交通事故の知識 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • 交通事故で無料相談できる窓口はここ!

    2018年02月07日

    1 なぜ、交通事故の無料相談窓口が必要か?

    交通事故は、一生で何度も遭うものではありません。

    特に、被害者になった時は、身体に怪我をした痛みなどもあり、何をどうすればいいのか、全くわからないこともあると思います。

    怪我の治療は病院に行くとして、治療にかかった治療費や休業損害、後遺症が残った場合の損害など、それらの補償は、どうなるのでしょうか。

    そのような場合、通常は、加害者が加入している任意保険会社が出てきて支払ってくれますが、その金額が妥当ではない場合が多い、と言ったら、驚くでしょうか。

    保険会社も利益を出さなければならない以上、支出を1円でも少なくしたい、という組織の論理が働きます。

    そうなると、当然のことながら、交通事故の被害者に支払う示談金を低くしたい、と考えるのは自然の帰結なのです。

    そんな中、素人である交通事故の被害者が1人で解決することができるでしょうか。

    また、交通事故にのよる怪我で後遺症が残ってしまった場合を考えてみましょう。

    後遺症が残った場合には、自賠責の後遺障害等級認定を受けることになります。

    1級~14級まであるのですが、この等級に基づいて損害賠償額が大きく異なってきます。

    したがって、とても重要な手続なのですが、この等級が間違っていることがある、と言ったら、驚くでしょうか。

    等級認定は、損保料率機構と呼ばれるところが行うのですが、書面審査が原則なので、重要な資料が提出されていないと、謝った等級が認定されてしまうことがあるのです。

    そして、その時のために、「異議申立」という手続があります。

    しかし、知識のない素人が、後遺障害等級が正しいかどうか、どうしたら判断できるでしょうか。

    医学的な知識や等級認定基準に関する知識がないと、判断できるはずがありません。

    このように、交通事故の被害者は、わからないことだらけなのですが、一体、どうしたらよいでしょうか。

    そんな時、相談できる相談先があれば、心強いことでしょう。

    しかも、「無料相談」ができるとしたら、なおさらです。

    そこで今回は、交通事故の被害者が「無料相談」できる窓口についてまとめてみました。

    (参考記事)
    交通事故の慰謝料の完全解説

    2 交通事故の無料相談窓口

    (1)加害者の保険会社

    交通事故で怪我をした場合に、治療費や休業補償を支払ってくれるのは、多くの場合、加害者が加入している任意保険会社です。

    親身になってくれる担当者もいますので、力強い味方に思えます。

    そして、色々相談しても、相談料を取られることはありません。

    「無料相談」です。

    しかし、ちょっと待ってください。

    加害者側の保険会社に何でも相談するのは要注意です。

    先ほど説明したように、保険会社は1円でも支出を抑えようとし、そのために、被害者に対する示談金を低くしようという組織の論理が働きます。

    いくら担当者が親身だとはいっても、組織の一員である以上、会社の論理には逆らえません。

    いざというときには、被害者の擬制のもとに保険会社の利益を図ろうとするのは、立場上当然のことです。

    加害者側の保険会社と話すときは、被害者と保険会社の利害は相反している、ということを前提に話をしなければならないのです。

    そのような観点から考えると、保険会社の担当者との関係は良好に保った方がよいのですが、それは、あくまでもスムーズに支払をしてもらうためであり、最終的な賠償金を高くする相談は、してはいけない、ということになります。

    (2)自分の保険代理店の担当者は?

    加害者の保険会社と被害者とが利害反するため、賠償額を増額させる相談をしてはいけない、ということはご理解いただけたと思います。

    では、交通事故の被害者が自分で加入している保険会社の代理店は、見方なので、相談するのはどうでしょうか。

    これも無料相談です。

    しかし、任意保険に人身傷害補償特約や加害者が無保険の場合の無保険車補償特約などがあり、その保険会社から支払うを受けられるような場合には、加害者側保険会社と同じように、被害者と利害が反することになってしまいます。

    したがって、無料相談とは言っても、適切な相談先ではありません。

    そうではない場合、保険代理店の担当者は親身になって相談にのってくれることが多いと多いと思います。

    しかし、保険会社の代理店は、損害賠償法を学んでいるわけではなく、損害保険の専門家です。

    交通事故の損害賠償や示談金の問題というのは、損害保険を知っていなければいけませんが、それだけでは足りず、医学的知識と損害賠償法と熟知していなければいけません。

    そうなると、保険会社の代理店には、「損害保険」の相談は、しても良いのですが、賠償金額が妥当かどうか、という相談は、必ずしも知識が十分ではない、ということになるでしょう。

    (3)弁護士

    普通に生活をしていると、弁護士と関係する機会は多くありません。

    ちょっと敷居が高いですね。

    わざわざ弁護士に相談する必要があるのか、という気もします。

    また、相談料も高そうです。

    しかし、インターネットの検索エンジンで検索していただくとわかるのですが、最近は、交通事故の被害者側からの相談には、「無料相談」を実施している法律事務所が多数あります。

