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  • タレントが線路立入書類送検

    2017年02月13日

    80年代アイドルのファンにはショックな事件が起きました。
    往年のアイドル2人が書類送検されたようです。

    「松本伊代さん早見優さん“線路立ち入り”で書類送検」(2017年2月10日 テレビ朝日)

    タレントの松本伊代さんと早見優さんが書類送検されました。
    容疑は、鉄道営業法違反です。

    報道によると、事件が起きたのは2017年1月13日午後。
    2人はテレビの旅番組の収録のため京都市右京区を訪れたところ、撮影の合間にJR山陰本線の踏切から無断で線路に侵入し、写真を撮影。

    翌14日、松本さんはその際に撮影した写真を自分のブログにアップしたところ、閲覧者たちから「不適切な行動」などの指摘が殺到。
    そのため、15日にブログから写真と記事を削除し、2人とも謝罪のコメントを掲載していたようです。
    では早速、条文を見てみましょう。

    「鉄道営業法」
    第三十七条
    停車場其ノ他鉄道地内ニ妄ニ立入リタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス
    「鉄道営業法」は、鉄道輸送における旅客や荷物の安全などについて規定した法律です。
    1900(明治33)年に施行された法律のため、条文が漢字とカタカナの仮名交じり文になっています。

    また、罰則が10円以下となっていますが、こちらは「罰金等臨時措置法」という物価変動に伴う罰金や科料の額などに関する特例を規定する法律によって、現在は1000円以上1万円未満を徴収となっています。

    今回の書類送検については、簡単にいえば、無断で線路に立ち入る行為は危険だから罰します、ということですね。

    ところで、別の報道によると、松本さんのブログにはこんなコメントもあったようです。

    「京都、竹林の道の途中 踏切で優ちゃんとパシャリ」
    「その瞬間踏切が鳴り、慌てて逃げる2人」

    これは危険です。
    仮に、列車の進行を妨げて鉄道会社の業務を妨害すれば鉄道営業法違反だけでは済まない可能性があります。

    「刑法」
    第234条(威力業務妨害)
    威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
    前条とは、第233条です。

    「刑法」
    第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
    さらに、もし事故が起きれば大変なことになります。

    「刑法」
    第125条(往来危険)
    1.鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、2年以上の有期懲役に処する。
    第126条(汽車転覆及び同致死)
    1.現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。

    3.前2項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。
    今回の2人が列車を転覆させるようなことはないでしょうが、一応解説しておきます。

    万が一にも列車が転覆、死者が出るということになっていれば、刑事罰は死刑か無期懲役になる可能性もあるのです。

    さらに民事では、不法行為によって莫大な損害賠償金を支払わなければいけなくなります。(民法第709条)

    報道によると、今回の事件の現場は京都の嵐山のようですが、近年、日本全国の観光地などで同様な事件も起きているようです。

    特に目立つのは、「撮り鉄」と呼ばれる鉄道ファンが起こす事件で、列車を撮影するために無断で線路に侵入し、死亡事故や列車の運休や遅延という事態にまでなっていることが各地で問題になっています。

    また、認知症の高齢者が列車に轢かれて高額な損害賠償金を請求されるという事件も起きています。

    詳しい解説はこちら⇒「鉄道事故の賠償金は、いくら?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1421/

    観光地で気分が浮かれるのもわかりますが、線路に無断で侵入することは自分も他人も傷つける重大事故につながる危険性があることを、しっかり認識しなければいけません。

    最近は、ブログやSNSなどに投稿したいがために、面白半分で色々なことをしようとする人がいますが、人の注意をひくことは、法律違反となる可能性もありますので、十分注意していただければと思います。

  • コンビニが下請法違反!?

    2016年08月26日

    親事業者が、取引先の下請け企業に支払う金額を不当に減額していたことが問題になったようです。

    今回は「下請法」について解説します。

    「下請け代金6億5千万円を不当減額 ファミリーマートに勧告 公取委」(2016年8月25日 産経新聞)

    公正取引委員会は、コンビニエンスストア大手のファミリーマートに対し、下請法に違反したとして取引業者への代金返還と再発防止を勧告しました。

    ファミリーマートは、おにぎりや弁当などのプライベートブランド(PB)商品の製造を委託している業者20社に支払う代金から、総額約6億5000万円を不当に減額していたようです。

    報道によると、ファミリーマートは2014(平成26)年7月~2016(平成28)年6月、新規開業店舗のオープンセールで、PB商品の製造委託業者に対し、売れ残ったPB商品の代金の一部を「開店時販促費」として負担させ、下請け代金を不当に減額。

    他にも、「カラー写真台帳」と呼ばれる店舗向け新商品案内の製作費を負担させたり、期間限定の割引セール対象商品の値引き相当額を負担させたりしていたようです。

    なお、返還額としては、勧告内容の公表が始まった2004(平成16)年以降で4番目の大きさになるということです。
    下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。

    親事業者が下請事業者に商品の製造などを委託・発注する場合、どうしても親事業者のほうが優越的地位にあるため、取引金額を不当に減額されたり、支払いが遅延することがあります。

    それは、そうでしょう。

    親事業者から「安くしろ。そうしないと、あんたの会社とは取引を打ち切るぞ」と言われたら、下請事業者はその要求に応じないわけにはいきません。

    交渉力が全く違いますね。

    こうした事態を防ぎ、下請事業者の利益を保護し、取引の適正化を推進するために、1956(昭和31)年6月に下請法が施行されました。

    今回のケースは、第4条第1項第3号の「下請代金の減額の禁止」に当たります。

    では、条文を見てみましょう。

    「下請代金支払遅延等防止法」
    第4条(親事業者の遵守事項)
    1.親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
    三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。
    この第4条では、「親事業者の禁止行為」について定めているので、以下にまとめておきます。

