ニュース | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 6
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 空飛ぶガメラを飼って、芸人が書類送検?

    2014年07月05日

    いじめられているカメを助けて竜宮城に行ったのは浦島太郎ですが、禁止されているカメを飼って書類送検されたのは、人気のお笑い芸人だったようです。

    「空からカミツキガメ…飼育のお笑い芸人書類送検」(2014年7月4日 読売新聞)

    性質が凶暴なことで知られるカミツキガメを無許可で飼っていたとして、警視庁は4日、お笑いコンビのメンバー(36)を特定外来生物被害防止法違反(無許可飼養)の疑いで東京地検に書類送検しました。

    報道によりますと、マンション9階の自宅から逃げたカメが歩道に落下し、通行人の女性が「カメが空から降ってきた」と交番に届け出たことで発覚。

    カミツキガメは2005年に同法で特定外来生物に指定され、飼育や輸入が規制されているが、江口容疑者は「2001年頃に通信販売で買った。許可はいらないと思った」と供述しているということです。

    空を飛ぶカメの怪獣といえば「ガメラ」ですが、目撃者の女性もまさか空からカメが降ってくるとは思いもしなかったでしょう。
    直撃しなかったのは不幸中の幸いでした。
    ちなみに、カメは甲羅が割れて瀕死の状態だったようです。

    ところで、「特定外来生物被害防止法」とはどんな法律でしょうか。条文を見てみましょう。

    「特定外来生物被害防止法」
    第4条(飼養等の禁止)
    特定外来生物は、飼養等をしてはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

    (1)次条第一項の許可を受けてその許可に係る飼養等をする場合
    (2)第三章の規定による防除に係る捕獲等その他主務省令で定めるやむを得ない事由がある場合

    第5条(飼養等の許可)
    1.学術研究の目的その他主務省令で定める目的で特定外来生物の飼養等をしようとする者は、主務大臣の許可を受けなければならない。

    特定外来生物について販売・頒布以外の目的で飼養した場合、個人には1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、法人には5,000万円以下の罰金が科せられます。

    そもそも、特定外来生物被害防止法は、日本在来の生物を捕食したり、生態系を損ねたり、人の生命・身体、農林水産業に被害を与えたりする、あるいはそうするおそれのある外来生物による被害を防止するために、飼養、栽培、保管、運搬、輸入等について規制するとともに、必要に応じて国や自治体が指定された外来生物の防除を行うことを定めた法律です。

    特定外来生物に指定されているのは、計111種類(2014年6月11日現在)。内訳は以下のようになっています。

    哺乳類25種類/オポッサム・クスクス・ハリネズミ・オナガザルなど
    爬虫類16種類/カミツキガメ・タテガミトカゲ・ナミヘビなど
    魚類14種類/イクタルルス・パイク・パーチ・サンフィッシュなど
    両生類11種類/ヒキガエル・アマガエル・アカガエルなど
    クモ・サソリ類10種類/キョクトウサソリ・ジョウゴグモなど
    その他、昆虫類8種類/植物13種類/軟体動物等5種類/鳥類4種類/甲殻類5種類など

    近年、外来生物によって日本の生態系が破壊されているという報道も目につくようになってきました。

    東京の多摩川などは、「タマゾン川」とも呼ばれるくらいアマゾン川原産の淡水魚などが増えているようです。

    秀逸なネーミングですが、ちょっとコワイです。
    (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

    また、昨年9月には、子供に人気のミドリガメを環境省が特定外来生物に指定することを検討しているとの報道もありました。

    安易に飼って、世話をしきれなくなった動物を遺棄するケースが増えているようです。

    「捨てる神あれば、拾う神あり」、ということわざもありますが、

    「捨てるカメあれば、拾うカメあり」

    ということになると、犯罪が成立することもありますので、お気をつけを~。

  • 写真撮ったら逮捕しちゃうぞ!?

    2014年07月01日

    デジタル技術の進化によって、写真撮影は以前より格段に身近なものになりました。
    今ではスマホで誰もが気軽に撮影して、写真を楽しんでいますね。

    しかし、その気軽さゆえに見知らぬ人を撮影したら犯罪になってしまった!? そんな事件が起きました。

    「女性の上半身を撮影、逮捕された町職員の供述」(2014年6月30日 読売新聞)

    神奈川県警大礒署は、大礒市内のスーパーで買い物中の40代女性の上半身をスマートフォンで撮影したとして、神奈川県中井町の職員の男(36)を現行犯逮捕しました。
    容疑は、県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)とのことです。

    報道によりますと、撮影されたことに気づいた女性が店の外に待っていた知人男性とスーパーの店長に連絡。
    容疑者の男が店外に出てきたところを知人男性が取り押さえたようです。

    男は、「女性の胸元に興味があった。撮影したことは間違いありません」と供述、容疑を認めているということです。

    以前、盗撮について解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒「法がダメなら条例で!京都府が盗撮を禁止へ」
    https://taniharamakoto.com/archives/1307

