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  • 自転車ひき逃げで書類送検

    2015年04月21日

    自転車でぶつかっただけ、では、済まない時代になりました。

    「“自転車の事故はお互いさまでは…”自転車ひき逃げの19歳女子大生を書類送検」(2015年4月17日 産経新聞)

    大阪府警高石署は、自転車同士の衝突事故で相手にケガを負わせたにも関わらず、そのまま走り去ったとして、府内の女子大生(19)を重過失傷害と道路交通法違反(ひき逃げ)の容疑で書類送検しました。

    事故が起きたのは2015年1月26日午前10時すぎ。
    女子大生が市道交差点を自転車で走行中、パートの女性(57)の自転車と衝突。
    女性を転倒させ、右足首を骨折させたのに救護措置を取らずに逃走したようです。

    女子大生は、テレビで事故のニュースを見た家族に付き添われ、事故当夜に自首。

    「通学で急いでいた」、「自転車の事故なのでお互いさまと思って立ち去ってしまった」と話しているということです。

    怪我をさせれば、損害賠償義務を負います。

    ところで、今回の事故は、刑事事件での書類送検です。
    ポイントは、大きく4点あります。

    1.道路交通法の「救護義務違反」=ひき逃げとは?
    事故を起こした場合、以下の措置等を取らなければいけません。(第72条)
    ①車両の運転者と同乗者は、ただちに運転を停止する。
    ②負傷者を救護する。
    ③道路での危険を防止するなど必要な措置を取る。
    ④警察官に、事故発生の日時、場所、死傷者の数、負傷の程度等を報告する。
    ⑤警察官が現場に到着するまで現場に留まる。

    これらを怠ると、「ひき逃げ」という犯罪になりますので注意してください。

    詳しい解説はこちら⇒「軽傷のひき逃げで懲役15年!?」

    軽傷のひき逃げで懲役15年!?


    2.自転車も「車両」の一種
    道路交通法では、自転車は車両の一種である「軽車両」です。
    当然、自転車の事故も犯罪になるので注意してください。

    ただし、自動車と自転車では刑罰に違いがあります。
    自動車で、ひき逃げをして、被害者を死傷させた場合は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第117条2項)

    自転車の場合は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます。(第117条の5)
    3.重過失傷害罪とは?
    「重過失傷害罪」とは、過失致傷に重過失、つまり重大な過失により人にケガをさせた罪です。
    「注意義務違反」の程度が著しいことをいいます。

    自転車の運転で重過失があった場合には、この規定が適用されます。

    法定刑は、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金です。

    4.書類送検とは?
    テレビや新聞などのメディアで「書類送検」という言葉を見かけますが、逮捕と何が違うのでしょうか?

    書類送検とは、刑事事件の手続きにおいて被疑者を逮捕せずに、または逮捕後保釈してから身柄を拘束せずに事件を検察官送致することです。
    被疑者の逮捕や拘留の必要がない場合や、送致以前に被疑者が死亡した場合などで行われます。

    今回の事故の場合、被疑者である女子大生は家族に付き添われて自首したということで、逃亡する可能性も低いために書類送検になったのだと思います。

    近年、自転車による重大事故が増えています。

    警察庁が公表している統計資料「平成26年中の交通事故の発生状況」によると、自転車関連の事故は10万9,269件で、交通事故全体に占める割合は約2割です。
    また、自転車同士の事故は2,865件起きていて、そのうち2件が死亡事故となっています。

    こうした事態を受けて、自転車による交通事故も厳罰化の方向に向かっています。
    詳しい解説はこちら⇒「自転車の危険運転に安全講習義務づけに」
    https://taniharamakoto.com/archives/1854
    報道内容からだけでは詳しい状況がわかりませんが、事故を起こして相手がケガをしたにも関わらず、「お互いさまと思った」という女子大生の感覚は、交通事故の危険性、重大性を理解していない浅はかで軽率なものと言わざるを得ないでしょう。

    自転車は気軽で日常使いだからといって、けっして他人事と軽くとらえずに、細心の注意を払って運転してほしいと思います。

  • 子供が起こした事故は誰の責任? 最高裁判決

    2015年04月12日

    子供が起こしてしまった問題については、当然、親が責任を取るべきという認識が一般的でしょう。

    同級生をいじめた、お店の商品を万引きした、他の子供にケガをさせてしまった…そんな場合では、親が相手方や関係者に謝罪をするということが行われます。

    では、子供が故意ではなく行った行為によって死者が出てしまった場合はどうでしょうか。
    その責任は誰が取るべきなのか? どこまで親が負うべきなのか? 被害者や遺族の補償は誰がするべきなのか? という問題が出てきます。

    そうした裁判で、最高裁が初めてとなる判断をしました。

    「小6蹴ったボールよけ死亡、両親の監督責任なし」(2015年4月9日 読売新聞)

    子供が起こした事故が原因で男性が死亡したとして、その遺族が子供の両親に損害賠償を求めた訴訟の上告審が2015年4月9日、最高裁でありました。

    最高裁は、「通常は危険がない行為で偶然損害を生じさせた場合、具体的に予見可能だったなどの特別な事情が認められない限り、原則として親の監督責任は問われない」との初判断を示しました。

