シャワーを流すと、業務妨害罪か?
シャワーでホテルの部屋を水浸しにして、「威力業務妨害罪」で逮捕された男がいました。
男は、12月29日、広島市内のホテルに宿泊しましたが、その間、浴室のシャワーホースを客室に引きこみ、水を出しっぱなしにして漏水させ、ホテルの7階から2階までの計14部屋を使用できなくした、とのことです。
容疑者は、「シャワーは使っていない」と容疑を否認しているそうです。
今回は、シャワーで部屋を漏水させたわけですが、なぜ「威力業務妨害罪」で逮捕されたのでしょうか?
威力業務妨害罪は、刑法234条に規定されています。
威力を用いて人の業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
まず、ホテルの部屋計14部屋を使用できなくなる、ということは、ホテル業務の妨害にあたることは問題ないでしょう。
あとは、シャワーを出しっぱなしにしたことが「威力」と言えるかどうかです。
「威力」というのは、「人の意思を制圧するような勢力」を言います(最高裁判例)。
この定義からすると、暴力的な行為をイメージしますが、今回のように、こっそり水浸しにする行為も、ホテル側の意思を制圧する、と解釈されています。
他にも、過去の判例で出たものとして、次のような行為があります。
・レストランの食堂に蛇を撒く行為
・数人で食堂内で怒鳴り散らし騒然とさせる行為
・首相が答弁している演壇に向かって傍聴席からスニーカーを投げつける行為
・弁護士の記録などの入ったカバンを2ヶ月間隠す行為(最高裁昭和59年3月23日判決)
・演劇開始直前に土足で舞台に上がり、演劇を中止させると怒号した行為
・教室で授業中の大学講師に対し、制止を無視して高声で質問を続けた行為
・国税調査官が公用車に乗って税務調査に出発しようとしていたのに対し、車両直前に座り込んだ行為
以上は、「威力業務妨害罪」ですが、たまにニュースで、「偽計業務妨害罪」で逮捕されるケースがありますので、気をつけてください。
特に「無言電話」と「インターネット掲示板への書き込み」です。
ともに嫌がらせの目的でしょうが、犯罪が成立するケースがあります。
くれぐれもご注意ください。