    盗撮を直接取り締まる法律が「刑法」にはないため、全国の各都道府県は「迷惑行為防止条例」を適用している、というものでした。
    しかし、今回の事件は、盗撮ではないようです。
    報道内容からだけでは詳しい状況が分かりませんが、女性が胸の写真を撮られていることに気づいたということですから、容疑者の男は堂々と正面から写真を撮っていたのでしょうか?
    それとも、気づかれていないと思いながら横から狙ったのでしょうか?
    何はともあれ、「神奈川県迷惑行為防止条例」の条文を見てみましょう。

    第3条(卑わい行為の禁止)
    1.何人も、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗っている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。

    具体的な禁止行為は、以下のようになっています。
    〇服の上から、もしくは直接人の身体に触れること
    〇人の身体や下着を見たり、映像を記録するためにカメラを設置したり人に向けること
    〇その他の卑わいな言動

    違反をすると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。

    容疑者の男は、さすがにカメラを向けることまではしなかったけれど、スマホの気軽さで女性の胸を撮影するという「卑わいな言動」をしてしまった、ということなのでしょう。

    注意してください!
    相手が羞恥や不安を感じるような状況で、スマホで安易に他人を撮影すると、それは犯罪になるかもしれませんよ。

    「相手の本心を知りたければ、相手の顔をじっと見つめることだ。」(チェスター・フィールド)

    しかし、自分の本心に忠実に、相手の胸をじっと見つめていると、逮捕されるかもしれないので、十分気をつけたいところです。

  • 自動車運転死傷行為処罰法:「逃げ得」を許さない「発覚免脱罪」が初適用!

    2014年05月28日

    5月20日に施行された新法、「自動車運転死傷行為処罰法」。
    (正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)

    悪質運転による死傷事故の罰則を強化した、全6条から成る新しい法律です。
    詳しい解説はこちら→ https://taniharamakoto.com/archives/1236

    先日のブログでは、この新法が初適用された事故について紹介しました。
    解説記事はこちら→ https://taniharamakoto.com/archives/1489

    この事故では、自動車運転死傷行為処罰法の中の「危険運転致傷」容疑での逮捕でしたが、その後、全国で新法が適用される事故が相次いで起きています。

    「無免許で飲酒運転事故=“発覚免脱”初適用、男を逮捕-福岡県警」(2014年5月27日 時事ドットコム)

    福岡県警飯塚署は27日、無免許で飲酒運転をして事故を起こした後、飲酒運転を隠すために逃走したとして、土木作業員の男(40)を自動車運転死傷行為処罰法違反(発覚免脱など)と道交法違反の疑いで逮捕した。「発覚免脱」を適用し逮捕したのは全国初。

    「飲酒運転隠す“発覚免脱”容疑を北海道内で初適用 事故で逃走の男送検 釧路署」(2014年5月27日北海道新聞)
    釧路署は26日、軽乗用車にワゴン車を追突して逃走していた会社員の男(42)を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失致傷)などの疑いで逮捕された事件で、容疑を同法違反(発覚免脱)と、道交法違反(ひき逃げ)に切り替えて送検した。道内での適用は初めて。

    2件の事故に共通する罰則は、「発覚免脱」(正式名称:過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪)です。
    アルコール又は薬物の影響下で、自動車を運転し事故を起こした場合に、事故後、アルコールまたは薬物の影響や程度が発覚するのを免れるために、さらに飲酒したり薬物を摂取したりするか、あるいは、逃げてアルコールや薬物の濃度を減少させたりして、それらの影響の有無や程度の発覚を免れるような行為をした場合に適用されます。

    これは、いわゆる「逃げ得」を許さないために規定された新しい犯罪類型です。

    逃げ得とは、たとえば、酒に酔って人身事故を起こした場合には「危険運転致死傷罪」が適用される可能性がありますが、現場から逃げて翌日逮捕されたとしても、その時には体内のアルコール濃度が減少しているため、危険運転致死傷罪が適用できず、「過失運転致死傷罪」と「道路交通法違反(ひき逃げ)」しか適用されないため刑が軽くなってしまう、という問題です。

    しかし、今回の新法適用により、その場から逃げた場合にはこの罪による最高刑12年に、ひき逃げの最高刑10年が併合され、最高18年の懲役刑を科すことが可能になったわけです。

    交通事故は、被害者とその家族、そして加害者とその家族をも不幸にしてしまいます。

    今回の「自動車運転死傷行為処罰法」の新設は、悪質な危険運転の抑止効果も期待したものですが、現実には施行後も事故が起きています。

    どのような効果が現れるかを検証するには、時間を要するものでもあります。

    今後の経過を注意深く見守っていきたいと思っています。

  • ペットを捨てても拾っても犯罪になる!?では、どうすれば!?