    そのうえで、1、2審の賠償命令を破棄し、遺族側の請求を棄却する判決を言い渡したことで両親側の逆転勝訴が確定しました。

    事故が起きたのは2004年2月。
    場所は、愛媛県今治市の市立小学校の校庭と隣接する道路。

    放課後に子供たちがサッカーで遊んでいた際、小6男児(当時11歳)がフリーキックの練習で蹴ったボールが、ゴールを越え、さらに高さ1・3メートルの門扉を越えて道路に転がり出たところ、これを避けようとしたオートバイの男性(当時85歳)が転倒し、足の骨折などで入院。
    その直後から痴呆の症状を発症し、約1年4ヵ月後に肺炎で死亡したというものです。

    1審・大阪地裁、2審・大阪高裁はともに、男児に過失があったと認める一方、11歳だったことから責任能力はないと判断。

    2審判決では、親の監督責任について、「校庭ならどう遊んでもいいわけではなく、それを男児に理解させなかった点で両親は義務を尽くしていない」として、両親に約1180万円の賠償を命じていました。

    今回の裁判では、これを前提に、親の監督責任の有無が争点となっていました。

    判決での指摘、内容は次のとおりです。

    「男児の行為について」
    ・開放された校庭で、設置されたゴールに向けてボールを蹴ったのは、校庭の日常的な使用方法だ。
    ・門とフェンス、側溝があり、ボールが道路に出るのが常態だったとも言えない。

    「親の責任について」
    ・人身に危険が及ばないように注意して行動するよう、親は子供に日頃
    ら指導監督する義務がある。
    ・しかし、今回の男児の行為については、「通常は人身に危険を及ぼす行為ではなかった」としたうえで、「両親は日頃から通常のしつけをしており、今回のような事故を具体的に予想できるような特別な事情もなかった」と監督責任を否定。

    なお、男性の遺族側は、今治市には賠償を請求していないため、訴訟では学校側の安全管理の当否は争点にならなかったようです。

    子供の両親は、「親として、少なくとも世間様と同じ程度に厳しくしつけ、教育をしてきたつもりでした…(中略)…(1、2審で)違法行為だと断じられたことは、我々親子にとって大変ショックで、自暴自棄になりかけたこともありました」と、これまでの裁判を振り返ったものの、一方、「被害者の方のことを考えると、我々の苦悩が終わることはありません」とコメントを発表したということです。
    今回の判決では、子供の行為と男性の死亡の因果関係に争いはなく、両親が監督義務を尽くしていたかが争点となっていたわけです。

    親の監督責任については以前、解説しました。
    詳しい解説はこちら
    ⇒「子供が起こした事故の高額賠償金、あなたは支払えますか?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1217

    未成年者の損害賠償責任については、その未成年者に物事の是非善悪を理解する能力がある場合には、その未成年者本人が賠償義務を負い、その能力がない場合には親などが責任を負う、とされています。

    関連する条文を見ていきましょう。

    「民法」
    第709条(不法行為による損害賠償)
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
    第712条(責任能力)
    未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
    第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
    1.前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
    今までの司法判断では、多くの事故で親の監督責任を認めてきたわけですが、今回の判決で今後の流れが変わるかもしれません。

    判決に対する意見も、さまざまあります。
    各紙報道からコメントを抜粋してみましょう。

    「放課後の学校の校庭でゴールに向かってボールを蹴ることが、法的に責められるくらい悪いことなのか、疑問がずっとぬぐえなかった。主張が認められ、ひとまず安堵しています」(少年の両親)

    「これまでの判決は、子どもの行為に対して親に過大な責任を負わせてきた。子どもの加害行為にも、いろいろな性質のものがある。それに応じて親の責任を限定する考え方を最高裁が示してくれた」(両親側の代理人弁護士)

    「予測もできない形で子供が相手にケガをさせてしまう場合がある。そこも親の責任といわれたら、子供を閉じ込めておくしかない」(東京都・主婦)

    「子供の行動はやっぱり親の責任。でも彼らは親の想像も及ばないことをする」(東京都・2児の母)

    「しばしば、サッカーボールが飛んできて壁にあたる。公園の柵には“駐車中の車が破損する被害がありました。ボールをぶつけた人は連絡を”という区の呼びかけがあった。被害にあったら誰かに責任を取ってほしいと思いますよね」(東京都・71歳男性)

    「子供は自由な発想の遊びを通じて育つ。大人の知恵と工夫で、子供の育ちをどう保障するか考えていくべきだ」(「こども学」の大学教授)
    今回の判決を受けて、子供が起こした事故については、これまでより少し判断がしやすくなったといえるでしょう。
    しかし、依然として難しい問題です。

    たとえば、けんかで相手にケガをさせた、危険な行為で自転車運転をして人に衝突したという行為と、今回のような校庭でサッカーをしていたということは同列に扱う問題ではないとも言えます

    さらに、子供の行為で両親が全責任を問われるのは酷ではあるが、その責任を否定すると、死亡した被害者と遺族は何の補償も得られない、という問題も出てきます。

    この部分のバランスをどうとっていくかは、今後の動向を見守っていく必要があるでしょう。

    また、子供を持つ親御さんは、個人賠償責任保険や自転車保険、傷害保険や自動車保険の特約などの加入も検討した方がよいでしょう。

    予防は治療に勝る、ということわざもあります。
    不測の事態に備えて、できることをしておくことは何においても重要なことだといえますね。

  • 犬を散歩させただけで、6300万円の賠償金を払う?

