ニュース | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 7
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 犬も歩けば賠償金を払う

    2014年03月09日


    犬と人間のつきあいは古く、今から1万5千年ほど前の旧石器時代にまで遡るといいます。

    東アジアから中央アジアあたりで、オオカミから分化したと推定される犬は、徐々に家畜化していき、世界中に広まっていったというのが定説のようです。

    このころ、日本列島でも人間と犬の関係が始まったようで、歴史は下り、縄文時代後期~晩期のものと考えられる、愛知県田原市の吉胡(よしご)貝塚では、乳児と子犬が一緒に埋葬されている骨が2007年に発掘されています。

    縄文時代後期~晩期といえば、紀元前1000年あたり。少なくとも、今から3000年以上前には縄文人たちが犬といっしょに暮していたようです。

    それほど長い人間と犬の関係ですが、最近、犬好きの人にはショックな事件や判決が多発しています。

    「高松:中型犬が登校中児童4人かみつき、1人重傷3人軽傷」(2014年3月7日 毎日新聞)
    2014年3月7日、香川県高松市の路上で、登校中の児童4人が次々と犬にかみつかれ、2年生の男児が両足と左腕などをかまれ重傷。現場から逃げ去った中型犬は首輪をしていた。

    「犬に襲われ死亡…飼い主に5433万円賠償命令」(2014年3月7日 読売新聞)
    2011年8月、山梨県北杜市で、犬に襲われて転倒し脳挫傷で女性(当時56歳)が死亡。遺族が犬の飼い主の男性(71)を相手取って損害賠償を求めた訴訟で、甲府地裁は6日、飼い主に慰謝料など計約5433万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

    「愛犬かみ殺され、賠償訴訟 地裁足利支部」(2014年3月7日 下野新聞)
    栃木県足利市で2013年、近所の飼い犬に愛犬をかみ殺されたとして、飼い主の60代の母親と30代の娘が、かみついた飼い犬の30代女性に慰謝料など約540万円の損害賠償を求めていた裁判の第1回口頭弁論が、6日開かれた。訴状などによると、2012年6月、原告の親子が当時住んでいた足利市内でトイプードルを抱いていたところ、近くの庭で放し飼いにされていた中型犬のボーダーコリーが飛びかかり、母親は転倒して肋骨を折るなど約2カ月間のけがをした。翌年2月、犬の散歩から帰宅した母親にボーダーコリーが再び飛びつき、トイプードルをかみ殺したという。原告側は「家族同様の犬を失った精神的苦痛は大きい」として、親子2人の慰謝料380万円と治療費などを請求している。一方、被告側は請求の棄却を求める答弁書を提出、争う構えをみせている。

    以前、このブログでも、俳優の反町隆史さんと松嶋奈々子さん夫妻の愛犬が隣人をかんだ事件を取り上げましたが、
    https://taniharamakoto.com/archives/1181
    飼い犬の管理は、飼い主の責任です。

    飼い主が損害賠償責任を負います。

    飼い犬が起こした事故というと、「かまれた」ことを想像する人が多いと思いますが、必ずしも、かまれなくても損害賠償請求は可能です。

    今年1月、以下のような判決が出されています。

    2008年1月、男性が原付バイクで走行中、前方から中型犬が近づいてきたため、避けようとしが接触し転倒。左足を骨折した男性が飼い主の女性に対して治療費など損害賠償を求めた裁判で、福岡地裁は「女性は管理義務を怠った過失がある」として、約1500万円の支払いを命じた。
    (2014年1月17日 読売新聞)

    「うちの犬は噛まないから大丈夫」という飼い主の言い分は通用しないということですね。

    飼い犬が第三者に与えた損害は、飼い主が賠償しなければなりません。

    先の例のように、約5433万円もの賠償命令が出されたら、払える人がどれだけいるでしょうか?

    破産するしかありませんね。

    でも、破産したら、噛まれた人は、どうなるでしょう?

    ひどい怪我を負って治療費もかかり、後遺症も残って、お金を払ってもらえないとしたら?

    そんな事態は避けなければなりません。

    さらにこわいこともあります。

    さらに、前出の高松市の事件では、刑法上、飼い主は「重過失傷害罪」に問われる可能性があります。

    重過失とは、重大な過失のことで、「注意義務違反」の程度が著しいことをいいます。

    重過失と認められた過去の判例としては、闘犬用の犬2頭を農作業中に放し飼いにしていたところ、犬が隣接する公園で幼女2名を襲い、うち1名を死亡させ、他の1名に傷害を負わせた事案があります。(那覇地沖縄支判平7・10・31判時1571-153)

    飼い主が、飼い犬の行為で刑罰を受ける可能性がある、ということです!

