ズボンを切って器物損壊? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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ズボンを切って器物損壊?

2010年09月20日

電車内で寝ている女性の半ズボンをはさみで切ったとして、器物損壊の疑いで男性(57)が逮捕されました。

男は、19日午前6時49分頃、東武東上線の車内で、寝ていた専門学校生の女性(20)の半ズボンの左太ももの部分を3か所、約10センチずつ、所持していたはさみで横に切った疑いとのことです。

男は、3人掛けのシルバーシートに寝ていた女性と並んで座っていたが、「女性が横たわるように座席を占領していたので腹が立った」などと話しているそうです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100920-00000030-sph-soci

今回は、ズボンを切った、という行為が「器物損壊罪」に該当します。

刑法261条
他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪は、物を損壊する罪ですが、ペットなどの動物を傷害した場合も、この器物損壊罪にあたります。

損壊というのは、物本来の効用を失わせる行為を言い、明治時代の事件で、すき焼き鍋等に放尿する行為が器物損壊罪に問われたケースがあります。さすがに放尿されたすき焼き鍋は使えないか・・・

借金取りが窓ガラスやドアなどに「金返せ!」等のベタベタ紙を貼り付ける行為も器物損壊罪です。

よく選挙や政党に関するポスターの顔にいたずら描きをしている人がいますが、あれも実は、器物損壊罪に該当する場合があります。
(補足:公職選挙法225条にも、文書毀棄に関して選挙の自由妨害罪が定められています。)

ほんのイタズラ心が犯罪になってしまうのですね。

今回の事件で、シルバーシートを占領していた女性もいけませんが、だからといって法を犯して報復する行為は許されるものではありません。