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  • 地蔵契約に要注意。

    2018年06月30日

    今回は、お地蔵さんと契約書のお話をします。

    といっても昔話ではありません、法律に関するお話です。


    【事件の概要】
    「“悪霊たたり”と祈りや地蔵契約、被害数千万か」(2018年6月28日 読売新聞)

    岩手県警は、「悪霊のたたりがある」と電話の勧誘で不安をあおり、おはらいなどの契約を必要書類を渡さずに結んだとして、首都圏に住む20~50歳代の男女11人を特定商取引法違反(書面不交付)の疑いで逮捕しました。

    事件が起きたのは、今年(2018年)3月初旬頃。
    暴力団関係者を含む男女11人は共謀して、東京都内の事務所から近畿地方の60歳代の無職女性に電話をかけ、数十万円でおはらいや地蔵の建設などをするよう持ちかけたということです。

    岩手県警は2017年12月、岩手県南部の女性から「電話でお祈りを持ちかけられて金を払ったが、不安になった」と相談を受けたことで捜査を開始。

    捜査線上に浮かんできた男女11人は、内容を示した書面を渡さずに契約を結び、代金を郵送などで送らせておきながら地蔵は立てていなかったことから同容疑で逮捕し、さらに詐欺容疑も視野に捜査をしているとしています。

    被害者は全国に50人以上で、容疑者らは1件あたり数十万~数百万円の契約を持ちかけており、被害額は数千万円以上に上る見込みで、同県警は被害状況や集めた金の流れを含め霊感商法の実態を調べているということです。

    それだけ地蔵を建てたい人がいるということでしょうが、庭に地蔵がいたら、怖い気もします。

    【特定商取引法とは?】
    先祖の悪因縁(カルマ)や悪霊のたたりがあると言って相手を不安にさせて、つぼや数珠、水晶などの商品を高額で売りつけたり、除霊と称してインチキな祈祷をするという、いわゆる霊感商法が問題になったのは1970年代後半でした。

    霊感商法への苦情や相談が、日本各地の国民生活センターや消費生活センターに相次いで寄せられたことから表面化し、1980年代には国会でもたびたび取り上げられたことで社会問題となったものです。

    人の弱みにつけ込む悪徳な手口ですが、今回の事件では特定商取引法が適用されています。

    まずは条文を見てみましょう。

    「特定商取引に関する法律」
    第4条(訪問販売における書面の交付)
    販売業者又は役務提供事業者は、営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたとき又は営業所等において特定顧客から商品若しくは特定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたときは、直ちに、主務省令で定めるところにより、次の事項についてその申込みの内容を記載した書面をその申込みをした者に交付しなければならない。ただし、その申込みを受けた際その売買契約又は役務提供契約を締結した場合においては、この限りでない。(以下省略)


    これに違反した場合は、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます。(第71条)

    特定商取引法は、1976(昭和51)年に施行された法律で、正式名称を「特定商取引に関する法律」といいます。

    この法律の目的は、訪問販売など業者と消費者間でトラブルが生じやすい取引について、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることです。
    勧誘行為の規制など事業者が守るべきルールと同時に、クーリングオフなどの消費者を守るルールなどについても定めています。


    【特定商取引の形態】
    この法律で特定商取引として定義しているのは次のものです。

    ・訪問販売(キャッチセールスやアポイントセールスを含む)
    ・通信販売
    ・電話勧誘販売
    ・連鎖販売取引(いわゆる、マルチ商法やネットワークビジネス等)
    ・特定継続的役務提供(エステサロン、語学教室、学習塾、家庭教師、パソコン教室、結婚情報等)
    ・業務提供誘引販売取引
    ・訪問購入(貴金属や着物など不用品の訪問買い取り等)


    【特定商取引の行政規制】
    特定商取引法では、事業者に対して次のような規制を行なっています。

    ・氏名等の明示の義務付け
    勧誘開始前に、事業者名や勧誘目的であることなどを消費者に告げるように義務付けています。

    ・不当な勧誘行為の禁止
    価格や支払い条件等についての不実告知(虚偽の説明)、故意に告知しないこと、相手を威迫、困惑させる勧誘行為などを禁止しています。

    ・広告規制
    広告をする際、重要事項の表示を義務付け、また虚偽や誇大な広告を禁止しています。

    ・書面交付義務
    契約締結時に重要事項を記載した書面を交付することを義務付けています。

    また、事業者と消費者間のトラブル防止、消費者救済のために次のことが認められています。

    ・消費者による契約の解除(クーリング・オフ)
    ・消費者が誤認し、契約の申し込みや承諾の意思表示をした場合の取り消し
    ・消費者が中途解約する際などに事業者が請求できる損害賠償額の上限の設定

    今回は、このうち、契約締結時に重要事項を記載した書面を交付する義務を怠った、ということでしょう。

    地蔵に関する重要事項を読んでみたいところです。

    【契約書の重要性】
    法的には、法人を含む人と人の間で権利義務を発生させる合意を「契約」といいます。

    当事者間で意思表示の合致があれば、契約の内容は自由に決めることができますし、じつは契約書がなくても契約は成立します。
    これを「契約自由の原則」といいます。