    2014年05月21日

    jiji43

    夏目麻衣さん(仮名 26歳)は子どもの頃から動物好きで、中でも猫が大好きでした。

    夏目さんの住むマンションではペットを飼うことは禁止されていましたが、猫好きの彼女は、拾ってきた2匹の子猫を内緒で飼っていたのです。

    ところが、ある日、管理人に見つかってしまい、管理組合からペットを飼わないよう要求されました。

    動物愛護センターに届けてしまえば、この子たちは殺処分になってしまうかもしれない……でも、もういっしょにいることはできない……

    悩んだ末、夏目さんは近所の空き地に段ボール箱を置き、その中に2匹の子猫を入れて立ち去りました。

    「ごめんね…許してね…」
    彼女の頬を涙がつたいました。

    数日後、夏目さんの部屋のチャイムが鳴りました。
    「警察ですが」
    突然、彼女の部屋に警察が踏み込んできたのです……

    「捨て猫“逃がして”で書類送検…行政担当者困惑」(2014年5月20日 読売新聞)
    愛知県動物保護管理センター知多支所の男性支所長(53)が、県警東海署の男性職員(59)に対し、同署に届けられた捨て猫を逃がすようそそのかしたとして、動物愛護管理法違反(遺棄)の教唆容疑で名古屋地検に書類送検されていたことがわかりました。

    報道によりますと、事件が起きたのは2013年10月頃。
    愛知県大府市で段ボール箱に入れられ、捨てられているメスの子猫を獣医師が発見。東海署会計課に届けました。

    男性職員が知多支所長に保護を依頼したところ、支所長は「病気やケガがなく、自力で生きていけるような場合は引き取れない」と拒否。「逃がしてください」と、猫を遺棄するようそそのかしたということです。

    そこで男性職員は、近くの畑に子猫を遺棄。支所長と同じく動物愛護管理法違反(遺棄)容疑で書類送検されたとのことです。

    猫を捨てただけで書類送検!? と思う人も多いでしょうが、じつは動物愛護に関する法律があるのです。早速、条文をみてみましょう。

    「動物の愛護及び管理に関する法律」第44条
    1.愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。

    3.愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。

    「愛護動物」は、以下のように規定されています。
    ①牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
    ②人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

    金魚など魚類は、愛護動物に含まれないんですね。

    ちなみに、動物愛護管理法の第36条(負傷動物等の発見者の通報措置)では、道路や公園などの公共の場所で病気やケガをした犬や猫、または死体を発見した者は、すみやかに通報しなければならない、とあります。

    発見者には、通報義務(努力義務)があるわけです。これは覚えておいてください。

    ところで、冒頭の夏目さんのケースですが、彼女は初め子猫2匹を拾ってきました。
    じつは、ここにも犯罪の危険性があるのです。

    法律上、ペットは「物」なので、捨て犬や捨て猫を拾ってくると刑法の「遺失物等横領罪」になるかもしれません。

    他人の物を横領した人は、1年以下の懲役、又は10万円以下の罰金、若しくは科料に処される可能性があります。

    とにかく、拾ったものは何でも自分の家に持って帰らずに、届けるようにしたほうがいいですね。

    さて、その後の報道によると今回のようなケースでは、各自治体の対応がバラバラで統一されていないという問題が露呈してきたようです。

    愛知県の大村知事のコメント
    「今回の行為は遺棄にあたるとは考えていない。職員に違法性はない」

    岐阜県生活衛生課の担当者のコメント
    「保護すれば、殺処分される可能性もある。飼い主がいるかもしれない猫をむやみに引き取るわけにはいかない」

    三重県食品安全課の担当者のコメント
    「法律で捨て犬や捨て猫の引き取り義務が明記されている以上、原則として引き取る」

    そのうえで三重県は、飼い主を探したり譲渡先を見つけたりすることに力を注いでいるということで、福岡県や神奈川県も基本的には引き取っていると説明しているようです。

    同じ行為をしても、書類送検になる場合とならない場合があるようでは行政の担当者も困ってしまうでしょう。

    また、札幌市では昨年、飼い猫をノラ猫と間違えて殺処分した例があるようです。

    管轄する環境省では、「遺棄にあたるかどうか、現実には判断が難しいケースもある。問題点があれば対処する必要を感じている」と説明しているようですが、これだけペットを飼う人が多く、また遺棄するケースが増えている現代では、法律の決まりを明確にする必要がありますね。

    少なくとも法律を執行する行政機関で見解がわかれるなど、ナンセンスと言えるでしょう。

    どこからが遺棄にあたり、どこまではあたらないのかの解釈について、環境省から通達発信することを望みます。

    いずれにしても、犬や猫を捨てるのは犯罪である、ということは憶えておきましょう。

  • 握手しただけで逮捕されるってマジですか!?

    2014年05月09日

    愛し合う恋人たちは手を握ります。
    商談が成立したビジネスパーソンも、がっちり握手をします。
    手を握るのは人としての親愛の証です。

    ところが、電車の中で握手をしただけで逮捕されてしまうという事件が起きました。

    一体、どういうことでしょうか?

