ストーカー規制法が改正!SNSへの書き込みも規制対象に!
以前から問題点も指摘されていた「ストーカー規制法」の改正案が成立したようなので解説します。
「ストーカー規制、SNSも対象 罰則強化の改正法が成立」(2016年12月6日 朝日新聞デジタル)
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やブログなどへのメッセージ送信もからんだ深刻な被害が後を絶たないことを受け、新たにSNS上での執拗な連続書き込みなどによる「つきまとい行為」を禁止する「改正ストーカー規制法」が衆院本会議で全会一致で可決されました。
SNSなどインターネット上の新たなコミュニケーションツールの発達、広がりにともなって被害の態様が多様化していることが改正の背景にあります。
「ストーカー規制法」は2000年の成立以降、今回が2度目の改正になりますが、今回は罰則の強化や禁止命令の手続きの迅速化なども盛り込まれたようです。
そもそも、ストーカー規制法は1999(平成11)年に起きた「桶川ストーカー殺人事件」をきっかけに、2000(平成12)年11月に制定された法律です。
その後、2012(平成24)年に発生した「逗子ストーカー殺人事件」を受けて、2013(平成25)年6月に1回目の改正法が成立しています。
今回の改正は、今年(2016年)5月に東京都小金井市で起きた、音楽活動をしていた女子大生に対しファンを自称する男がツイッターなどのSNS上でストーカー行為を繰り返したあげく、ナイフで20カ所以上を刺して重体に陥らせた事件がきっかけのひとつでした。
被害者の女性は、男がSNSへ執拗な書き込みを続けていることについて警視庁に相談していたにもかかわらず事件を防げなかったことに対して社会的な批判が相次いだのは記憶に新しいところです。
では、主な改正内容について具体的に見ていきましょう。
「規制行為の改正点」
今回、新たに次の「つきまとい行為」が規制対象に追加されています。
・拒まれたにもかかわらず、連続してSNSやブログにメッセージを送ったり、書き込んだりし続ける行為(第2条)
・住居付近をみだりにうろつく行為(第2条)
これまでの現行法では、「つきまとい行為」として次の8つの行為が規定されていました。
①待ち伏せ、尾行、および自宅や勤務先を見張り、押し掛けること。
②行動を監視していると告げる行為。
③面会や交際、その他義務のないことを行うことの要求。
④著しく粗野、乱暴な言動。
⑤無言電話、連続した電話・FAX・メール。
⑥汚物・動物の死体等の送付。
⑦名誉を害する事項の告知。
⑧性的羞恥心を侵害する事項の告知、わいせつな写真・文章などの送付、公表。
電話とFAXの他に、2013(平成25)年の改正法からメールが新たに規制行為に追加されていましたが、SNS上の書き込みについてはその内容に違法性がなければ取り締まれなかったため、ストーカー規制法の不備が指摘されていたわけです。
また、今までは「住居等に押し掛けること」のみを規制していましたが、改正案では「住居等の付近をみだりにうろつくこと」も新たに規制されることになります。
「罰則の改正点」
・ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処す。(第18条)
・都道府県公安委員会の禁止命令に従わない場合は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処す。(第19条)
・親告罪規定を撤廃(第13条から削除)
現行の罰則の上限は、6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金となっていますが、これでは刑法の強要罪(3年以下の懲役)や脅迫罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)と比較して刑が軽いという指摘もあったことから、改正法では2倍重くなっています。
また、警察はストーカー行為者に対して警告をすることができるのですが、この警告に従わない場合、都道府県公安委員会は禁止命令を出すことができます。
これにも従わない場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金だったので、こちらも2倍に刑が重くなっています。
さらに、本法は被害者からの告訴が必要な「親告罪」だったのですが、今後は告訴なしに加害者を起訴できるようになります。
「禁止命令の手続きの改正点」
前述のように、これまではまず警察が警告を出し、それでもストーカー行為者が従わない場合に公安委員会の禁止命令が出されるという段取りでしたが、今後は緊急の場合は警告なしに禁止命令を出すことができるようになります。(第5条)
また、禁止命令は警察本部長や署長に委任して行わせることも可能になったことで迅速な対応ができるようになります。
「情報提供の禁止について新設」
何人(なんぴと)もストーカー行為をする、または繰り返す恐れのある者に対して、被害者の名前、住所などの情報を提供することを禁止する条項が新設されます。(第7条)
ということで、SNSやブログのメッセージや書き込みで、恋愛感情などをもとに、本人から拒まれているにもかかわらず連続して送信している人は、今後、刑事責任を問われる可能性があります。
そして、警察としては、この改正を周知するため、早期に第一号の適用を目指すと思われます。
くれぐれも違反にならないよう、相手に拒まれたら、いさぎよく諦めましょう。