自転車の飲酒運転で車の免許が免停に!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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自転車の飲酒運転で車の免許が免停に!?

2015年07月02日

酒に酔って自転車に乗った男性が免停になったようです。

もちろん、自転車の免許じゃありませんよ、自動車免許です。
一体、どういうことでしょうか?

「自転車の飲酒事故で免停=自動車運転も危険と判断-都公安委」(2015年6月25日 時事ドットコム)

東京都公安委員会は、自転車の飲酒運転でバイクと衝突し、バイクの男性を死亡させたとして重過失致死容疑で書類送検されたアルバイト男性(30)について、道路交通法に基づき運転免許を180日間停止する処分にしました。

事故が起きたのは、2015年1月22日午前0時50分頃。
現場は、杉並区上高井戸の甲州街道。

酒を飲んで自転車を運転して斜め横断した男性が、走行してきたバイクと衝突。
バイクを運転していた男性(36)を転倒させ、死亡させたということです。

警視庁は6月1日に書類送検していましたが、都公安委員会と警視庁は飲酒自転車運転の悪質性と、被害者が死亡したという結果の重大性を考慮し、「自動車の運転でも事故を起こす恐れがある」と判断したようです。

自転車の危険運転を理由に、自動車運転免許の停止処分が出されるのは警視庁で2例目だということです。
自転車の飲酒運転で、自動車免許を停止されるとは大袈裟じゃないかと思う人もいるかもしれませんが、これは法律で規定されています。

まず、自転車であっても飲酒運転は道路交通法違反となります。

「道路交通法」
第65条(酒気帯び運転等の禁止)
1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
第117条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

1.第65条第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。)にあったもの。
詳しい解説はこちら⇒「自転車でも飲酒運転は禁止です」
https://taniharamakoto.com/archives/1961

次に、免許停止に関する条文を見てみましょう。

第103条(免許の取消し、停止等)
1.免許(仮免許を除く)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。(以下、省略)
次にあげる人や行為などが対象となります。

・幻覚の症状を伴う精神病(政令で定めるもの)
・発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気(政令で定めるもの)
・上記以外で自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
・認知症
・目が見えないこと、その他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として政令で定めるものが生じている者
・アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
・重大違反唆し等をしたとき(飲酒運転や救護義務違反、共同危険行為などの重大違反行為を、そそのかしてやらせること)
・道路外致死傷をしたとき(道路外とは、工場の構内や港湾内の埠頭、駐車場などの場所をいう)
・運転が、著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき
など。

今回は、報道からは、詳しくわかりませんが、「運転が、著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき」を適用したのでしょうか。
近年、自転車の危険・悪質運転への罰則が厳しくなっています。

2014年9月には、兵庫県西宮市で自転車に乗って歩行者に衝突して、そのまま立ち去ったとして市職員の男性が180日間の自動車免許停止処分を受けています。

また、愛知県警は2015年6月1日から、自転車の飲酒運転をした人で自動車免許を持っている場合は、30~180日の期間の範囲で免許停止とするルールを運用していくとしています。

自転車も免許制にするべきだという人もいますが、それはともかく、安易な気持ちで自転車に乗ることが重大事故を引き起こす原因にもなることは確かですから、くれぐれも用心して自転車に乗ってほしいと思います。