帰れと言われて帰らないと不退去罪で逮捕される!?
今回は、少し珍しい? 罪について解説します。
「不退去罪」といいます。
一体、どんな罪なのでしょうか?
「ラーメン店対応に立腹、3時間居座る 容疑で男逮捕 明石署」(2015年11月8日 神戸新聞NEXT)
兵庫県警明石署は、ラーメン店の対応に腹を立て、約3時間も店に居座り続けた会社員の男(32)を不退去の疑いで現行犯逮捕しました。
事件が起きたのは、11月8日。
男は、明石市内のラーメン店に午前4時ころに来店。
餃子の次にラーメンを出してくれるように注文したところ、ラーメンを先に出されたため男性店長(33)と口論。
午前7時ころ、110番通報で駆けつけた同署員が説得したが応じなかったため逮捕されたということです。
食べる順番に相当なこだわりがあったのでしょうか、それとも虫の居所が悪かったのでしょうか…いずれにせよ、罪は罪です。
では、条文を見てみましょう。
「刑法」
第130条(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
・住居侵入罪は、正当な理由がなく住居などに不法に侵入した場合に成立します。
・一方、不退去罪の場合は、適法に又は過失により立ち入った場合に限られ、不法に侵入した場合は成立しないことに注意が必要です。この場合には、住居侵入罪が成立するためですね。
・不退去罪は、退去の要求を受けたら直ちに成立するものではなく、要求を受けた者が退去するのに必要な合理的時間、たとえば荷物を整理して持つ、服を着る、靴を履くなどの時間が経過して初めて成立するとされます。
・住居だけでなく、たとえば門柱や塀の内側、庭などの塀で囲まれた敷地内も不退去罪の対象になります。
ところで、この罪が成立するにはどんな状況が考えられるでしょうか?
たとえば、労働者と使用者間での労働争議において、使用者側の業務遂行を妨害するような不退去行為。
しつこい訪問販売業者や新聞などの勧誘、布教活動のため居座り続ける行為。
会社や店舗などにやってきて、いつまでも帰らないクレーマー。
これらの行為は、不退去罪になる可能性があります。
ただし、不退去罪を前提として退去を要求することができるのは、当該建物の管理権を有する者であるため、会社や店舗などの場合は、管理権者からの指示に基づいて退去を要求しないと不退去罪に該当しない可能性もあるので注意が必要です。
仮に相手に非があったとしても、住居や会社、店舗などに居座り続けると犯罪になる可能性があることは覚えておいてください。