東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士25人が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は約30冊あります。
TV 出演、取材、執筆、番組の法律監修を常時受け付けていますので、ご連絡ください。
会話を制する質問力
ブログ内検索

弁護士法律解説 リーガルアイ

 

卑わいな言動(迷惑防止条例)は、危ない


2017年11月2日

今回は“おもちゃ”を使った犯罪について解説します。

おもちゃはおもちゃでも……

「“驚くのが快感”玩具使って下半身露出装う 古物商の63歳男を書類送検」(2017年10月30日 産経新聞)

大阪府警枚方署は、枚方市の古物商の男(63)を大阪府迷惑防止条例違反(ひわいな言動など)の疑いなどで書類送検しました。

事件があったのは、2017(平成29)年3月30日と6月27日の午前。
男は枚方市の路上で、男性器を模した玩具を使い下半身を露出したように装ったということです。

同署によると、男は実際には衣服は脱いでいなかったものの、周辺の防犯カメラの画像などから容疑者として浮上したようです。

男は、「2年半ぐらい前からやっている。女性に見せると相手が驚くのが快感だった」などと供述し、容疑を認めているということです。

 

迷惑防止条例は名称に違いはありますが、現在47の都道府県すべてで定められています。
その目的は、各都道府県民に対する迷惑行為や暴力行為などを防止し、生活の安全と秩序を維持することとなっています。

「大阪府迷惑防止条例」
第6条(卑わいな行為の禁止)
1.何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

四 前三号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること。

これに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第17条1項2号)

とは言え、今回は、局部を露出したわけではなく、局部を露出したように装っていただけで、見えていたのは、おもちゃです。

一体何が「卑わいな言動」だったのでしょうか。

最高裁平成20年11月10日判決を見てみましょう。

この事件は、平成18年7月21日午後7時ころ,旭川市内のショッピングセンター1階の出入口付近から女性靴売場にかけて、当時27歳の女性客の少なくとも約5分間、40m余りにわたって付けねらい、背後の約1ないし3mの距離から、右手に所持したデジタルカメラ機能付きの携帯電話を自己の腰部付近まで下げて、細身のズボンを着用した同女の臀部を同カメラでねらい、約11回これを撮影した、というものです。

北海道の迷惑防止条例違反に問われた事件です。

要するに、女性の臀部をズボンの上から撮影した、ということです。

この事件で、最高裁は、「被告人の本件撮影行為は、・・・・社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり、これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるものといえる」として、有罪にしています。

この基準から考えると、たとえ身体を露出していないとしても、男性器を模した玩具を使い下半身を露出したように装う行為は、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり、これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるものといえるでしょう。

そこで、迷惑防止条例に違反する、と判断されたのでしょう。

ちなみに、過去の報道で、迷惑防止条例違反に問われたものには、次のようなものがあります。

・帰宅途中の小学1年生の女児(6)に声をかけ、腕や腰を触った69歳の男が群馬県迷惑防止条例違反(卑猥な行為の禁止)の疑いで逮捕。
(2017年5月28日 産経新聞)

・2011(平成23)年6月、17年前から約4000人の女児に「唾の研究をしている」などと声をかけ、500人以上の唾を収集していた男が東京都迷惑防止条例違反(常習ひわい行為)容疑で逮捕。
(2017年1月24日 産経新聞)

・靴に仕込んだ小型ビデオカメラで小学生女児のスカートの中を撮影しようとした男が大阪府迷惑防止条例違反(ひわいな言動)容疑で逮捕。
(2014年7月20日 産経新聞)

・10年間毎日、若い女性にわいせつな電話をかけ続けていた男(72)が、奈良県迷惑防止条例違反容疑で逮捕。
(2016年12月19日 産経新聞)

・側溝の中で寝そべり、側溝のふた越しに女性の下着を仰ぎ見ていた男が兵庫県惑防止条例違反容疑で逮捕。
(2015年12月7日 産経新聞)

実際に触ったり、局部を露出したり、というようなことをしなければ迷惑防止条例に違反しないと思っている人もいるでしょうが、「卑わいな言動」というのは意外に広い概念です。

他人が嫌悪するような行為は法律違反になる可能性があるので、いたずら半分に行わないように気をつけましょう。

SNSのなりすまし行為で名誉毀損に。


2017年9月14日

SNS上で何者かが自分なりすまし、他の利用者を罵倒する書き込みをしていたら…あなたはどうしますか?

