幼稚園児のプール事故死で幼稚園側に損害賠償命令 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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幼稚園児のプール事故死で幼稚園側に損害賠償命令

2017年04月17日

今回は、幼稚園で起きた幼児の事故死における損害賠償訴訟について解説します。
「園児水死、幼稚園側に6300万円支払い命令 横浜地裁」(2017年4月13日 朝日新聞デジタル)

神奈川県大和市の私立大和幼稚園のプールで園児が水死した事故を巡って争われた損害賠償訴訟の判決が横浜地裁でありました。

これまでの経緯と判決内容を以下にまとめます。

・事故があったのは2011年7月、幼稚園でのプールの時間。

・死亡した男児(当時3歳)は、他の園児約30人と一緒に水深約20センチのプールで遊んでいたところ、担任教諭がビート板などの遊具の片づけ作業で目を離していた間にプール内でうつぶせになっているのが発見された。

・2014年3月、元担任教諭には業務上過失致死傷罪で罰金50万円の有罪判決。2015年3月、元園長には無罪判決が言い渡された。

・両親が、幼稚園を運営する学校法人西山学園と元園長(69)、さらに元担任(26)らに計約7400万円の損害賠償を求めて提訴。

・判決では、「事故は担任教諭の不注意に起因するところが大きい」として、元担任が園児を監視する義務(安全配慮義務)を怠ったと判断。
また、学校法人の使用者責任と元園長の代理監督者責任も認め、計約6300万円の賠償を命じた。

・両親側は、「担任以外にも、園児を常時監視する職員を配置する義務があった」などと元園長の過失も主張していたが、判決では「担任だけでも監視可能だった」として、元園長については元担任の監督者としての連帯責任を認めるにとどめ、個人としての不法行為責任は認めなかった。
通常、学校および保育所の管理下における子供の事故、災害では、学校などが加入している日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(医療費、障害・死亡見舞金)が支払われます。

「学校や保育所の管理下」とは、授業中や保育中、部活動や課外授業中、休憩時間(始業前、放課後を含む)、通学(通園)中などです。

しかし、この災害共済給付金だけでは損害賠償金額をすべて賄えないことが多いため、さらに被害者や親は学校に損害賠償請求することができます。

和解に至らず裁判になった場合、民事事件としては、担任教諭に「注意義務違反」や「安全配慮義務違反」があったかどうかが争点になってきます。

担任教諭には、次のことなどに配慮して、適切に、かつ未然に事故を防ぐ注意義務が課されます。

・授業中(保育中)や部活動自体に内在する危険の程度
・生徒(幼児)の年齢・体格・健康状態
・生徒(幼児)の技能レベル
・環境(特に屋外でのスポーツ)

担任教諭が、これらの注意義務に違反した場合、民間の学校・保育所であれば不法行為に基づく損害賠償責任が教諭個人に発生します。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
学校や保育所には、使用者として使用者責任に基づく損害賠償責任が発生します。

「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2.使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

今回は、元園長の独自の不法行為責任は否定したように読めますので、この第2項の規定によって、責任を認めたものである可能性があります。

判決文を読んでいないので、このあたりは正確ではありません。

なお、前述したように生徒の死亡や重傷事故では、学校長や担任教諭は刑事事件に問われる可能性があります。

「刑法」
第211条(業務上過失致死傷等)
1.業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
不幸な事故が繰り返されないように、学校関係者にはしっかりと法律を認識して、学校運営をしてほしいと思います。

また、示談交渉や訴訟での法的手続きは非常に難しいものですから、ケガをした本人や両親などで損害賠償請求を検討しているのであれば、まずは一度、弁護士に相談することをお勧めします。

ご相談はこちらから⇒「弁護士による学校事故SOS」
http://www.bengoshi-sos.com/school/