公道を駐車場の代わりに使うと逮捕されます | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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公道を駐車場の代わりに使うと逮捕されます

2017年07月03日

公道を駐車場代わりに使っていた男が逮捕されるという、まったくけしからん事件が起きたので解説します。

「駐車違反17回でも懲りず…市道を車庫代わりに使った疑い 堺市の21歳男逮捕 大阪府警」(2017年6月28日 産経新聞)

大阪府警南堺署などは、自宅近くの市道を車庫代わりにして繰り返し駐車をしていた堺市の建設作業員の男(21)を逮捕しました。
容疑は、車庫法違反です。

同署によると、男は6月12日から24日にかけて、堺市南区の市道で十数回、自身が所有する軽乗用車を駐車し、車庫代わりに使用。
現場の市道は男が住む府営住宅の南東約100メートルにあり、男は過去に現場付近で駐車違反を17回も繰り返していたようです。

男は他の違反分も含め、総額約50万円の反則金を滞納しており、「駐車場を借りる金がなかった」と容疑を認めているということです。

 

駐車違反に関する法律には「車庫法」と「道路交通法」があります。
ここでは、それぞれについて見ていきます。

【車庫法とは?】
「車庫法」は、正式名称を「自動車の保管場所の確保等に関する法律」といい、1962(昭和37)年に施行されています。

その目的は、次のように規定されています。

・自動車の保有者などに自動車の保管場所を確保し、道路を自動車の保管場所として使用しないよう義務づける。(第1条)
・自動車の駐車に関する規制を強化することにより、道路使用の適正化、道路における危険の防止及び道路交通の円滑化を図る。(第1条)

車庫法では、車庫の届出(車庫証明)が義務づけられており、車庫の変更にも届出が必要となります。
また、車両保管場所標章を貼るなどの規定がなされています。

道路での駐車禁止に関する条文は次のものです。

第11条(保管場所としての道路の使用の禁止等)
1.何人も、道路上の場所を自動車の保管場所として使用してはならない。
2.何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
一 自動車が道路上の同一の場所に引き続き12時間以上駐車することとなるような行為
二 自動車が夜間(日没時から日出時までの時間をいう。)に道路上の同一の場所に引き続き8時間以上駐車することとなるような行為

 

第1項に違反した場合は、3ヵ月以下の懲役又は20万円以下の罰金、第2項に違反した場合は、20万円以下の罰金に処されます。
違反点数は、それぞれ3点と2点になっています。

車庫法では、道路を駐車場の代わりに使ったり、駐車禁止の場所でなくても昼間は同じ場所に12時間以上、夜間は8時間以上駐車していると逮捕される可能性があるわけです。

 

【道路交通法の駐車禁止規定】
次に、「道路交通法」について見てみます。
道路交通法の目的は次のように規定されています。

第1条(目的)
この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。

 

駐車禁止の場所については次のようなものが規定されています。(第45条)

・道路標識や標示により駐車が禁止されている道路の部分
・人の乗降、貨物の積卸し、駐車又は自動車の格納若しくは修理のため道路外に設けられた施設又は場所の道路に接する自動車用の出入口から3メートル以内の部分
・道路工事が行なわれている場合における当該工事区域の側端から5メートル以内の部分
・消防用機械器具の置場若しくは消防用防火水槽の側端又はこれらの道路に接する出入口から5メートル以内の部分
・消火栓、指定消防水利の標識が設けられている位置又は消防用防火水槽の吸水口若しくは吸管投入孔から5メートル以内の部分
・火災報知機から1メートル以内の部分

違反点数などは次のようになっています。

・駐車禁止場所に駐停車した場合/違反1点・反則金10000円(※大型と中型の場合は12000円、バイク・原付などは6000円)
・駐停車禁止場所に駐停車した場合/違反2点・反則金12000円(※大型と中型の場合は15000円、バイク・原付などは7000円)
・駐車禁止場所に放置駐車した場合/違反2点・反則金15000円(※大型と中型の場合は21000円、バイク・原付などは9000円)
・駐停車禁止場所に放置駐車した場合/違反3点・反則金18000円(※大型と中型の場合は25000円、バイク・原付などは10000円)

 

【車庫法違反と駐車違反の違いとは?】
交通違反(違反点数3点以下)をすると、その場で警察官から「交通反則告知書」と「反則金仮納付書」を交付されます。
この交通反則告知書が、いわゆる「青キップ」と呼ばれるものです。

青キップを切られると、行政罰として反則金を支払わなければいけません。

それに対して、車庫法違反の場合は「赤キップ」を切られます。
その場合、刑事手続きにより処分が決定します。

赤キップを切られれば「略式起訴」されて「前科」がついてしまうことになります。
当然、罰金も支払わなければいけません。

また、今回の事件の容疑者のように駐車違反など交通違反を繰り返し、警察からの通告を無視し続け、出頭も罰金の支払いもしない場合は逮捕される可能性があります。

詳しい解説はこちら⇒
「軽い交通違反でも逮捕されることがあります。」
https://taniharamakoto.com/archives/2235/

「駐車違反をすると、クルマが消えます。」
https://taniharamakoto.com/archives/1338/

とにかく、警察から被疑者として出頭要請された場合は素直に出頭しなければいけないこと、公道を駐車場の代わりに使ってはいけないこと、そして駐車違反では道路交通法違反よりも車庫法違反のほうが罪は重くなることは覚えておいてほしいと思います。