今回は、誰にでも起こるかもしれないSNSでの「なりすまし事件」の民事訴訟について解説します。

「SNSでなりすまし、他人を罵倒 名誉権侵害で賠償命令」(2017年8月30日 朝日新聞)

長野県在住の男性が、「インターネット上の掲示板に、自分になりすまして投稿され肖像権などを侵害された」として、大阪府枚方市の男性に723万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が大阪地裁でありました。

裁判所は、「社会的評価を低下させ、名誉権を侵害した」として被告側に130万円の支払いを命じました。

事件があったのは、2015年5月。
原告男性がSNS「GREE(グリー)」で使用していたプロフィール画像の顔写真や登録名を、被告男性が無断で使ってなりすまし、掲示板に「お前の性格の醜さは、みなが知った事だろう」などと別の利用者を罵倒する内容の書き込みをしたということです。

「正当な目的なく顔写真を使い、男性が他者を根拠なく侮辱、罵倒して掲示板の場を乱す人間であるとの誤解を与えるような投稿をした」と指摘し、原告男性の肖像権、名誉権を侵害したと結論づけました。

なお、原告男性は今回の訴訟に先立ち、2015(平成27)年10月にSNS運営会社に対し、発信者情報の開示を求めて大阪地裁に提訴しており、一審は棄却したものの、2016(平成28)年10月に大阪高裁の開示命令判決を受けたことで、被告を特定して損害賠償を求める訴訟を起こしていたとうことです。

 

まずは、民事における損害賠償請求について見ていきましょう。

民法の規定により、名誉を侵害された場合は不法行為による損害賠償を請求することができます。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

第710条(財産以外の損害の賠償)
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

第723条(名誉毀損における原状回復)
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

 

ここでのポイントは、なりすましをされただけでは一般的には名誉などの権利を侵害されたとはいえないことです。
つまり、今回の事件でいえば、被告がなりすましている間に、原告の「名誉を毀損した」、つまり、「社会的評価を低下させる」ような書き込みをしたかどうかが争点になるわけです。

なお、ネット上の中傷投稿に名誉毀損やプライバシーの侵害の内容が含まれている場合は、「発信者情報開示請求」をすることができます。

詳しい解説はこちら⇒
「中傷投稿やツイートに対抗する法的手段とは?」
http://taniharamakoto.com/archives/1299

ネット上の言動は、バレないと思っている人もいるかもしれません。

しかし、たとえば、ツイッターで爆破予告などをすると、すぐ特定されて、警察等の業務を妨害した、といことで逮捕されたりしますし、今回のように、損害賠償請求を受けたりします。

ネットやSNSの容易性を甘く見て、人生を棒に振らないように気をつけていただきたいところです。

武井咲さん(オスカー)は違約金を支払うのか?


2017年9月6日

女優の武井咲さんとEXILEのボーカル、TAKAHIROさんが結婚したとの報道がありました。

武井さんは妊娠3カ月で、2018年春に出産予定ということです。

おめでたいことですね。

と、思っていたら、マスコミでは、武井さんの所属事務所オスカープロモーションが違約金を支払う可能性があり、その額は10億円もありうる、などと言われています。

「違約金」というのは、約束に違反した場合に支払われる金員ですが、法的には「損害賠償金」の一種です。

損害賠償金には、約束に違反した場合である債務不履行に基づく損害賠償金と、違法な行為を行った場合である不法行為に基づく損害賠償金があります。

では、今回の場合は、どうなるのでしょうか?

