サプライズは業務上過失致死罪? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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サプライズは業務上過失致死罪?

2011年07月29日


とんだサプライズです。クラッカー

27日午後10時ごろ、石川県の海岸で、誕生日のサプライズで、砂浜に穴を掘って本人を落とそうとしたにもかかわらず、本人を含めた夫婦で落とし穴に埋まって窒息死した事件がありました。落ちる

妻が友人数人と約2.5メートルの穴を掘ってブルーシートを覆っていたものの、周囲が暗くて自分も夫と一緒に落ちてしまったということです。落ちる

警察は、業務上過失致死罪の疑いで捜査しているとのことです。

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4812705.html

ちょっと違和感があるのは、「業務上過失致死罪」の疑い、という点です。

「穴を掘って落とすのが『業務』か!?」ということですね。

業務上過失致死罪にいう「業務」とは、「本来人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、かつその行為は他人の生命身体等に危害を加える虞あるものであることを必要とする」(最決昭和60年10月21日)とされています。

必ずしも「仕事」にはかかわりません。

普段レジャーのために自動車を運転するのも、運転免許を取って反復継続して行い、かつ自動車は他人の生命身体に危害を加える虞がありますので、「業務」となります。車

過去の判例では、「狩猟」も、「業務」であるとしています。

しかし、たとえば妻が家事や育児を行うのは、「妻」という社会生活上の地位に基づいて反復継続して行いますが、他人の生命身体等に危害を与える虞ある行為ではないので、「業務」ではありません。タラちゃん

では、「穴を掘って落とすサプライズは?」落ちる

確かに「サプライズ」は、妻や友人としての社会的地位に基づいて反復継続するかもしれません。

しかし、「穴を掘って落とす」のが、反復継続するかは疑問です。

1回限りで反復継続を予定していなければ、業務上過失致死罪は成立しません。

重過失致死罪、あるいは過失致死罪になるのではないでしょうか。

業務上過失致死罪及び重過失致死罪の法定刑は、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。

過失致死罪は、50万円以下の罰金です。

かなり法定刑に違いがありますね。

ちなみに、自転車を運転して歩行者と事故を起こし、怪我をさせた場合、これまでは過失致傷、あるいは重過失致傷でした。自転車

業務上過失致傷罪や自動車運転過失致傷罪は成立しません。

しかし、最近の自転車に対する社会の認識は、「他人の生命身体等に危害を与える虞」があると考えるようになってきると思えますので、そのうち、「業務上過失致死傷罪」が適用されるようになるかもしれません。