    弁護士は、法律の専門家ですから、損害賠償法を熟知しています。

    また、弁護士は、相談者や依頼者の利益を最大限に考えるので、保険会社のように利害が反することもありません。

    そもそも弁護士は、利害が反する人からの相談や依頼を受けてはいけないことになっています。

    しかし、弁護士に相談するにしても、注意しなければいけない点があります。

    弁護士は、損害賠償法という法律問題については専門家ですが、みんなが交通事故に詳しいわけではありません。

    交通事故では、後遺障害等級が適切かどうか、医学的資料がきちんと提出されているか、どの保険から順番に請求するのが特なのか、など、医学的知識、後遺障害等級認定基準の知識、保険の知識など、法律以外の専門知識が要求されます。

    弁護士がみんなそれらに精通しているわけではないのです。

    したがって、無料相談だからといって、どの弁護士に相談してもよいわけではなく、できれば、交通事故に精通した弁護士に無料相談するのがよいと思います。

    それは、怪我をしたり、病気をした時に、医師なら誰でもよいわけではなく、専門医に診療してもらった方がよいのと同じ理屈です。

    (4)各都道府県の相談窓口は?

    各都道府県や地方自治体でも、交通事故の無料相談窓口を設けているところが多いと思います。

    たとえば、東京都の場合は「東京都交通事故相談所」が設置されています。

    各相談所では、専門相談員が、交通事故に関する相談について、無料相談を受け付けています。

    相談員が順番で担当することが多いと思いますので、詳しい人と詳しくない人の差が大きいとは思いますが、近くにある場合には、初回相談として相談してみてもよいでしょう。

    (5)日弁連交通事故相談センターは?

    日弁連交通事故相談センターは、公益財団法人で、日本弁護士連合会が設立・運営しています。

    電話相談と面談相談があり、弁護士が対応してくれます。

    ただし、電話相談は10分しかできないため、詳しい相談まではできないでしょう。

    ここでも相談員が順番に担当することが多いので、詳しい人とそうでもない人の差が大きいと思います。

    (6)保険会社と示談交渉に関する相談窓口

    1.そんぽADRセンター

    そんぽADRセンターとは、日本損害保険協会との間で「指定紛争解決機関に関する手続実施基本契約」を締結した損害保険会社に関する紛争について、相談対応や苦情・紛争の解決の相談を受け付けている機関です。

    交通事故の相談や、その他の損害保険に関する相談に対応しています。

    保険業法に基づく指定紛争解決機関として、損害保険会社との間でトラブルに関し、相談や苦情受け付け、紛争解決支援なども行っています。

    2.交通事故紛争処理センター

    交通事故紛争処理センターは、交通事故の被害者と加害者との間に立って、示談に関する紛争を解決するための法律相談や和解のあっせんと審査手続を無料で行なってくれます。

    後遺症について争いがあったり、過失割合に争いがあったりする場合については、あまりおすすめしません。

    3.自賠責保険・共済紛争処理機構

    交通事故の被害者と自賠責保険会社(共済)との間で起きた紛争の調停を行う機関です。

    保険金・共済金について、支払い基準や賠償責任の有無、後遺障害等級認定制度、調停の申請手続きなどの相談を受け付けています。

    以上、交通事故の被害にあったときに、「無料相談」を受け付けている窓口をご紹介しました。

    さらに詳しくは、こちら。⇒「交通事故で無料相談できる窓口まとめ

  • 交通事故の示談で知らないと損をする注意点とは?

    2018年02月05日

    交通事故の示談で知らないと損をする注意点とは?

    交通事故に遭った場合、被害者がしなければならないことはたくさんあります。

    まず警察への対応です。

    警察は、交通事故が起こると、加害者の刑事処罰をするかどうかなど、捜査を進めます。

    その過程で実況見分調書を作って、交通事故の状況を可視化します。

    被害者も記憶に従い、交通事故の状況を説明することを求められます。

    また、加害者の刑事処罰に進むようであれば、供述調書なども作ることになります。

    それと併行し、被害者は、怪我の治療を行わなければなりません。

    死亡事故の場合には、葬儀などが大変な手続になります。

    それらが終わると、いよいよ示談交渉です。

    (参考記事)
    交通事故慰謝料の完全解説

    (動画解説)
    交通事故慰謝料は弁護士に依頼するとなぜ増額するのか

    交通事故は一生に何度も遭うものではないので、「交通事故の示談交渉」といっても、どこに注意しなければならないか、知っている人はほとんどいないでしょう。

    そこで、交通事故の示談交渉で注意すべきポイントをご説明します。

    交通事故の「示談」といっても、これは、交通事故の損害賠償問題を解決する一つの手段に過ぎません。

    他にも、「調停」や「裁判」により解決する方法もあります。

    1.示談って何?