    「女子高生と“握手したかった”塾経営者、電車内で右手つかみ逮捕」(2014年5月7日 スポーツ報知)

    宮崎県警えびの署は、電車内で女子高校生(16)と握手したとして、鹿児島県日置市の学習塾経営の男(34)を県迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕しました。

    報道によると、男はJR吉都線の普通列車内で女子高校生の前に座り、「高校はどこ?」、「かわいいね」、「握手しよう」などと話しかけ、断り切れずに出した女子高校生の右手をガッチリつかんだとのことです。

    驚いた生徒が背面側に座っていた知人の女子高校生に助けを求めると、その生徒も容疑者から握手を求められ、拒否した直後だったようです。

    同署は、「ほかにも同じようなケースが数件あった」としています。ちなみに、男が個人で経営している塾の生徒は数人だったということです。

    早速、今回の事件を法律的に見ていきましょう。

    「公衆に著しい迷惑をかける行為の防止に関する条例」
    (通称:宮崎県迷惑行為防止条例)
    第2条(卑わいな行為の禁止)
    何人も、道路、公園、広場、駅、興行場その他の公共の場所(以下「公共の場所」という。)又は電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、人に対し、卑わいで不安等又は著しいしゅう恥を覚えさせるような言動をしてはならない。
    これに違反した者は、6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金、常習者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。

    今回の場合、手を握ったことが「電車の中で、卑わいで不安や羞恥を覚えさせる行為」と判断されたということでしょう。

    また、他のも同じようなケースが数件あったということで、常習者と判断されたと考えられます。

    胸やお尻をさわれば犯罪だというのは、みなさんも知っているでしょうが、手を握っただけでも逮捕される可能性があることは初めて知った人も多いのではないでしょうか。

    相手が望まない形での身体の接触には注意してほしいと思います。

    ちなみに、「迷惑行為防止条例」は名称の違いはありますが、全国47都道府県すべてで施行されています。

    「法律」と「条例」の違いを訊かれることがありますが、簡単に言うと、「法律」は国が定めるルールで、「条例」は地方自治体が法令に反しない範囲で定めることができるルールということになります。

    ところで、「握手」が仕事のひとつという職業の人もいます。
    アイドルや演歌歌手、それから政治家などですね。

    選挙期間中、候補者が、なかば無理矢理握手してまわるのは犯罪か? という疑問が出てきますが、大抵の場合、「羞恥または不安を覚えさせて」はいないので、無罪ということですね。

    不安なのは、「当選するかどうか」という政治家の方ですね。

    男性は、女性の身体を触りたい衝動にかられることがあるかもしれませんが、必ずしも胸やお尻などを触る場合だけが犯罪になるのではなく、手や背中、頭などを触る場合も犯罪が成立することがある、と憶えておいてください。

    最後になぞかけです。

    恋人の心とかけまして、

    政治家の握手と解きます。

    そのココロは・・・

    どちらもガッチリとつかむことが大切です。

     

  • 鉄道事故の賠償金は、いくら?

    2014年05月01日

    2013年に厚生労働省が発表した「平成24年簡易生命表」によると、日本人男性の平均寿命は79.94歳で世界第5位、女性は86.41歳で世界第1位だそうです。

     

    寿命が延びることは、もちろんよろこばしいことですが、こちらを立てれば、あちらが立たぬというように、同時にさまざまな問題が生まれてくるのが人間社会です。健康問題も、そのひとつでしょう。

     

    昨年、厚生労働省の研究班の調査でわかったのは、65歳以上の高齢者のうち認知症の人は推計15%、約462万人。発症の可能性のある400万人も含めると、4人に1人が認知症とその予備軍だということです。

     

    認知症の症状には、記憶障害や見当識障害の他に徘徊があります。介護をする人にとっては大変な問題です。

     

    有吉佐和子の「恍惚の人」は、徘徊をはじめとして、認知症の高齢者介護の大変さが描かれたベストセラー作品です。

     

    警察庁の発表によると、2012年には認知症が原因で行方不明になったとの届け出が9607人分あり、そのうち231人は12年中に発見できず、13年に入ってから見つかったのは53人。死亡者は359人となっています。

     

    こうした問題を背景に、近年、増加する認知症高齢者の徘徊による痛ましい鉄道事故の損害賠償に関する判決が出されました。

     

    「認知症で徘徊 JR東海事故 高裁も妻に賠償命令」(東京新聞)

     

    愛知県大府市で2007年12月、徘徊症状がある認知症の男性(91)がJR東海の電車にはねられ死亡する事故が発生。

     

    同社が遺族に対して損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は、「見守りを怠った」などとして、男性の妻(91)に359万円の支払いを命じました。

     

    認知症で、要介護4の認定を受けていた男性は、妻と近所に住む長男の妻が少し目を離した隙に家を出て徘徊。JRの駅構内に進入して電車にはねられたようです。

     

    昨年の一審判決では、妻と長男(61)にJR側の請求通り720万円の支払いを認定。

     

    しかし、二審では「JR側の駅利用客への監視が十分で、ホームのフェンス扉が施錠されていれば事故を防げたと推認される事情もある」、「妻は、男性の監督義務者の地位にあり行動把握の必要があった」とした上で、「男性が線路に入り込むことまで妻が具体的に予見するのは困難」として減額しました。