    2015年02月12日

    2014年2月下旬、北海道白老町の海岸で散歩中の女性が2匹の土佐犬に襲われ溺死した事件がありました。

    以前、この事件について解説しています。
    詳しい解説はこちら⇒「愛犬を散歩させたら、懲役2年6月!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1590

    被告の男(65)が、飼育する2頭の土佐犬を連れて海岸に散歩に出かけた。
    周囲を十分に確認せずに1頭の引き綱を放したところ、犬が浜辺を散歩中の主婦(当時59歳)を襲った。
    女性は、波打ち際で転倒して水死。
    男は重過失致死罪などに問われ、懲役2年6月、罰金20万円の判決を言い渡された…というものでした。

    今回、その後の民事裁判で多額の損害賠償金の支払い命令が出されたという報道がありましたので解説します。

    「犬に襲われ溺死、飼い主に6300万円賠償命令」(2015年2月6日 読売新聞)

    報道によりますと、被害者女性の夫ら遺族4人が受刑者の男を相手取り、損害賠償を求めた訴訟の判決が札幌地裁室蘭支部でありました。

    判決で裁判官は、「土佐犬が危害を加えないよう未然に防止する注意義務を怠り、死亡させた過失は重大」と認定。
    請求通り慰謝料など6300万円の支払いを命じたようです。

    被告側は訴訟で答弁書を提出せず、また遺族である夫の男性は、「刑事裁判後も私たちの心が安まるときはなかった。(判決を)妻の一周忌までには報告したかった」と話したということです。
    過去のブログでも判例を解説しましたが、犬に襲われた女性が転倒して脳挫傷で死亡した事件では、飼い主に5433万円の賠償命令が出されています。
    また、バイクを走行中の男が前方から近づいてきた中型犬を避けようとして転倒し脚を骨折した事件では、飼い主に約1500万円の損害賠償金の支払いが命じられています。

    詳しい解説はこちら⇒
    「犬も歩けば賠償金を払う」
    https://taniharamakoto.com/archives/1343

    「愛犬が隣人をかんで、損害賠償金が1,725万円!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1181
    飼い犬が起こした事件の責任は、飼い主が負うことになります。
    民事では高額な賠償金の支払いを命じられ、刑事では実刑判決を言い渡されて犯罪者になってしまう可能性があるのです。

    そして、飼い主の人に十分注意してもらいたいのは、これらの判例からもわかるように、飼い犬が起こした事件では人をかんだときだけ犯罪となり、賠償請求されるわけではないということです。

    6300万円もの賠償金を支払える人は、どれだけいるでしょう?
    もし支払えなかったら、被害者と遺族はどうやって補償してもらえばいいのでしょうか?
    愛犬が起こした事件で、犯罪者になりたい人はいるでしょうか?

    こうした致死傷罪の事件では、結局いつも、誰もが幸せにならないという後味の悪さが残ります。

    飼い主の男は、愛犬のためによかれと思ってしたであろうことの結果、1人の命がなくなるという重大な事件になってしまいました。
    被害者と遺族の無念は、とても癒されるものではないでしょう。

    すべての愛犬家やペット愛好家は、今一度、飼い犬やペット管理の徹底をすること、そして法律を学ぶことを希望します

    こうした事件、事故で2度と悲劇が繰り返されないように…。

    飢えた犬を拾って手厚く世話してやると、噛み付いてきたりはしない。それが犬と人間の主たる違いだ。 (マーク・トゥエイン)

  • 年末です。ぼったくりにご注意を!

    2014年12月07日

    今年も早いもので、もう12月。
    巷では、忘年会シーズン真っ盛りでしょう。

    ところで、お酒にまつわる失敗談や武勇伝は、誰でも1つや2つは持っているかもしれませんが、こんなのはイヤだ…という事件が頻発しています。
    夜の歓楽街は危険がいっぱい!注意が必要です。

    「キャバクラ10分で21万円 ぼったくり条例違反容疑」(2014年12月4日 朝日新聞デジタル)

    東京の新宿・歌舞伎町のキャバクラ店で、客の大学生3人に約21万5千円を支払わせたとして、新宿署は従業員の男3人を都ぼったくり防止条例違反の疑いで逮捕しました。

    事件が起きたのは10月15日、男子大学生3人がキャバクラ店に入店。
    すると、接客についたキャバクラ嬢3人が次々に飲み物を注文。

    10分ほどいて、不審に思った大学生たちが店を出ようとすると、容疑者らは「1杯6千円のワインを18杯飲んだ」として約21万5千円を請求。

    支払いを拒んだところ、同日午後11時55分から翌午前6時半ごろまで、「払うまで帰れねえからな」「バカにしてんじゃねぇよ」などと威圧し、支払わせたようです。

    調べに対し容疑者らは、「覚えていない」などと容疑を否認。
    このキャバクラ店は、今年夏頃から同様の110番通報が50件以上あったということです。

    1杯が6千円とは、一体どんな銘柄のビンテージワインだったのでしょうか?

    ちなみに2013年、ワイン生産400年の歴史の中でも極上のビンテージワインとの誉れ高い2009年のシャトー・マルゴーが史上最高となる1本19万5千ドル(当時のレートで約1900万円)で売り出された
    というニュースがありました。
    ワイングラス1杯換算で、約24万円だったそうです!