    (1)示談は、「和解」

    交通事故における示談というのは、交通事故の損害賠償問題を、話し合いにより解決することです。

    法律上は、「和解」と言います。

    民法695条では次のように規定されています。

    「和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。」

    「互いに譲歩をして」と書いてありますが、必ずしも譲歩が必要条件ではありません。

    被害者が5000万円を請求し、加害者が「いいですよ」と言えば、被害者は譲歩せず、5000万円で和解が成立します。

    これを、一般的な用語で「示談」と言います。

    しかし、実際には、そんなにすんなりとうまくいきません

    実際、交通事故の損害賠償金を正当に見積もって、5000万円である、と主張しても、加害者側からは、1000万円が適正である、などという反論がきて、示談交渉が決裂してしまうことがあります。

    そして、そのような場合には、裁判になることになります。

    (2)被害者と加害者の利害は対立する

    交通事故の損害賠償金は、過去の膨大な裁判例の積み重ねにより、ある程度の相場が形成されています。

    そうであれば、被害者が相場の金額を主張すれば、示談が成立すると思われがちですが、実際には、そうはなりません。

    それは、被害者と加害者の利害が対立しているためです。

    加害者側からは、任意保険会社が出てくるのが通常です。

    保険会社も利益を上げなければ、経営者は株主から責任を追及されます。

    そして、利益を出すためには、収入を多くし、支出を少なくしなければなりません。

    保険会社の場合、支出の多くを保険金の支払い等が占めますので、保険金の支払いは、少なければ少ないほど、会社の利益が大きくなるわけです。

    そこで、保険会社は、被害者の損害を少なく見積もり、示談金も少なく提示して、利益を出そうとするのです。

    これが、交通事故の示談交渉がうまくいかない理由です。

    したがって、交通事故の示談交渉は、すんなり進みませんので、被害者には覚悟が必要です。

    しかも、被害者が直接交渉しても、いつまでも保険会社側が譲歩しない、ということもあります。

    そういう時は、弁護士に依頼することをおすすめします。

    弁護士が出てくると、保険会社は、ある程度適正な金額に応じないと、裁判になり、適正な金額を支払わざるをえなくなり、かつ、別途弁護士費用もかかるので、示談でも譲歩せざるをえなくなるからです。

    これが、弁護士に依頼すると、示談金額が増額される理由です。

    2.示談交渉の開始時期

    被害者の中には、交通事故が起こると、すぐに過失割合や示談交渉を始めようとする人がいます。

    しかし、示談交渉は、怪我の治療が全て終了してから行うことになります。

    過失割合についても同じです。

    物損だけ先に示談する場合は、同時に物損の過失割合について交渉しますが、そこで合意した過失割合と人損の過失割合は同じである必要はありません。

    怪我の治療が終了してから示談交渉を行う理由は、治療が終了しないと、損害額が確定しないためです。

    治療費も休業損害も、入通院慰謝料も確定しません。

    また、後遺症が残る場合には、後遺症に関する損害も賠償してもらう必要がありますが、それも治療が終わらないと、わかりません。

    したがって、急いで示談交渉を行わないよう注意しましょう。

    3.後遺症が残った場合

    交通事故の被害者が怪我の治療に専念しても、完全に治療できない時があります。

    いわゆる「後遺症」が残った場合です。

    交通事故で後遺症が残った場合は、医師に自賠責後遺障害診断書を書いてもらい、画像や検査結果などを沿えて、損害保険料率算出機構という機関に後遺障害等級の申請をします。

    後遺障害等級は、重いものから順に1級から14級に分類されています。

    この後遺障害等級が何級かによって、示談金額が大きく変わってきます。

    重いものになると、1級の違いが数千万円の示談金額の違いになってきますので、要注意です。

    したがって、自分が認定された後遺障害等級が適正なものなのかをきちんと検討しなければなりません。

    そして、きちんと認定されていない時は、更に医証を追加して、「異議申立」をして、正しい等級を認定してもらうことがとても大切です。

    ただ、交通事故の被害者が、正しい等級を判定するのは無理だと思いますので、ここは必ず交通事故に詳しい弁護士に相談しましょう。

    みらい総合法律事務所もそうですが、交通事故の無料相談に応じてくれる法律事務所が多数あります。

    4.示談交渉のポイント

    (1)損害賠償金額の項目を網羅する

    交通事故の治療が終了し、後遺障害等級が認定された時点、または、死亡事故の場合には被害者の四十九日が過ぎたあたりから、示談交渉を開始します。

    示談交渉では、次の2つが重要です。

    ①損害賠償金額の項目を網羅する

    ②各項目を適正金額にする

    これで、全体の示談金額が適正額になります。
    まず、損害賠償額の項目を網羅します。

    示談金の内訳である損害賠償金には、さまざま項目があります。

    たとえば、

    治療費、付添費、将来介護費、入院雑費、通院交通費、装具・器具等購入費、家屋・自動車等改造費、葬儀関係費、休業損害、傷害慰謝料、後遺症慰謝料、逸失利益、修理費、買替差額、代車使用料などです。

    自分の場合に、これらのうち該当するものがあるかどうか、漏れのないように請求することが必要です。

    次に、各項目の金額の適正額を検討します。

    保険会社の提示する金額を安易に信じてはいけません。

    保険会社側では、なるべく各項目が安くなるように見ているためです。

    過去の判例等に照らし、適正な金額、できるだけ多くなるような金額になるよう検討することになります。

    ここも難しいので、やはり交通事故に精通した弁護士の協力を得る方が望ましいでしょう。

    【関連記事】
    交通事故で弁護士に依頼するタイミング
    交通事故で弁護士に依頼するメリット・デメリット

    (2)示談書の書き方

    加害者側と話をし、示談金の合意に至ったら、示談成立です。

    「示談書」を取り交わし、示談金を支払ってもらって、示談交渉は終了となります。

    示談書の内容は次のようことを記載します。

    ①当事者の特定

    交通事故の当事者を特定します。

    ②交通事故の特定

    交通事故の発生した年月日時刻、場所などを特定します。

    ③人損と物損の別(自賠責後遺障害等級)

