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弁護士法律解説 リーガルアイ

 

幼稚園児のプール事故死で幼稚園側に損害賠償命令


2017年4月17日

今回は、幼稚園で起きた幼児の事故死における損害賠償訴訟について解説します。
「園児水死、幼稚園側に6300万円支払い命令 横浜地裁」(2017年4月13日 朝日新聞デジタル)

神奈川県大和市の私立大和幼稚園のプールで園児が水死した事故を巡って争われた損害賠償訴訟の判決が横浜地裁でありました。

これまでの経緯と判決内容を以下にまとめます。

・事故があったのは2011年7月、幼稚園でのプールの時間。

・死亡した男児(当時3歳)は、他の園児約30人と一緒に水深約20センチのプールで遊んでいたところ、担任教諭がビート板などの遊具の片づけ作業で目を離していた間にプール内でうつぶせになっているのが発見された。

・2014年3月、元担任教諭には業務上過失致死傷罪で罰金50万円の有罪判決。2015年3月、元園長には無罪判決が言い渡された。

・両親が、幼稚園を運営する学校法人西山学園と元園長(69)、さらに元担任(26)らに計約7400万円の損害賠償を求めて提訴。

・判決では、「事故は担任教諭の不注意に起因するところが大きい」として、元担任が園児を監視する義務(安全配慮義務)を怠ったと判断。
また、学校法人の使用者責任と元園長の代理監督者責任も認め、計約6300万円の賠償を命じた。

・両親側は、「担任以外にも、園児を常時監視する職員を配置する義務があった」などと元園長の過失も主張していたが、判決では「担任だけでも監視可能だった」として、元園長については元担任の監督者としての連帯責任を認めるにとどめ、個人としての不法行為責任は認めなかった。
通常、学校および保育所の管理下における子供の事故、災害では、学校などが加入している日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(医療費、障害・死亡見舞金)が支払われます。

「学校や保育所の管理下」とは、授業中や保育中、部活動や課外授業中、休憩時間(始業前、放課後を含む)、通学(通園)中などです。

しかし、この災害共済給付金だけでは損害賠償金額をすべて賄えないことが多いため、さらに被害者や親は学校に損害賠償請求することができます。

和解に至らず裁判になった場合、民事事件としては、担任教諭に「注意義務違反」や「安全配慮義務違反」があったかどうかが争点になってきます。

担任教諭には、次のことなどに配慮して、適切に、かつ未然に事故を防ぐ注意義務が課されます。

・授業中(保育中)や部活動自体に内在する危険の程度
・生徒(幼児)の年齢・体格・健康状態
・生徒(幼児)の技能レベル
・環境(特に屋外でのスポーツ)

担任教諭が、これらの注意義務に違反した場合、民間の学校・保育所であれば不法行為に基づく損害賠償責任が教諭個人に発生します。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
学校や保育所には、使用者として使用者責任に基づく損害賠償責任が発生します。

「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2.使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

今回は、元園長の独自の不法行為責任は否定したように読めますので、この第2項の規定によって、責任を認めたものである可能性があります。

判決文を読んでいないので、このあたりは正確ではありません。

なお、前述したように生徒の死亡や重傷事故では、学校長や担任教諭は刑事事件に問われる可能性があります。

「刑法」
第211条(業務上過失致死傷等)
1.業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
不幸な事故が繰り返されないように、学校関係者にはしっかりと法律を認識して、学校運営をしてほしいと思います。

また、示談交渉や訴訟での法的手続きは非常に難しいものですから、ケガをした本人や両親などで損害賠償請求を検討しているのであれば、まずは一度、弁護士に相談することをお勧めします。

ご相談はこちらから⇒「弁護士による学校事故SOS」
http://www.bengoshi-sos.com/school/

詐害行為で訴えられた時の救済策(弁護士解説)