    ①受領拒否の禁止
    下請事業者に責任がないのに、給付(納入品等)の受領を拒むこと。

    ②下請代金の支払遅延の禁止
    支払代金を支払期日までに支払わないこと。

    ③下請代金の減額の禁止
    下請事業者に責任がないのに、下請代金を減額すること。

    ④返品の禁止
    下請事業者に責任がないのに、給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。

    ⑤買い叩きの禁止
    通常支払われる対価に比べ、著しく低い下請代金の額を不当に定めること。

    ⑥物の購入強制・役務の利用強制の禁止
    自己の指定する物を強制的に購入させたり、役務を強制的に利用させたりすること。

    ⑦報復措置の禁止
    中小企業庁又は公正取引委員会に対し、禁止行為を行ったことを知らせたとして、下請業者に対して取引を停止するなど不利益な取扱いをすること。

    ⑧有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
    有償支給原材料等を自己から購入させた場合、支払期日より早い時期に対価を支払わせること。

    ⑨割引困難な手形の交付の禁止
    支払期日までに一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形を交付すること。

    ⑩不当な経済上の利益の提供要請の禁止
    自己のために、金銭、役務などの経済上の利益を提供させること。

    ⑪不当なやり直し等の禁止
    下請事業者に責任がないのに、給付の内容を変更させたり、給付をやり直させたりすること。
    どれもこれも、やられたら下請業者にとってはたまったものではないどころか、企業の存亡にも関わりかねないことばかりですね。

    現在、ファミリーマートは業界3位で、今年9月1日には業界4位のサークルKサンクスを傘下に持つ流通大手ユニーグループ・ホールディングス(GHD)と経営統合することで基本合意しており、統合すれば業界2位に浮上。
    店舗数では、最大手のセブン-イレブン・ジャパン(約1万8千店)と肩を並べることになるようです。

    今回の調査が、下請事業者の申告から始まったのかどうかはわかりませんが、申告した下請事業者との取引を停止するなどすると、さらに下請法違反となるので、それは回避して欲しいと思います。

    中小企業が日本を支えています。

    親事業者と下請事業者の取引の適正化を望むばかりです。

  • 「ポケモンGO」で起きる可能性がある6つの犯罪

    2016年07月26日

    話題のスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」の日本国内配信が7月22日に始まりました。

    事前に予想されていた通り、全国各地でこの数日間、さまざまな事故や問題が起きているようです。

    そこで今回は、「ポケモンGO」の使用によって、どんな犯罪が起きる可能性があるのか、また起きた事件や事故はどんな犯罪になるのかを法的に解説します。

    ①過失致死傷罪
    まずは、もっとも身近な危険行為「歩きスマホ」での「ポケモンウォーク」による事故です。
    これまでも歩行中のスマホ使用の危険性が指摘されてきましたが、「ポケモンGO」に夢中になった人たちが他の歩行者にぶつかった場合、相手にケガを負わせてしまう危険性が高まります。

    私たちは道路を歩行中、他人の進路を妨害したり、ぶつかっていったりしないよう前方左右を注意していなければならないわけですから、仮に、ポケモンウォークで相手にケガをさせてしまった場合は、「過失傷害罪」で30万円以下の罰金又は科料に処される可能性があります。(刑法第209条1項)
    なお、死亡させてしまった場合は「過失致死罪」となり、50万円以下の罰金に処されます。(刑法第210条)

    人混みなどの場合には、「重過失」と認定される可能性さえあるでしょう。

    その場合は、「重過失致死傷罪」(刑法211条)となり、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
    ②過失運転致死傷罪
    「運転中に“ポケモンGO”、追突…3台玉突き」(2016年7月25日読売新聞)

    滋賀県大津市の県道で、男性会社員(21)が運転する車が信号待ちをしていた乗用車に追突。
    はずみで前方に停車していた車も巻き込まれ、3台の玉突き事故になった。
    追突した男性は、「ポケモンGOをしていて夢中になってしまった。急ブレーキを踏んだが間に合わなかった」と話している。

    これは、「ポケモンドライブ」による交通事故です。
    前方不注視や後方確認義務違反などの過失によって、自動車事故で人にケガをさせたり死亡させたりした場合、「自動車運転死傷行為処罰法」により「過失運転致死傷罪」に問われる可能性があります。
    法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
    ③道路交通法違反
    「ポケモン運転、6人摘発 名古屋ではひったくりも」(2016年7月24日 共同通信)

    「ポケモンGO」をしながら車やミニバイクを運転したとして、岡山や佐賀、兵庫、宮城の各県で計6人が道交法違反で摘発されたことが各県警への取材でわかった。
    岡山県警では23~24日、スマホを操作しながら乗用車を運転したとして、男女計3人に交通反則切符(青切符)を交付した。
    これは、「ポケモンドライブ」による道路交通法違反です。
    この場合は、道路交通法の第71条5の5(運転者の遵守事項)の違反になります。
    自動車の停止中以外での携帯電話の使用や画面注視は、交通反則切符(青切符)を切られてしまいます。
    違反点数は2点、反則金は原付バイクが5000円、普通車などは6000円、大型車の場合は7000円です。

    道路における交通の危険を生じさせた場合は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です(道交法119条9の3)
    ④自転車事故での道路交通法違反
    「道内初か“ポケモンGO”事故 札幌・手稲区で自転車同士衝突」(2016年7月25日 北海道新聞)

    7月24日、札幌市の歩道で、自転車に乗りながらスマートフォンを操作していた男児と衝突したと、女性(19)から6時間半後に札幌手稲署へ通報があった。
    男児は小学校高学年くらいで、「見つけた!」と叫びながら女性の自転車に近づき、衝突。
    膝に擦り傷を負ったが、そのまま走り去った。
    スマホ画面には「ポケモンGO」が表示されていた。
    女性にはケガはなかった。
    こちらは、「ポケモンサイクリング」での事故です。