    ④示談金額

    ⑤支払条件

    いつ、どのような方法で支払うのかを記載します。

    ⑥精算条項

    示談が成立したことで、交通事故の損害賠償問題は全て解決した、という内容を記載します。

    これで、以後、さらなる賠償金の請求はできなくなります。

    ただし、通勤労災の場合にはすべてを免責してしまうと、将来の労災給付も打ち切られますので、将来の労災給付は除外しておく必要があります。

    ⑦将来の後遺障害

    将来、後遺障害が発生する可能性がある場合は、「本件示談後、後遺障害が発生した場合には、当該後遺障害に基づく損害賠償については別途協議する。」というような記載をしておきます。

    以上が交通事故における示談のポイントです。

    さらに詳しく知りたい人は、こちらをご覧ください。⇒「交通事故の示談を有利にする方法と注意点を弁護士が解説

    交通事故の示談交渉で被害者が避けておきたい7つのこと
    https://www.jikosos.net/basic/basic6/jidan-dame-7point

  • 交通事故の慰謝料の完全解説

    2018年02月01日

    交通事故の被害者弁護に携わっていると、さまざまな相談を受けます。

    その中でも大きな問題のひとつに慰謝料があります。

    交通事故の被害にあってケガをした場合、被害者は通院や入院をしてケガの治療をしますが、治療のかいなく後遺症が残ってしまうことがあります。

    後遺症を抱えた被害者は、精神的な苦痛に加え、肉体的な苦痛も強いられます。
    また、事故前のように働くことができなくなれば収入は減り、最悪の場合は仕事も失ってしまいます。
    さらには、今後の生活では介護費用などの出費が増えていく可能性もあります。

    怒りと憤り、そして不安と心配。

    交通事故の被害者は、さまざまな苦しみを背負わなければいけなくなってしまいます。

    しかし、そうした状況にあっても、被害者には現実的にやるべき大切なことがあります。

    それは、できるだけ高額の慰謝料を獲得することです。

    (動画解説)
    交通事故慰謝料は弁護士に依頼するとなぜ増額するのか

    「お金の問題で争いをしたくない」と考える必要はありません。
    加害者からは誠意をもって、しっかり償ってもらわなければいけません。

    今回は、高額慰謝料を獲得するために必要なことについて、①ご自身の後遺障害等級の認定手続き、②保険会社(加害者側)との損害賠償金の示談交渉、という2つの段階に分けて、注意ポイントなどを解説したいと思います。

    1.自分の後遺障害等級を知る

    (1)後遺障害等級は1級から14級までが定められている
    交通事故で負ったケガのために後遺症が残ってしまった場合、まずはご自身の後遺障害等級を知る必要があります。

    なぜなら、今後この後遺障害等級が慰謝料の金額の決定などにおいて、とても重要になってくるからです。

    後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法(自賠法)によって1級から14級までが定められています。

    症状が重いほうが1級です。
    また、それぞれの等級は後遺障害を負った部位によって号数で分かれています。
    たとえば、両手の指をすべて失った場合は3級5号、脳にダメージを負い高次脳機能障害により軽易な労務しかできなくなった場合は7級4号、ということになります。

    等級が上がったほうが慰謝料の金額は高くなります。

    (2)後遺障害等級認定の申請には2つの方法がある
    後遺障害等級認定を申請するには、「被害者請求」と「事前認定」という2つの方法があります。

    被害者請求とは、直接被害者が加害者の加入している自賠責保険会社に申請する方法です。

    被害者請求で等級が認定されると、それに応じた自賠責保険金がまとまった金額で支払われるので、その後に行なう加害者側の保険会社との示談交渉で余裕を持って交渉していくことができます。

    一方で、申請のための資料や書類は被害者が自分で集めなければいけないため、手間がかかってしまうというデメリットがあります。

    事前認定とは、加害者の任意保険会社を通して自賠責保険に申請する方法です。

    加害者側の任意保険会社が手続をやってくれるので、被害者としては資料や書類を集めて申請する手間が省けます。
    また、示談交渉が成立せず最終的に裁判の判決までいった場合、事前認定のほうが慰謝料などの損害賠償金に事故時から判決までの間の遅延損害金がつくので受け取る金額が増えます。

    しかし、申請でどのような書類が提出されているのかわからないため、被害者にとっては書類に不足がないかどうか確認することができません。
    そのために、後遺障害等級が間違って低く認定されるリスクもあります。

    どちらがいいのかは、交通事故被害者の状況を見ながら判断することになります。

    2.保険会社(加害者側)と示談交渉を進めていく
    ご自身の後遺障害等級が認定されたら、次は慰謝料などの示談交渉に進みます。

    示談交渉は、その進め方によって被害者が受け取ることができる慰謝料などの損害賠償金の金額が大きく変わってくるので、とても大切なものです。

    (1)交渉相手は加害者側の保険会社
    被害者にとって、示談交渉の相手は誰かというと、被害者側の保険会社の担当者ということになります。

    ここで注意しなければいけないのは、加害者側の保険会社は、被害者にとって味方ではないということです。

    担当者は、やわらかい物腰で、「慰謝料など、精一杯努力して金額を出しました」とか、「これ以上は出せない当社の限度いっぱいの金額です」などと言ってくるかもしれません。
    しかし、保険会社担当者の人間性と、示談金額の妥当性は、分けて考えなければなりません。