    「可愛い子には旅をさせよ」と言いますが、可愛い愛犬には、決して旅をさせてはいけません。

    「犬も歩けば賠償金を払う」のです。

    きちんと鎖でつなぎ、決して他人に危害を与えないようしっかり管理しておくことが、愛犬を、そして飼い主を守ることになる、ということを肝に銘じておきましょう。

  • 駐車違反をすると、クルマが消えます。

    2014年02月27日

    今回は、法律がいかにわかりにくいかの一例をご紹介したいと思います。

    条文を読まないといけないので、少し大変ですが、「法律って大変だな~(>_<)」ということがわかると思います。 道路交通法では、駐車違反をしたら車両の使用者(所有者)に「放置違反金」が科せられます。 多くの人は、「なんで自分なんだ」とぶつぶつ言いながら、支払を済ませることでしょう。 しかし、督促状を無視して違反金を払わず滞納していると、銀行口座などを差し押さえられてしまいます。 もし、その銀行口座に預金残高がなかったら? 先日、こんな記事がありました。 「車両差し押さえ、ネット競売も 千葉県警、違反金滞納撲滅へ」(2014年1月27日 産経新聞) 先月、千葉県警は駐車違反をした車両の使用者(所有者)に課せられる「放置違反金」の滞納を減らすために、長期間未納を続ける悪質な滞納者に対し、車両を差し押さえてインターネットオークションに出品する取り組みを始めました。 落札金を未納の放置違反金の回収に充てることで、「逃げ得」を許さない狙いのようです。 県警交通指導課によると、県内の放置違反金の滞納件数は2013年末時点で約2万2千件。金額では約3億1千万円に上るとのこと。 納付期限を過ぎても支払われない場合、これまでは金融機関の口座や給与の差し押さえで回収を行ってきたようですが、口座が見つからないといったケースがあることから、車両を差し押さえ、インターネット競売サイト「ヤフー官公庁オークション」へ出品する取り組みを導入したということです。 去る1月15日、放置違反金を約4年間、計8万8千円滞納していた千葉市の40代女性に対し、初めて車両の差し押さえを実施。直後に全額が納付され、オークションへの出品には至らなかったそうですが、早速効果が現れたことで、千葉県警は今後も積極的に実施していきたいとしています。 同様の取り組みは京都府警や愛知、埼玉両県警が先行して実施しており、未納金の回収に一定の効果を上げているようです。 駐車違反をするということは、自動車を持っているということです。 それを差し押さえるのが、放置違反金の回収にはもっとも簡単かもしれません。 しかも、違反者は自動車を使っています。自動車がなくなってしまうと、かなり不便ですね。 任意の支払が期待できるところです。 では、各府警、県警はどのような法的根拠により車をオークションで競売にかけているのでしょうか? 各条文を見ていきましょう。 「道路交通法」第51条の4(放置違反金) 第14項 前項の規定による督促(放置違反金の督促)を受けた者がその指定期限までに放置違反金並びに同項後段の延滞金及び手数料(以下この条及び第51条の7において「放置違反金等」という。)を納付しないときは、公安委員会は、地方税の滞納処分の例により、放置違反金等を徴収することができる。この場合における放置違反金等の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。 「地方税の滞納処分の例により」とあるので、次に「地方税法」を見てみましょう。 「地方税法」第331条 1.市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。 6.前各項に定めるものその他市町村民税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については、国税徴収法に規定する滞納処分の例による。 今度は、「国税徴収法」が出てきましたね。「国税徴収法」を探します。 「国税徴収法」第94条(公売) 1.税務署長は、差押財産を換価するときは、これを公売に付さなければならない。 2.公売は、入札又はせり売の方法により行わなければならない。 ついに、たどり着きました。まるで、ミステリー小説の謎解きのように感じませんか? 駐車違反金について調べようとして、道路交通法を見ると、「地方税法を見よ」となり、地方税法を見ると、「国税徴収法を見よ」となっているのです。 まるで、誘拐事件で、犯人から、「カネを持って9時に●●公園の電話ボックスに行け」と言われ、指定の時間に行くと、公衆電話が鳴って「15分以内に●●駅の電話ボックスに行け」と言われるような感じです。 法律が難しいといわれるゆえんです。 我われ弁護士も裁判のための資料を作成するときは、条文や判例を読みまくって、根拠となるものを探します。 弁護士は法廷でかっこよく弁論しているイメージがあるかもしれませんが、普段は、カップラーメンをすすりながら六法全書をひっくり返しているネクラな仕事なのです。 それはさておき、放置違反金の滞納者は、これまで見たように、車がネットオークションにかけられても、法的には文句は言えないということです。 自動車のドライバーは、事故に気をつけることはもちろん、愛車を守るためにも、交通規則を守るようにしていただきたいと思います。