    つまり、契約というのは「口約束」でも成立するわけですが、これはとても危険です。
    トラブルにまで発展すれば、大抵の場合「言った」、「言わない」、「そんな契約はした覚えはない」、「話が違う」といった争いになってしまうからです。

    そうしたトラブルや紛争を未然に防ぐためにも、契約書は作成するべきです。
    また、仮に裁判になった場合は、契約書や覚書、合意書などの書面が重要な証拠になります。

    なお、契約に関してトラブルになった場合は弁護士などの法律の専門家に相談することをお勧めします。

    契約書が必要な場合はその用途に応じて400種類の書式をダウンロードできるサービスがありますので、ぜひ利用してください。

    詳しくはこちら⇒「マイ法務」
    https://myhoumu.jp/

  • 飲食店で勝手にゲームをやらせると犯罪!?

    2018年06月14日

    ゲームバーという形態のお店があるようですが、経営者などが逮捕されるという事件が起きたので解説します。

    さて、その逮捕容疑とは?

    「著作権法違反容疑でゲームバー経営者逮捕 京都と神戸4店舗」(2018年6月13日 毎日新聞)

    京都府警と兵庫県警は、家庭用ゲーム機を置いた「ゲームバー」と呼ばれる飲食店で、著作権者の許可を得ずに客にゲームをさせたとして、京都市内の2店舗と神戸市内の2店舗の経営者ら男4人を著作権法違反(上映権の侵害)容疑で逮捕した。

    逮捕されたのは、京都市内の経営者(32)と店長(29)と別店舗の経営者(32)、さらに神戸市の経営者(31)の計4人。
    両府県警によると、4人とも容疑を認めているという。

    いずれも、今年(2018年)4月、飲食物を提供するとともに、店内に「ニンテンドースイッチ」や「プレイステーション4」などを設置し、ゲームソフトを貸し出して遊ばせていたが、著作権を持つ任天堂(京都市)やカプコン(大阪市)などに使用の許可を取っていなかった。

    ゲーム会社などでつくる「コンピュータソフトウェア著作権協会」は、これまでゲームバーに対して警告を出すなどの対策を行なってきたが、4店舗は従わなかったため、協会が両府県警に相談していた。

    京都府警によると、ゲームバーの摘発は全国初だという。


    まずは、今回の違反行為に抵触した条文を見てみましょう。

    「著作権法」
    第22条の2(上映権)
    著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。

    これに違反した場合は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処され、またはこれらが併科されます。

    ◆著作権は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的としています。(第1条)

    ◆著作権は、特許権や商標権などとともに知的財産権とも呼ばれます。

    ◆著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができます。(第63条1項)
    また、許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができます。(第63条2項)

    ◆著作権における著作物とは次のものなどをいいます。(第10条)

    1.小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
    2.音楽の著作物
    3.舞踊又は無言劇の著作物
    4.絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
    5.建築の著作物
    6.地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
    7.映画の著作物
    8.写真の著作物
    9.プログラムの著作物

    ◆上記、著作物の著作権者に無断で次の権利を侵害するのは違法です。

    「著作権に含まれる権利の種類」
    ・複製権(第21条)
    ・上演権及び演奏権(第22条)
    ・上映権(第22条の2)
    ・公衆送信権等(第23条)
    ・口述権(第24条)
    ・展示権(第25条)
    ・頒布権(第26条)
    ・譲渡権(第26条の2)
    ・貸与権(第26条の3)
    ・翻訳権、翻案権等(第27条)


    この数年、カラオケ動画や音楽教室、飲食店などの店舗、結婚式などのイベント等での音楽の使用と著作権が問題になっていますが、法律上、今回のようなゲームバーという形態の店舗でも著作権者の許可を取らずに無断で使用すれば、逮捕される可能性があるということです。

    なお民事としては、著作権者は「差止請求権」(著作権法第112条)や「損害賠償請求権」(民法第709条)などを求めることができます。

    憶えておきたいものです。

    そうしないと、

    ゲームバーが、「ゲームオーバー」になってしまいます。(>_<)

  • 迷惑行為防止条例違反⇒嫌がらせ行為の禁止について

    2018年06月01日

    嫌がらせ行為による事件が相次いでいるようなので法的に解説します。

    「小学校講師と妻、近所の男性宅前に生ゴミ投棄」(2018年5月30日 読売新聞)

    近所に住む会社員男性(57)の自宅前にビニール袋に入った生ごみなどを投棄したとして、福岡県小郡署は男(56)と、その妻(44)を県迷惑行為防止条例違反(嫌がらせ行為の禁止)の疑いで逮捕した。

    被害者男性が、「今年になって十数回ゴミを置かれた」と同署に被害申告したことから防犯カメラの映像などを解析したところ、今年(2018年)4月22日午後11時半頃と5月3日午前5時頃の2回、夫婦の犯行が浮上した。