    なぜなら、保険会社が利益をなるべく多くするには、被害者に支払う損害賠償金をできるだけを低く抑えることが重要になってくるからです。

    したがって、加害者側の保険会社を敵とは思わないまでも、味方と思ってはいけないのには、こうした理由があるからです。

    (参考記事)
    示談交渉で知らないと存する知識

    (2)慰謝料とは何かを知っておく
    多くの人が「慰謝料」という言葉を使っているのですが、では慰謝料とは何なのか、じつはきちんと理解していない人が多いのではないでしょうか。

    ここでは、慰謝料の大切なポイントについて解説していきます。

    ①そもそも慰謝料とは、交通事故の被害により精神的な苦痛を被ったことに対して支払われる損害賠償金のことです。

    ②慰謝料と損害賠償金は同じものではありません。
    治療費や入院費、将来介護費などたくさんある損害賠償金の中のひとつが慰謝料となります。
    逆にいうと、たくさんある項目の中からご自身が申請できるものを合わせた全体が損害賠償金ということになります。

    「損害賠償金の項目の例」
    治療費、付添費、将来介護費、入院雑費、通院交通費、装具・器具等購入費、家屋・自動車等改造費、葬儀関係費、休業損害、傷害慰謝料、後遺症慰謝料、逸失利益、修理費、買替差額、代車使用料 など。
    ③交通事故に関する慰謝料は、ひとつではありません。
    「死亡慰謝料」、「後遺症慰謝料」、「傷害慰謝料」の3つがあります。

    ④損害賠償金については、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「裁判基準」という3つの基準があります。

    自賠責保険基準がもっとも金額が低く、裁判基準がもっとも慰謝料が高くなります。

    では、慰謝料を含めた損害賠償金の金額はどのように決められるのでしょうか?
    この3つの基準には、どのような違いがあるのでしょうか?

    被害者にとっては、裁判基準に近い金額で示談をすることがもっとも望ましいことです。

    しかし、法律や保険の素人である被害者が単独で裁判基準での損害賠償金を勝ち取るのは至難の業だと言わざるを得ません。

    では、どうすれば交通事故被害者は高額な慰謝料を獲得することができるのでしょうか?

    さらに詳しく知りたい方は、下のページを参照してください。

    交通事故の慰謝料の相場と慰謝料を増額させる秘訣

  • こんなことで逮捕とは…ブレーキなし自転車(ピスト)で全国初逮捕


    ブレーキなしの自転車運転で全国初の逮捕者が出てしまいました。

    警視庁交通執行課は11日、後輪にブレーキがついていない自転車を運転したとして、東京都の男性を道路交通法違反(制御装置不良自転車運転)容疑で逮捕しました。

    男性は、昨年3月に同じ自転車を運転しているところを同容疑で摘発されたにもかかわらず、出頭要請を7回も無視し続けたことで同課は逮捕する必要があると判断したようです。

    男性は、「こんなもので逮捕されるとは思わなかった」と供述しているとのことです。

    参考人ならまだしも、被疑者としての出頭要請ですから、出頭すべきですね。

    ところで、ブレーキのない自転車=ピストバイクとはどういうものなのか簡単に説明しておきましょう。

    ピストバイクは競技用の自転車(トラックレーサー)で、もともとは公道を走るためのものではありません。

    そのためブレーキがついておらず、しかも固定ギアのためペダルを逆回転に回して自転車を止めるのですが、制動力は脚力に依存するため、相当の脚力がないと、急に止まることができないでしょう。

    2000年代半ばに日本にも輸入されるようになり、そのシンプルなスタイリングが美しいということで、ストリートカルチャーやファッションの面で人気になりました。
    壊れにくく、乗り心地が独特ということで愛好家もいます。

    しかし、2年前にはお笑い芸人がブレーキなしのピストバイクを運転していて道路交通法違反(制動装置不良)で交通違反切符を切られたように、このところ摘発者が増えているようです。

    みなさん、ここでもう一度、確認してください!
    ブレーキなしの自転車を運転することは法律で禁じられています。
    もちろん、前輪後輪両方ついていなければいけません。

    道路交通法 第63条の9第1項(自転車の制動装置等)

    自転車の運転者は、内閣府令で定める基準に適合する制動装置を備えていないため交通の危険を生じさせるおそれがある自転車を運転してはならない。

    道路交通法施行規則 第9条の3

    1.前輪及び後輪を制動すること。
    2.乾燥した平たんな舗装道路において、制動初速度が10キロメートル毎時のとき、制動装置の操作を開始した場所から3メートル以内の距離で円滑に自転車を停止させる性能を有すること。

    これに違反すると、道路交通法の第120条により5万円以下の罰金となります。

    今年7月に施行された東京都の「自転車安全利用条例」によって、道路交通法に違反する自転車の販売が禁止されたので、ブレーキのない自転車の一般販売も禁止される、ということになります。この動きは全国に広がっています。

    また近年、交通事故は減少しているにもかかわらず、自転車による事故は全体の約2割にも達し増加の一途をたどっています。

    自転車は道路交通法上、「軽車両」です。

    格好いいからという理由だけでブレーキなしの自転車には乗らないこと。
    自分も人も傷つけないよう、安全に十分配慮して自転車を楽しんでほしいと思います。

  • 弁護士費用特約を知っていますか?

