ペットを捨てても拾っても犯罪になる!?では、どうすれば!?
夏目麻衣さん(仮名 26歳)は子どもの頃から動物好きで、中でも猫が大好きでした。
夏目さんの住むマンションではペットを飼うことは禁止されていましたが、猫好きの彼女は、拾ってきた2匹の子猫を内緒で飼っていたのです。
ところが、ある日、管理人に見つかってしまい、管理組合からペットを飼わないよう要求されました。
動物愛護センターに届けてしまえば、この子たちは殺処分になってしまうかもしれない……でも、もういっしょにいることはできない……
悩んだ末、夏目さんは近所の空き地に段ボール箱を置き、その中に2匹の子猫を入れて立ち去りました。
「ごめんね…許してね…」
彼女の頬を涙がつたいました。
数日後、夏目さんの部屋のチャイムが鳴りました。
「警察ですが」
突然、彼女の部屋に警察が踏み込んできたのです……
「捨て猫“逃がして”で書類送検…行政担当者困惑」(2014年5月20日 読売新聞)
愛知県動物保護管理センター知多支所の男性支所長(53)が、県警東海署の男性職員(59)に対し、同署に届けられた捨て猫を逃がすようそそのかしたとして、動物愛護管理法違反(遺棄)の教唆容疑で名古屋地検に書類送検されていたことがわかりました。
報道によりますと、事件が起きたのは2013年10月頃。
愛知県大府市で段ボール箱に入れられ、捨てられているメスの子猫を獣医師が発見。東海署会計課に届けました。
男性職員が知多支所長に保護を依頼したところ、支所長は「病気やケガがなく、自力で生きていけるような場合は引き取れない」と拒否。「逃がしてください」と、猫を遺棄するようそそのかしたということです。
そこで男性職員は、近くの畑に子猫を遺棄。支所長と同じく動物愛護管理法違反(遺棄)容疑で書類送検されたとのことです。
猫を捨てただけで書類送検!? と思う人も多いでしょうが、じつは動物愛護に関する法律があるのです。早速、条文をみてみましょう。
「動物の愛護及び管理に関する法律」第44条
1.愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
3.愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。
「愛護動物」は、以下のように規定されています。
①牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
②人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの
金魚など魚類は、愛護動物に含まれないんですね。
ちなみに、動物愛護管理法の第36条(負傷動物等の発見者の通報措置)では、道路や公園などの公共の場所で病気やケガをした犬や猫、または死体を発見した者は、すみやかに通報しなければならない、とあります。
発見者には、通報義務(努力義務)があるわけです。これは覚えておいてください。
ところで、冒頭の夏目さんのケースですが、彼女は初め子猫2匹を拾ってきました。
じつは、ここにも犯罪の危険性があるのです。
法律上、ペットは「物」なので、捨て犬や捨て猫を拾ってくると刑法の「遺失物等横領罪」になるかもしれません。
他人の物を横領した人は、1年以下の懲役、又は10万円以下の罰金、若しくは科料に処される可能性があります。
とにかく、拾ったものは何でも自分の家に持って帰らずに、届けるようにしたほうがいいですね。
さて、その後の報道によると今回のようなケースでは、各自治体の対応がバラバラで統一されていないという問題が露呈してきたようです。
愛知県の大村知事のコメント
「今回の行為は遺棄にあたるとは考えていない。職員に違法性はない」
岐阜県生活衛生課の担当者のコメント
「保護すれば、殺処分される可能性もある。飼い主がいるかもしれない猫をむやみに引き取るわけにはいかない」
三重県食品安全課の担当者のコメント
「法律で捨て犬や捨て猫の引き取り義務が明記されている以上、原則として引き取る」
そのうえで三重県は、飼い主を探したり譲渡先を見つけたりすることに力を注いでいるということで、福岡県や神奈川県も基本的には引き取っていると説明しているようです。
同じ行為をしても、書類送検になる場合とならない場合があるようでは行政の担当者も困ってしまうでしょう。
また、札幌市では昨年、飼い猫をノラ猫と間違えて殺処分した例があるようです。
管轄する環境省では、「遺棄にあたるかどうか、現実には判断が難しいケースもある。問題点があれば対処する必要を感じている」と説明しているようですが、これだけペットを飼う人が多く、また遺棄するケースが増えている現代では、法律の決まりを明確にする必要がありますね。
少なくとも法律を執行する行政機関で見解がわかれるなど、ナンセンスと言えるでしょう。
どこからが遺棄にあたり、どこまではあたらないのかの解釈について、環境省から通達発信することを望みます。
いずれにしても、犬や猫を捨てるのは犯罪である、ということは憶えておきましょう。