    男性は「夫婦との間にトラブルがあった」と説明。
    一方、容疑者の男は「何も話したくない」とし、妻は「間違いない」と容疑を認めているという。


    「同僚女性のロッカーに体液塗ったタオル 容疑の会社員逮捕 栃木」(2018年5月30日 産経新聞)

    同僚女性のロッカーに体液を塗り付けたタオルを置いたとして、栃木県警下野署は男(34)を県迷惑防止条例違反(嫌がらせ行為)の疑いで逮捕した。

    事件が起きたのは、2017年12月半ば~2018年1月下旬。
    容疑者の男は勤務先の会社で、20代の女性が使っている個人ロッカーの中に自分の体液を塗り付けたハンドタオルを3回置いた疑い。
    女性が会社を通じて同署に通報し、防犯カメラの映像などから男が割り出された。
    男は「間違いありません」と容疑を認めている。

    2人は部署が異なり、女性は容疑者についてはよく知らなかったという。


    まずは条文を見てみましょう。

    「福岡県迷惑行為防止条例」
    第8条(嫌がらせ行為の禁止)
    何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、次に掲げる行為を反復して行ってはならない。(後略)

    6 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。


    これに違反した場合は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第11条2項)

    「栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例」
    第7条(嫌がらせ行為の禁止)
    何人も、特定の者に対する嫌悪、嫉妬その他これらに類する感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次に掲げる行為を反復して行ってはならない。

    5 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。


    これに違反した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第9条1項)
    常習で違反した場合は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第9条2項)

    迷惑防止条例は、それぞれ名称に若干の違いはありますが、現在では47都道府県すべてで定められているものです。

    どの都道府県でも基本的には、公衆に著しく迷惑をかける行為等を防止し、各都道府県民の生活の安全と平穏を保持することを目的として制定されています。

    禁止される行為には、卑わいな行為や粗暴行為、不当な客引き行為などがありますが、その中に嫌がらせ行為も規定されています。

    では、どのような行為が嫌がらせになるのかというと、次のようなものがあります。

    「“うそつきばばあ”何度も暴言疑い…86歳逮捕」(2017年4月5日 読売新聞)

    兵庫県警西宮署は、西宮市の無職の女(86)を県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕した。
    容疑は、2017年の1月10日~2月16日に、同じ通りに住む近所の会社員の女性(61)に対し、「うそつきばばあ」、「謝れ」などと叫ぶなどの嫌がらせを繰り返したというもの。
    容疑者の女は、女性が自治会役員だった2010年頃、自宅の前にごみ捨て場が移設されたことに腹を立て、女性が出勤する際などに罵声を浴びせるようになったという。

    詳しい解説はこちら⇒「人に対する暴言は、犯罪を構成する

    「父親に金の無心、2千万円超 容疑で40歳男逮捕」(2017年7月3日 神戸新聞)

    兵庫県警伊丹署は、嫌がる父親(72)の元へ再三、金の無心に行ったとして、次男で住所不定、無職の男(40)を逮捕した。
    男は何度も実家に帰ってきては「金がない」、「仕事が決まった。これが最後」などと父親に懇願して食費や交通費を要求していた。
    その後、父親が同署に相談し署員が直接、男に注意したところ、「もう父親のところには行かない」と誓ったものの、さらに金を要求するなどしたため、父親が「我慢の限界」として被害届を提出した。
    同署は、こうした条例を親族間で適用するのは異例としている。

    詳しい解説はこちら⇒「親子間での嫌がらせ行為で逮捕

    「駐車場で6回排泄…そのまま放置 兵庫県迷惑防止条例違反容疑で無職男逮捕」(2017年4月19日 産経新聞)

    兵庫県警加東署などは、2017年3月から4月に計6回、貸駐車場で用を足した後、排泄物をそのまま放置したとして、加東市の無職の男(56)を兵庫県迷惑防止条例違反(嫌がらせ行為)容疑で逮捕した。
    防犯カメラに用を足す男の姿が映っており、駐車場を管理する男性(48)が被害届を提出していた。


    「好きな女性と勘違い、別人待ち伏せ 警備員の容疑者逮捕」(2018年5月21日 朝日新聞)

    徳島県警徳島名西署は、面識のない女性に待ち伏せを繰り返したとして、徳島市の警備員の男(61)を県迷惑行為防止条例違反(嫌がらせ行為)の疑いで逮捕した。
    男は、2018年4月15日~5月20日の間に少なくとも3回、徳島市の50代女性の自宅に押しかけたり待ち伏せしたりしたが、以前、同じ職場だった別の女性の自宅と勘違いしていたという。


    嫌がらせが犯罪になることを知らない人が多いと思います。

    しかし、以上のように嫌がらせに犯罪が成立し、逮捕されることがあるので、十分注意しましょう。

    ちなみに、東京都迷惑防止条例の嫌がらせについては、次のように規定されています。

    第五条の二 何人も、正当な理由なく、専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、不安を覚えさせるような行為であつて、次の各号のいずれかに掲げるものを反復して行つてはならない。この場合において、第一号及び第二号に掲げる行為については、身体の安全、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下この項において「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限るものとする。

    一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。

    二 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

    三 連続して電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること。

    四 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

  • あおり運転は、一発免停!?