    2012年06月01日


    交通事故に遭った際に、損害賠償の示談交渉や裁判が必要となるときがあります。

    その場合に、弁護士費用を最大300万円まで保険金で支払ってくれる制度があります。

    ご存じでしたか?

    自動車の任意保険の特約についているものであり、一般に「弁護士費用特約」というものです。

    この弁護士費用特約、平成22年度には、契約数が1430万件を超えたそうです。

    しかし、なんと利用率は、0.05%とのこと。

    なぜ使わないか、という理由については、「いざというときのために安心はしたいが、実際に裁判沙汰にするのは避けたい」という心理があると、ニュースでは分析されています。

    http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/565761/

    裁判沙汰にするのは避けたい、というのは、弁護士を使わない理由であって、「弁護士費用特約」を使わない理由ではありません。

    その意味で、この分析は正確ではありませ。

    それはさておき、みらい総合法律事務所では、交通事故の被害者からの依頼を受けて損害賠償請求をすることが多いのですが、結構な割合で「弁護士費用特約」がついています。

    しかし、被害者の側から、「弁護士費用特約を使いたい」と言うケースは多くありません。

    つまり、「弁護士費用特約」がついている、ということを知らないケースが多いのです。

    この「弁護士費用特約」は、自分の自動車保険にかけているケースだけに適用されるわけではありません。保険の内容によって異なりますが、多くの場合、同居の親族や独身の場合には別居の両親などがかけている自動車保険に「弁護士費用特約」がかけてある場合にも本人に適用されることとなっています。

    おそらくほとんどの方が知らないのではないでしょうか。

    保険会社は、保険金が出る場合について、もっと保険契約者に説明した方がよいでしょう。

  • 危険運転致死傷罪を考える

    2012年02月12日

    危険運転致死傷罪について、改めて解説します。

    危険運転致死傷罪は、平成13年11月28日に、第153回国会において成立し、12月5日に公布され、12月25日に施行されたものです。

    条文

    刑法第208条の2
    アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
    2 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。

    今は、傷害の場合に最高15年以下の懲役、死亡の場合に最高20年以下の懲役となっていますが、この条文ができた時は、傷害の場合に最高10年以下の懲役、死亡の場合に最高15年以下の懲役でした。

    平成17年1月1日施行の改正法により、罰則が引き上げられたものです。

    また、当初は、「四輪以上の自動車」と限定されていましたが、平成19年6月12日施行改正法により、原動機付自転車や自動二輪車による事故にも適用されるようになりました。

    成立の背景

    この罪ができる前は、自動車事故の加害者は、全て業務上過失致死傷罪で罰せられていました。

    刑法211条
    業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。

    そんな中、平成11年11月28日、東京都世田谷区の東名高速道路東京IC付近で、飲酒運転のトラックが、風と3歳・1歳の2女児の3名が同乗する普通乗用自動車に追突。

    また、平成12年4月に神奈川県座間市の座間南林間線小池大橋で、無免許、無車検、無保険、かつ飲酒運転で、検問から猛スピードで逃走していた建設作業員の男性が運転する自動車が歩道に突っ込み、歩道を歩いていた大学生2名を死亡させた事件が発生しました。

    その後、危険な運転による自動車事故に、最高5年の懲役しか科せないとは不合理であるとのことで、署名運動が行われ、平成13年10月に法務大臣へ最後の署名簿を提出した時には合計で37万4,339名の署名が集まったそうです。

    そのようなことを受け、危険運転致死傷罪が創設されました。

    法的な性質

    平成19年6月12日施行の改正刑法により、新たに「自動車運転過失致死傷罪」が創設され、最高7年以下の懲役が定められ、過失による自動車事故は、この条文により処罰されることになりました。

    刑法第211条2項
    自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。

    危険運転致死傷罪は、傷害の場合には懲役15年以下、死亡の場合には20年以下の懲役ですから、自動車運転過失致死傷罪の法廷刑よりも格段に重い処罰となっています。

    その理由は、危険運転致死傷罪が成立するためには、運転者が過失ではなく、故意に危険運転行為を行ったことにあります。つまり、通常の自動車運転過失致死傷罪は、脇見運転や一時停止義務違反など、過失犯です。

    ところが、危険運転致死傷罪では、次の5つの、特に危険な運転行為を故意に行ったことが必要になるのです。

    1)アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状態で走行

    2)進行を制御することが困難高速度で走行

    3)進行を制御する技能を有しないで走行

    4)人又は車の通行を妨害する目的で走行中の自動車の直前に進入その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転

    5)赤色信号等を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転

    上記の5つのいずれかに当てはまる行為をし、その結果、事故が起こった場合には、危険運転致死傷罪が成立します。

    その意味で、危険運転致死傷罪は、「結果的加重犯」と言われています。

    要件の検討

    「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態」

    「正常な運転が困難な状態」とは、道路や交通の状況に応じた運転操作を行うことが困難な状態のことです。

    飲酒などにより、目が回った状態であったり、運動能力が低下してハンドルやブレーキがうまく操作できなかったり、判断能力が低下して距離感がつかめなかったりして、正常に運転できない状態のことを言います。