  • アダムとイブと不正アクセス禁止法

    2014年02月19日


    ダメ!といわれるとやりたくなる、見るな!といわれると見たくなる…

    これは人間という種の悲しい性(さが)かもしれません。

    古今東西、人間は同じ過ちを繰り返してきました。

    2000年以上前の古代に書かれたといわれる「旧約聖書」の『創世記』に登場する、アダムとイブ。

    最初の人間とされる、アダムとイブは禁じられた「善悪の知識の実」を食べてしまったばかりに、楽園から追放されてしまいました。

    一方、現代の2014年2月、サイバー世界のシステムに不正にアクセスして見てはいけないデータを見てしまった男が書類送検されました。

    「東京外大の成績盗み見、男子学生を書類送検 “正当に評価されているか見たかった」(2014年2月10日 産経新聞)

    昨年10月、東京外国語大学の学内システムが不正にアクセスされ、学生の成績が盗み見られた事件で警視庁サイバー犯罪対策課は、同大国際社会学部2年の男子学生(20)を不正アクセス禁止法違反容疑で2月10日、書類送検しました。

    サイバー犯罪対策課によると、男子学生は成績や講義の時間割などを閲覧できる学内の「学務情報システム」を偽装したフィッシングサイトを作成。

    学生222人に「不具合が生じた」とメールを送信しサイトに誘導。入力されたIDとパスワードを自分のメールに転送させていたようです。

    男子学生は、こうして不正に入手した学生55人分のIDとパスワードで同大のシステムに不正にアクセス。

    「自分の成績に不満があった。正当に評価されているか確かめたかった」と容疑を認めているということです。

    サイバー犯罪は近年、大きな問題となっています。

    そこで2000年に施行されたのが「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(通称、「不正アクセス禁止法」)です。

    許可なく他人のIDとパスワードを使ってインターネットを通じてFacebookやメールシステムなどにアクセスすると犯罪なのです。

    また、そのような不正アクセスをすることを目的として、他人のIDやパスワードを取得することも犯罪です。

    ただ、携帯電話にダウンロードされたメールを見る行為ではありません。「不正アクセス」というくらいですから、インターネットなど通信回線を通じて他人のコンピュータに接続して利用する行為が罰せられます。

    離婚事件などの相談で、配偶者が浮気の証拠をつかもうと、勝手にパスワードを使ってメールを盗み見ている、という相談を受けることがあります。

    なんと、それらのメールが堂々と証拠として提出される場合もあります。

    2013年には、離婚調停中の妻のID、パスワードを使ってメールを盗み見ていた、として、夫が逮捕された事例もあります。

    恋人同士でも、夫婦でも、他人のパスワードを使ってアクセスすると犯罪です。

    禁止されると見たくなる、というのは人間の性かもしれません。

    しかし、鶴の恩返しで、「見ないで欲しい」と言われたのに見てしまった時、鶴はどうなったでしょうか?

    開けてはいけない玉手箱を開けた浦島太郎はどうなったでしょうか?

    いいことありませんね。

    他人のIDとパスワードを使ってアクセスすることは、法律で禁止されているのです。

    決して、見てはいけませんよ。

  • DVで5,000万円の損害賠償が認められた件

    2014年02月12日


    弁護士をしていると、日々さまざまな相談を受けます。

    中には離婚の相談もあるのですが、じつはその中で多いのがドメスティックバイオレンス(DV)の問題です。

    DVは、なかなか人には言えない問題でもあるため、表面化しないだけで実態は想像以上に多いのかもしれないという印象です。

    愛し合って結ばれたはずの2人なのに、暴力でしかつながれないのは悲しいことです。

    紀元前のローマの劇作家、テレンティウスが言ったそうです。

    「恋人同士のけんかは、恋の更新である」と。

    恋が更新されるのは良いことです。更新される度に2人の関係が深まっていきます。

    しかし、これは対等の立場でのけんかを前提にした言葉でしょう。

    2人の関係が対等でない場合は、どうなるでしょうか?

    体力で言えば、女性より男性の方が圧倒的に強いのが通常です。男性が暴力に訴えたら、女性は太刀打ちできません。

    もはや恋の「更新」はありません。

    「恋人への暴力は、恋の契約解除である。そして、損害賠償である」

    となるでしょう。

    そんなDV事件の判決が北海道で出されました。

    「自殺未遂、DVが原因 交際相手に5千万賠償命令、札幌地裁」(2014年2月6日 北海道新聞)
    札幌市の女性(26)が、交際相手の男性(26)からのDVを苦に自殺を図り、重度の障害を負ったとして、5千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が、5日に札幌地裁でありました。