    2018年05月24日

    今回は、交通違反による点数の累積がなくても、「あおり運転」をすると一発で運転免許が停止になる可能性があると、いうことについて解説します。

    ドライバーのみなさんは要注意です。

    「“あおり”免停9倍ペース 警察庁指示後、1~3月」(2018年4月26日 共同通信)

    各都道府県の公安委員会が、交通に危険を生じさせる恐れがある「あおり運転」などで今年(2018年)1~3月に免許停止の行政処分とした件数が13件に上ったことが警視庁のまとめでわかりました。

    ここ4年間で、あおり運転による行政処分は年間4~7件だったことから考えると、今年は例年のおよそ9倍のペースで増加しているということです。

    2017年に交通死亡事故に発展する恐れがあるあおり運転が社会問題化。
    警察庁は昨年12月、免許停止の行政処分の積極的な適用と取り締まりの強化を全国の警察に指示しましたが、各警察本部が交通違反としての摘発のほか、行政処分との両面から悪質で危険な運転の封じ込めに乗り出していることが裏付けられる結果だといえます。


    【あおり運転が社会問題化】
    自動車を走行中に、「後方からの追い上げ」、「急な割り込み」、「幅寄せ」、「蛇行運転」などをして相手に対して威嚇、嫌がらせ、仕返しなどをする危険で悪質な行為であるあおり運転は、道路交通法(第26条)の「車間距離の保持」に違反する行為であり、以前から問題になっていました。

    それが社会問題化したのは2017(平成29)年6月、神奈川県大井町の東名高速道で発生した交通死亡事故がきっかけでした。

    あおり運転に対して社会の厳しい目が向けられる中、警視庁は今年(2018年)1月、各都道府県警に対する文書で、あおり運転の取り締まり強化を指示。
    道路交通法違反だけでなく、より罰則の厳しい危険運転致死傷罪や暴行罪などの容疑の適用も視野に積極的な捜査をする方向に舵を切りました。

    詳しい解説はこちら⇒
    あおり運転に暴行罪が適用
    あおり運転は事故を起こさなくても暴行罪が適用!

    そうした方針の中に、将来的にあおり運転から事故を発生させる可能性があると判断した運転者に対し、道路交通法の免許停止の規定を積極的に適用していくという指示もあったわけです。


    【危険性帯有者への免停処分とは?】
    日本の道路交通法には、交通違反をした場合に「点数制度」というものがあります。

    点数制度では、自動車やバイク、自転車などの車両を運転して犯した交通違反の種類、度合いに応じて点数が決められています。
    運転者の過去3年間の累積点数から所定の基準に達した場合に、運転免許の停止や取り消し等の行政処分が行われます。

    詳しい解説はこちら⇒
    違反点数3点以下の軽微な交通違反一覧①


    ドライバーの中には交通違反を犯しても、「まだ〇点あるから免停にはならない、大丈夫だ」などと考える人もいると思います。

    しかし、自動車を運転することで著しい危険を生じさせるおそれがあると判断された場合は「危険性帯有者」として交通違反による点数の累積がなくても最長180日間の免許停止処分を行なうことができるのです。

    「道路交通法」
    第103条(免許の取消し、停止等)
    1.免許(仮免許を除く)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。(以下、省略)

    八 前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき。

    このような運転者を「危険性帯有者」ということがあります。
    なお、前各号には次のような人や行為があります。(第103条1項1~7号)

    ・幻覚の症状を伴う精神病(政令で定めるもの)
    ・発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気(政令で定めるもの)
    ・上記以外で自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
    ・認知症
    ・目が見えないこと、その他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として政令で定めるものが生じている者
    ・アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
    ・重大違反唆し等をしたとき(飲酒運転や救護義務違反、共同危険行為などの重大違反行為を、そそのかしてやらせること)
    ・道路外致死傷をしたとき(道路外とは、工場の構内や港湾内の埠頭、駐車場などの場所をいう)

    この規定を適用した結果、免許停止の行政処分件数が激増しているというわけですね。

    警視庁は、あおり運転を抑制するために、あらゆる法令を駆使し、さらには京都や静岡をはじめ、群馬、岐阜、愛知、福島、佐賀などの各府県警でヘリコプターを使った上空からの取り締まりも行なっています。

    危険な悪質運転や交通トラブルをきっけとした暴力行為などについては、今後も取り締まりが厳しくなっていくと思われます。

    ドライバーのみなさんには、心の余裕を持ってハンドルを握ってほしいと思います。

  • 意外と厳罰!あおり運転。

    2018年05月10日

    今回は、あおり運転は非常に危険な行為であり、かつ重大な犯罪であるということについて解説します。

    「東北道であおり運転、前に割り込み急ブレーキで追突させる 会社役員の男逮捕」(2018年5月8日 産経新聞)

    福島県警高速隊は、山形県の会社役員の男(28)を自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の疑いで逮捕しました。