    いえいえ、そんなワインマニアの世界の話ではないですね。
    大学生たちは、「飲み放題1人1時間2500円」と言われて入店したようなので、これは完全な「ぼったくり」ですから犯罪です。

    さて、今回適用された、その名も「ぼったくり防止条例」は、各地方自治体が定める条例で、都道府県公安委員会が指定する地域で営業されている飲食店や性風俗営業における「料金等の表示義務」「不当な勧誘等の禁止」「不当な取立ての禁止」について規定したものです。

    2000年に東京都が初めて制定し、その後、北海道、宮城県、新潟県、大阪府、広島県、福岡県などで施行されています。

    東京都の条例の正式名称は、「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」といいます。
    47文字もあるので、長すぎて1回では覚えられないですが、今回問題になったのは以下の部分です。

    〇料金や違約金などは、店内で客に見やすいように表示しなければならない。(第3条1項の一)
    〇不当に勧誘してはいけない。(第4条1項)
    〇実際の料金よりも著しく安い金額を告げたり表示したりしてはいけない。(第4条1項の一)
    〇客に対して乱暴な言動で料金や違約金を取り立ててはいけない。(第4条2項)

    違反した場合は、6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。

    別の報道によると、今年の夏以降、歌舞伎町ではぼったくり被害が急増していて、実際、高額請求の相談だけでも400件を超え、新宿署は12月4日までに延べ19人を逮捕しているようです。
    年末の宴会シーズンに向け被害が拡大する恐れがあるとして、同署はパトロールを強化していくということです。

    お酒の席では、もてなす方も、もてなされる方も、お互い気持ちよく楽しくいきたいものですが、よからぬことを企てる者は後を絶ちません。

    もちろん、ぼったくりは犯罪ですが、お酒に関しては、まずは「自衛」、「自制」することも大切ですね。

    お酒を悪用した者は、人を欺き、法の裁きを受けます。
    酒に溺れた者は、自分を欺き、結局最後に自分を裁くのは自分かも知れません。

    後悔のないように、節度を守って、お酒を楽しみたいものです。

    「私は人生を忘れるために酒を飲んだことは一度もありません。
    逆に人生を加速させるためなのです。
    ただ加速しすぎると、カーブを曲がりそこねます」
    (フランソワーズ・サガン/フランスの小説家、脚本家)

  • スパンキングは暴行罪か!?

    2014年10月31日

    スパンキングというものがあります。

    これは子供の躾や体罰として、お尻を叩くスパンキングと、それとは別に、お尻を叩くこと、叩かれることで性的興奮を感じる愛好者たちがいるスパンキングというものもあるそうです。

    人の好みは十人十色といいますから、人に迷惑をかけない範囲で楽しむのは個人の自由ですが、夫婦間の趣味的プレイなのかどうなのか?

    お尻をめぐる暴行事件が起きました。

    「中高一貫コース主任の国語教諭、妻の尻蹴り逮捕」(2014年10月27日 読売新聞)

    静岡県警焼津署は25日、私立の中高一貫校の教諭の男(44)を暴行の疑いで現行犯逮捕しました。

    報道によると、同日午後11時頃、男は同居する妻と口論となり尻を蹴ったということで、男は容疑を認めているようです。

    妻が、だらしのない、仕事をしない旦那の尻を叩いて仕事をさせる、というのは昔からよくあることで許されます。

    しかし、夫が妻の尻を蹴ったら逮捕されるのです!

    これは、気をつけなければなりませんね。

    世の中には、家庭内の暴力はある程度許されると思っている人がいるようです。

    しかし、法律的には犯罪です。

    夫婦間の暴力行為で逮捕される例が増えているように思います。

    では早速、条文から見てみましょう。

    「刑法」
    第208条(暴行)
    暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
    ここで、「暴行」と「傷害」の違いは何なのかと疑問を持つ人がいるかもしれませんが、簡単に言うと、人に対してケガに至らない暴行を加えると「暴行罪」、人を傷つけケガをさせると「傷害罪」(刑法第204条)となります。

    尻を蹴っただけだと「暴行罪」、尻にアザができたら「傷害罪」ということですね。

    ちなみに電車などで尻を触ると、迷惑防止条例や、場合によっては強制わいせつ罪となります。

    ところで以前、浮気の証拠をつかむために、配偶者のメールを盗み見るのは「不正アクセス禁止法」違反になる可能性があることを解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒「アダムとイブと不正アクセス禁止法」
    https://taniharamakoto.com/archives/1326

    「親しき仲にも礼儀あり」ということわざがあるように、夫婦だからといって超えてはいけない一線があるでしょう。
    「ほどほどに愛しなさい。長続きする恋は、そういう恋だよ」
    (シェイクスピア『ロミオとジュリエット』より)

  • アイドルとつきあって800万円の損害賠償請求!?

    2014年09月15日

    NHKの「朝の連続テレビ小説」(朝ドラ)の影響で、最近、道ならぬ恋が話題になっているようですが、アイドルとファンが、内緒でつきあっていたことが発覚して、アイドルグループの運営会社が損害賠償請求をしているという報道がありました。

    一体、何がどうなったのでしょうか?