2016年8月12日

突然、詐害行為取消訴訟の訴状が届く時があります。

「詐害行為」とは、「さがいこうい」と読みます。

典型的には、自分の財産より借金の方が多くなってしまった状態(債務超過)で、唯一の財産である自宅を妻に贈与してしまうような場合です。

このような行為は、「詐害行為」として、贈与を取り消されてしまうのです。取り消される、ということは、自宅を元に戻さなければならない、ということです。

この詐害行為取消権は、民法に規定されています。3箇条あります。

【民法】
第424条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

第425条  前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。

第426条  第424条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

以上です。

要件としては、
・債権者を害する客観的要件
・債務者が債権者を害することを知っていたこと(主観的要件)
・受益者または転得者が債権者を害することを知っていたこと
・財産権を目的とする法律行為であること
・詐害行為取消権行使が、債権者が取消しの原因を知った時から2年あるいは行為の時から20年を経過していないこと

「債権者を害する」というのは、自分の資産を減少する行為をして債権者が十分の弁済を受けることができなくすることです。

詐害行為で訴えられた時は、上記の要件を欠いている点を見つけ、主張立証してゆくことが必要となります。

つまり、

・「本件は、債権者を害していない」
・「行為の当時、債務者は債権者を害する認識がなかった」
・「受益者または転得者は利益または転得した時点で債権者を害する認識がなかった」
・「本件は、財産を目的とする行為ではない」
・「債権者は、本件行為を知ってから2年以上経過してから取消権を行使した」

などです。

詐害行為取消権を法的に理解しようとすると、結構難しいです。

以下に、詐害行為を理解するのに必須の最高裁判例を紹介します。

(大審院明治39年2月5日判決)「相当の価格による売却であっても債務者の財産が消費しやすい金銭に変わるから詐害行為となる」
(大審院大正13年4月25日判決)「債務者がある債権者に対する債務を弁済するため相当の価格で不動産を売却したときは、特に他の債権者を害する意思がない限り、これをもって詐害行為ということはできない」

(東京高裁昭和31年5月31日判決)(要旨)Yは未成年であるから、詐害行為についての善意悪意は親権者であるAによって検討すべきであるが、Aは別居後Sの資産状態を知らないので、善意というべきである。

(最高裁昭和32年11月1日判決)
「債務者が或債権者のために根抵当権を設定するときは、当該債権者は、担保の目的物につき他の債権者に優先して、被担保債権の弁済を受け得られることになるので、それだけ他の債権者の共同担保は減少する。その結果債務者の残余の財産では、他の債権者に対し十分な弁済を為し得ないことになるときは、他の債権者は従前より不利益な地位に立つこととなり即ちその利益を害せられることになるので、債務者がこれを知りながら敢えて根抵当権を設定した場合は、他の債権者は民法四二四条の取消権を有するものと解するを相当とする。」

(最高裁昭和33年9月26日判決)「債務超過の状態にある債務者が一債権者に対してなした弁済は、それが債権者から強く要求せられた結果、当然弁済すべき債務をやむなく弁済したものであるだけでは、これを詐害行為と解することはできない」
(最高裁昭和33年9月26日判決)「債権者が、弁済金の到来した債務の弁済を求めることは、債権者の当然の権利行使であって、他に債権者あるの故でその権利行使を阻害されるいわれはない。また債務者も債務の本旨に従い履行を為すべき義務を負うものであるから、他に債権者あるの故で、弁済を拒絶することのできないのも、いうをまたないところである。そして、債権者平等分配の原則は、破産宣告をまって初めて生ずるものであるから、債務超過の状況にあって一債権者に弁済することが他の債権者の共同担保を減少する場合においても、右弁済は、原則として詐害行為とならず、唯、債務者が一債権者と通謀し、他の債権者を害する意思をもって弁済したような場合のみ詐害行為となるにすぎない」

(最高裁昭和39年11月17日判決)「債務超過の債務者が、特にある債権者と通謀して右債権者のみに優先的に債権の満足を得させる意図で自己の有する重要な財産を右債権者に売却して、右売買代金債権と右債権者の債権とを相殺する旨の約定をした場合には、たとえ右売買価格が適正価格であるとしても、右売却行為は詐害行為になる」