    事件が起きたのは、今年(2018年)3月20日午前0時10分頃。
    福島県郡山市の東北自動車道下り線で、男は乗用車を運転中、前方の大型トラックを数分間あおった後、前に割り込み急ブレーキをかけて自車に追突させ、40代の男性運転手の腰などにケガを負わせたということです。

    トラックの運転手が「あおられている」と110番通報した直後に追突事故は起きたようで、同県警高速隊が目撃者の証言やドライブレコーダーの記録を調査し、容疑者を割り出したとしています。


    そもそも、あおり運転は道路交通法違反となる行為です。

    「道路交通法」
    第26条(車間距離の保持)
    車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

    これに違反した場合、一般道では5年以下の罰金(第120条12号)、
    高速道路では3月以下の懲役または5万円以下の罰金(第119条1項1号の4)が科されます。

    あおり運転の危険性については以前から指摘されていたことでしたが、
    厳罰化の方向に進んだ背景には、2017(平成29)年6月に神奈川県大井町の東名高速道で起きた悪質なおあり運転による死亡事故があります。

    詳しい解説はこちら⇒
    あおり運転は事故を起こさなくても暴行罪が適用!

    この交通死亡事故の後、警視庁は今年(2018年)1月、各都道府県警に対する文書で、あおり運転の取り締まりを強化し、危険運転致死傷罪や刑法の暴行罪などの容疑の適用も視野に積極的な捜査をするよう指示をしました。

    今回の事件では、危険運転致傷罪での逮捕ということですので、自動車運転死傷行為処罰法について見ていきましょう。

    「自動車運転死傷行為処罰法」
    第二条(危険運転致死傷)
    次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。

    四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為


    自動車運転死傷行為処罰法は、正式名称を「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」といいます。

    相次ぐ悪質な危険運転による悲惨な交通事故を抑制するため、以前から刑法に規定してきた「危険運転致死傷罪」と「自動車運転過失致死傷罪」を抜き出し、新たな類型の犯罪を加えて、2014(平成26)年5月20日に施行された法律です。

    自動車運転死傷行為処罰法の詳しい解説はこちら⇒
    自動車運転死傷行為処罰法の弁護士解説(2)

    この条文を見ていただければわかると思いますが、あおり運転で事故を起こして怪我をさせた場合、最高刑が懲役15年と大変重い罪になっています。

    あおり運転は、自動車を運転していて、他の自動車にかっとなってやってしまうことが多いと思うのですが、その結果、最高懲役15年という危険運転致傷罪の適用になる可能性があるということです。

    ちなみに、事故の結果、他人を死亡させた時は、最高刑20年の懲役となっています。

    自動車を運転していると、気が大きくなってしまう人もいると思いますが、場合によってはとても重い罪を犯してしまう危険があることを十分認識しましょう。

  • 職場の飲み会での喧嘩で会社に損害賠償義務が?

    2018年04月29日

    職場の飲み会で暴行事件が起こったとき、当人同士に責任があるのは当然ですが、それを超えて、会社にまで責任問題が発展することがあるのでしょうか?

    そうした問題に対し、ある判決が出たので解説します。

    「忘年会での暴行“会社に責任”…“業務の一環”」(2018年4月23日 読売新聞)

    事件の経緯は次の通りです。

    ・2013年12月、東京の海鮮居酒屋で正社員として働いていた男性(50)が上司の店長から忘年会に誘われた。

    ・当日は休みの予定だったが、「他の従業員も9人全員が参加する」と言われ、「参加しますよね?」と念を押されたこともあって参加することにした。

    ・忘年会は1次会が深夜から焼き肉店で開催、2次会は午前2時30分頃からカラオケ店で始まった。

    ・2次会の席で男性は酔った同僚から仕事ぶりを非難され、「めんどくせえ」と言い返すと、殴る蹴るの暴行を受け、肋骨を折るなどのケガを負い、約3週間後に退職した。

    ・2015年3月、職場の同僚だった加害者は傷害罪で罰金30万円の略式命令を受けた。

    ・同年8月、被害者の男性は居酒屋の経営会社と同僚に対して約177万円の賠償を求めて提訴。
    これに対し、同社側は「業務外の私的な会合で本社に報告がなく、忘年会も禁じていた」と主張した。

    ・東京地裁は今年(2018年)1月22日の判決で、忘年会への参加を店長から促され、本来は休みだった従業員を含む全員が参加した経緯を重視。
    「2次会は電車もない時間に始まり、全員が2次会にも参加せざるを得ず、1、2次会とも仕事の一環だった」と判断。
    さらに、「会社が忘年会を禁じても会社は使用者責任を負う」として、約60万円の支払いを同社と同僚に命じた。

    男性は取材に対し、「会社員として上司に誘われて自分だけ忘年会に参加しないのは難しい。判決が忘年会を業務と認めたのは当然だ」と話しているということです。


    以前は、「同じ釜の飯を食べた仲間」とか「酒は人間関係の潤滑油」といわれたように、食事やお酒を共にすることで職場のコミュニケーションを図ることが普通に行なわれていたと思います。