    「アイドルと交際、ファンに損害賠償」(2014年9月12日 日刊スポーツ)

    アイドルグループ「青山☆聖ハチャメチャハイスクール」の中心メンバーだった2人が、突然、グループを脱退。
    グループの運営会社はメンバー2人とその親権者、さらには交際相手であるファン2人に対して損害賠償請求をしているようです。

    先月、都内で開催されたファンイベントで運営会社のプロデューサーは、「重大な契約違反があった。2人はファンと交際していた」などと理由を説明し、相手の実名まで暴露。
    会社は、823万2400円の損害賠償を求める内容証明書を交際相手であるファン2人に送付したということです。

    プロデューサーは、「メンバー2人の親権者は“ファンと恋愛関係にならない”“ 職場放棄をしない” などの項目が書かれた契約書にサインしていた。他のメンバーやファン全員を裏切り、許されることではない」と発言。

    また、請求額については、「2人は契約が1年残っていた。稼ぐはずだったであろう収益と、処分することになったグッズ、慰謝料などを含めた金額」と説明。
    提訴も含めた今後の対応は検討中、としているようです。

    一方、ファン側も弁護士を雇う意思を見せている、ということです。

    今回は、アイドルとファンに請求は別に考えなければなりません。

    まず、契約であと1年間の活動期間があるにもかかわらず、正当な理由なくアイドルが脱退した、ということであれば、アイドルには損害賠償責任が発生する可能性があります。

    運営会社は、活動計画をたて、プロモーション活動に投資をし、アイドルがその後活動することによって投資を回収するものですから、正当な理由のない脱退は許されるものではありません。

    しかし、交際を理由として、運営会社側から契約解除したのであれば、法的に見ると、無理がある請求だと思います。

    まず、アイドルと運営会社の契約で交際禁止規定があるそうですが、交際は、本人の「精神的自由」と「行動の自由」、そして「婚姻の自由」に関わるものであり、「基本的人権にかかわる自由」です。

    よって、この契約は本人の自由意思が最大限尊重されるべき事項に制限を加えるものであって、当然に有効、というわけではなく、その有効性は限定的に解釈されることになります。(クラブ従業員とコンサルタントの関係につき、東京地裁平成22年10月15日判決)

    確かに、アイドルがファンと交際することで、人気が落ちることはあり得ることなので、ただちに禁止規定が無効とは言えないでしょう。

    しかし、人気が落ちるのは、ファンであっても、ファンでなくても同じですね。

    ファンと交際しても広く知られることとならなければ人気に影響することはなく、アイドルと運営会社との関係を破壊するほどの事由にはならず、契約解除までは認められないものと考えます。

    したがって、運営会社側が交際を理由に一方的に契約解除をしたのであれば、その契約解除は無効であり、損害賠償も認められないでしょう。

    次に、今回、ファンの2人にも損害賠償を求めていますが、ファンは運営会社と契約関係になく、「交際しない義務」を負っていませんから、アイドルを無理矢理脱退させた、などの悪質な事情がない限り、損害賠償は認められないと思われます。

    ファンの側としては、びっくりですね。

    また、交際相手であるファン2人も弁護士をつける意思があるようなので、実名を暴露したことが、交際相手の「プライバシーの侵害」として、逆に運営会社が損害賠償請求を受ける結果となる可能性もあります。

    アイドルやタレントは、私生活を切り売りすることがあるといっても、私人のプライバシーを暴くことに関しては、慎重な対応が求められるところです。

  • 放火は殺人より罪が重い!という都市伝説の真相は!?【放火罪】

    2014年09月08日

    「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があります。

    徳川幕府の江戸時代、江戸の町は木造家屋の密集地域のため火事が起きると延焼しやすく、たびたび大火事になることがありました。

    そうした現場での「火消し」たちの活躍が華々しかったことと、江戸っ子は気が早く、派手な喧嘩がよく起きたことから、こう言われたといいます。

    「粋(いき)」をよしとする江戸っ子たちの美意識や遊び心が感じられる言葉ですが、実際の火事の現場では華などとはいっていられません。

    人命に関わる可能性が高いのですから、地域住民たちの不安や心配は大きいでしょう。

    「一晩に不審火20件、埼玉の2市で…同一犯か」(2014年8月29日読売新聞)

    28日の夜から29日未明にかけて、埼玉県ふじみ野市と川越市で民家の自転車やゴミなどが焼けるぼやが合計で20件も発生しました。

    報道によると、28日午後10時半頃、ふじみ野市の住宅で自転車のかごに入っていたゴミが燃えてから、29日午前0時50分頃までに半径1.2キロ内で15件のぼやが発生。

    さらに、同1時5分頃には川越市の民家でゴミが燃えるなど、1時間に市内で5件のぼやがあったということです。

    いずれの現場も火の気はなく、住民が消し止め、ケガ人はなかったようですが、埼玉県では近隣の富士見市と三芳町でも16日から17日にかけて、19件の不審火が発生していることから、県警は関連を調べているようです。
    歴史上、有名な放火事件といえば、三島由紀夫の小説『金閣寺』のモデルになった「金閣寺放火事件」(1950年)や、井原西鶴の浮世草子『好色五人女』(1686年)の中に収録されている「八百屋お七」の放火事件などがあります。

    恋人に会いたい一心で放火事件を起こした八百屋の娘・お七は、捕えられた後、火あぶりの刑に処されます。

    諸説さまざまあるようですが、実話を西鶴が脚色したといわれているようです。

    ところで、放火罪は殺人罪より刑罰が重いということが都市伝説のようにいわれているようですが、実際、法的にはどうなのでしょうか?