    裁判長は、「女性は暴力を受け思い詰めていた。自殺は予見可能だった」と指摘して、請求通り全額の支払いを命じたもようです。

    報道によると、2人の交際は2008年5月ごろからスタート。

    しかし、間もなく男性が女性を怒鳴ったり、殴ったりするなどの暴力をふるうようになったようです。

    そして2009年1月、女性は自宅マンション14階の非常階段から飛び降り、意識不明の重体となり、現在も意思疎通が困難な状態が続いているということです。

    男性側は暴行を否定しているようですが、裁判長は女性の友人の証言から「七ヵ月間にわたる暴行で思い詰め、当日も殴られて自殺を図った」と認定。

    また、女性は男性に「いつか自分で自分の命を終わらせてしまいそうで怖い」というメールを送っていたということで、「男性は自殺を予見できた」と結論づけたようです。

    男性は、2011年7月と2008年8月に女性に対して全治1週間のケガを負わせたとして札幌簡裁から罰金20万円の略式命令を受けているそうです。

    DVは、家庭内の問題というだけではなく、一線を超えれば「暴行罪」や「傷害罪」になります。今回の場合、刑法上は「傷害罪」です。

    「刑法」第204条(傷害)
    人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

    犬も食わぬ、という痴話喧嘩で済んでいればいいのですが、暴力によって、あまりに相手を精神的、肉体的に追い詰めすぎると、このような不幸なことになってしまいます。

    ちなみに、DVに関する法律には全30条からなる「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(通称「DV防止法」)があります。

    DVの被害者は女性が多いことから、この法律の前文では「男女平等」「被害者の保護」「女性に対する暴力の根絶」などに触れています。

    たとえ、歪んだ愛の形の果てがDVだとしても、暴力は絶対に許されることではありません。

    「法は家庭に入らず」という法諺があります

    家庭内で窃盗などを行っても、法律では取り締まりをしない(刑が免除される)、ということです。

    しかし、暴力は別です。法がずかずかと家庭に入ってきて取り締まります。

    特に男性諸氏は肝に銘じておきましょう。

    口喧嘩で頑張るのです。

    どうしても口喧嘩で勝てない時は、次の本を読んでみるとよいでしょう。

    「弁護士の論理的な会話術」(あさ出版)谷原誠著
    http://www.amazon.co.jp/dp/4860633997/

    もし、口喧嘩が嫌だ、ということであれば、上手に交渉してみましょう。
    次の本が参考になるでしょう。

    「弁護士が教える気弱なあなたの交渉術」(日本実業出版社)谷原誠著
    http://www.amazon.co.jp/dp/453404433X/

    それでもダメな場合は、自分の心をコントロールするしかありません。
    そんな時は、この本があなたを導いてくれるでしょう。

    「やっかいな相手がいなくなる上手なモノの言い方」(角川書店)谷原誠著
    http://www.amazon.co.jp/dp/404110565X/

  • 未成年者の飲酒・喫煙で罰せられるのは子供?親?

    2014年02月10日


    タバコがカッコイイ時代がありました。

    永遠の映画スター、ジェームズ・ディーンやローリングストーンズのギタリスト、キース・リチャーズがタバコをふかす姿にあこがれた人もいたでしょう。

    MarlboroのCMもよくできていましたね。

    若い人は信じられないかもしれませんが、昔はどの会社でも禁煙・分煙は行われておらず、みんな自分の机でタバコを吸っていたものです。

    タバコによる焦げ跡がついたビジネスの書類もしばしば目にしました。

    ただ、昔も今も変わらないのは、未成年がタバコを吸うことは法律で禁じられているということ。

    ところが、自分の未成年の息子の喫煙をやめさせないどころか、買い与えていた親が書類送検されるという事件が起きました。

    「未成年の息子の喫煙止めず、母親3人を書類送検」(2014年2月5日 YOMIURI ONLINE)

    2月5日、神奈川県警小田原署は、未成年の息子3人の喫煙を黙認したとして、小田原市内の3人の母親を未成年者喫煙禁止法違反の疑いで地検小田原支部へ書類送検しました。

    報道によると、アルバイト女性(44)は内装工の長男(16)に対して、飲食店従業員の女性は高校生の長男(16)に対して、それぞれ喫煙していることを知りながらやめさせなかった疑い。また、看護助手の女性(44)は中学生の三男(15)の喫煙をやめさせないどころか、タバコを買い与えていた疑いのようです。

    また昨年、このうちの2人少年は、ほかの少年3人とともに市内の中学校のガラス98枚を割ったとして同署に建造物侵入と器物損壊の疑いで逮捕されていたということです。

    お酒もタバコも20歳になってから!

    というのは誰もが知っていることだと思いますが、実際の法律ではどのように規定されているでしょうか。

    「未成年者喫煙禁止法」という法律があります。

    この法律によると、

    ①20歳未満はタバコを吸ってはいけません。
    ②親権を行う者、あるいは親権を行う者に代わって未成年者を監督する者が、未成年者がタバコを吸っていることを知って止めないときは、科料に処す。
    ③販売者はタバコを売る時に年齢を確認することとし、未成年者と知って売った時は、罰金50万円以下。

    となっています。

    当然ですが、お酒に関する法律ももちろんあります。

    「未成年者飲酒禁止法」

    ①20歳未満はお酒を飲んではいけません。
    ②親権を行う者、あるいは親権を行う者に代わって未成年者を監督する者が、未成年者が酒を飲んでいることを知って止めないときは、科料に処す。
    ③販売者はお酒を売る時に年齢を確認することとし、未成年者と知って売った時は、罰金50万円以下。

    ほとんどタバコの場合と同じですね。

    注意しなければいけないのは、タバコを吸ったり、お酒を飲んだりした未成年者本人は罰せられず、親や監督者が罰せられるということです。

    喫煙や飲酒を黙認したり、吸わせたり飲ませたりすることが犯罪だということを、どれだけの親が知っているでしょうか?