    しかし近年では、従業員たちの意識の変化にともない、職場の宴会には出席したくないという人も増えているようです。

    そこでポイントになってくるのが、職場での宴会は果たして業務なのかどうなのか、という問題です。

    今回、会社の責任が認められた根拠は、使用者責任ということです。

    「民法」
    第715条(使用者等の責任)
    1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

    つまり、飲み会において従業員が他の従業員に対して暴行したことが、「事業の執行について第三者に加えた損害」と認定された、ということです。

    最高裁昭和44年11月18日判決は、仕事中の暴力行為に関し、「事業の執行行為を契機とし、これと密接な関連を有すると認められる行為によつて加えた」場合には、「事業の執行について」に該当するとしています。

    今回の裁判例でも、参加強制であり、仕事の一環だったと判断されていますので、そうであれば、事業の執行行為を契機として暴行に発展したものと判断でき、使用者責任を認めたものと思われます。

    忘年会や歓迎会、懇親会などは業務なのか、あるいは自由参加なのか、明確な規定のない会社も多いと思います。

    しかし、宴会については建前としては自由参加であっても、実質的には全員参加で断ることができない状況であれば企業に責任が生じる可能性がある、ということは会社の経営陣は知っておいたほうがいいでしょう。

    ちょうど今頃は、新入社員や新しい職場での歓迎会が開かれているかもしれませんが、トラブルなどないように、やはりお酒は楽しく飲みたいものです。

  • 日本でも司法取引が始まります。

    2018年01月25日

    日本の司法取引制度に関する法案に動きがあったようなので解説します。

    「司法取引6月1日に導入 政府、政令を閣議決定へ」(2018年1月24日 産経新聞)

    法務省は1月24日、司法取引を導入する改正刑事訴訟法について、施行日を6月1日とする方針を固めました。

    司法取引については、施行日を「公布から2年以内」としていましたが、政府は近く施行日を定めた政令を閣議決定するということです。

    【司法取引とは?】
    司法取引とは、逮捕された容疑者や起訴された被告人と検察官が司法における取引をすることです。

    具体的には、容疑者や被告人が共犯者らの犯罪を明らかにするために捜査機関に証拠の提出や供述などをした場合、その見返りとして検察官は起訴を見送ったり(不起訴処分)、求刑を軽減したりできるというものです。

    【司法取引制度成立の背景】
    アメリカ映画などを見ていると、司法取引の場面が描かれていることがありますが、これまで日本では司法取引は法律で認められていませんでした。

    しかし、証拠収集手段の適正化や多様化、充実した公判審理の実現などを目指し、2016(平成28)年5月に成立した「改正刑事訴訟法」に、検察と警察の取り調べの録音・録画(可視化)の義務付けとともに司法取引の導入が盛り込まれました。

    ちなみに、改正刑事訴訟法は2017(平成29)年6月に公布されています。

    【対象となる犯罪】
    ・薬物・銃器関連の犯罪
    ・贈収賄、汚職、背任、脱税、談合などの経済犯罪
    ・組織犯罪処罰法の組織的詐欺(振り込め詐欺など)
    ・独占禁止法違反
    ・特許法違反
    ・会社法違反
    ・破産法違反
    ・詐欺罪
    ・窃盗罪 など

    【司法取引制度のポイント】
    ・司法取引の協議は、検察官と容疑者・被告人およびその弁護人との間で行なわれ、合意するには弁護人の同意が必要となります。

    ・組織犯罪における主犯格の情報を引き出したり、共犯者の解明に役立つと期待されていますが、一方で嘘の供述で他人を陥れたり、共犯者に自分の罪をかぶせたりといった冤罪を生む危険性も指摘されています。

    従来、日本の刑事手続きでは、自白を重視するあまり過酷な取り調べが問題視されていました。
    そこで、取り調べを可視化することで容疑者への自白の強要を防ぎ、また立証が困難な汚職や背任などの企業犯罪や詐欺などの組織犯罪の捜査の効率化を図るという目的が改正刑事訴訟法にはあります。

    さて、この制度が日本に根付くかどうか、今後の進展を見守りたいと思います。

  • 火炎放射器をむやみに作ると・・・

    2018年01月24日

    社会生活を送るうえでは、作っていいもの、使っていい場所などのルールや一般常識がありますが、それを逸脱したら、たとえ法律に明確な規定がなくても犯罪となる場合があります。

    今回は、そんな事件を解説します。

    「自作火炎放射器“自慢したくて”公園で使用動画」(2018年1月23日 読売新聞)

    神奈川県警横須賀署は、自作した火炎放射器を公園で使用したとして、横須賀市の派遣工員の男(20)を軽犯罪法違反(火気乱用)容疑で横浜地検横須賀支部に書類送検しました。

    事件が起きたのは、2017年8月と9月の未明。
    同市の公園内で、建物などへの延焼の恐れがあることに注意せず、火炎放射器を使って炎を出し、その様子を撮影した映像を動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開。
    「次はガソリンを使う」などと話していたということです。