    放火罪は、「刑法」では「放火及び失火の罪」といい、第108条(現住建造物等放火罪)から第118条(ガス漏出等致死傷罪)に規定されます。

    放火や失火、延焼、未遂、予備、火薬の爆破、ガスの漏出などについて定められる犯罪で、「現住建造物等放火罪」、「非現住建造物等放火罪」、「建造物等以外放火罪」などがあります。
    条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第108条(現住建造物等放火罪)
    放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
    この第108条が最も重い量刑で、最高刑は死刑と定められています。
    これは現行法上、「殺人罪」(第199条)と同じ法定刑である重罪です。

    一般的に、殺人に比べ放火の方が犯人の罪の意識が弱いと思われますが、ではなぜ、殺人と同じ刑なのでしょうか?
    それには以下のような理由があります。

    〇日本では古来より木造建築の多い生活様式のため、火事が起きやすく延焼しやすく被害が拡大しやすい
    〇火事によって、現実に居住している人を死に至らしめる可能性が極めて高い
    〇延焼により、不特定多数の生命を危険にさらすおそれがある

    火の力は、時として人間が制御できなくなるほど強大な力で多くの人を死に至らしめる可能性の高いものです。

    そうした「火」を用いて、たとえ殺人を犯すつもりはなくても放火をすることは、最悪な結果を引き起こす可能性がある悪質性を持っているために殺人と同等の重罪である、ということです。
    冒頭の都市伝説の件について解説しておきます。

    2004年の刑法改正以前、殺人罪は「死刑又は無期若しくは3年以上の懲役」でした。

    一方、放火罪は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」で、より重い量刑となっていました。

    そのため、放火は殺人より罪が重い、という部分が一人歩きした結果、都市伝説のように話が広まったのだと思います。

    2004年の刑法改正により、殺人罪と放火罪の法定刑が同じになったので、今では、「放火と殺人は同罪である」という都市伝説になるでしょう。

    ニュースを見ていると、たまに「気分がムシャクシャしたので、火をつけた」などと言っている犯人がいますが、それどころでは済まされない重罪です。

    この場合、法定刑で言えば、「気分がムシャクシャしたので、人を殺した」と同じだということを肝に銘じておかなければなりません。

    人は、火を使いこなすことによって文明が始まりました。

    火をつけることによって人生を閉じることのよう気をつけたいものです。

  • 暴力団が自動車保険加入OKにっ!?

    2014年09月01日

    2014年9月1日本日付のニュースによると、損害保険各社は、暴力団関係者が自動車保険に加入できるようにする、と発表した。

    どういうことか?

    昨年2014年11月4日のニュースでは、損害保険各社は、暴力団排除条例を受けて、暴力団関係者には、一切自動車保険に加入できないようする、と発表していた。

    その方針を180度転換する、ということである。

    なぜ、そのようなことになるのか説明したい。
    日本では、すでに47都道府県全てに暴力団排除条例が施行されており、損害保険会社を含め、企業は、暴力団に経済的利益を与えることが禁止されている。

    損保会社が暴力団関係者と保険契約を締結することを認めると、保険事故があると、暴力団に保険金が支払われる可能性がある。

    これは、暴力団に経済的利益を与えることになるため、自動車保険への加入を認めない、と判断したものだった。

    しかし、その時、ブログに書いたように、暴力団に自動車保険加入を認めないと、暴力団保有、あるいは暴力団の運転する自動車にはねられた交通事故被害者が悲惨な目にあってしまう、ということだ。

    https://taniharamakoto.com/archives/1203

    改めて説明するが、損保会社が、暴力団との自動車保険契約を拒絶すると、暴力団関係者保有の自動車は無保険状態(自賠責だけ)となる。

    自賠責保険の金額は、たとえば、死亡の場合は、最高3,000万円である。

    そこで、仮に、40歳男性で家族が妻と子供1人、年収が800万円という例で、死亡事故の損害賠償金を算出してみたい。

    この場合、概算で計算すると、1億1150万円が、損害賠償額となる。

    この損害賠償額は、被害者が今後働いて得られるお金や慰謝料など、被害者の遺族が当然もらえてしかるべき賠償金である。

    しかし、任意保険がないとなると、自賠責保険で、3,000万円しかもらえない。

    残りの8,150万円を暴力団に請求し、払ってもらえるだろうか?

    これでは交通事故被害者は浮かばれないだろう。

    そこで、今回、損保各社は、被害者救済を重視して、暴力団の自動車保険加入を認めることにした、ということだ。

    大変評価できる対応である。金融庁も認めている、ということである。

    では、この対応は、暴力団排除条例に違反しているのであろうか?

