川口園児交通事故で実刑5年
2006年9月に川口市で、暴走自動車が園児の列に突っ込み、4人の園児が死亡した事件で、被告人に対する判決が、2007年3月16日、さいたま地裁でありました。
判決は、業務上過失致死罪では、最高刑の5年です。
しかし、判決は言います。
「業務上過失致死傷罪の法定刑の上限である懲役5年をもってしても、社会的非難、被告人の罪責を十分には評価しきれない」
被告人の罪責を評価するには、5年以上の刑罰が必要であるが、現行の法律においては、最高刑の懲役5年で臨むほかはない、という判断です。
今、この事件もきっかけにして、自動車による業務上過失致死傷の刑罰を7年に引き上げる法改正の動きがあります。
では、仮に今回のケース、懲役7年だったら社会的非難、被告人の罪責を十分に評価しきれるでしょうか。
将来のある4人の幼い子供の命を一瞬にして奪い、かつその両親に地獄の苦しみを与えた結果に対する償いとしてです。判決は、更に言います。「被告人は傍聴に訪れた被害者の遺族らに何の配慮も示さなかったばかりか、遺族の前で社会復帰後は再び車を運転したいとまで述べ、遺族らの感情を逆なでし、更に傷つけた。」
刑法では、人の物を盗む窃盗罪(235条)、詐欺罪(246条)、恐喝罪(249条)は、それぞれ10年以下の懲役です。
結果の重大性から考えると、刑罰が不均衡であるとしか思えません。
また、刑法の上位規範である日本国憲法は、財産権の保障もしていますが、最も重視するのは、「個人の尊厳」です。業務上過失致死は、その個人の尊厳の前提である命を奪ってしまう犯罪です。
結果の重大性、被害感情、社会的非難の程度、日本国憲法の立場から考えても、更に自動車による業務上過失致死傷罪の法定刑の上限を引き上げるべきだと思います。
事案毎の刑のバランスは、運用により実現できると考えます。