登場するのは、

・武井さん
・TAKAHIROさん
・オスカープロモーション
・広告代理店等出演契約先

です。

このうち、TAKAHIROさんは、オスカーとも出演契約先とも何の契約もないので、違約金の話からは除外されます。

そして、契約関係は、

●武井さん - オスカー

●オスカー - 広告代理店等

となっており、

×武井さん - 広告代理店等

ではありません。

したがって、広告代理店等は、武井さん個人に対しては、契約責任を問えません。

違約金請求はできない、ということです。

では、不法行為責任はどうか?

武井さんが、広告代理店等に損害を与える目的で、妊娠していないのに嘘の情報を流してCMをキャンセルさせた、などの場合には、「不法行為」に基づく損害賠償ということもあり得ますが、今回は可能性が低そうですね。

ということは、損害賠償の問題としては、

●広告代理店等 → オスカー

ということになります。

そして、もし、オスカーが広告代理店等に対して損害賠償金を支払った時は、

●武井さん - オスカー

との専属契約書に基づき、オスカーが武井さんに損害賠償を請求する、という可能性もなくはありません。

さて、オスカーと広告代理店との契約関係としては、たとえばCM出演の場合には、「CM出演契約書」などが締結されているはずです。

そこには、出演者を武井さんとし、武井さんのタレントとしての良好なイメージを保持する義務が記載されているのが通常です。

契約によっては、CMの商品を特定し、その商品とのイメージを損なわないようイメージを保持する義務が謳われることもあるでしょう。

商品やサービスのCMで、結婚や出産によりイメージダウンするものがあるとは想定しがたい(離婚情報サービスなどなら別ですが、聞いたことがないですね)ので、イメージダウンを理由として損害賠償、というのは難しいと思います。

たとえば、日弁連も武井さんを起用したCMを作っています。
http://tinyurl.com/y9jbumyj

武井さんが結婚や出産することで、日弁連のイメージが損なわれるか、というと、それはないですね。

もう1つの論点は、オスカーが損害賠償責任を負担するには、契約内容にもよりますが、通常は、オスカーに「故意」や「過失」があることが必要とされます。

オスカーが、武井さんの結婚や妊娠がCMのイメージを損なうことを認識し、かつ、それ故に結婚や妊娠を防止する措置を講じることができることが必要なわけですね。

防止措置を講じることができたのに防止措置をとらなかったというようなことが過失と認定されるわけです。

確かに、プロダクションの専属契約書では、「恋愛禁止」などが盛り込まれることがあります。

そして、アイドルに関し、この恋愛禁止条項に違反した、として、プロダクションがアイドルに対して損害賠償請求をした、という事案があります。

これについては、平成27年9月18日東京地裁判決は、アイドルに対し、65万円の損害賠償を命じ、平成28年1月18日東京地裁判決は、アイドルは損害賠償責任はない、としています。

アイドルやタレントが恋愛や結婚をすると、人気が落ちてしまうのは、仕方のないことかもしれません。

しかし、人間として恋愛、結婚、出産をしたり、しなかったり、というのは、個人の尊厳に基づく幸福追求の権利の一つです。

したがって、これを専属契約期間の全てにわたって契約で禁止するのは、私個人としては、公序良俗に反し、無効だと考えています。

したがって、オスカーには故意も過失もなく、損害賠償責任は発生しないと考えたいと思います。

ただし、出演作品が、体型を強調するCMであったりする場合には、少なくともその間は仕事に支障がないように気をつける義務はあると思いますので、もし、妊娠による体型変化とCM撮影時期が重なるようなことがあると、損害賠償責任の発生の可能性もありえるかもしれません。しかし、そうであれば、事前協議により撮影前倒しなどで対応可能なので、問題は回避できるように思います。

東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所



Copyright© 2013 弁護士谷原誠のブログ All Rights Reserved.