    私はそうは思わない。

    暴力団排除条例では、暴力団の活動を助長する目的で利益を提供してはならない旨規定している。

    暴力団関係者が事故を起こした場合、損保会社から賠償金が支払われるが、それは、対人賠償の場合には被害者に直接支払われることになる。

    暴力団関係者に支払われるわけではないし、賠償金支払によって暴力団関係者に利益を供与しているわけではない。また、これによって暴力団の活動を助長することもない。

    したがって、対人賠償によって損保会社が被害者に賠償金が支払われたからといって、暴力団排除条例の趣旨を没却することはないと考えられる。

    ただし、自動車保険の中には、被保険者などに支払われる保険金もある。

    この点については、被害者救済の理念は働かず、かつ暴力団関係者に直接保険金が支払われる可能性があるので、取り扱いには注意が必要であろう。

    もちろん、損保会社がこのような取り扱いを始めたからといって、暴力団関係者が任意保険に加入するかどうかはわからない。

    暴力関係者の自動車が任意保険未加入であることを想定して、被害者が取り得る手段がある。

    それは、相手が無保険でも保険金が支払われるようにしておくことである。

    自分(同居の親族も)の自動車保険を確認しよう。「無保険者傷害特約」がついていれば、相手が任意保険未加入であっても損害賠償額に相当する保険金が被害者に支払われる。

    「人身傷害補償特約」も有効だ。

    「弁護士費用特約」も必須であると考える。

    誰も予想していないところで交通事故は発生する。

    自分が交通事故に遭うことを予想できる人などいないのである。

    その時のため、今一度、自分の自動車保険を見直してみることをおすすめする。

  • 祭りへの寄附が問題に! 公職選挙法が定める規制とは?

    2014年08月31日

    今年も日本全国で、さまざまな夏祭りが開かれたことと思います。

    神輿に祭囃子、盆踊りに花火大会、サンバカーニバルなどもありますね。
    「祭り」と聞くと、血が騒ぐという人もいるでしょう。

    さて、そんな夏祭りが静岡県富士市で問題になっているようです。
    楽しいはずのお祭りに、一体何があったのでしょうか?

    「市議複数が夏祭りに“会費”出す 1人5千円、寄付行為に抵触か」
    (2014年8月28日 静岡新聞)

    静岡県富士市の複数の保守系市議が、毎年9月に開かれる夏祭りで、少なくとも過去5年間に「会費」として、1人5000円を主催者に渡していたことがわかりました。

    内部資料の協賛者一覧に、地元企業や事業所の代表者、市内各種団体の代表者らとともに、市議や前市議、衆院議員の名前と金額が記してあったようです。

    毎年、お金を渡していた市議がいるほか1回のみの市議もいて、取材に対し、いずれも認めているということです。

    また、別の祭りでも「会費」を渡している市議がほかにも複数いて、市議会でも問題視する声が出始めているようです。

    市選挙管理委員会は「公選法は一切の寄付行為を禁じている」との認識を示しているとのことですが、報道では、祝儀や会費などを暗に求める有権者や地域の姿勢も問題だとしています。
    一般の人や地元の人は、政治家でも誰でも寄付をしてくれるのだから、ありがたいことだと思う人もいるでしょう。

    しかし、「寄附」ということになると、これは、れっきとした法律違反なのです。

    日本には、「公職選挙法」という法律があります。
    これは、国会議員や地方公共団体の議会の議員・首長など公職に関する定数と選挙方法などを規定するもので、1950年、衆議院議員選挙法・参議院議員選挙法の各条文や、地方自治法における選挙に関する条文を統合する形で新法として制定されたものです。

    「公職選挙法」
    第1条(この法律の目的)
    この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。
    選挙の立候補者は「自由」に、かつ「公明」、「適正」に選挙活動しなければいけないのですが、そのために「選挙運動期間に関する規制」(選挙の公示・告示日から選挙期日の前日までしかできない)や、「未成年者の選挙運動の禁止」、「文書図画の頒布の規制」などの規制が定められています。

    また「公職選挙法」では、選挙の有無に関わらず、公職の候補者等が選挙区内の人に対して、どのような名義であっても一切の寄附を禁止しています。(第199条の2)。

    ちなみに、総務省のホームページでは、禁止されている寄附の例として、以下のようなものを挙げています。

    〇病気見舞い
    〇祭りへの寄附や差入れ
    〇地域の運動会やスポーツ大会への飲食物の差入れ
    〇結婚祝い・香典
    〇葬式の花輪・供花
    〇落成式・開店祝の花輪
    〇入学祝・卒業祝
    〇お中元・お歳暮

    これは、公職選挙法の基本中の基本ですから、知らずに政治家をしている人がいるとすれば、言語道断ですね。

    法律遵守の自覚が乏しいと言わざるを得ません。

    ところで、公職選挙法は、「寄付」について、次のように規定しています。

    197条 2項
    「この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう。」

    ここでは、「会費」は「寄附」にならないとしており、今回の方々も「祭りの会費だから寄附にはあたらない」と判断したのかもしれません。

    しかし、「寄附」になるかどうかは、お金を交付するときの名称にかかわらず、その実質により判断されます。

    そして、法律では、「会費その他債務の履行としてなされるもの」は寄附ではないとされています。

    ポイントは、「債務の履行」かどうか、ということです。

    たとえば、私たち弁護士が支払う「弁護士会費」は、登録した弁護士が当然に支払わなければならない性質のものであり、「債務の履行」として支払うものですから寄附ではありません。

    では、今回の祭りの会費はどうでしょう。

    町内全員の義務になっていれば別ですが、寄附の意思を持つ人が任意に行うものであれば、「債務の履行」とは言えず、「寄附」にあたり、公職選挙法違反になる、ということになります。

    迷った時は選挙管理委員会や弁護士に確認することが大切ですね。

    公職に就いている人も、これから公職に就こうと大志を抱いている人も、公職選挙法は熟知していなければいけません。

    自信がないという人は早速、勉強してください。
    それが政治家の責務です!

