薬を飲んだだけで「危険運転致死傷罪」!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
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薬を飲んだだけで「危険運転致死傷罪」!?

2014年09月25日

飲酒運転が、もちろん犯罪であることは誰でも知っているでしょう。

また、危険ドラッグに関する報道は最近特に多いので、使用が疑われる運転が発覚した場合、事故を起こしていなくても現行犯逮捕されることを知っている人も増えていると思われます。

詳しい解説はこちら⇒「脱法ハーブで危険運転致死傷罪か!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1530

「危険ドラッグで自動車運転しただけで現行犯逮捕です」
https://taniharamakoto.com/archives/1592

では、市販薬を服用して自動車を運転した場合はどうでしょうか?

先日、薬物による危険運転致傷容疑で書類送検されるという事故が起きました。

ドラッグストアで普通に買えるクスリを飲んで起こした自動車事故で書類送検とは、一体どういうことでしょうか?

「鎮静剤12錠飲み運転、追突事故…女を書類送検」(2014年9月18日 読売新聞)

宮崎北署は、鎮静剤を大量に服用し、正常な運転が困難な状態で車を運転していたとして、宮崎市在住の女を自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)容疑で宮崎地検に書類送検しました。

報道によると、容疑者の女は6月16日午後1時10分頃、同市の市道で乗用車を運転中、薬物の影響で正常な運転が困難になり、赤信号で停車していた軽乗用車に追突。
男性(41)に首の捻挫など6日間のけがを負わせた疑いとのことです。

女は運転前に、「1回1錠、1日3錠まで」と服薬方法が書かれた市販の鎮静剤を12錠飲んでいたようで、男性の110番で捜査員が現場に駆けつけた際、運転席で意識がもうろうとしていたということです。
鎮静剤を一度に12錠も服用するとは、やはり飲みすぎです。
今回の事故、まさにそこがポイントとなります。

もちろん、鎮静剤を飲んで自動車事故を起こしただけでは「自動車運転死傷行為処罰法」の「危険運転致死傷罪」には該当しません。

鎮静剤を大量に飲むことによって意識がもうろうとなり、“正常な運転が困難”になることを“認識しながら”運転したかどうかが問題となります。

「自動車運転死傷行為処罰法」
第2条(危険運転致死傷)
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。

1. アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
第5条(過失運転致死傷)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
「危険運転致死傷罪」と「過失運転致死傷罪」の違いは、「故意」か「過失」が問題になります。

現段階では書類送検であり、まだそこまで認定されているわけではないので、今後の捜査次第ですが、容疑者がこれまでも12錠飲んで、意識がもうろうとなっていたにも関わらず、あえて今回も運転したなら危険運転致傷罪が適用される可能性があります。

一方、今回初めて大量に飲んだので効き目がわからず、自分では正常に運転できる、と思っていた場合には、過失運転致傷罪が適用される可能性があります。

いずれにしても、クスリは使用上の注意をよく守って服用しなければいけません。

自分の身体のために飲むクスリですが、自動車を運転するときは要注意ですね。

自動車を運転するときは、「クスリはリスク」なのです。

逆から読んでも「クスリはリスク」ですから、くれぐれも気をつけなければなりませんね。(;´Д`)アウ…