    20歳以上の成人のみなさんは、これを機会に、ぜひこの法律も覚えてください。

     

    今回も、最後に「なぞかけ」です。

    ギャンブルとかけまして、

    未成年者のタバコと解きます。

    その心は?

     

    「スッたら、だめ!」

    失礼しました。(*^▽^*)ゞイヤ~

  • 法がダメなら条例で!京都府が盗撮を禁止へ~

    2014年02月03日


    カメラやビデオなど撮影機器の性能が進化したせいもあるでしょう、近年、「盗撮」による犯罪が増加しているように思います。

    ニュースを見ると、毎日全国のどこかで誰かが盗撮している始末。

    そんな状況の中、京都府警が盗撮を禁止する場所を学校や職場など「公衆の目に触れる場所」にまで拡大する府迷惑行為防止条例の改正案を2月議会に提出すると発表しました。

    「学校、職場でも盗撮禁止へ 京都府警、初の条例案」(2014年1月29日 産経ニュース)

    報道によりますと、現行の条例は、盗撮を禁じるスペースを誰でも出入りできる商業施設や駅、電車、バスの中など「公共の場所または公共の乗り物」と規定。

    そのため、平成24年、京都市の中学校の元教諭が校内で盗撮をしていたことが発覚した際、条例が適用できず立件を見送り、路上での盗撮行為で逮捕したことなどの経緯から、条例改正を検討してきたようです。

    改正案では、規定を「公衆の目に触れるような場所」に拡大し、学校や塾の教室、職場、病院や、公衆浴場、公衆便所、デパートの試着室、プールの更衣室など服を着ていない場所も新たに規制対象とするとしています。

    また、罰則も「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」から「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に引き上げる考えのようです。

    ところで、多くの人は何か腑に落ちない気がするのではないでしょうか?

    そもそも、公共の場であろうが、公衆の目に触れる場所だろうが、盗撮は犯罪じゃないのか? ということです。

    じつは、盗撮行為は「刑法」には直接抵触しないのです。

    現状、卑猥目的の盗撮行為を取り締まるには、つぎの3つのどれかで法の裁きを下すしかありません。

    「軽犯罪法」
    さまざまな軽微な秩序違反行為に対して拘留(1日以上30日未満で刑事施設に収容)、科料(1,000円以上1万円未満)に処する法律です。

    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    23.正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

    各都道府県の「迷惑行為防止条例」
    現在、47都道府県すべてで定められています。
    ここでは、京都府の条例をひとつの例として記しておきます。

    「京都府迷惑行為防止条例」
    第3条
    何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しくしゅう恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。

    (4) みだりに、着衣で覆われている他人の下着又は身体の一部(次号において「下着等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、又はこれらの行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、若しくは着衣の中が見える位置に鏡、写真機等を差し出し、置く等をすること。

    第10条
    第3条、第6条又は第8条の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
    2 常習として第3条、第6条又は第8条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

    「住居侵入罪」
    部外者が、盗撮目的で機器設置のために、さく等に囲まれた建造物の敷地に侵入する行為は「住居侵入罪」に該当します。

    「刑法」第130条(住居侵入等)
    正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

    よく学校やデパートなどの女子トイレに侵入して盗撮した人が住居侵入罪で逮捕していますね。

    こうした現状を踏まえてメディアの報道を読むと、今回の京都府警の改正案がなぜニュースになったのか?

    その理由が見えてくるでしょう。

    今は、誰もがいつでも盗撮し、インターネットで瞬時に世界にばらまかれる危険性をはらんでいます。

    法律や条令で取り締まるのも仕方ありませんね。

    法律は完璧ではありません。

    さまざまな事象から議論を重ね、法律の改正をしながら、よりよい社会のために一歩ずつ前進していくものなのです。

    そうしたことを知ると、法律のおもしろさがまたひとつ、わかってくるのではないでしょうか。

    法律や条令などを作ったら、それを伝えるのが政府、地方自治体、マスコミの役割です。

    私もこうやってブログを書き、少しでも法を社会の隅々に届けたいと思っています。

    ルールに則った住みやすい社会になることを祈ります。

  • 職場のいじめは、法律問題です。

    2014年02月02日


    組織のトップ自らが率先してパワーハラスメント(以下、パワハラ)を行っていたという事件が起きました。

    「高校校長、教頭に“バカ”“しゃべるな”暴言で処分」(2014年1月30 朝日新聞デジタル)