     

    一審判決の後、介護関係者などからは、「認知症患者の閉じ込めになる」などの批判が続出。

     

    二審の判決後、遺族側の代理人は、「高齢ながら、できる限り介護をしていた妻に責任があるとされたのは残念。不備があれば責任を問われることはあり得るのだろうが、家族が常に責任と隣り合わせになれば在宅介護は立ちゆかなくなってしまう」とのコメントを発表しました。

     

    価値観の問題や在宅介護の政策の問題は別として、今回の判決は、法律的に見ていくと、どのような判断だったのでしょうか? 条文から解説していきます。

     

    報道からだけでは詳細は分かりませんが、民法709条の「不法行為に基づく損害賠償請求」、あるいは民法714条の「責任無能力者の監督義務者の責任」を適用したものと考えられます。

     

    「民法」第709条(不法行為による損害賠償)

    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

     

     

    「民法」第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)

    1.前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

     

     

    第714条では、自分の行為の是非善悪の判断ができない者(責任無能力者)を監督する法定の義務ある者の不法行為責任を定めています。

     

    今回の事故で亡くなった認知症老人に成年後見人がついていれば「法定の義務ある者」となりますが、そうでなければ、本件は第714条の問題ではなく、第709条の問題となります。

    第709条では、認知症老人の監督は法律上当然に認められる監督義務ではなく、条理などにより認められる義務となります。

     

    同居して生活の世話をしていた妻が、夫を放置しておくと、一人で外出徘徊し、今回のような事故を起こすことが予見できたのに、これを回避しなかったために「過失」の責任を問われた、という判断になったと考えられます。

    ちなみに、同様の事故では家族らが支払いに応じるなどして和解する事例が多く、訴訟に至るのは珍しいケースだということです。

    ところで、国土交通省の発表によると、平成24年度に発生した鉄道事故は811件あり、そのうち死亡者数は295人。この中には認知症の人以外に自殺者も含まれているでしょう。

    事故が起きると、鉄道各社は通常、走らせるべき電車を走らせることができなくなったために被った損害、たとえば乗車券や定期券の払い戻し代、振替輸送の費用、乗客対応の人件費などを合わせた損害額を本人や家族側に請求します。場合によっては、列車の運休による機会損失費、設備の修理費などが含まれることもあります。

    列車に飛び込み自殺をすると、数億円の請求がくる、という都市伝説がありますが、今回は、720万円。地方都市での一応の目安にはなるでしょう。

    大都市圏で乗客数が多いと、賠償額が数千万円に跳ね上がることが予想されます。

    ところで、本人が亡くなっている場合は、その相続人(家族や親族等)が負債を相続することになります。

    つまり、自殺をすると、残された親族が多額の賠償請求をされる可能性があるわけです。

    自殺は、残された大切な家族にも多大な迷惑をかけてしまうことを考えれば、けっして自己決定だけの問題ではありません。

    人生においては、誰しも試練にさらされることがあります。しかし、自殺は何の問題解決にもなりません。家族の人生を不幸に変えてしまうだけです。

    最後に、ドイツの哲学者・思想家である、アルトゥル・ショーペンハウアーの言葉を紹介します。

    「船というのは、荷物をたくさん積んでいないと不安定でうまく進めない。同じように人生も、心配や苦痛、苦労を背負っている方がうまく進めるものである」

    「自分の幸せを数えたら、あなたはすぐに幸せになれる」

     

    今日は、あなたがこれまでに経験した幸せの数、今、ある幸せの数を数えて過ごしてみませんか?

     

    きっと、感謝の気持ちに溢れてくることでしょう。

  • 子供のタバコ、親が刑罰!

    2014年04月26日

    今年の4月から消費税が8%に引き上げられたことで、みなさんの生活にはどんな変化が現れたでしょうか?

    もうすぐゴールデンウィークというのに、出費を控えるという人もいるかもしれません。

    出費がかさむから、タバコをやめっちゃったという人もいるでしょう。

    日本たばこ産業株式会社(JT)の「全国喫煙者率調査」によると、男性の成人喫煙率はピーク時の昭和41年の83.7%から、平成25年には32.2%まで低下しているということです。

    単純計算で考えると、この47年間で100人中、50人以上がタバコをやめたということになります。

    ところが反対に、人数がこの10年で70倍にも急増してしまったタバコに関するデータがあります。

    一体、タバコの何のデータでしょうか?