(最高裁昭和41年5月27日判決)
「債務者が既存の抵当権付債務の弁済をするために、右被担保債権額以下の実価を有する抵当物件たる所有不動産を相当な価格で売却し、その代金を右債務の支払に充てて当該抵当権の消滅をはかる場合にあつては、その結果右債務者の無資力を招いたとしても、右不動産売却行為は、一般債権者の共同担保を減少することにはならないから、民法四二四条所定の詐害行為にあたらないと解するのを相当とする。」

(最高裁昭和42年6月29日判決)
「本件債権譲渡が相当な対価をもつてなされたものではないのみならず、むしろ、訴外Dにおいて子供の養育費や他の借財の支払に必要とするとの理由のもとに、右譲渡債権については、上告人から右訴外人に一〇〇万円を交付し、右同額は右訴外人の上告人に対して負担する原判示債務の一部に充当しない約であつた趣旨の認定判断をしているのであり、したがつて、本件債権譲渡を債務の本旨に従つてなされた弁済と同視しえないことはいうをまたないところである。そして、原判決によれば、訴外Dは、上告人および被上告人らその他の債権者に対して多額の債務を負担しながら、資産としては本件債権のほかに見るべきものがなく、右債権が総債権者のための唯一の共同担保になつていたところ、右訴外人は他の債権者を害することを知りながら右債権を上告人に譲渡したものであり、しかも、上告人において本件債権譲渡が債権者を害することを知らなかつたことを認めえないというのである。しからば、本件債権譲渡は詐害行為として取消を免れないものというべく、これと同趣旨に出た原判決は相当」

(最高裁昭和42年11月9日判決)
「事実関係に徴すれば、前記各譲渡担保による所有権移転行為は、当時A夫妻は他に資産を有していなかつたから、債権者の一般担保を減少せしめる行為であるけれども、前記のような原審の確定した事実の限度では、他に資力のない債務者が、生計費及び子女の教育費にあてるため、その所有の家財衣料等を売却処分し或は新たに金借のためにれを担保に供する等生活を営むためになした財産処分行為は、たとい共同担保が減少したとしても、その売買価格が不当に廉価であつたり、供与した担保物の価格が借入額を超過したり、または担保供与による借財が生活を営む以外の不必要な目的のためにする等特別の事情のない限り、詐害行為は成立しないと解するのが相当であり、右と同旨の見解に立つて本件詐害行為の成立を否定した原判決の判断は、正当として是認できる。」

(最高裁昭和44年12月19日判決)
「右事実関係に徴すれば、本件建物その他の資産を被上告会社に対して譲渡担保に供した行為は、被上告会社に対する牛乳類の買掛代金二四四万円の支払遅滞を生じた訴外有限会社上田乳業食品およびその代表取締役Aが、被上告会社からの取引の打切りや、本件建物の上の根抵当権の実行ないし代物弁済予約の完結を免れて、従前どおり牛乳類の供給を受け、その小売営業を継続して更生の道を見出すために、示談の結果、支払の猶予を得た既存の債務および将来の取引によつて生ずべき債務の担保手段として、やむなくしたところであり、当時の諸般の事情のもとにおいては、前記の目的のための担保提供行為として合理的な限度を超えたものでもなく、かつ、かかる担保提供行為をしてでも被上告会社との間の取引の打切りを避け営業の継続をはかること以外には、右訴外会社の更生策として適切な方策は存しなかつたものであるとするに難くない。債務者の右のような行為は、それによつて債権者の一般担保を減少せしめる結果を生ずるにしても、詐害行為にはあたらないとして、これに対する他の債権者からの介入は許されないものと解するのが相当であり、これと同旨の見解に立つて本件につき詐害行為の成立を否定した原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、原審の認定しない事実関係および叙上と異なる見解を前提として原判決の違法をいうものであり、採用することができない。」