    北海道教育委員会は、むかわ町にある高校の男性校長(60)をパワハラで減給(10分の1)1カ月とする懲戒処分を発表しました。

    報道によると、校長は2012年12月ごろから3カ月にわたって、校長室での管理職打ち合わせの際に、「バカ」「しゃべるな」「あんたの給料ください」「おまえをいじめることしか考えていない」などの暴言を繰り返し男性教頭に浴びせかけ、精神的苦痛を与えたということです。

    教頭が道教委に文章で訴えたことで発覚したようで、北海道内では校長がパワハラで処分されるのは初めてのケースとなったということです。

    職場で起こる問題の中でも、近年、問題になっていることのひとつが「パワハラ」です。

    厚生労働省が公表している定義によると、パワハラとは以下のようになります。

    「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」

    パワハラには、上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間などの様々な優位性を背景に行われるものも含まれる、としています。

    具体的には次のような分類を挙げています。

    ①身体的な攻撃(暴行・傷害)
    ②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
    ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
    ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
    ⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
    ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

    今回は、②の精神的な攻撃と言えるでしょう。職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えた発言をしていますね。

    職場のパワハラを予防するために必要なこととしては、以下の5点が挙げられます。

    〇トップのメッセージ
    〇ルールを決める
    〇実態を把握する
    〇教育する
    〇周知する

    今回の件では、学校のトップである校長自らがメッセージを発信するどころか、直接パワハラを実行していたという笑えない事態が発生していたということです。

    ちなみに、今回のようなケースで民事で損害賠償を提起した場合には、慰謝料が認められる場合があります。

    仮に殴るなどしたなら、もはやパワハラにとどまりません。

    「暴行罪「傷害罪」という刑法犯罪になる可能性があります。

    「刑法」第204条(傷害)
    人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

    第208条(暴行)
    暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

    以前は、「部下に対する上司の指導」という暗黙の了解で表面化してくることが少なかったパワハラですが、ここ数年で社会問題化してきています。

    お互いにリスペクトしあっていれば、このような事態にはならないはずですし、お互いに職務に真剣に取り組んでいれば、このような事態にならないはずです。

    上司も部下も人間力の向上が肝要。相手を思いやる気持ちが大切ですね。

  • いじめアンケート問題の判決で学校や行政の隠蔽体質に痛烈な一撃

    2014年01月25日

    2011年10月、滋賀県大津市でいじめを受けた男子生徒(当時13歳)が自殺をした問題はマスメディアで大きく取り上げられ、社会に大きな波紋を投げかけました。

    事件後、学校は自殺の原因究明のために全校生徒を対象にした「いじめアンケート」を行ったようです。

    その際、中学校側からアンケートの内容を口外しないとの確約書を取られ精神的苦痛を受けたとして、男子生徒の父親(48)が市に対して100万円の損害賠償を求めていた訴訟の判決が先日、大津地裁でありました。

    報道によると、判決が出たのは1月14日。

    裁判長は、「原因調査のためアンケートを利用しようとした親の心情は理解できる。一切の利用を禁止した確約書は違法で、また、個人名以外まで不開示とした処置も不適切」として、父親の訴えを認め、市に対して30万円の支払いを命じました。

    父親は、生徒が自殺した約2週間後、学校から全校アンケート結果を受け取る際、「個人情報が含まれ、部外秘にする」との確約書の提出を求められ、さらには、情報公開請求をして開示された資料も大半が黒塗りされ、活用できなかったとしています。

    市は「適切な情報開示ができなかった結果、遺族の心情を損なった」として遺族に謝罪しているということで、市長は「遺族にあらためておわびしたい」と述べ、控訴しないことを表明したようです。

    生徒の父親は、「いじめに関するアンケートの開示を後押しする画期的な判決」、「自殺原因の調査を阻む確約書は違法だという司法判断は、(遺族の)『知る権利』確立にとって大きな第一歩」と述べ、判決の意義を強調。

    また、「全国の自治体や教育委員会はプライバシーを理由に非公開の範囲を拡大し、いじめの調査を阻んできた」、「司法判断を重く受け止め、今後はいじめアンケートの積極的な開示を進めてもらいたい」とも語ったようです。

    真偽は確認できておりませんが、この大津市の事件後、複数の同級生が行った、さまざまな事実が報道されました。

    〇体育館で男子生徒の手足を縛り、口を粘着テープで塞いで虐待を行った。
    〇男子生徒の自宅から貴金属や財布を盗んだ。
    〇自殺後も男子生徒の顔写真に穴を開けたり、落書きをしていた、など。

    また、学校と教育委員会の隠蔽体質が問題視されました。

    〇クラスの担任は、自殺した生徒から相談を受けたり、暴力によるいじめの報告を受けていたにも関わらず、適切な対応を取らなかった。
    〇担任は、自殺後の保護者説明会に出席せず、遺族への謝罪もないまま直後に休職してしまった。
    〇学校と教育委員会は、いじめには気づかなかった、知らなかったと主張し続け、ケンカだと認識していたと説明。当初、自殺の原因はいじめではなく家庭環境が問題と説明していた、など。

    これまでも、子供が子供に対して行った暴力行為は、大人たちが「いじめ」や「ケンカ」で済まそうとしてきました。

    しかし、これが大人の場合であればどうでしょうか?