    「子どもの喫煙、黙認は罪 親や店員の書類送検1259人」(2014年4月17日 朝日デジタル)

    報道によると、2013年に子供の喫煙やタバコの購入を止めず、未成年者喫煙禁止法違反容疑で書類送検された大人は1259人で、10年前の70倍にのぼったことが警察庁のまとめで分かったということです。

    今年1月下旬、書類送検された神奈川県鎌倉市の会社員男性(45)と妻(47)は、高校生の長男(17)が中3の夏ごろから家のベランダなどでタバコを吸い始め、初めは注意したが、聞き入れないので「心が折れてしまった」と供述。

    長男は「自分のタバコで親が罰せられるとは思わなかった」と話したといいいます

    また、送検された親の中には、「どうせやめられないし、仕方がない」と息子にタバコをあげていた母親もいたということです。

    警察庁は、喫煙への社会の目が厳しくなり、対面販売した業者や喫煙を黙認する親の取り締まりも厳しくなったとしています。

    未成年者の喫煙と飲酒については、過去記事でも取り上げましたが、
    https://taniharamakoto.com/archives/1314
    ここで、もう一度簡単に説明しておきます。

    未成年者の喫煙と飲酒については、それぞれ、「未成年者喫煙禁止法」と「未成年者飲酒禁止法」という法律で禁じられています。

    「未成年者喫煙禁止法」
    ①20歳未満はタバコを吸ってはいけない。
    ②親権を行う者、あるいは親権を行う者に代わって未成年者を監督する者が、未成年者がタバコを吸っていることを知って止めないときは、1万円未満の科料に処す。
    ③販売者はタバコを売る時に年齢を確認することとし、未成年者と知って売った時は、罰金50万円以下。

    「未成年者飲酒禁止法」も、ほぼ同様の内容になっています。

    ここで注意しなければいけないのは、タバコを吸ったり、お酒を飲んだりした未成年者本人は罰せられず、親や監督者、販売した業者が罰せられるということです。

    20歳以上の成人のみなさんは、ぜひこの法律を覚えて未成年者にはタバコもお酒も与えないようにしてください。

    そうでないと、あなたが罰せられることになるかもしれません。

    ちなみに、奈良女子大学の調査では、家族がタバコを吸い続ける家の子供の禁煙成功率は1割ですが、吸わない家の子供の成功率は9割だそうです。

    子は、親の背中を見て育つのですね。

    禁煙したくても今までやめられなかった方、自分のためにやめられないとしても、子供ためにやめることはできるのでは?

    先ほどの調査結果、家族がタバコを吸わない家の子供の禁煙成功率は9割です。

    今こそ親の責任を果たすべきではないでしょうか。

    最後になぞかけです。

    「人の噂」とかけまして、

    「タバコ」と解きます。

    そのココロは?

    どちらも、火のないところに煙はたちません!

  • 女性に「そんなに若いの?」で、逮捕!

    2014年04月10日


    幕末の貧しい農民で、苦労しながらも成功をつかんだ二宮金治郎(尊徳)さんは、少し前まで日本人の勤勉の象徴だった時代がありました。

    子供の頃から、薪を担ぎながら読書をしていたという金治郎さんの銅像を、一度は見た人も多いでしょう。

    その金治郎さんには、さまざまな逸話がありますが、なかにはこんなものもあるそうです。

    「子供の頃、わらじを編んで金を稼ぎ、父のために酒を買った」

    2つの反応があるでしょう。

    「なんて親孝行な子だ!」

    「なんてひどい父親だ!自分の酒のために子を働かせるなんて!」

    あるいは、

    「ふーん」

    かもしれません。

    一つの事実のどの面を見るかに人間性が出ます。

    ところで、12歳なのに夜の街で働いた少女は、働き者なのか悪い子なのか?

    それとも親が悪いのか?

    あるいは、「ふーん」なのか?

    という事件がありました。

    「小6女児接客させた疑い ガールズバー店長再逮捕」(2014年3月31日 産経デジタル)

    埼玉県警川越署は、小学6年の少女(12)をガールズバーで働かせたとして、飲食業の男(28)を児童福祉法違反の疑いで再逮捕しました。

    報道によりますと、男は、市内のガールズバーで店長をしていた2~3月にかけて、無料通信アプリ「LINE」で従業員募集を知ったとみられる少女に接客させた疑いとのことです。

    男は、「18歳未満かもしれないと思っていたが、そんなに若いとは思わなかった」と容疑を一部否認。少女は身長が比較的高く、小学校に通っていたようです。

    店には多い時で少女を含め計6人の女性従業員が在籍しており、容疑者の男は、18歳未満と知りながら無職の女性(17)を働かせたとして、すでに風営法違反容疑でも逮捕されていたということです。

    早速、「児童福祉法」の条文から見ていきましょう。

    「児童福祉法」第1条
    1.すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。
    2.すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。

    さて、「児童」とは何歳のことをいうのでしょうか?

    第4条
    この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。

    1.乳児 満一歳に満たない者
    2.幼児 満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者
    3.少年 小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者

    では今回、どの要件に違反したのでしょうか?

    第34条
    何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

    5.満十五歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為

    飲食店の経営者などは注意してください!