(最高裁昭和45年11月19日判決)
「右代物弁済は、被上告会社の代表者らが訴外会社に倒産の気配があることを察知し、他に債権者のあることを知つていたが、自己の債権の回収を図るべく、訴外会社の代表者らに対し、債務の支払かこれに代わる商品の交付を要求し、訴外会社の代表者らは、これを拒絶していたものの、被上告会社から引き続いて強硬な要求を受け午前三時頃に及んだため、ついに疲れあきらめて、本件物件を収納してある倉庫の錠を開け、被上告会社において右物件を運び出し持ち去るに任せたというのである。原審の右認定は、原判決挙示の証拠関係(ただし、原判決の理由中に第九号証の二、第一〇、一一号証とあるのは、それぞれ甲第一号証の九の二、同号証の一〇、一一の誤記と認める。)に照らして首肯するに足りる。そうとすれば、被上告会社がその債権回収のためとつた方法は、常軌を逸したものというべきであるが、原審が、右認定事実に基づいて、訴外会社としては、右のとおり被上告会社に本件物件を譲渡すれば他の債権者を害するであろうことを認識していたといえるが、これを害することの積極的な意思のもとになしたものとは認めがたい旨説示し、右代物弁済行為とならないとした判断は、正当として是認することができる。」

(最高裁昭和46年1月26日)
「本件建物を譲渡した当時右建物にはその価額をこえる金額の債権を現実の被担保債権とする根抵当権が設定されていたから、その当時、右建物には日原治子の一般債権者の共同担保となるべき余地がなかつたものであり、したがつて、日原治子の右建物の譲渡行為は詐害行為にはならない、とした原審の判断は、正当として是認することができる。」

(最高裁昭和47年10月26日判決)
「訴外沢正久は、被上告人から新たに営業資金を借り受けるに際し、被上告人の経営する田中酒造株式会社から引き続き商品の供給を受けて営業を継続することを目的として、被上告人に対する全債務を担保するため、被上告人との間に本件各不動産につき売買予約を締結し、借受金の一部をもつて第三者に対する抵当債務を弁済して抵当権設定登記の抹消を受けたのち、右売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由したこと、沢正久は、その後約四年間営業を継続したのち、被上告人との間で、右担保の目的である本件不動産の所有権を債務全額の弁済に代え被上告人に譲渡する旨の合意をし、売買名義による右仮登記に基づく所有権移転登記を経由したことなど原審の確定した事実関係のもとにおいては、右売買予約および代物弁済契約はいずれも債権者を害する行為にあたらないとした原審の判断は、正当として是認することができる。」

(最高裁昭和49年9月20日判決)
「相続の放棄のような身分行為については、民法四二四条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。なんとなれば、右取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨げるにすぎないものを包含しないものと解するところ、相続の放棄は、相続人の意思からいつても、また法律上の効果からいつても、これを既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが、妥当である。また、相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によつてこれを強制すべきでないと解するところ、もし相続の放棄を詐害行為として取り消しうるものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、その不当であることは明らかである。」

(最高裁昭和49年12月12日判決)
「民法四二四条所定の詐害行為の受益者又は転得者の善意、悪意は、その者の認識したところによって決すべきであって、その前者の善意、悪意を承継するものではないと解すべきであり、また、受益者又は転得者から転得した者が悪意であるときは、たとえその前者が悪意であっても同条に基づく債権者の追及を免れることができないというべきである。」

(最高裁昭和52年7月12日判決)(要旨)倒産会社の支店長が、暴行を受けるなど債権者から強く要求された結果やむなく弁済したと認められる判事の事情のもとにおいては、弁済が債務者において債権者と通謀し他の債権者を害する意思でされた詐害行為にあたるとはいえない。

