無言電話は傷害罪!?
約1年半にわたり、1万951回の無言電話をかけて「不安性障害」にさせたとして、兵庫県警宝塚署は、2010年9月27日、傷害容疑で自称書道家(44)を逮捕したとのことです。
「不安性障害」というのは、簡単にいうと、通常人に比べてとても大きな不安を感じてしまい、その結果日常生活に支障をきたしてしまう症状のようです。
無言電話の理由は、被害者である女性の長女(11)が夕方にピアノの練習をしていることだそうで、音に腹を立て、「音がうるさい」と怒鳴り込んだこともあったといいます。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100928-00000515-san-soci
無言電話をかけて「傷害罪」というのは、ちょっと違和感があるのではないでしょうか。
ここで、刑法の条文を見てみましょう。
刑法第204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
つまり、傷害罪が成立するためには、「身体を傷害」しなければなりません。
今回は、「不安性障害」にさせたことが「身体を傷害した」と言えるかどうかが問題となります。
「傷害」というと、目に見える傷のような気がしますよね。
しかし、刑法では、「傷害」とは、「人の生理機能に障害を与えること」を言います。
したがって、必ずしも目に見える傷でなくても、傷害になり得ます。
過去の判例では、失神させた場合、メチルアルコールを飲ませてめまい・吐き気をおこさせた場合、髪を相当数抜いた場合、などがあります。
結構広いですよね。
面白いのは、髪の毛を相当数抜けば傷害なのに、婦人の髪を根元から切り取った場合には、傷害より軽い暴行罪にしかならないということです(大判明治45年6月20日)。
髪を抜けば生理機能に障害が発生するが、髪を切るだけでは、生理機能に障害が発生することにはならない、という理由です。
そうすると、髭や鼻毛、爪などを切っても傷害になりませんね。
(もちろん暴行にはなりえます)
「あっ、鼻毛伸びてるよ」と言って、相手の承諾を得ずにいきなり切ったら暴行罪になる可能性があり、ブチッと抜くと傷害罪になる可能性がある、ということです。
立件されることはほとんどないでしょうが・・・
今回の場合、無言電話を1万回以上かけ続け、その結果、「不安性障害」という生理機能に障害を発生させたことになるので、傷害罪で逮捕された、ということです。
法律って、難しいですね。