    容疑者の男は、作り方をインターネットで知ったとみられ、調べに対して「動画を見せて自慢したかった。インターネットで販売もしたかった」などと供述しているようです。

    自作した火炎放射器は鉄やアルミによる金属製で小銃のような形をしており、長さ約60センチ、重さ約3キロ。
    先端の火にガスを使って灯油を霧状に噴射することで火炎を出す仕組みで、同署が行なった実験では2メートルほどの炎が出たということで、ガソリンを使えば、さらに威力が増すとしています。

    では、条文を見てみましょう。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    9 相当の注意をしないで、建物、森林その他燃えるような物の附近で火をたき、又はガソリンその他引火し易い物の附近で火気を用いた者

    本号は「火気乱用の罪」とも呼ばれるもので、ポイントとなるのは次の3点です。

    ①燃えるようなもの
    又は
    ②引火しやすいもの

    ③附近で火をたく、火気を用いる

    建物や森林以外で燃えるようなものといえば、身の回りにたくさんありますが、たとえばこの罪では、数枚の紙や小枝など燃えても公共の危険が発生するようなおそれがないものは該当しないと考えてよいでしょう。

    ガソリン以外で引火しやすいものとは、たとえば灯油、軽油などの石油製品の液体燃料やアルコール類、ガスなどの気体燃料、火薬類などが含まれます。

    また、火をたく、火気を用いる行為については、一般常識として考えられる範囲、程度の注意を払わなかった場合に本号が適用されると考えられます。
    逆に、相当な注意をしていれば本号の罪は成立しないということになります。

    今回のケースでは、火炎放射器の製造や所持を直接的に規制する法律がなかったため、警察は燃えやすいものの近くで火を使った者を罰する「火気乱用の罪」に踏み切ったということですが、公園で火炎放射器を使ったら、いくら「相当の注意を払っていた」と弁解しても、それは認められないでしょう。
    2メートルの炎が飛び出すというのですから、危険極まりない行為です。

    なお、火炎放射器で出した炎が近隣の建物などに延焼して火災を引き起こした場合には、刑法の「放火及び失火の罪」や「重過失失火罪」などに問われる可能性があります。

    また、損害賠償責任も発生します。

    詳しい解説はこちら⇒
    放火をしたのに器物損壊罪で逮捕された真相は!?

    失火責任の場合の損害賠償責任は!?(隣人トラブル)


    放火罪は非常に重い罪です。
    最高刑は殺人罪と同様に死刑となるので、安易な火の取扱いは絶対にしてはいけません。

    火炎放射器の歴史は古く、ヨーロッパでは中世の東ローマ帝国、アジアでは宋の時代にすでに兵器として使われていたようですが、現在の形になったのは、1901年にドイツの技師が開発してからだそうです。

    その後、第一次世界大戦、第二次世界大戦、ベトナム戦争でも使用され、大きな被害をもたらしました。

    また、一般には除草や害虫駆除にも使われたようですが、やはり趣味で使ってはいけませんね。

  • 鉄パイプ落下で死亡事故(刑事責任と民事責任)

    2017年12月22日

    今回は、空から落ちてきた鉄パイプによって起きた死亡事故について解説します。

    一体、誰の責任なのでしょうか?

    「鉄パイプ落下死亡事故、現場監督ら2人を書類送検 東京・六本木 警視庁」(2017年12月21日 産経新聞)

    東京都港区六本木のマンション工事現場で、足場用の鉄パイプが歩道に落下し、歩行中の男性(当時77歳)が死亡した事故で、安全対策を怠ったとして警視庁捜査1課は工事を担当したリフォーム会社(川崎市)の現場監督(52)と、足場を組んだ下請け会社(横浜市)の作業責任者(30)の男性2人を業務上過失致死容疑で書類送検しました。

    報道によると、事件が起きたのは、2016(平成28)年10月14日午前9時50分頃。

    現場で足場の解体作業中、作業員が足場板をロープにくくりつけ、高所から降ろす作業をしていた際、つり下げた板が下の階の足場に触れ、留め具の固定が不十分だった「下さん」と呼ばれる部分の鉄パイプ(直径2・9センチ、長さ188センチ、重さ約1・9キロ)が落下。
    約24メートル下の歩行者用の迂回路を歩いていた被害者男性の頭部に直撃し、死亡させたというものです。

    現場監督と作業責任者の2人は、足場を設置した同年6月以降、鉄パイプを固定する留め具の点検を一度も行なっていなかったほか、歩行者の適切な誘導などの安全対策を怠ったようで、調べに対し、「危険性は認識していた」などと話し、容疑を認めているということです。

     

    まずは、該当する条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第211条(業務上過失致死傷等)
    1.業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

     

    業務上過失致死傷罪は、故意ではなく、業務上の必要な注意を怠ったことで傷害、死亡事故を発生させた場合に適用されます。
    今回は、被害者が死亡しているので業務上過失致死罪ということになります。