    同時に、有権者や地域全体の問題でもありますから、この機会に公職選挙法を勉強してみてもいいかもしれません。

    ただし、とてもわかりにくい法律になっています。(;´Д`)アウ…

  • 宿題代行業は、詐欺罪!?

    2014年08月29日

    今年の夏も、もうすぐ終わりますね。

    仕事に遊びに、みなさんはどんな夏を過ごしたでしょうか。

    地域によって、期間には多少の違いがあるようですが、学生たちの夏休みも、もうすぐ終わります。

    子供の頃、怠けていたばっかりに夏休みの終了直前になって、バタバタと宿題をやったり、親に怒られながらも手伝ってもらったという経験のある人も多いのではないでしょうか。

    ところで、親が手伝ってあげるのはまだしも、親がお金を払って宿題代行業者に依頼するケースもあるようで、教育評論家のあの方が、そんな現状に激怒しているようです。

    「尾木ママ“宿題代行業は詐欺罪だ”」(2014年8月27日 デイリースポーツ)

    宿題代行業が大繁盛している現状に対して、「尾木ママ」こと、教育評論家の尾木直樹さんが自身のブログで激怒。
    「子どもたちに対しては教育犯罪そのもの」「れっきとした詐欺罪です」と厳しく指摘したということです。

    小中学生の宿題を代行する宿題代行業は、読書感想文や絵画、工作などを代行して制作。
    ネット上では、読書感想文1枚3000円、絵画1枚4000円などの代金も表示されているようです。

    尾木さんは、「お金でなんでもできるという歪んだ価値観教えることになります」、「こういう闇悪徳業者は追放するべきですね」などと訴えているということです。
    他の報道では、「依頼主は病気で手がつけられない場合や、受験で忙しくて宿題に手が回らない人」という業者もいるようですが、やはり許される商売ではないでしょう。私も尾木さんには同感です。

    ところで、ここで疑問が湧いてきます。
    尾木さんは「詐欺罪だ」と書いていますが、実際法的には業者は詐欺罪になるのでしょうか?
    まずは条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第246条(詐欺)
    1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
    2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
    「詐欺罪」が認められ成立するには、その構成要件を満たしているかがポイントになります。

    〇相手方を錯誤に陥らせ、財物や財産上の利益を処分させるような行為をすること((欺罔行為や詐欺行為)
    〇相手方が錯誤に陥ること(錯誤)
    〇錯誤に陥った相手方が財物ないし財産上の利益の処分をすること(処分行為)
    〇財物の占有または財産上の利益が行為者や第三者に移転すること(占有移転、利益の移転)
    〇これら4つの間に因果関係が認められ、行為者に故意または不法領得の意思が認められること

    なんだか、ややこしくて難しいですね。
    簡単に言うと、次のような場合、詐欺罪が成立するわけです。

    〇お金などを奪う目的で、Aが詐欺的な行為で故意にBをあざむく
    〇BはAにあざむかれ、勘違いしてしまう
    〇そこで、Bはお金などをAに渡す
    〇Aはお金などを手に入れる

    では、宿題代行業者の一件にこの要件を当てはめてみましょう。

    業者が、初めからお金を奪う目的で「宿題を代行します」とウソを言って親からの依頼を受け、代金を受け取ったのに宿題を代行しなかったなら詐欺罪が成立します。

    しかし、親は子どもの宿題が間に合わないので、ネットで見つけた業者にお金を払って宿題代行を依頼。
    業者も商売として親から依頼を受け宿題を完成し報酬を得たわけですから、業者は親を騙しておらず、詐欺罪にはあたらないということになります。

    ただ、宿題代行業は子ども本人の「宿題をやり遂げる力」や「正直に生きる機会」を奪い、「人生に損害を与える行為」をしたと考えれば、法律は別として国語辞典の定義である「詐欺」にはあたるかもしれませんね。

    このように、刑法の「詐欺罪」と、国語辞典にある「詐欺」では概念が違うということは知っておいてもいいと思います。

    さて、今回のような宿題代行業者は、犯罪になる可能性はないのでしょうか?

    じつはあるのです。

    「刑法」
    第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
    学校や塾は、教育業務を行っているのであり、そのために宿題を課します。その宿題をあたかも本人がやったように偽って他人が行っていたとすれば、適正な教育業務は遂行できません。

    したがって、偽計(人を欺く計略)によって、学校や塾の教育業務を妨害した、と言えなくもないのです。

    さて、世の中には、さまざざまな「詐欺的行為」がありますが、法的な解釈では、その扱いが違ってきます。

    たとえば、結婚詐欺があります。
    既婚の男性が、「結婚していない」といって女性をあざむいて交際した場合、ウソが発覚すれば女性は、「だまされた」「詐欺だ」と思うでしょうが、つきあっていただけなら刑法上の詐欺罪にはなりません。

    ところが、「俺に賭けてくれ」「俺を信じてくれ」などと言って、女性からお金をだまし取ったら詐欺罪になります。

    ただし、刑法には問えなくても女性が民事で男性を訴えることはできます。

    「詐欺だ」というのと、刑罰を科される「詐欺罪」というのは、違う概念である、ということを憶えておきましょう。