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自転車死亡事故で禁錮2年、執行猶予4年

2018年08月28日

今回は、自転車による死亡事故で有罪判決が出たという報道について解説します。

「元女子大学生に有罪=スマホ自転車で死亡事故-横浜地裁支部」(2018年8月27日 時事通信)

スマートフォンを操作しながら自転車を運転し、女性に衝突して死なせたとして重過失致死罪に問われた元女子大学生(20)の判決が横浜地裁川崎支部であり、禁錮2年、執行猶予4年(求刑禁錮2年)が言い渡されました。

判決によると、事件が起きたのは2017年12月7日。
元女子大学生は電動アシスト自転車で走行中、川崎市麻生区の歩行者専用道路で、当時77歳の女性に衝突して転倒させ、2日後に脳挫傷などで死亡させました。

その際、元女子大学生は左耳にイヤホンをした状態で、右手に飲料の容器を持ち、左手でスマホのメッセージを送受信しながら少なくとも約33秒間走行し、スマホをポケットにしまった直後に事故を起こしたとしています。

裁判長は、「歩行者を死傷させ得るとの自覚を欠いた運転は自己本位で過失は重大」と指摘したものの、時速約9キロと比較的低速であり、被告が反省の弁を述べていることなどから執行猶予付き判決としました。
なお、元女子大学生は事故後、大学を自主退学したということです。

判決後、被害者女性の娘(49)は取材に対し、「判決は母の命の重さに比べて軽いと思う。法律が時代に合っていない」と話したということです。


【統計データから見る自転車事故】
警察庁交通局が公表している統計データ「平成29年における交通死亡事故の特徴等について」によると、2017(平成29)年の自転車関連事故件数は9万0407件で、全交通事故に占める割合は19.1%になっています。

前年(平成28年)は、9万0837件で18.2%ですから、比較すると事故件数は減少傾向にあるもの、割合としては増加していることがわかります。

また、自転車事故の相手当事者は、自動車が84%でもっとも多く、以下、二輪車(5%)、歩行者(3%)、自転車同士(3%)、自転車単独(2%)となっています。

なお、自転車側には法令違反も多く、安全不確認、一時不停止、信号無視、交差点安全進行義務違反などがあったということです。


【交通事故に関連する法律】
次に、法的な面から考えてみます。

今回の法定刑は「重過失致死罪」です。
関連する条文を見てみましょう。

「刑法」
第209条(過失傷害)
1.過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。

第210条(過失致死)
過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。

第211条(業務上過失致死傷等)
1.業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。


過失により人にケガをさせた場合は過失傷害罪、死亡させた場合は過失致死罪になります。

重過失致死罪は、重大な過失(重過失)によって人を死亡させた罪のことです。
ある行為をする際に、法律上要求される注意義務を著しく欠いている場合、重過失と判断されることになります。

ところで、交通事故に関する法律には「自動車運転死傷行為処罰法」や「道路交通法」などがあります。

詳しい解説はこちら⇒
「自動車運転死傷行為処罰法の弁護士解説(2)」
https://taniharamakoto.com/archives/1236/
自動車運転死傷行為処罰法には、「危険運転致死傷罪」や「過失運転致死傷罪」が規定されていますが、今回なぜこれらの刑罰が適用されなかったのかというと、自動車ではなく自転車だったからです。

しかし、自転車だからといって気軽な気持ちで運転していると、今回の事故のように相手を死傷させてしまうこともあります。

被害者やご遺族は大きな悲しみと損害を受けることになりますが、一方の当事者である加害者も大きな代償を背負うことになります。


今回の事件のように、加害者は逮捕や在宅起訴をされて、悪質性が高い場合は実刑を受け、実名を報道されることがあります。

さらに加害者は、慰謝料などの損害賠償金を被害者に支払うことになります。
死亡事故や、高次機能障害、脊髄損傷などの重大な後遺障害の場合は億単位の金額になることもあります。

交通事故では、被害者とご遺族、そして加害者も人生が大きく変わってしまいます。
関わったすべての人を不幸にしてしまうのが交通事故なのです。

自動車の運転は気をつけていても、自転車の運転はよそ見をしたり、信号無視をしたり、あるいは見通しが悪くても確認しなかったり、という人も多いように思います。

しかし、自転車と歩行者がぶつかって、歩行者側の当たり所が悪いときには、本件のような重大事故となり、刑事処罰を受ける可能性がある、ということを憶えておきましょう。