課題をやらないと、なぜ呪われるのか?
人が動くのは、自分に精神的・物質的にメリットがあるか、あるいはデメリットを回避する時だ。
ある教師がこれをやった。
岩手県盛岡市の市立中学校で、30代の女性教諭が英語の課題に「これをやらなければ呪いがかかりますよ」と書いて、3年生約140人に配布していたという。
この中学校は、学級崩壊した小学校から進学し、授業態度に問題がある生徒が多い現在の3年生を、この教諭が熱心な指導で、水準学力レベルに引き上げたという。
女性教諭は、生徒に課題をさせたいがために、呪いの言葉を書いてしまったのだろう。
今回、検討するのは、この呪いの言葉が脅迫罪に該当するかどうかだ。
刑法222条
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
呪いは、生命、身体、自由、名誉又は財産の全ての害を加えそうである。
しかし、これで脅迫罪成立は、常識はずれのように思われる。
実は、脅迫の内容は、自分が直接・関節にその惹起を支配・左右しうるものとして告知される必要がある。
この女性教諭は、おそらく呪術師ではない。本当に呪いを左右することはできないだろう。
したがって、脅迫罪は成立しない。
今回は、教育者として不適切な行為と言えるかどうか、が問題とされるだけだ。
しかし、呪術師が、心底その呪術師を信奉している信者に対し、「お布施を持ってこないと、呪われるぞ」などと告知したら、脅迫罪や強要罪が成立する余地はある。
そういえば、子供のころ、辛い食べ物が好きだったが、親から「辛い物を食べ過ぎると頭がバカになるよ」と言われ、怖くなって自粛したことがあった。
親と子供の関係から考えると、子供が恐れるのももっともだ。
法律を知っていたら、「それは脅迫罪だ」と言ったのだろうか。
私は自粛したが、次のような子供がいたら、コワイ。
母親「辛い物ばかり食べてると、バカになるよ」
子供「ああ、そういえば、お母さんは、昔から辛い物が好きだったと言ってたね」