(最高裁昭和55年1月24日判決)
「債務者の行為が詐害行為として債権者による取消の対象となるためには、その行為が右債権者の債権の発生後にされたものであることを必要とするから、詐害行為と主張される不動産物権の譲渡行為が債権者の債権成立前にされたものである場合には、たといその登記が右債権成立後にされたときであつても、債権者において取消権を行使するに由はない(大審院大正六年(オ)第五三八号同年一〇月三〇日判決・民録二三輯一六二四頁参照)。」

(最高裁昭和58年12月19日判決)「離婚に伴い財産分与をした者が、すでに債務超過の状態にあったとしても、その分与が民法768条3項(財産分与)の趣旨に反して過大でない限り、詐害行為として取消しの対象とはならない」

(最高裁昭和63年7月19日)
「抵当権の設定されている不動産について、当該抵当権者以外の者との間にされた代物弁済予約及び譲渡担保契約が詐害行為に該当する場合において、右不動産が不可分のものであって、当該詐害行為の後に弁済等によって右抵当権設定登記等が抹消されたようなときは、その取消は、右不動産の価額から右抵当権の被担保債権額を控除した残額の限度で価格による賠償を請求する方法によるべきである。」

(最高裁平成4年2月27日判決)
「共同抵当の目的とされた数個の不動産の全部又は一部の売買契約が詐害行為に該当する場合において、当該詐害行為の後に弁済によつて右抵当権が消滅したときは、売買の目的とされた不動産の価額から右不動産が負担すべき右抵当権の被担保債権の額を控除した残額の限度で右売買契約を取り消し、その価格による賠償を命ずるべきであり、一部の不動産自体の回復を認めるべきものではない(最高裁昭和三〇年(オ)第二六〇号同三六年七月一九日大法廷判決・民集一五巻七号一八七五頁、同六一年(オ)第四九五号同六三年七月一九日第三小法廷判決・裁判集民事一五四号三六三頁参照)。
そして、この場合において、詐害行為の目的不動産の価額から控除すべき右不動産が負担すべき右抵当権の被担保債権の額は、民法三九二条の趣旨に照らし、共同抵当の目的とされた各不動産の価額に応じて抵当権の被担保債権額を案分した額(以下「割り付け額」という。)によると解するのが相当である。」

(最高裁平成元年4月13日判決)(要旨)株式会社甲は取引先の倒産等により経営状態が悪化し、商品の仕入先である乙株式会社から資金援助を受け、同時に乙は、その従業員を甲に派遣して債権管理をし、甲に対し債権を有する者が多数存することおよび甲には後記在庫商品と売掛代金債権のほかにみるべき資産がないことを知りながら、甲をして甲の乙に対する債務の弁済に代えて、在庫商品を仕入価格で乙に譲渡させ、かつ201口の売掛代金債権を乙に譲渡させ、預かっていた代表者印を使用して債権譲渡通知をする等、判示の事情のあるときは、右債権譲渡は、甲・乙が通謀してした詐害行為に当たる。

(最高裁平成10年6月12日判決)
「債務者が自己の第三者に対する債権を譲渡した場合において、債務者がこれについてした確定日付のある債権譲渡の通知は、詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。けだし、詐害行為取消権の対象となるのは、債務者の財産の減少を目的とする行為そのものであるところ、債権の譲渡行為とこれについての譲渡通知とはもとより別個の行為であって、後者は単にその時から初めて債権の移転を債務者その他の第三者に対抗し得る効果を生じさせるにすぎず、譲渡通知の時に右債権移転行為がされたこととなったり、債権移転の効果が生じたりするわけではなく、債権譲渡行為自体が詐害行為を構成しない場合には、これについてされた譲渡通知のみを切り離して詐害行為として取り扱い、これに対する詐害行為取消権の行使を認めることは相当とはいい難いからである」

(最高裁平成11年6月11日)共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。
(最高裁平成12年3月9日)「離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は詐害行為とならないが、当該配偶者が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分は慰謝料支払いの名を借りた金銭の贈与ないし対価を欠いた新たな債務負担行為であるから、詐害行為の対象となりうる」

