ベッキーさん事件は、不正アクセス禁止法違反か? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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ベッキーさん事件は、不正アクセス禁止法違反か?

2016年01月29日

タレントのベッキーさんの不倫騒動、まだまだ止む気配がありませんね。

【情報漏洩した人が問われる罪とは?】
今回の騒動、巷やネットでは

LINEでのやり取りが、どうして流出したのか?
誰が情報を漏らしたのか?
その流出方法は?

ということも話題になっているようです。

情報提供者は、週刊誌では「音楽関係者」、ネット上ではベッキーさんの不倫相手のミュージシャンの妻など、さまざまな噂が飛び交っていますが、誰であるにせよ、個人情報を流出させた人は

「不倫アクセス禁止法」

ではなくて、

「不正アクセス禁止法」

違反に問われる可能性があります。

不正アクセス禁止法は、正式名称を「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」といい、2000(平成12)年2月13日に施行されました。

同法は、インターネットなどのネットワーク上での通信における不正アクセス行為を禁止し、高度情報通信社会の健全な発展に寄与することを目的としています。

ところで、「不正アクセス行為」とは、どのような行為をいうのでしょうか?

許可なく他人のIDとパスワードを使ってインターネットを通じて、LINEやFacebook、Twitterなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やメールシステムなどにアクセスすると…

これは、明らかに不正アクセス行為であり、犯罪になります。

「不正アクセス禁止法」

第3条(不正アクセス行為の禁止)
何人も、不正アクセス行為をしてはならない。

これに違反した場合は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。(第11条)

また、不正アクセスするために他人のIDやパスワードを取得すると…

これも、不正アクセス禁止法に抵触します。

第4条(他人の識別符号を不正に取得する行為の禁止)
何人も、不正アクセス行為の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得してはならない。

これに違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金、となります。(第12条1号)

では、配偶者や恋人、友人などのパソコンやスマホなどを操作して、すでにダウンロードされているメールやプライベートな画像などを「盗み見」すると…

これは不正アクセス行為とはなりません。

また、iTunesなどを使ってスマホの情報を直接スマホからパソコンにバックアップするだけでは、不正アクセス行為にはなりません。

しかし、クローンiPhoneを作って、改めてlineにアクセスし、トークをダウンロードすると、不正アクセス行為となります。

どこが違うのでしょうか?

この違いを知るには、「不正アクセス行為」とは何か、を知らなければなりません。

条文を見てみましょう。

第2条(定義)
4.この法律において「不正アクセス行為」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。

一 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為

 

つまり、パソコンやスマホなどの「機械」を操作することを禁じているのではなく、インターネットなどの「電気通信回線」を通じて情報を送信するような行為を禁じているわけです。

条文に、「識別符号(ID、パスワード)を入力して」とありますが、ここでいう「入力」とは物理的入力ではなく、電気通信回線を通じて対象となる特定電子計算機(パソコンやスマホ等)に識別符号を「送信」してアクセスすることを意味します。

したがって、必ずしも自分の手でパスワードを入力する必要はなく、外部端末から相手のパソコンに接続したり、スマホのLINEを起動させてやり取りをダウンロードしたり、という行為も「送信」に当たり得るため、不正アクセス行為になる可能性があるのです。

浮気を疑って、相手のメールをチェックする人がいるようですが、メールを盗み見るだけでは不正アクセス禁止法違反にはなりませんが、「メーラー」の「送受信」を押して新しいメールをダウンロードする行為は、不正アクセス禁止法違反になるのです。

今回の騒動では、どのように情報が流出したのか、その手口も話題になっていますが、法的な観点から見ると、インターネットなど通信回線を通じて他人のコンピュータに不正に接続する行為が罰せられるわけです。

 

【民事裁判では損害賠償請求が飛び交う事態に発展!?】
また、民事裁判では、ベッキーさんと相手のミュージシャンは、個人情報を流出させた人に対して「プライバシーの侵害」で慰謝料など損害賠償請求することができる可能性があります。
さらに、2人の関係が不倫であった場合、ミュージシャンの妻はベッキーさんに対して慰謝料請求することができます。

さらに、ミュージシャンの妻は、夫に対して離婚請求や慰謝料請求などをすることができるでしょう。

そうした不貞行為は、「民法」第770条(裁判上の離婚)の1により離婚の原因として認められます。

第770条(裁判上の離婚)
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。

詳しい解説はこちら⇒「不倫相手にいくら慰謝料請求できるか?」
https://taniharamakoto.com/archives/1666
まだ真実は明らかになっておりませんが、ベッキーさんの芸能活動にはかなりの打撃になることは間違いありません。

自分の行動には、全ての場合に、その行動の結果としての責任がつきまといます。

常に、自分の行動がどのような結果を招くのかを予想しておくことが必要ですね。