成立したきっかけは、2011年4月に栃木県鹿沼市で起きた、てんかん発作で意識を失った運転者によるクレーン車暴走で小学生6人が死亡した交通事故でした。
翌2012年4月、事故の遺族が運転免許制度の見直しなどを求める署名を警察庁に提出。
また同月、京都市東山区の祇園で、てんかんの発作を起こした男の軽ワゴン車が暴走し、運転者を含む通行人ら8人が死亡、11人が重軽傷を負った事故が発生。
5月、こうした事態を受けて、警察庁が運転免許を取得・更新する際の持病の申告を義務づけることなどを検討する有識者会議を設置して検討の上、道路交通法が改正され、2014年6月に施行されました。
改正法で規定された「第90条」(免許の拒否等)に関する内容は以下の通りです。
・幻覚を伴う精神病や意識・運動障害をもたらす病気がある者には与えないか、6ヵ月を超えない範囲で免許を保留することができる。
・免許の取得・更新の際、「質問票」を各都道府県の公安委員会に提出し、病状を報告することを義務づける。
・質問内容は、運転に支障を及ぼしかねない病状などについて、「はい」か「いいえ」で答えるもの。
過去5年以内に、「病気で意識を失ったことがあるか」、「体を思い通りに動かせなくなったか」、「十分な睡眠時間を取ったのに日中、眠り込んだ経験があるか」、「アルコールへの依存性」、「医師による運転中止の助言の有無」など5項目。
・具体的な病気は、一部のてんかん、統合失調症、睡眠障害、認知症、アルコール・薬物中毒など。
・医師の診断の必要ありと判断された場合、主治医または専門医の診断書を提出。運転に支障ありと判断されれば、免許の取り消しや停止の処分。
・虚偽申告した場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金
ところで、てんかんなどの政令で定める病気の人の運転は、道路交通法だけでなく「自動車運転死傷行為処罰法」にも関わってきます。
「自動車運転死傷行為処罰法」
第3条(危険運転致死傷)
1.アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する。
2.自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
政令で定める「特定の病気」には以下のものがあります。
1.統合失調症
2.てんかん
3.再発性の失神
4.低血糖症
5.そう鬱病
6.重度の睡眠障害
詳しい解説はこちら⇒
「自動車運転死傷行為処罰法:病気の影響による“危険運転致傷”が初適用!」
https://taniharamakoto.com/archives/1520
ただ、これらの病気の人が自動車事故を起こしたからといって、すべてで罪が成立するわけではなく、「過失」なのか「故意」なのかが問題になってくるので注意が必要です。
「自動車運転死傷行為処罰法」の
詳しい解説はこちら⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236
生活の足として、もしくは仕事での使用など自動車は便利なものですが、
いずれにせよ、上記の病気の人や自覚症状のある人は医師の診断を受けて自分が運転できる状態なのかどうか判断しなければいけません。
今回、発表された統計では本人や家族から警察へ相談した件数は7万744件で前年同期の約1.3倍だったようです。
家族など周囲の人が注意深く見守り、問題がありそうなら本人に忠告する、診察を勧めるなどのケアも必要でしょう。
持病による事故は重大な結果を引き起こす可能性が高いものです。
本人も周囲の人も十分注意してください。