    「アルコールの影響で正常な運転が困難」かどうかの認定方法としては、呼気検査により、呼気の中にどれだけのアルコールが検出されるか、直立・歩行検査でフラフラしていないかどうか、事故直後の言動でろれつが回らない、目が充血している等の兆候があったか、蛇行運転をしているなどの事実があったか、本人や関係者の証言により、どの程度の飲酒をしていたか、事故前後の言動はどうだったか、などを総合して認定されます。

    正常な運転が困難であったことについては、検察側が立証しなければなりません。そこで、飲酒運転により人身事故を起こしてしまった運転者は、飲酒の発覚をおそれ、逃走(ひき逃げ)をしてしまうケースが出てまいりました。そして、後刻、あるいは後日逮捕されたとしても、すでにアルコールが抜けており、アルコールの影響により、「事故当時」正常な運転が困難であったことの立証が困難となってしまうのです。

    そうなると、自動車運転過失致死傷罪とひき逃げで立件せざるを得ません。

    この場合、両者は併合罪となり、最大15年以下の懲役刑です。

    危険運転致死傷罪の最大20年よりも軽い刑罰となります。

    そこで、飲酒をして事故を起こした加害者は、危険運転致死傷罪になるのを免れるため、現場から逃走してしまう、という行為が行われるのです。

    これが、いわゆる「逃げ得」の問題です。

    この点は、立法により解決するしかないと考えています。

    「進行を制御することが困難な高速度」

    「進行を制御することが困難な高速度」とは、速度が速すぎるため、道路の状況に応じて進行することが困難状態で自動車を走行させることです。

    これは、具体的に「●●キロ」と決まっているのではなく、具体的な道路の道幅や、カーブ、曲がり角などの状況によって変わってきますし、車の性能や貨物の積載状況によっても変わってきます。

    「進行を制御する技能を有しない」

    「進行を制御する技能を有しない」とは、ハンドルやブレーキ等を捜査する初歩的な技能すら有しない場合が想定されています。

    運転免許の有無は関係ありません。

    たとえ、運転免許がなくても、普段無免許を繰り返しており、運転技術がある場合には、この要件には当てはまりません。

    「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度」

    「通行を妨害する目的」というのは、「相手を走行させない」という意味ではなく、逆に、相手に自車との衝突を避けるための回避行為をとらせるなど、相手の安全運転を妨害する目的を言います。

    相手が自車との衝突を避けるため急な回避行為をするときは、重大な事故が発生しやすいことに着目したものです。

    「重大な交通の危険を生じさせる速度」は、自車が相手方と衝突すると、重大な事故になりそうな速度、あるいはそのような重大な事故を回避することが困難な速度を言います。

    20~30キロ程度出ていれば、状況によってはこの要件に当たると解釈されています。

    「赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度」

    「これに相当する信号」とは、赤信号と同様の効力を持つ信号のことで、警察官の手信号のようなものを指します。

    「重大な交通の危険を生じさせる速度」は、やはり20~30キロ程度出ていれば、要件に当たるでしょう。

    その程度の速度でも、赤信号を無視して交差点に侵入されば、重大な事故が発生しやすいためです。

    最後に

    「危険運転致死傷罪」は、まだ自動車事故の最高刑が、「業務上過失致死傷罪」の5年だった当時に創設されたものであり、当時としては、特に危険な類型を抜き出したものです。

    しかし、その後、まだまだ危険で重大な事故も発生しています。

    たとえば、薬を飲まなければ、発作が起こる確率が高く、その状態で運転すれば重大な事故につながるかもしれないことがわかっていながら、薬を飲まずに運転し、発作が起こって人を轢いてしまった場合、危険運転致死傷罪の要件に当てはまりません。

    アルコールや薬物の影響で「正常な運転ができない」場合と何が異なるでしょうか。

    また、1つ1つの要件は満たさないが、いくつもの危険行為が重なっている場合、危険運転致死傷罪は成立しません。

    危険運転致死傷罪が創設されてから、すでに10年以上が経過しています。

    ここでもう一度検討し直す時期に来ているかもしれません。

  • お守りが道路交通法違反!?

    2011年12月10日


    お守りが道路交通法違反!?

    以下は、デーリー東北新聞社の記事です。

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    自家用車内に張れる吸盤付きの交通安全のお守りには根強い人気がある。それ以外でも、人形やステッカーをフロントガラスに飾っている車は少なくないが、実は、その行為は厳密には道交法違反。青森県警は「しっかりルールを守ってほしい」と呼び掛けている。
     県警交通指導課によると、フロントガラスやルームミラーなどに物をぶら下げるのは、ドライバーの視野を妨げる危険性があるとして、道交法第55条に定められる「乗車積載方法違反」の疑いがあるという。ただ、取り締まりの明確な基準はなく、違法かどうかの判断は現場の警察官に委ねられているようだ。
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    http://cgi.daily-tohoku.co.jp/cgi-bin/news/2012/01/09/new1201091601.htm

    そうでしょうか。

    道路交通法55条2項は、次のように規定しています。
    車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、又は外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない。

    ここでのポイントは、「運転者の視野を妨げるか」「ハンドルその他の装置の操作を妨げるか」「後写鏡の効用を失わせるか」というところだろうと思います。

    リンクした画像に写っているお守りでは、運転手の視界からすると、Aピラー(フロントガラスの横の柱)と重なっているように見えますし、大きさから言っても、それらを妨げたり、失わせたり、というようには見えません。