    自転車を運転する時は、他人に衝突しないよう前後左右を注視しなければいけないわけですから、ポケモンサイクリングをしていて、他人に怪我をさせたり、死亡させたりした場合は、「過失」あるいは「重過失」があるとして、ポケモンウォークの場合と同様、「過失致死傷罪」や「重過失致死傷罪」に問われる可能性があります。

    ちなみに、東京都道路交通規則(道路交通法71条6号に基づく)では、携帯電話での通話や画面注視は、5万円以下の罰金となっています。
    ⑤住居侵入罪
    「ポケモンGO 中国人2人が市営住宅敷地に侵入 宮城 立ち入り禁止の熊本城にも トラブル相次ぐ」(2016年7月22日 産経新聞)

    宮城県大崎市の市営住宅の敷地に中国人男性2人が侵入し、住民とトラブルになり、警察官が駆け付ける騒ぎがあった。
    「ポケモンGO」のプレー中に敷地内に入ったところ、住民の男性が注意したが立ち去らなかったため110番した。

    京都市上京区の京都御所では、ゲームに夢中になった大学1年の男子学生(18)が塀に近づき、侵入防止用の警報音が鳴る騒ぎがあった。

    熊本市の熊本城でも、20代とみられる男性が、案内人に「ポケモンGOをプレーしたい」と伝え、立ち入り禁止区域内へ侵入しようとした。
    これらは、「エンター・ザ・ポケモン」です。
    正当な理由がないのに、他人の家やマンション等の住居に無断で侵入した場合は「住居侵入罪」、店舗や公共建造物等の看守者がいる建物に侵入した場合は「建造物侵入罪」、また要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は「不退去罪」に問われる可能性があります。(刑法第130条)
    これに違反した場合は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます。
    ⑥プレーヤーが犯罪に巻き込まれる危険性
    「ポケモンGO熱中の女子大生、ひったくり被害」(2016年7月24日 読売新聞)

    名古屋市瑞穂区の路上で、自転車に乗りながら「ポケモンGO」に熱中していた女子大生(22)が、後ろから近づいてきた原付きバイクの男に前かごの手提げカバン(中には現金2000円など)をひったくられた。
    女子大生にケガはなかった。
    「ポケモン中の女性暴行 男逮捕」(2016年7月25日 毎日新聞)

    東京都渋谷区道玄坂の路上で、「ポケモンGO」をしていた女性の腕をつかんだとして、千葉県の職業不詳の男(27)が暴行容疑で現行犯逮捕された。
    女性が、ポケモンが映ったスマホの画面を保存するため「スクリーンショット」を操作したところ、自分が撮影されたと勘違いした男が「写真を消せ」と言いながら腕をつかんだという。

    ゲームに熱中しすぎて周囲への認識がおろそかになっていると、自分自身が被害者になってしまう危険性もあります、注意しましょう。
    自動車や自転車を運転しながらのプレーは重大事故に直結するおそれがあります。

    歩行中も危ないですね。

    他人にぶつかり、相手が転んで頭を打って、死亡したり、重度障害が生じたり、ということもありますし、道路等に不用意に歩き出すと、自動車やバイクが回避のための急なハンドル操作で大事故につながる危険もあります。

    ゲームは、ルールの中で楽しむものです。

    それは、ゲームのルールだけでなく、現実社会のルールをも含むものだ、という認識が必要だと思います。

  • ドローンを飛ばす時の法規制について

    2016年05月24日

    最近、話題のドローンですが、誰もがどこででも自由に飛ばせることができるのでしょうか?

    今回は、ドローンと航空法について解説します。

    「祭りでドローン、男を書類送検…改正法初適用」(2016年5月20日 読売新聞)

    岐阜県警は5月19日、国の承認を受けないまま、祭り会場で小型無人機「ドローン」を飛ばしたとして、専門学校生の男(20)を航空法違反の疑いで岐阜地検大垣支部に書類送検しました。

    男は4月2日午後4時頃、同県大垣市の公園で開催されていた「大垣市すのまた桜まつり」の会場で、国土交通相の承認を受けずにドローンを飛ばした疑いです。

    ドローンは墜落しましたが、けが人はいなかったようです。
    男は、「桜がきれいで、空撮した映像を見たかった」などと話し、容疑を認めているということです。

    同県警によると、2015年12月施行の改正航空法で禁じられた、祭りなど人が多く集まる場所でのドローン飛行を巡って同法が適用されたのは全国で初めてとしています。
    そもそも、ドローン(Drone)とはミツバチのオスバチを表す言葉だそうで、急加速や急停止、急転回にホバリングといった飛行性能から名付けられたようです。

    ドローンはラジコンとは違い、遠隔操作やコンピュータ制御による自動操縦で飛行する小型の無人航空機で、以前は軍事用に使われていました。
    それが小型化、低価格化により民間でも使われるようになり、商業用としてはグーグルやアマゾン、ドミノピザなどが配達のテストを始めているようです。

    今では安い物なら1万円以下で買えるようになったため、一般の個人が使い始めたことで墜落事故などさまざまな問題が出てきています。

    2015年4月22日に首相官邸に墜落したものは、実際はドローンではなくラジコンタイプのマルチコプターだったようですが、飛ばした男が威力業務妨害罪で逮捕されたこの事件はメディアでも大きく取り上げられたことから覚えている人も多いでしょう。

    こうした事件を背景に、日本ではドローンの使用を規制するため、航空法を一部改正した「改正航空法」が2015年12月10日に施行されています。

    「改正航空法」
    第2条(定義)
    22.この法律において「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。
    遠隔操作や自動操縦で飛行させることができるドローンやラジコンで、機体本体とバッテリーの合計が200グラム以上のものを無人航空機とするわけです。(200グラム未満のものは模型航空機に分類)