    いじめられた子が怪我をした場合、被害者が訴え出れば「傷害罪」になります。

    逮捕され前科がつくかもしれないし、民事で争われれば損害賠償請求の対象になります。これは当然、犯罪です。

    それを、「いじめ」の一言で済ましてしまった瞬間、犯罪ではないかのような気がしてきます。

    教育の問題であり、学校内で解決すべき問題のように思えてきます。

    隠蔽し、見て見ぬふりをして済ましてしまおうとしてきたのです。

    確かに、あまりに直接的な言葉や表現を控えることは、被害者の精神的苦痛に配慮するという面もあるでしょう。

    しかし、罪状をぼやかし、婉曲表現することで加害者や親に犯罪という自覚がなくなってしまう恐れがあるのも事実でしょう。

    また、マスメディアのこうした報道を読む者、聴く者も、犯罪という印象がなくなってしまう恐れがあります。

    司法、教育、報道など立場は違っても、それぞれの分野で今後検討していくべき大きな問題を、この事件は突きつけているのではないでしょうか。

    報道によると、判決の1週間後の1月22日、大津市は「いじめ防止対策推進法」(2013年9月施行)に基づく、いじめ防止基本方針の素案をまとめたようです。

    市関係者によると、素案には、男子生徒が自殺した際、遺族への学校や市教委の説明が不十分だった反省から、「学校からの情報提供」を義務付けたということです。

    素案には、
    1.児童や生徒の課題を記し、進級時に教諭が引き継ぐ「子どもカルテ」を導入する、
    2.インターネット上のいじめに対応するため、市に有識者会議を設けて対策を検討する、
    3.各学校がネットの専門家を招き、スマートフォンの無料通話アプリの危険性を子どもに指導する、
    などが盛り込まれたといいます。

    今回の判決を機に、学校や自治体による「いじめ」問題に対する取り組み、そして、教育現場の情報開示がどのように進んでいくのか。

    また、被害者や加害者や関係者、さらには多くの一般市民の犯罪への自覚がどう変わっていくのか、今後の動きを注意深く見守っていきたいと思います。

  • くつを投げただけで犯罪になる!?業務妨害には要注意

    2013年12月14日


    「特定秘密保護法案」の採決をめぐって、国会の内も外も大荒れだったようです。

    「国会審議中に靴を投げ込んだ男を現行犯逮捕」

    特定秘密保護法案の審議中、参議院本会議場に靴を投げ入れたとして、12月7日、警視庁麹町署は派遣社員の男(45)を威力業務妨害容疑で現行犯逮捕しました。

    報道によると、男は6日午後10時50分頃、「強行採決するな!」と叫びながら履いていたスニーカーを傍聴席から本会議場に投げ入れ、議事を妨害したということです。

    この日は、他に3人が大声を上げたとして退場させられ参院から厳重注意を受けたようです。

    また、国会の外では法案に反対するデモ活動に参加していた無職の男(27)が、警備にあたっていた機動隊員につばを吐きかけ公務執行妨害の疑いで逮捕されたほか、道を通ろうとしたところを制止した機動隊員に体当たりをした男(63)も現行犯逮捕されたもようです。

    それだけ国民の関心が高かったとともに、法案成立への危機感もあった、ということでしょう。

    さて、「威力業務妨害」とはどのような罪でしょうか。

    刑法234条では、威力を用いて人の業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する、と規定しています。

    国会審議という国会議員の業務を、靴を投げるという威力で妨害したということです。

    では、大相撲で、土俵に向かってみんな座布団を投げる行為は、どうなのでしょうか?

    土俵上での相撲という業務の妨害行為にならないのか?

    これは、なりませんね。

    これは、座布団の舞と言われており、大相撲の取り組みにおいて、横綱が格下の力士に負けた時に、観客が土俵に向かって自らの座布団を投げる行為で、すでに相撲業界での風習になっているために、違法性がありません。

    もちろん相撲の取組中に座布団を投げて、妨害をしたら、威力業務妨害罪になるでしょう。

     

    ところで、「威力業務妨害」にあたる行為には、どのようなものがあるのでしょうか。過去にさまざまな判例があるので、その一部を紹介しましょう。

    〇進行しようとする自動車の前後に石やドラム缶を置いた(東京高判 昭45.2.19判タ249-241)

    〇演劇開始直前に土足で舞台に上がり、演劇を中止させると怒号した(仙台高判 昭25.2.14判特3-114)

    〇競馬場の本馬場に平くぎ一樽をまいた(大判 昭12.2.27新聞4100-4)

    〇タクシー会社の労働争議に際し、車両の車輪を撤去した(東京高判 昭43.11.28高集21-5-605)

    〇デパートの食堂配膳部にヘビ20匹をまき散らした(大判 昭7.10.10集11-1519)