    街を歩いていると、ビル工事現場に出くわすことがあります。
    上から何か落ちてきやしないかと心配になりますが、そうしたことが現実に起きてしまった事件ということです。

    ところで、今回の報道は刑事事件についてのものですが、このような事故では民事損害賠償の問題になる可能性が高いと思います。

    遺族としては、故人の損害賠償請求権を相続しますので、民事事件とし損害賠償請求を行なうことができます。

    今回の事件の場合、遺族が訴えることができる可能性のある相手は次のようになります。

    ・作業者本人
    ・工事会社の責任者
    ・法人としての工事会社
    ・下請会社の責任者
    ・法人としての下請会社

    作業者本人に対しては、不法行為責任が争点になります。

    「民法」
    第709条(不法行為による損害賠償)
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

     

    法人と責任者に対しては使用者責任が争点になります。

    「民法」
    第715条(使用者等の責任)
    1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

    2.使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

     

    使用者責任は、交通事故や労災事故の損害賠償においても問題になるものです。

    たとえば、加害者が業務中の交通事故の場合、被害者は運転者だけでなく会社に対しても使用者責任を問うことができます。

    また、業務中の事故で従業員が死傷した場合も、被害者や遺族は労災事故として会社の使用者責任を問うことができます。

    民事訴訟の基礎知識として、これらのことは覚えておいていただきたいと思います。

    万が一の事故で、死亡事故や後遺症が残ったことによる民事訴訟の法律相談はこちらから
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  • 殺人未遂に使われた武器・狼牙棒とは?

    2017年11月29日

    今回は、マニアックな武器を使った殺人未遂事件の裁判の判決について解説します。

    「先端にとげ…中国の武器「狼牙棒」で殴打 殺人未遂罪で54歳男に懲役4年判決」(2017年11月27日 産経新聞)

    中国古来の武器「狼牙棒(ろうげぼう)」(全長約186センチ、重量約2.3キロ)で、近くに住むバングラデシュ人男性を殴ったとして殺人未遂罪に問われた千葉県富里市の無職の男(54)に対する裁判員裁判の判決公判が千葉地裁で開かれました。

    判決によると、事件があったのは2017(平成29)年4月13日午後10時50分頃。
    被告の男は同市内の駐車場内で、殺意をもって、狼牙棒を男性の頭にむけて2回振り下ろし、頭蓋骨骨折など全治1ヵ月の重傷を負わせたとしています。

    裁判長は「殺意があったと認定できる」として、懲役4年(求刑懲役8年)を言い渡したということです。

    犯行に使われた狼牙棒という武器は一般的には知らない人が多いでしょう。

    狼牙棒(ろうげぼう)とは、実際に存在する金属製の棒状武器で、棒の先端部分にサボテンのような多数の棘(とげ)がついた紡錘の形をしたおもりを取りつけたもの。今回のサイズは、全長約186センチ、重量約2.3キロ。

    強烈ですね。

    近年では、中国の武装警察にも配備されているようです。

    もともとの起源は古代中国の春秋時代とされ、時代が下った宋の時代(960~1279年)に発達し、その後の明の時代に書かれたとされる伝奇歴史小説『水滸伝(すいこでん)』に登場する猛将・秦明(しんめい)が使いこなす武器としても知られます。

    『水滸伝』には、秦明が狼牙棒で敵を兜や鎧の上から叩き潰すという場面があったりしますが、鉄のおもりで兜や鎧ごと叩き潰し、しかも無数の棘が貫通して肉体を突き刺すわけですから、かなり殺傷能力の高い武器だといえます。

    中国の武装警察、どんな場面で使うのでしょうか。。

    さて、武器の話はこのくらいにして、法律の解説にいきましょう。

    まずは、関係する条文を見てみます。

    「刑法」
    第203条(未遂罪)
    第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。

    第199条(殺人)
    人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

    ちなみに前条とは、第202条(自殺関与及び同意殺人)で、「自殺教唆罪」と「自殺幇助罪」、「嘱託殺人罪」、「承諾殺人罪」などの罪について規定しているものです。

    ところで、未遂罪の場合は刑の減免があります。

    第43条(未遂減免)
    犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

    平成20~23年の殺人未遂の判決を見ると、大体の相場としては、殺人罪の量刑から減軽されて、7年以下の懲役(執行猶予を含む)が判決全体の80%以上を占めるというデータがあります。

    比率としては、3年以下(執行猶予)が31.75%、5年以下が23.16%、7年以下が20.18%で、重いものとしては15年以下が1.93%、13年以下が2.46%、11年以下が5.09%となっています。

    今回の判決では、被告が使用した武器は狼牙棒という殺傷能力が高いものであったことからも、殺意があったと認められたということだと思います。

    ちなみに、武器に関する犯罪としては以前、ヌンチャクに関する事件について解説しています。

    詳しい解説はこちら⇒「ブルース・リーは軽犯罪法違反か?

    なお、仮に人を殺傷しなくても、狼牙棒のような武器を所持、携帯していると軽犯罪法違反などの罪に問われる可能性があります。

    武器が好きな人は、くれぐれも気をつけましょう。

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