    次に飛行についてのルールを見てみます。

    第132条(飛行の禁止空域)
    何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。ただし、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合においては、この限りでない。

    1.無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそ
    れがあるものとして国土交通省令で定める空域
    2.前号に掲げる空域以外の空域であつて、国土交通省令で定める人
    又は家屋の密集している地域の上空
    「航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域」とは、①空港等周辺に設定された進入表面等の上空の空域、②地表または水面から150メートル以上の高さの空域です。(「航空法施行規則」第236条の1)

    「人又は家屋の密集している地域の上空」とは、国勢調査の結果を受け設定されている人口集中地区の上空で、地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通大臣が告示で定める区域を除きます。(「航空法施行規則」第236条の2)

    これらの空域では、国土交通大臣の許可を受けなければ無人飛行機を飛行させてはいけないということです。

    続いて、無人航空機の飛行方法を見てみます。

    第132条の2(飛行の方法)
    無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。ただし、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、次の各号に掲げる方法のいずれかによらずに飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないことについて国土交通大臣の承認を受けたときは、その承認を受けたところに従い、これを飛行させることができる。
    1.日出から日没までの間において飛行させること。
    2.当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること。
    3.当該無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に国土交通省令で定める距離を保つて飛行させること。
    4.祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること。
    5.当該無人航空機により爆発性又は易燃性を有する物件その他人に
    危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で国土交通省令で定めるものを輸送しないこと。
    6.地上又は水上の人又は物件に危害を与え、又は損傷を及ぼすおそ
    れがないものとして国土交通省令で定める場合を除き、当該無人航空機から物件を投下しないこと。
    簡単にまとめると次のようになります。

    ・空港や住宅地の上空では飛行禁止
    ・日中のみ、ドローンとその周辺を注意深く監視しながら、人と物の距離は30メートルを保って(「航空法施行規則」第236条の2)飛行させること。
    ・多くの人が集合しているイベントなど、人が密集している場所の上空も飛行禁止。
    ・危険物を運んだり、機体から物を落下させてはいけない。

    これらに違反した場合は、50万円以下の罰金となります。(「改正航空法」第157条の4)

    なお、屋内や網などで四方・上部が囲まれた空間では上記のルールは適用されません。

    また、国土交通大臣の許可・承認を受けるには所定の申請書を飛行させる10日前までに国土交通省か各空港事務所に提出する必要があるので覚えておいてください。
    ドローンを飛ばして、自分で空撮写真や映像を撮影できるのは楽しいでしょう。

    しかし、ドローンが人に墜落すれば死傷事故になりかねません。
    また、小型カメラを搭載できることから悪意のある盗撮への懸念や、テロでの使用の危険性も指摘されています。

    今後は、さらなる法律の整備や規制があるかもしれませんが、まずはルールを守り、人を傷つけることないようにドローンを楽しんでほしいと思います。

    以上は、2016年5月24日時点の法律に基づいています。

  • マイナンバー法で初の立件

    2016年03月17日

    マイナンバー法違反で初の立件だそうです。

    「住居侵入容疑など 好意抱いた女性のマイナンバー不正撮影」(2016年3月15日 毎日新聞)

    香川県警高松南署は15日、好意を抱いていた女性のマイナンバーを不正に撮影したとして、高松市の会社員の男(56)をマイナンバー法違反と住居侵入の容疑で追送検しました。

    事件が起きたのは2015年11月18日~12月初旬頃。
    容疑者の男は、勤務していた会社の従業員だった女性(37)の住居に侵入。
    女性のマイナンバーが記載された通知カードをスマートフォンで撮影したようです。

    同署によると、男は今年の2月29日、女性の部屋に隠しカメラを設置するために侵入したとして、住居侵入容疑で逮捕されていましたが、男のスマートフォンから女性のマイナンバーが写った画像を発見したことで、今回の追送検となったとしています。

    男は、「女性に好意を抱いていた。将来何かに使えるのではないかと思い、撮影した」と容疑を認めているようですが、今のところマイナンバーを使って個人情報を取得、悪用した形跡はないということです。
    「マイナンバー法」は、正式名称を「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」といい、2013年5月に国会で成立しました。

    これは、住民票を有する全国民一人ひとりに対して割り振った12桁の番号(マイナンバー)が付与されることによって、社会保障や納税などに関する情報を一元的に管理する「共通番号(マイナンバー)制度」を導入、運用するための法律です。

    では早速、条文を見てみましょう。

    「マイナンバー法」
    第51条
    1.人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為その他の個人番号を保有する者の管理を害する行為により、個人番号を取得した者は、3年以下の懲役又は150万円以下の罰金に処する。
    マイナンバー制度は、2016年1月からスタートしていますが、個人のマイナンバーは一度外部に流出してしまうと取り返しがつかなくなる危険があることから、マイナンバー法では、2003年5月に成立した「個人情報保護法」よりも厳しい保護措置が定められています。
    そのため、刑罰としてはかなり重いものが規定されているわけです。

    通知カードを盗んだわけではないのに、検挙されることに驚いた方もいると思いますが、マイナンバーを撮影したり、書き写したりすること自体で、個人番号を取得したことになりますので、注意が必要です。

    反対に、自分のマイナンバーも安易に他人に教えてはいけません。どのように利用されるかわからないためです。

    企業としては、従業員のマイナンバーを扱うことがあると思いますが、ルールを徹底して、決して社外に流出しないよう安全管理措置を策定・徹底をすることが大切です。

    また、税理士や社労士等に従業員のマイナンバーを提供する場合には、個人番号の取り扱いに関する覚書等を締結して、外部委託先にも安全管理措置を徹底してもらう必要もあります。