    また、東京でいうと、東京都道路交通規則というものがあり、その8条で禁止行為が定められていますが、その中でも、「(8) 後写鏡の効用を妨げるように、物を置き、又はカーテンの類を用いないこと。」という規定がありますが、写真のお守り程度では、後写鏡の効用を妨げるとは言えないでしょう。

    結局、吸盤付きのお守りで、道路交通法違反となるのは、相当の大きさのもので、運転者の視野を妨げたり、バックミラーの効用を失わせたりする程度のもの、ということになると思います。

    最近、交通関係のニュースが多いようです。

    道路交通法を遵守するのは当然ですが、記事に過剰反応しないようにすることも大切です。

    ただ、運転手の視界は、広い方がよいので(本当は、Aピラーも透明の方がいいと思います)、フロントガラスに吸盤付のものをぶらさげるのは、法律違反かどうかは別にして、やはりやめた方が良いと思います。

  • 自転車の2人乗り、3人乗り

    2011年09月28日


    道路交通法第57条第2項を受けて、東京都道路交通規則では、自転車の2人、3人乗りについて、次のように定めています。

    ・まず、自転車の2人乗り、3人乗りは、原則として禁止。

    ・但し、次の場合は、許されます。

    (1)16歳以上の運転者が幼児用座席に幼児(6歳未満の者)1人を乗車させるとき。

    ※運転者が幼児1人を子守バンド等で確実に背負つている場合は、幼児は運転者の一部とみなされます。つまり、人数としてカウントされない、ということです。

    (2)16歳以上の運転者が幼児2人同乗用自転車の幼児用座席に幼児2人を乗車させるとき。いわゆる3人乗り自転車のことです。

    ※3人乗りの場合は、(1)の子守バンドのみなし規定は適用されないので、最大幼児2人までということになります。

    つまり、次のようになります。

    ・幼児用座席がなくても、運転者が幼児1人を子守バンド等で確実に背負っていれば、自転車を運転できます。

    ・幼児が2人いるが、3人乗り自転車を持っておらず、幼児用座席が1つしかない場合、幼児1人を幼児用座席に乗せ、もう1人を子守バンド等で確実に背負っていれば、自転車を運転できます。

    ・幼児が3人いるとき、3人同時に自転車に乗せることはできません。

    なお、上記は普通の自転車の場合で、多数人が乗れる特別な自転車の場合には、別の定めがあります(あまり見かけませんが)。

  • 道路での違反行為

    2011年09月27日


    道路交通法76条4項によると、次の行為が禁止されています。(抜粋)

    違反した場合は、5万円以下の罰金です。

    ・道路において、酒に酔って交通の妨害となるような程度にふらつくこと。

    ・道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、又は立ち止まっていること。

    ・交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。

    ・道路において進行中の車両等から物件を投げること。

    道路交通法71条6号に基づく東京都道路交通規則では、次の行為が禁止されています。(抜粋)

    違反した場合は、5万円以下の罰金です。

    ・傘を差し、物を担ぎ、物を持つ等視野を妨げ、又は安定を失うおそれのある方法で、自転車を運転すること。

    ・自転車を運転しながら、携帯電話用装置を手で保持して通話し、又は画像表示用装置に表示された画像を注視すること。

    ・高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で自転車を運転すること。

    ・警音器の整備されていない自転車を運転しないこと。

    気を付けましょう!

  • バイクに逆立ちは、道交法違反?

    2011年07月24日


    バイクに逆立ちして乗っていた男性が、道路交通法の安全運転義務違反で摘発されました。ダンス

    行政処分で反則切符を切られた、ということです。切符

    記事と写真はこちら。
    http://tinyurl.com/3moxm9j

    道路交通法70条(安全運転義務)
    車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

    バイクに逆立ちして乗ると、明らかにハンドルやブレーキを確実に操作することが困難になりますので、この条項に違反する、ということです。

    他にも、両手をハンドルからはなして運転すること、仰向けに寝て運転することなどの曲乗りは、安全運転義務違反になるでしょう。

    ニュースでは、行政処分のみしか書いていませんでしたが、刑事処分はどうなっているのでしょうか。

    道路交通法70条違反ということになると、道路交通法119条1項9号により、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。

    過去の判例では、片手運転の判例があります。

    交通繁雑な交差点を右折するに際し、ハンドルから左手をはなし、これに左官用こて及び手板を持ち、このためハンドルを確実に操作することができない状態で時速20キロメートルで進行する行為が安全運転義務違反とされました(遠野簡裁昭和40年11月27日)。

    逆に、右手でハンドルを操作し、左手に出前箱1個をさげ、危険な場合に警笛の吹聴も正確なハンドル操作もまた安全に急停止もできない状態で普通自動二輪車を運転することは、安全運転義務違反にならないとした判例もあります(森簡裁昭和42年12月23日)。

    出前好きな裁判官だったのでしょうか。年越しそば ピグ 黒用

    事故を起こさなくても法律違反になってしまうのですが、人身事故を起こしてしまうと、自動車運転過失致死傷罪として、7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金と、格段に重くなってしまいます。

    危険な運転はやめましょう。仮面ライダーDASH!