ネットに書き込むことは名誉を毀損することだ | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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ネットに書き込むことは名誉を毀損することだ

2015年03月12日

恥は若者にとって名誉であり、老人には屈辱である。

これは、紀元前の古代ギリシャの哲学者、アリストテレスの言葉だそうです。

若者にとって、自分からかく恥は、確かに偉大な哲学者が言うように名誉といえるかもしれません。
しかし、他人からかかされた恥は、やはり若者にとっても屈辱でしょう。

名誉を傷つけられれば、誰だって怒り心頭になるでしょうし、人の名誉を傷つければ、それは犯罪になる可能性があります。
そんな事件が起きました。

「“彼女取られて仕返したかった”大学生 ネットに書き込み名誉毀損容疑で逮捕」(2015年3月9日 産経新聞)

女性を装って、「同じ大学に通う男性にストーカー行為をされている」とウェブサイトに書き込んだとして、札幌東署は札幌市の大学生の男(22)を名誉毀損の疑いで逮捕しました。

報道によると、男は「彼女を取られて仕返ししてやりたかった」と供述。大学生の男性の名誉を傷つけるためにウェブサイトに書き込み、顔写真を掲載したようです。

また同署は、男がかつて交際していた女性の裸の写真をインターネット上に投稿していることを確認しており、リベンジポルノに当たるとみて、私事性的画像記録の提供被害防止法違反の疑いでも捜査しているとのことです。

今回は、リベンジポルノではなく、名誉毀損について解説したいと思います。

では早速、条文を見てみましょう。

「刑法」
第230条(名誉棄損)
1.公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
公然とは、不特定または多数の人が認識し得る状態をいいます。

毀損とは、利益や体面などを損なうことですが、法律上では人の社会的評価が害される危険を生じさせることとされ、実際に社会的評価が害されることは要しないとされています。

また、条文にあるように名誉棄損罪は、事実の有無、真偽を問いません。

つまり、今回の事件では、事実無根の事実(男性がストーカーをしているかのような事実)をネット上に摘示して、不特定多数に公開し、男性の名誉を毀損したことで罪に問われた、ということになります。

ところで今回の事件、じつは見逃せないポイントがあります。
実際には、名誉棄損での逮捕というのは珍しいのですが、今回なぜ逮捕に至ったのでしょうか。

それは容疑者に、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」違反の疑いがあるからでしょう。

聞きなれない法律だと思いますが、これは通称「リベンジポルノ防止法」といわれるもので、2014年11月に成立したものです。

リベンジポルノが社会問題化している現状も踏まえ、この法律については次の機会に詳しく解説したいと思います。
では今回は、締めの言葉もアリストテレスです。

「私は敵を倒した者より、自分の欲望を克服した者を勇者と見る。
自分に勝つことこそ、もっとも難しいことだからだ」