    〇猫の死がいを被害者の事務机引き出し内に入れておき、同人に発見させた(最決 平4.11.27集46-8-623)

    〇国体の開会式場で防犯ブザーを作動させ、発煙筒を点火して投げつけた(仙台高判 平6.3.31判時1513-175)

    〇弁護士から重要書類の入ったカバンを奪取し隠匿した(最決 昭59.3.23集38-5-2030)

    私的には、最後の弁護士のカバンを隠した事例が気になるところです。

    カバンを奪われて隠されたら、私も大迷惑です。完全な業務妨害ですね。

    すぐに刑事告訴ですね。

    他の事例も、大人げないものからホラー的なものまで、人間というのは、じつにさまざまなことをしでかしてしまうものです。

    しかし、たんなる「いやがらせ」では済まないことになってしまえば、法律的には「犯罪者」ということになります。

    おそらくは、面白半分に行ったものか、感情的になって行ったものでしょう。

    普段の生活でも感情に支配されて冷静に考えることができないこともありますが、そんな時は、次の賢人の言葉を思い出しましょう。

    「怒りを感じたら、十数えよ。ひどく怒りを感じたら、百数えよ。それでも駄目なときは、千数えよ。」 トーマス・ジェファーソン

  • 「リベンジポルノ」は罪になります。

    2013年12月11日


    別れた元恋人のプライベート写真や動画をネットに公開する「リベンジポルノ」が問題化しているようです。

    「元交際女性にリベンジポルノ容疑の男を逮捕“裸の写真ばらまく”」

    元交際相手の女性に「交際を続けなければ裸の写真をばらまく」などと脅した容疑で、警視庁青梅署は強要未遂の疑いで無職の男(30)を逮捕しました。男は容疑を認めているということです。

    女性が別れ話を切り出した直後から、男は6日間に4回に渡って携帯電話から写真や動画を添付したメールを送信し、脅していたようです。

    ネットに流出した写真や動画などの情報は完全に回収するのが難しく、いったん流出すると半永久的に世界中でさらされ続けることになります。

    恋人にふられたからといって、その恨みからプライベートな情報をネット上にばらまくことは、卑劣な行為と言わざるを得ません。

    ネット社会の現代、リベンジ(復讐)ポルノの問題は世界各国で起きています。

    アメリカでは、2013年10月1日に施行された「リベンジポルノ非合法化法」によって、嫌がらせ目的で個人的な写真・映像を流出させたとして有罪になると、最高で禁錮6ヵ月もしくは最高1000ドルの罰金刑の対象となりました。

    この法律では、合意の上で撮影された写真であっても写った人の同意なく投稿されれば違法とみなされるそうです。一緒に撮影した写真を、相手の同意を得ず、別れた後にネットに投稿すると違法になるということです。

    ちなみに、同法では流出者と撮影者が同一人物でない限りこの法律は適用されないという制限があるようです。

    日本でも、このリベンジポルノの問題は国会でも取り上げられ、法規制の議論も起きています。

    今年10月、東京都三鷹市で起きた女子高生ストーカー殺人事件で加害者が被害者のプライベート写真と動画をウェブサイトで拡散させたことで一気に問題化しました。

    谷垣禎一法相は、「名誉棄損罪が適用できる。被害者が18歳未満なら、児童売春・児童ポルノ禁止法の可能性がある。現行法で対処できる」と国会で答弁しました。

    では、仮に今回の事件を現行法で見ていくと、どのような罪に問われるでしょうか。

    まず、交際を続けるように強要したので、強要罪が適用されます。

    刑法第223条(強要)
    1.生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

    強要は、しなくても、「裸の写真をばらまくぞ!」などと脅すと、脅迫罪になります。

    刑法第222条(強迫)
    1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

    また、写真の内容によっては、社会的評価を低下させるので、名誉毀損罪にもなりえます。

    刑法第230条(名誉棄損)
    1.公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

    さらに、「裸の写真をばらまかれたくなければ、金を払え!」などと、お金を要求すると恐喝罪になってしまいます。

    刑法第249条(恐喝)
    1.人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
    卑劣な行為をした報いは、やはり、罪に問われることになるのです。

    「そんな写真撮らせなければいいのだ」という声もありますが、2人の関係性から断れない場合もあるでしょうし、知らないうちに撮られている場合もあるでしょう。

    やはり、そのような行動自体を罰する方が合理的だと思います。

    少し前に、店の冷蔵庫などに入って写真を撮り、Twitterなどにアップロードする行為が話題になりました。

    インターネットとソーシャルメディアが発達して個人が容易に全世界に意見などを発表することが容易になりました。

    それは良いことですが、その反面として、情報拡散が容易であるがゆえの危険性も高まっています。

    情報が容易かつ無限に拡散するインターネットの危険性を、1人1人が十分認識することが必要です。

    社員教育や学校教育にも取り入れてゆくことも必要ではないでしょうか。