    酒の席で児童に接客させると、3年以下の懲役または100円以下の罰金、あるいはこれらを同時に科されます。(第60条2項)

    ちなみに、「風営法」では風俗営業で18歳未満の者に客の接待をさせたり、客の相手になってダンスをさせること、午後10時~翌日の日の出時までの時間に客に接する(接待しなくても)業務に従事させること、営業所に立ち入らせること、などが禁止されています。

    さらには、労働基準法でも未成年者の雇用に関して規制があります。(第61条)

    18歳未満が疑われる時は、必ず身分証明書を提出させ、年齢確認をする必要があります。そうでないと、逮捕される可能性がありますよ。

    「そんなに若いと思わなかった……」は通用しないということです。

    女性に年齢を聞くのは失礼だ、と言いますが、少なくとも従業員として雇用する場合には失礼を承知で聞く義務がある、ということですね。

    身分証明書を提示させ、それをコピーして保存しておく必要があります。

    さて、

    ガールズバーの女性従業員とかけまして、

    最近の裁判の傾向、と解きます。

    そのココロは・・・・

    「わかい」(若い、和解)が人気です!

  • SNSでのストーカー行為は犯罪にならない!?

    2014年03月31日


    近年、無料通信アプリの「LINE(ライン)」が人気です。昨年の11月末には、「世界で利用者数が3億人を突破」という報道がありました。

    確かに、通信キャリアや端末が違う人同士が複数人のグループで通話やチャットができるのは便利だし、パケット通信料の定額サービスなどに加入していれば通話料金もかからず無制限に使えるのも魅力です。

    しかし、気軽にコミュニケーションが取れることからの反動で犯罪に使われる危険性が指摘され、小学生を含めた未成年の使用についても社会的に問題になってきています。

    これは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)全般に言えることですが、法律的な側面から見ていくと、まだまだ抜け穴が多く、さまざまな問題が起こっています。

    「ストーカー行為:“また男か”…規制できぬSNS」(2014年3月25日 毎日新聞)

    新聞報道によると、LINEなどのSNSを使ったメッセージの連続送信などの「ストーカー行為」や「つきまとい行為」は法規制の対象外であるため摘発できず、捜査の現場から「法が社会の実態に追いついていない」との声が上がっていると伝えています。

    今年2月、警視庁田無署は無職の男(26)が携帯電話から元交際相手の女性(23)に計2日間に、それぞれ1,589件と1,660件ものメッセージを送信したということです。

    女性からの110番を受けた同署は、まず女性の携帯電話の履歴から男が、「また男か」「シカト?」などの文言をLINEで繰り返し送信していたことを確認。

    しかし、文言には法で禁じている「つきまとい行為」に明確に該当するものが見当たらなかったことから、最終的には男が女性の頭を携帯電話で殴ったなどとする事案に着目し、暴行容疑で逮捕したということです。

    ところで、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(通称、ストーカー規制法)というものがあるのをご存じでしょうか?

    これは、1999(平成11)年に起きた「桶川ストーカー殺人事件」をきっかけに制定された法律で、「つきまとい行為」と「ストーカー行為」について以下のように定義しています。

    第2条(定義)
    1.この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

    ①待ち伏せ、尾行、および自宅や勤務先を見張り、押しかけること。
    ②行動を監視していると告げる行為
    ③面会や交際、その他義務のないことを行うことの要求
    ④著しく粗野、乱暴な言動
    ⑤無言電話、連続した電話・FAX・電子メール
    ⑥汚物・動物の死体等の送付
    ⑦名誉を害する事項の告知
    ⑧性的羞恥心を侵害する事項の告知、わいせつな写真・文章などの送付、公表

    上記の行為を反復して行う時、ストーカー行為となります。

    どれも、されたら嫌なものばかりですが、①~④に関しては「身体の安全、住居などの平穏、名誉が害され」「行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る」とされています。

    ちなみに、ストーカー行為は親告罪(被害者の告訴があってはじめて起訴できる)で、罰則は6ヵ月以下の懲役、または50万円以下の罰金です。

    ところで、⑤には2013年の法改正により電子メールが追加で規定されることになりましたが、LINEやツイッターなどのSNSは依然として対象外となっていて、ここが問題視され始めているということです。

    つまり、今回の事件のように他の容疑が適用できればいいのですが、そうではない場合、被害者は危険にさらされ続ける可能性があるわけです。

    SNSがこれほど普及した時代には、これは大きな問題でしょう。

    若者世代では、電子メールで連絡と取り合うより、LINEで連絡を取り合うことの方が多いのではないでしょうか。

    「時代の流れに合っていない」「法が社会の実態に追いついていない」という声が上がるのも当然のことです。

    折しも先日、神奈川県では県の「迷惑行為防止条例」において、執拗なメールとSNS上のメッセージを、「つきまといなどの禁止」の対象に加える改正案が全会一致で可決されました。

    「SNSも“つきまとい” 迷惑行為防止の県条例改正案を可決」
    (2014年3月25日 神奈川新聞)
    報道によれば、神奈川県の迷惑行為防止条例には、現行の「待ち伏せや押し掛けなどの直接的な行為」と「連続した電話やファクス」に、今回「メールとSNSのメッセージの複数回にわたる送信」を追加。さらに、「改正ストーカー規制法」では、つきまといを恋愛感情などに基づく行為と規定しているところを、前提を設けず、柔軟に対応できるようにしたということです。
    「逗子ストーカー殺人事件」は神奈川県で起きたわけですから、県として規制の強化にいち早く着手したのは評価できる対応でしょう。