    今後、マイナンバーに関する事件が発生することが予測されますが、都度、社内ルールを見直してゆくことが大切です。

  • 認知症の高齢者の監督義務に関する最高裁判決

    2016年03月02日

    愛知県大府市で、2007年12月に起きた、徘徊症状がある認知症の男性(91)がJR東海の電車にはねられ死亡する事故が発生した件に関し、同社が男性の親族に対して損害賠償訴訟を提起しておりました。

    第一審判決は、JR側の請求通り720万円の支払を命じ、第二審の名古屋高裁は、男性の妻に対して、359万円の支払を命じました。

    この件に関する最高裁判決が2016年3月1日に出されました。

    結論としては、JR側の請求を認めず、親族の賠償責任を否定しました。

    争点は、男性の妻や長男らが、民法714条の「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」と言えるどうか、という点です。

    ここで、民法714条を見てみましょう。

    「民法」第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)

    1.前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

    つまり、男性は、認知症で判断能力ではないので、賠償責任については「責任無能力者」となります。

    その場合には、責任無能力者を監督する法定の義務を負う者が、責任無能力者に代わって賠償責任を負う、ということです。

    「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」というのは、子どもの親権者(民法820条)、親権代行者(民法833条・867条)、後見人(民法857条・858条)、児童福祉施設の長(児童福祉法47条)等です。

    たとえば、小学一年生の子どもが自転車を運転中、歩行者をひいて死なせてしまった場合などに、親の責任を問えるか、というような問題で、この条文が使われます。

    さて、第一審、第二審では、親族の賠償責任を認めたわけですが、最高裁は、これを否定しました。

    その理由としては、同居の妻や長男というだけでは、「法定の」監督義務者とは言えない。つまり、法律に書いていない、ということです。

    ただし、「法定の監督義務者」ではない人でも、賠償義務を負担する場合がある。それは、次の場合である。

    (1)衡平の見地から、「法定の監督義務者」と同視して賠償義務を負担させることが相当である場合

    (2)では、それは、どのような場合かというと、第三者に対する加害行為の防止に向けた監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情がある場合である

    (3)では、どのような場合に特段の事情があるかというと、第三者の加害行為の防止に向けて、その者が「現実に監督を行っている」、か、あるいはそのように監督することが可能かつ容易であるなど、それが単なる「事実上の監督」を超えているような場合である

    (4)では、それは、どのように判断するかというと、以下の要素を検討します。

    ・監督している人の生活状況や心身に状況

    ・精神障害者との親族関係の有無・濃淡

    ・同居の有無その他の日常的な接触の程度

    ・精神障害者の財産管理への関与の状況などその者と精神障害者との関わりの実情

    ・精神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容

    ・これらに対応して行われている監護や介護の実態
    この観点からすると、同居しているだけの場合や介護を行っている、というだけでは賠償責任は否定されることになります。

    たとえば、過去に徘徊して他人に迷惑をかけたことから、そのようなことがないよう責任を持って監督するため、同居して日常介護し、徘徊できないように常時監視したり、施錠をしたりしている親族が、その監督を怠ったような場合に責任が認められることになるのではないか、と思います。

    先の第一審判決、高裁判決のニュースに接した高齢者を介護する人達は、戦々恐々としたかもしれませんが、ひとまずは安心ということになります。

    今後、高齢化社会がますます進行することから、介護に対する萎縮効果が生じないようにしたい、という政治的配慮が働いているのかもしれません。

    なお、この最高裁判決は、5人の最高裁判事により出されたものですが、3人の最高裁判事による補足意見が出されています。

  • 憤慨!糞害!ハトをめぐる隣人トラブルの対処法とは?

    2016年03月01日

    近隣住民が、糞害で憤慨!

    しているにも関わらず、迷惑行為を止めない隣人が問題になっているようです。

    今回は、動物の糞(フン)による隣人トラブルと法律について解説します。

    「ハトに餌、近隣フン害 名古屋の男性、行政指導応じず」(2016年2月26日 中日新聞)

    自宅アパート前や公園で男性がハトに餌をやり続けているために、集まってくる大量のハトがする糞で洗濯物が汚れるなど近隣住民とトラブルになっているようです。

    名古屋市南区で、2011年の夏頃から2階建てアパートの1階に1人暮らしをしている50代の男性が、毎日朝と夕方に自宅前でパンなどの餌をまくようになり、ハトが道路に50羽以上も集合するように。

    アパートの屋根や周囲の道路が糞で汚れるため、近隣住民から苦情が出るようになり、餌やりを止めるように何度も求めたにも関わらず男性は止めなかったようです。

    また、近くの公園でも餌やりが確認されたため、名古屋市の南土木事務所は市都市公園条例が禁止する「他人に迷惑となる行為」に当たるとして2014年1月に2回、今年1月に1回、公園で行政指導したようですが改善はみられなかったということです。

    そこで2月26日、市南土木事務所の職員が男性宅を訪れ、餌やりをやめるよう行政指導する予定でしたが荷物などで囲まれた玄関ドアに近づけず、職員は外から約30分にわたって出てくるよう呼び掛けたところ、応答がなかったため、あらためて訪問することになったということです。
    これまで本ブログでは、さまざまな隣人トラブルについて法律解説してきました。

    たとえば、京都市のごみ屋敷問題では、市の「ごみ屋敷対策条例」が施行されたことで、2015年に自宅前などに古新聞や雑誌を溜め込んでいた住宅から、“ごみ”が行政代執行で強制撤去されました。

    詳しい解説はこちら⇒
    「全国で初めて“ごみ屋敷”を強制撤去の行政代執行!」
    https://taniharamakoto.com/archives/2120

