無銭宿泊は、詐欺罪が成立する | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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無銭宿泊は、詐欺罪が成立する

2012年09月02日

無銭宿泊のニュースは珍しい。

秋田県仙北市の温泉旅館で宿泊代など計約50万円を支払わなかったとして、詐欺容疑で、男女7人が逮捕されました。

ニュースによると、容疑者らは、8月27日~31日まで宿泊したが、旅館側から代金精算を求められたのに、「現金は持ってない」と答え、警察に通報されたようです。

そりゃ捕まるでしょう。

7人もいて、どういうつもりだったのでしょうね。

詐欺罪は、次のような経過をたどります。

・欺罔行為(だまし)
    ↓
・錯誤(勘違い)
    ↓
・交付
    ↓
・財産・利益の移転

今回は、27日の予約の電話時点で、「代金を支払う気がないのに、あたかも代金を支払うかのように騙し」、旅館側は、「てっきり代金を支払ってくれる」と錯誤に陥って予約を受け入れています。

そして、宿泊サービスを提供し、容疑者らは、その利益を得ています。

したがって、詐欺罪が成立する、というわけです。

しかし、お金を持っていて、代金を支払う気がある場合には、詐欺罪が成立しません。

でも、「代金を支払う気があるかどうか」は、内心の問題であり、誰もわかりませんよね。

今回、逮捕されたポイントは、容疑者らが「お金をもっていなかった」というところにあります。

お金もないのに、合計50万円もする温泉旅館に泊まるとなれば、「払う気があった」と言っても信じてもらえないでしょう。

ということは、お金を持っていて、「払う気があったが、サービスが気に入らないから、払わない」と言えば、どこにも騙しが入っていないので、詐欺罪ではない、ということです。

無銭飲食でも同じです。

お金がないのに、飲食店で飲食をして、そのまま逃げようとして捕まると、逮捕されます。

しかし、お金を持っていて、「まずかったから、払わない」と言えば、逮捕されません。

もちろん、サービスを受けていて代金を支払わないのですから、民事上の問題は残ります。

お金を持っていなければ、「払う気がなかった」とみなされるでしょう。

では、飲食店に入り、飲食をした後で、財布がないことに気づいたら?

その場合、理論的には騙す意図がないので詐欺罪ではありません。

しかし、大いに疑われることでしょう。

その場合は、電話して誰かに持ってきてもらうか、手持ちの自分の身分証明になるものを店に預け、念書を書くなどし、騙すつもりがなかったことを伝えるようにしましょう。