犬を散歩させただけで、6300万円の賠償金を払う?
2014年2月下旬、北海道白老町の海岸で散歩中の女性が2匹の土佐犬に襲われ溺死した事件がありました。
以前、この事件について解説しています。
詳しい解説はこちら⇒「愛犬を散歩させたら、懲役2年6月!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1590
被告の男(65)が、飼育する2頭の土佐犬を連れて海岸に散歩に出かけた。
周囲を十分に確認せずに1頭の引き綱を放したところ、犬が浜辺を散歩中の主婦(当時59歳)を襲った。
女性は、波打ち際で転倒して水死。
男は重過失致死罪などに問われ、懲役2年6月、罰金20万円の判決を言い渡された…というものでした。
今回、その後の民事裁判で多額の損害賠償金の支払い命令が出されたという報道がありましたので解説します。
「犬に襲われ溺死、飼い主に6300万円賠償命令」(2015年2月6日 読売新聞)
報道によりますと、被害者女性の夫ら遺族4人が受刑者の男を相手取り、損害賠償を求めた訴訟の判決が札幌地裁室蘭支部でありました。
判決で裁判官は、「土佐犬が危害を加えないよう未然に防止する注意義務を怠り、死亡させた過失は重大」と認定。
請求通り慰謝料など6300万円の支払いを命じたようです。
被告側は訴訟で答弁書を提出せず、また遺族である夫の男性は、「刑事裁判後も私たちの心が安まるときはなかった。(判決を)妻の一周忌までには報告したかった」と話したということです。
過去のブログでも判例を解説しましたが、犬に襲われた女性が転倒して脳挫傷で死亡した事件では、飼い主に5433万円の賠償命令が出されています。
また、バイクを走行中の男が前方から近づいてきた中型犬を避けようとして転倒し脚を骨折した事件では、飼い主に約1500万円の損害賠償金の支払いが命じられています。
詳しい解説はこちら⇒
「犬も歩けば賠償金を払う」
https://taniharamakoto.com/archives/1343
「愛犬が隣人をかんで、損害賠償金が1,725万円!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1181
飼い犬が起こした事件の責任は、飼い主が負うことになります。
民事では高額な賠償金の支払いを命じられ、刑事では実刑判決を言い渡されて犯罪者になってしまう可能性があるのです。
そして、飼い主の人に十分注意してもらいたいのは、これらの判例からもわかるように、飼い犬が起こした事件では人をかんだときだけ犯罪となり、賠償請求されるわけではないということです。
6300万円もの賠償金を支払える人は、どれだけいるでしょう?
もし支払えなかったら、被害者と遺族はどうやって補償してもらえばいいのでしょうか?
愛犬が起こした事件で、犯罪者になりたい人はいるでしょうか?
こうした致死傷罪の事件では、結局いつも、誰もが幸せにならないという後味の悪さが残ります。
飼い主の男は、愛犬のためによかれと思ってしたであろうことの結果、1人の命がなくなるという重大な事件になってしまいました。
被害者と遺族の無念は、とても癒されるものではないでしょう。
すべての愛犬家やペット愛好家は、今一度、飼い犬やペット管理の徹底をすること、そして法律を学ぶことを希望します
こうした事件、事故で2度と悲劇が繰り返されないように…。
飢えた犬を拾って手厚く世話してやると、噛み付いてきたりはしない。それが犬と人間の主たる違いだ。 (マーク・トゥエイン)