    大阪府堺市では2015年、家の前の道路を植木鉢などでふさいだ夫婦が「往来妨害罪」で逮捕されています。

    詳しい解説はこちら⇒
    「ご近所トラブルで往来妨害罪適用!?
    https://taniharamakoto.com/archives/2132

    また、最悪のケースでは殺人事件にまで発展することもある「騒音トラブル」についても解説しています。

    「隣人トラブルから人間性が見える」
    https://taniharamakoto.com/archives/1340

    今回のケースでは、ハトの糞害が問題となっていますが、報道にあるように場所によって法的措置が変わってきます。

    まず、公園での餌やりについては「名古屋市都市公園条例」が適用される可能性があります。

    「名古屋市都市公園条例」
    第4条(行為の制限及び禁止)
    1.都市公園において、次の各号に掲げる行為をしてはならない。(後略)
    (12)他人の遊戯を妨げるなど他人に迷惑となる行為をすること。

    これに違反した場合は1万円以下の過料となります。

    次に、アパートでの餌やりについてですが、残念ながら現状では適用できる法律や条例はないようです。

    たとえば、愛知県の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(通称、迷惑防止条例)には、暴力行為や卑猥な言動、押売り行為、不当な客引き行為などについての規定はありますが、「ハトに餌をあげてはいけない」、「糞をさせてはいけない」という条項はありません。

    やはり、まずは市の職員が説得して男性に餌やりを止めさせる働きかけを粘り強くしていくことが必要となってくるでしょう。

    しかし、そうした努力もむなしく、男性の迷惑行為が改善されない場合、近隣住民としてはどうすればいいのでしょうか。

    まずは、アパートの管理規約に「騒音など迷惑行為の禁止」を義務付けているかどうかを確認します。
    規定があれば、管理者や管理組合に相談して迷惑行為を止めるように第三者から伝えてもらいます。

    それでも迷惑行為が収まらないようであれば、弁護士などの専門家に相談して「内容証明郵便」を送ります。

    それでも改善されないならば、民事訴訟を起こして法的措置に訴えることになります。

    「民法」
    第709条(不法行為による損害賠償)
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
    損害賠償請求のほか、餌やりの禁止の請求をすることもできます。

    過去、猫の餌やりを禁止する判決が出された事例もあります。(東京地裁立川支部平成22年5月13日判決)

    損害賠償も餌やり禁止も、「受忍限度」を超えていることが必要です。

    受忍限度とは、騒音や振動などの環境権や、人格権の侵害などで問題になるもので、一般人が社会通念上、我慢(受任)できる、すべき限度のことです。

    つまり、ハトの糞害における被害が受忍限度を超えると認められれば、不法行為が成立し、損害賠償や差し止め請求が認められることになります。

    近隣住民にとっては迷惑な隣人トラブル。
    できるだけ穏便に解決したいところですが、行政担当者とも連携しながら、場合によっては法的措置を考えることもおすすめします。

  • 犬のリードを離したら罪!?

    2016年02月24日

    正月に行われた駅伝の競技中に珍しいハプニングが起きていたようです。

    そのために、観客が書類送検されるという事態になってしまいました。
    一体、何が起きたのでしょうか?

    「駅伝コースに犬、飼い主書類送検 係留義務違反疑い」(2016年2月23日 共同通信)

    今年の元日、群馬県で行われた「第60回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)」で、飼い犬がコース上に飛び出し選手を転倒させたとして、群馬県警高崎署は飼い主の男性(高崎市在住・70歳)を「高崎市動物愛護条例(係留義務)」違反の疑いで高崎区検に書類送検しました。

    事件が起きたのは1月1日午前。
    捜査関係者や主催する日本実業団陸上競技連合によると、高崎市の沿道で応援していた男性が犬をつないでいたリードを離したためにコース上に犬が飛び出し、コニカミノルタの選手がつまずき転倒したようです。

    駅伝の結果は、1位がトヨタ自動車、コニカミノルタのチームは2位でタイム差は21秒だったということです。
    では、今回適用された高崎市の条例を見てみましょう。

    「高崎市動物愛護条例」
    第9条(犬の飼い主の遵守事項)
    犬の飼い主は、前条各号に定めるもののほか、その飼い犬について、次に掲げる事項を遵守しなければならない。

    (1)常時係留すること。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りではない。
    ア 警察犬、狩猟犬、盲導犬、介助犬、聴導犬等をその目的のために使用する場合
    イ 人の生命、身体及び財産を侵害するおそれのない場所及び方法で訓練する場合
    ウ 飼い犬を制御できる者が、綱等により確実に保持して移動させ、又は運動させる場合
    エ その他規則で定める場合

    これに違反した場合は5万円以下の罰金に処されます(第24条)。

    この規定が適用されるのは珍しいですね。

    日本中の注目を集める駅伝において発生したことから、そのままにすることができなかったのでしょう。

    各都道府県や市には、それぞれ独自に定めた動物愛護条例があります。
    基本的な内容は、動物の愛護や管理に関する事項、動物による人の生命や身体、財産に対する侵害の防止などについて規定されており、人と動物が共生する調和のとれた社会の実現を目的としています。

    ところで、各メディアの報道などを見ていると法律のほかに今回のような条令の違反のニュースが出てくることがあります。
    「迷惑防止条例」や「青少年保護育成条例」などですね。

    では、法律と条令は何が違うのでしょうか?
    以下に、日本の場合について簡単にまとめます。

    ◆法律とは、国会の議決により成立し国が制定するもので日本の全域、全国民に適用されます。
    一方、条例は各都道府県や市町村等の地方公共団体の議会により成立し、その地方公共団体のみに適用されます。

    ◆条例の制定に関係するのは、「日本国憲法」と「地方自治法」です。

    「日本国憲法」
    第94条
    地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
    「地方自治法」
    第14条
    1.普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。
    日本国憲法を頂点とした国内の法体系としては、条例は国が定める法律よりも下位に位置付けられるもので、法律の範囲内で法令(法律と命令)に違反しない限り定めることができるものとされています。