    国も法改正に向けて、早急に動くべきだと思います。

    各省庁が、特にインターネットの技術革新や進歩に合わせて法改正を迅速に検討する専門職員を配置することを検討してもよいのではないでしょうか。

    たとえば、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」や「特定商取引法」などの規制に、SNSを盛り込んだ方が良いかどうか、この機会に検討されてもよいように思います。

    技術の革新や進歩が起これば、同時に問題、弊害が起こるというのは世の常、ともいえます。

    最近、話題になったビットコインの問題などもそうですが、時代の変化に合わせて、法律もまた変化、進化していくものです。

    我われ弁護士も絶えず進化、進歩していくために、日々勉強、努力して、法を社会の隅々にまで浸透させていかなければならないと感じています。

  • 線路を自動車が走ると・・・

    2014年03月28日


    線路の上を走るのは……電車ですよね。それは幼稚園児でも知っています。

    ところが先日、男性が線路上で自動車を走らせるという驚くべき事件が起きました。

    一体、どういうことでしょうか? ニュースから見ていきましょう。

    「軽乗用車が線路を300m走行 男性飲酒運転も道交法適用できず」(2014年3月24日 京都新聞)

    3月23日午前4時半ごろ、滋賀県大津市の京阪電鉄石山坂本線の線路内で、軽乗用車を押している男性を通行人が発見。大津署に通報しました。

    同署によると、男性(43)の呼気から基準値以上のアルコールが検出。現場となった浜大津駅は通常の線路と路面電車の線路が交差する場所で、男性は同駅付近の道路から線路に侵入し、約300m走行して止まったとみているようですが、男性は「覚えていない」と供述しているようです。

    同署は、「線路内は道交法の飲酒運転が適用できない」としており、線路進入以前の路上での飲酒運転容疑で調べる方針とのことです。
    なお、車の撤去のため始発の上下計2本が最大約8分遅れた模様です。

    線路内では、「道路交通法」の飲酒運転が適用できないため、男性は線路に進入する前に道路交通法上の道路を飲酒運転したはずだから、そこで検挙しようということですね。

    法律も、「自動車が線路内を走る場合は、飲酒運転をしてはならない」などとは初めから禁止しません。

    想定外ということですね。

    道路交通法は、あくまでも道路における安全や円滑な進行などを守るための法律ですから、線路内のことは想定されていないわけですね。

    ところで、いわゆる「飲酒運転」には、「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2つがあります。

    「酒酔い運転」とは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態、と定義されます。
    罰則は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金。
    違反点数は、35点で免許取り消しとなり、3年間は免許取得不可となります。

    「酒気帯び運転」とは、たとえ正常な運転ができたとしても、基準値以上のアルコールを帯びて運転することです。
    罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金。
    違反点数は、呼気1リットル中のアルコール濃度が、0.15mg以上、0.25mg未満の場合の違反点数が13点。0.25mg以上の場合は25点となっています。

    ちなみに、飲酒検知を拒否した場合、「3ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」になりますので注意してください。

    ところで、電車の運行を遅らせてしまった場合、賠償の問題が出てきます。

    鉄道会社としては、走らせるべき電車を走らせることができなかったために被った損害、たとえば乗車券や定期券の払い戻し代、振替輸送代、乗客対応の人件費などを賠償請求することができます。

    駅設備や車両が被害を受けた場合は、修理代や清掃代などを損害賠償金として請求することができます。

    ある意味、都市伝説化していますが、電車への飛び込み自殺では遺族が莫大な損害賠償金を請求されるという話を噂として聞いたことがある人もいるでしょう。

    実際、本人が亡くなっている場合は賠償金を支払えないので、その相続人(家族や親族等)が負債を相続することになります。

    自殺をすると、残された親族に多額の賠償請求がなされる可能性がある、ということです。

    今回は適用されていませんが、電車の運行を故意に邪魔しようとして線路内で自動車を走らせた場合は、「威力業務妨害罪」に問われる可能性があります。

    さらには、鉄道関係ではこんな刑罰もあります。さすがの鉄道オタクの人も、これは知らないのではないでしょうか?

    「刑法」第125条(往来危険)
    1.鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、2年以上の有期懲役に処する。

    第126条(汽車転覆及び同致死)
    1.現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。

    最高刑は「無期」です。

    いたずら心で線路に石を置いたりすると、大変なことになります。

    さて今回の事件では、鉄道会社は男性に対して損害賠償請求をするでしょうか?

    始発前の時間帯であり、上下2本の電車の遅延が約8分ということから考えれば、おそらく今回は、損害賠償請求はしないのではないかと考えられます。

    今回の事件は、負傷者も死者も出なくて不幸中の幸いでした。

    いずれにしても、お酒は人間の理性をなくしてしまうことがあります。

    理性のついでに命までなくさないよう、節度を保って楽しむようにしたいものです。