(最高裁平成24年10月12日)「株式会社を設立する新設分割がされた場合において,新たに設立する株式会社にその債権に係る債務が承継されず,新設分割について異議を述べることもできない新設分割をする株式会社の債権者は,詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる」
以上です。

よく判例を読み込んで、自分に該当する部分がないかどうか、検討してみましょう。

といっても、実際には、弁護士に相談しないと対応は難しいでしょう。

ご相談は、こちらから。
http://www.sai-sei.biz/consult/

債務整理における司法書士の業務範囲についての最高裁判決


2016年6月29日

借金をした人の債務整理の際に、司法書士が弁護士に代わって取扱いができる金額の上限を争点とした訴訟について、最高裁判決が出たので解説します。

「債務整理、司法書士の業務可能範囲は個別債権額140万円以下 最高裁が初判断」(2016年6月27日 産経新聞)

弁護士と司法書士の債務整理業務に関する境界について争われた訴訟で、最高裁第1小法廷は、司法書士が弁護士の代わりに担当できる金額の範囲を「個別の債権額が140万円以下」とする初判断を示しました。

まずは、事の経緯を整理してみます。

・和歌山県の多重債務者らが、依頼した司法書士が業務可能な範囲を超えて違法な非弁行為を行ったとして報酬の返還や損害賠償を請求。
司法書士法が定める上限「140万円を超えない額」の解釈が争点となった。

・1審の和歌山地裁では、司法書士の業務範囲を広く見て、司法書士側の主張を採用。
司法書士側の主張は、債務の圧縮や弁済計画の変更などで、個々の業者ごとに依頼者が実際に受ける利益が140万円以下なら、債権額や請求額の総額が140万円超でも司法書士が担当可能である、というもの。

・これに対し多重債務者側は、債務整理の対象とされた全ての債権の総額又は債務者ごとにみた債権の総額が140万円を超える場合には、司法書士は担当できないと主張。
2審は司法書士側敗訴。
そこで、今回の最高裁判決では次のように指摘しています。

・司法書士法は、裁判外の紛争代理権を司法書士に認めているが、その範囲は、簡易裁判所の民事訴訟代理権に付随するものとして認められたものである。

・そうだとすると、裁判外で代理できる紛争は、簡易裁判所の民事訴訟代理権の範囲内と考えるべきである。

・複数の債権の債務整理は、最終的には個別の債権の裁判が起きる可能性があるから、代理できる範囲は債権総額ではなく、個別の債権額で判断すべきである。

・簡易裁判所の民事訴訟代理権は、個別の債権額が140万を超えるかどうかで判断される。

・司法書士が代理できる範囲は、客観的かつ明確な基準で判断されるべきである。

以上より、司法書士が裁判外で代理できる範囲は、個別の債権額が140万円を超えない場合である。

この「上限140万円」というのは、そもそもは2002(平成14)年の司法書士法の改正により規定されました。
司法書士も簡易裁判所での民事訴訟や裁判外の債務整理などについては140万円以下であれば代理人として担当することが可能になったわけです。

その後、2006(平成18)年に最高裁が「グレーゾーン金利」を違法と判断します。
すると、借金をした人がこのグレーゾーン金利で多く支払ったお金、いわゆる「過払い金」を取り戻すための請求訴訟を起こし、訴訟件数が急増しました。
そのため、弁護士と司法書士はそれぞれの解釈によって、ここまで業務を担当してきたわけです。

これまで、今回の最高裁判決とは異なる解釈で業務を行ってきた司法書士にとっては厳しい判決ですね。

現在、受任している案件も、個別の債権額が140万円を超える債務については、司法書士は業務を行うことができなくなるわけですから、解約しなければならないので、その処理も大変です。

なお、債務整理を専門家に依頼しようと考えている人は、それぞれの貸金業者からの請求額が140万円を超えるような場合には、司法書士には依頼できないので、ご注意ください。

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