    優先順位としては、おおまかに以下のようになります。(条約を除きます)

    憲法 >法律 > 命令(政令・府省令など)> 条例> 規則

    ◆条例による罰則は、地方自治法(第14条3項)により、違反した者に対しては、「2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料」を科すことができます。

    これらのことからも、条例は国で定めるまではいかない規制や、その地方や地域の特性に合わせた規則として定められるものともいえます。

    ちなみに、日本全国の各地方自治体には真面目なものからユニークなものまで、さまざまな条例が存在します。

    ・「受動喫煙防止条例」(神奈川県)
    公共空間、施設での受動喫煙を防止するために喫煙を禁止する条例。

    ・「市福祉給付制度適正化条例」(兵庫県小野市)
    受給した生活保護費や児童扶養手当をパチンコなどのギャンブルで浪費することを禁止した条例。

    ・「梅干しでおにぎり条例」(和歌山県みなべ町)
    若者を中心に梅干し離れが進んだため、日本有数の梅干しの名産地である同町が制定した、おにぎりを作る時の具は梅干しにするように呼びかける条例だそうです。

    ・「キューピット条例」(三重県紀勢町)
    町の中年齢者(30歳以上)に縁談をお世話して結婚が成立した場合、1組につき20万円が支給されるそうです。

    ・「家族読書条例」(宮崎県高千穂町)
    学校や家庭、地域社会で読書に親しみ、読書を通して家族の絆を深めようとする条例だそうです。

    ・「京都市清酒の普及の促進に関する条例」(京都市)
    伝統産業である清酒醸造を守るためにも、最初の1杯目は日本酒で乾杯しましょう! というものだそうです。
    以上、事件の話からはズレましたが、住民をルールで縛る、というよりも、地域興しやより良い地域を作るための条例があるのが面白いですね。

    会社の就業規則や校則なども、社員や生徒を一方的に縛る観点ではなく、もっと生産的・発展的な観点で作ってみるのも良いかもしれません。

    (例)
    就業規則第●条
    社員は、夢を持ち、他の社員と夢を語り合い、他の社員の夢を賞賛し、その実現に協力を惜しまないこと。

  • ベッキーさん事件は、不正アクセス禁止法違反か?

    2016年01月29日

    タレントのベッキーさんの不倫騒動、まだまだ止む気配がありませんね。

    【情報漏洩した人が問われる罪とは?】
    今回の騒動、巷やネットでは

    LINEでのやり取りが、どうして流出したのか?
    誰が情報を漏らしたのか?
    その流出方法は?

    ということも話題になっているようです。

    情報提供者は、週刊誌では「音楽関係者」、ネット上ではベッキーさんの不倫相手のミュージシャンの妻など、さまざまな噂が飛び交っていますが、誰であるにせよ、個人情報を流出させた人は

    「不倫アクセス禁止法」

    ではなくて、

    「不正アクセス禁止法」

    違反に問われる可能性があります。

    不正アクセス禁止法は、正式名称を「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」といい、2000(平成12)年2月13日に施行されました。

    同法は、インターネットなどのネットワーク上での通信における不正アクセス行為を禁止し、高度情報通信社会の健全な発展に寄与することを目的としています。

    ところで、「不正アクセス行為」とは、どのような行為をいうのでしょうか?

    許可なく他人のIDとパスワードを使ってインターネットを通じて、LINEやFacebook、Twitterなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やメールシステムなどにアクセスすると…

    これは、明らかに不正アクセス行為であり、犯罪になります。

    「不正アクセス禁止法」

    第3条(不正アクセス行為の禁止)
    何人も、不正アクセス行為をしてはならない。

    これに違反した場合は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。(第11条)

    また、不正アクセスするために他人のIDやパスワードを取得すると…

    これも、不正アクセス禁止法に抵触します。

    第4条(他人の識別符号を不正に取得する行為の禁止)
    何人も、不正アクセス行為の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得してはならない。

    これに違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金、となります。(第12条1号)

    では、配偶者や恋人、友人などのパソコンやスマホなどを操作して、すでにダウンロードされているメールやプライベートな画像などを「盗み見」すると…

    これは不正アクセス行為とはなりません。

    また、iTunesなどを使ってスマホの情報を直接スマホからパソコンにバックアップするだけでは、不正アクセス行為にはなりません。

    しかし、クローンiPhoneを作って、改めてlineにアクセスし、トークをダウンロードすると、不正アクセス行為となります。

    どこが違うのでしょうか?

    この違いを知るには、「不正アクセス行為」とは何か、を知らなければなりません。

    条文を見てみましょう。

    第2条(定義)
    4.この法律において「不正アクセス行為」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。

    一 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為

     

    つまり、パソコンやスマホなどの「機械」を操作することを禁じているのではなく、インターネットなどの「電気通信回線」を通じて情報を送信するような行為を禁じているわけです。

    条文に、「識別符号(ID、パスワード)を入力して」とありますが、ここでいう「入力」とは物理的入力ではなく、電気通信回線を通じて対象となる特定電子計算機(パソコンやスマホ等)に識別符号を「送信」してアクセスすることを意味します。

    したがって、必ずしも自分の手でパスワードを入力する必要はなく、外部端末から相手のパソコンに接続したり、スマホのLINEを起動させてやり取りをダウンロードしたり、という行為も「送信」に当たり得るため、不正アクセス行為になる可能性があるのです。

    浮気を疑って、相手のメールをチェックする人がいるようですが、メールを盗み見るだけでは不正アクセス禁止法違反にはなりませんが、「メーラー」の「送受信」を押して新しいメールをダウンロードする行為は、不正アクセス禁止法違反になるのです。

    今回の騒動では、どのように情報が流出したのか、その手口も話題になっていますが、法的な観点から見ると、インターネットなど通信回線を通じて他人のコンピュータに不正に接続する行為が罰せられるわけです。

     

    【民事裁判では損害賠償請求が飛び交う事態に発展!?】
    また、民事裁判では、ベッキーさんと相手のミュージシャンは、個人情報を流出させた人に対して「プライバシーの侵害」で慰謝料など損害賠償請求することができる可能性があります。
    さらに、2人の関係が不倫であった場合、ミュージシャンの妻はベッキーさんに対して慰謝料請求することができます。

    さらに、ミュージシャンの妻は、夫に対して離婚請求や慰謝料請求などをすることができるでしょう。

    そうした不貞行為は、「民法」第770条(裁判上の離婚)の1により離婚の原因として認められます。

    第770条(裁判上の離婚)
    1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
    一 配偶者に不貞な行為があったとき。

    詳しい解説はこちら⇒「不倫相手にいくら慰謝料請求できるか?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1666
    まだ真実は明らかになっておりませんが、ベッキーさんの芸能活動にはかなりの打撃になることは間違いありません。

    自分の行動には、全ての場合に、その行動の結果としての責任がつきまといます。

    常に、自分の行動がどのような結果を招くのかを予想しておくことが必要ですね。

  • あなたの家が勝手に壊される?空き家の法律

    2015年05月07日

    市が強制的に私人の所有建物を解体する、という事態が発生しました。

    「倒壊恐れの空き家、行政が解体 京都市、代執行で初事例」(2015年4月30日 京都新聞)

    京都市は、上京区にある空き家が倒壊の恐れがあるため4月27日までに解体するよう公告していましたが、所有者と連絡がつかないことから、建築基準法に基づく行政代執行で取り壊す作業に着手しました。

    建物は、延べ床面積67平方メートルの木造平屋建てで、住居兼工場。築年数は不明で、屋根が崩壊して柱も傾き、倒壊すれば周囲の住宅を損壊させる恐れがあり、隣人の男性は、「ヤブ蚊やネズミなどが発生し、崩れそうで困っていた。解体してくれて助かる」と話しているようです。

    京都市は、2014年4月に空き家の活用と適正管理のための条例を施行。

    管理不全の空き家の解体は、本来ならば所有者への「指導」、「勧告」、「命令」を経てから「代執行による解体」という段取りをとるわけですが、今回は、不動産登記簿謄本の確認などで所有者を特定したものの連絡がつかなかったことと、倒壊の危険性が極めて高いことから、即公告、市として初の行政代執行となったということです。
    それでは条文を見てみましょう。

    「建築基準法」
    第10条(保安上危険な建築物等に対する措置)
    3.前項の規定による場合のほか、特定行政庁は、建築物の敷地、構造又は建築設備が著しく保安上危険であり、又は著しく衛生上有害であると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを命ずることができる。
    第9条(違反建築物に対する措置)
    12.特定行政庁は、第一項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法の定めるところに従い、みずから義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
    「特定行政庁」とは、建築主事(建築確認をする公務員)を置く地方公共団体および、その長のことで、建築の確認申請、違反建築物に対する是正命令等の建築行政全般を司る行政機関です。
    すべての都道府県と人口25万人以上の市には、建築主事の設置が義務付けられています。

    「行政代執行」とは、行政上の強制執行の一種で、義務者が行政上の義務を履行しない場合に、行政庁が自ら義務者のなすべき行為をすることです。(「行政代執行法」第1条・2条)

    つまり簡単に言うと、危険で不衛生な建築物について持ち主が措置を講じない場合は、都道府県や市が持ち主の代わりに撤去などができる、ということです。

    ところで近年、行政上で問題となっているものに「空き家対策」があります。
    空き家問題については以前、解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒「増え続ける空き家に空き家対策法が施行」
    https://taniharamakoto.com/archives/1896

    現在、日本の空き家率は13.5%で、このまま何の対策もとらなければ今後の人口減少により2023年には21.0%まで空き家率が増加すると考えられることから、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称、空家対策特別措置法)が2015年2月26日に施行された、というものでした。

    これまでの建築基準法をさらに強化して、地方自治体が空き家の処分をしやすくしたのが空家対策特別措置法といえます。

    空家対策特別措置法には大きく2つの目的があります。
    1.問題のある空き家に対する除去などの対策強化
    2.空き家の有効活用の促進

    また法律上、空き家には2種類あります。
    いわゆる空き家とは、使用されていない状態が続いている建物や敷地です。
    一方、「特定空き家」というものがあり、これは、①倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態、②著しく衛生上有害となるおそれのある状態、③適切な管理が行われないことにより、著しく景観を損なっている状態など、というものです。
    今回の京都の建物も、この要件にあてはまります。

    しかし、ここで疑問がわきます。
    今回の京都市の建築物には、空家対策特別措置法ではなく建築基準法が適用されていますが、それはなぜでしょう?

    じつは、今年2月に施行されたのは空家対策特別措置法の一部のみで、
    特定空き家についての施行は2015年5月26日になっているからです。

    それだけ、今回の建物は危険性、緊急性が高い案件だったということでしょう。

    なお、空き家の固定資産税について政府・与党は、平成27年度与党税制改正大綱に、税金面の優遇措置をなくし増税する方針を盛り込んでいます。

    今まで、住宅が建つ200平方メートル以下の土地の場合、税率は6分の1に軽減されていました。
    そのため、建物を壊して更地にしない所有者も多く、空き家が増える原因にもなっていました。

    ところが今回の税制改正で、倒壊の恐れのある危険な空き家にも今までの6倍の固定資産税がかかるようになります。
    空き家を持っている人や相続した人は要注意です。

    建物が地震などで倒壊して、他人に損害を与えた場合、所有者が多額の損害賠償責任を負うことにもなりかねませんので、空き家を所有する人は、この機会に空き家の有効活用を検討してみてもよいかもしれません。