東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は30冊以上あります。
TV出演、取材、出版、研修、セミナー講師を受け付けています。
メニュー
みらい総合法律事務所
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は30冊以上あります。
TV出演、取材、出版、研修、セミナー講師を受け付けています。
  • 会社受付で騒ぐと業務妨害罪です。

    2018年12月07日

    今回は、会社の受付で暴れた男が逮捕されたという事件について解説します。

    「会社受付で騒ぎ、動画撮影 威力業務妨害容疑で男逮捕 警視庁」(2018年 11月29日 産経ニュース)

    警視庁組織犯罪対策3課は、自動車メーカーの受付で騒ぐなどして業務を妨げたとして、東京都の元医師の男(79)を威力業務妨害の疑いで逮捕しました。

    今年(2018年)9月下旬、容疑者の男は渋谷区の自動車メーカーの受付で同社総務担当の50代の男性社員をタブレット端末で撮影しながら、「全部載るから。お前も親も子もいるだろう」などと怒鳴りつけたうえで、動画を動画投稿サイト「YouTube」に投稿するなどし、同社の業務を妨害したようです。

    組対3課によると、容疑者の男は同社の株主で、事件当時は「株主の権利行使」として会社書類の閲覧を要求していたということです。

    男は株主総会で不規則発言などを繰り返す「特異株主」として知られており、上場企業など950社の株を保有。
    今年は約100社の株主総会に出席し、このうち1社で退場命令を受けていたということです。


    【威力業務妨害とは?】
    刑法には、人の業務を妨害する2つの罪が規定されています。

    「刑法」
    第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。


    第234条(威力業務妨害)
    威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。


    第233条は「偽計業務妨害罪」と呼ばれるものです。

    ・虚偽の風説の流布=客観的真実に反するウソの情報や噂を不特定多数の人に伝播させること
    ・偽計=人をあざむく計略
    ・毀損=こわすこと、損なうこと

    会社や店舗、公的機関などに嫌がらせ電話をかけたり、ウソの注文をする、あるいは、コンビニや飲食店でのいたずらを撮影して、その動画をSNSなどに投稿することなどは偽計業務妨害罪に該当します。

    一方、「威力業務妨害罪」は威力を用いて人の業務を妨害する罪ですが、法的な定義では威力とは次のようなことをいいます。

    「人の意思を制圧するような勢力をいい、暴行・脅迫はもちろん、それにまで至らないものであっても、社会的、経済的地位・権勢を利用した威迫、多衆・団体の力の誇示、騒音喧騒、物の損壊・隠匿等、およそ人の意思を制圧するに足りる勢力一切を含む」

    今回は、株主総会で騒いだわけではなく、会社の受付で騒いだことが、威力を用いた、と認定された、ということです。

    会社の受付で騒ぐ人は、時々いると思います。

    中には、正当な主張をしている人もいるでしょう。

    しかし、会社の業務を妨害するような態様で行う必要があるでしょうか。

    大声で怒鳴ったり、騒いだりすると、威力業務妨害罪が成立する可能性あがることを憶えておきましょう。

    また、会社の受付で正当な理由なく騒がれて、業務を妨害された場合には、警察に連絡するようにしましょう。

  • 衝突しない自転車事故でひき逃げが適用

    2018年12月06日

    今回は、自転車の走行中に人をひいていないにもかかわらず書類送検されたという珍しい(?)事故について解説します。

    一体、何が起こったのでしょうか?

    「イヤホンしたまま自転車走行 重体事故引き起こし逃走した医師を書類送検 警視庁」(2018年11月27日 産経新聞)

    警視庁蒲田署は、イヤホンをしたまま自転車に乗り、交差点で女性が一時意識不明になる事故を引き起こしたなどとして、東京都大田区在住の医師の男(30)を重過失致傷と道路交通法違反(ひき逃げ)の容疑で書類送検しました。

    事故の概要は次の通りです。

    ・事故が起きたのは、今年(2018年)5月11日午前8時20分頃。

    ・容疑者の男は勤務先の病院への通勤途中、イヤホンをつけたまま自転車を運転し、左右の確認をしないまま信号機のない交差点に進入したところ、右後方から走行してきた乗用車と出合い頭に接触した。

    ・乗用車は急ハンドルを切り、そのまま対向車線に進み、交差点の近くにいた自転車の女性(44)に衝突。
    女性は頭の骨を折り、一時、意識不明の重体に陥った。

    ・男は女性の救護措置をせず現場から立ち去り、途中で自転車を乗り捨ててタクシーで帰宅。
    その姿を周囲の防犯カメラがとらえていた。

    ・男は事故で破れた服を自宅で着替えてから病院に出勤していたが、「女性がケガをしたことに気づかなかった」と容疑を否認。

    ・また、同署は女性をはねた乗用車を運転していた男性会社員(28)についても、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで書類送検した。

    ・女性は事故から半年以上経った現在も入院している。


    【ひき逃げは重罪】
    ひき逃げは、道路交通法で次のように規定されています。

    第72条(交通事故の場合の措置)
    1.交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者は……(以下省略)

    ここで、対象者は、「車両等の運転者その他の乗務員」とされています。

    自転車は、道路交通法では、「軽車両」とされており、「車両等」に含まれます。

    したがって、自転車で事故を起こし、負傷者が出た時は、自転車の運転者は、負傷者を救護しなければならないことになっています。

    次の措置を怠った場合、ひき逃げになります。

    ①ただちに運転を停止する。
    ②負傷者を救護する。(安全な場所への移動、迅速な治療など)
    ③道路での危険を防止するなど必要な措置を取る。(二次事故発生の予防)
    ④警察官に、事故発生の日時、場所、死傷者の数、負傷の程度等を報告する。
    ⑤警察官が現場に到着するまで現場に留まる。

    「大したことではない」、「バレなければ問題」などと、ひき逃げを軽く考えている人もいるようですが、ひき逃げは軽い罪ではありません。

    また、自転車でもひき逃げが適用されるのです。

    自動車の場合、ひき逃げは、「自動車運転死傷行為処罰法」では自動車運転処罰法違反(過失致死傷罪)と道路交通法違反(救護義務違反)の併合罪で、最長で懲役15年の刑事罰になります。

    仮に、被害者が軽傷の場合でも、ひき逃げには非常に重い刑罰が科されることを知っておかなければいけません。

    詳しい解説はこちら⇒
    「自動車運転死傷行為処罰法の弁護士解説(2)」
    http://taniharamakoto.com/archives/1236/

    なお、ひき逃げに対する刑事罰は自動車と自転車の場合では違います。

    ・自動車の場合:10年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第117条2項)

    ・自転車の場合:1年以下の懲役又は10万円以下の罰金(第117条の5)


    【重過失致傷罪とは?】
    今回の事件では、道路交通法違反のひき逃げの他に重過失致傷が問われています。

    関連する条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第209条(過失傷害)
    1.過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。

    第210条(過失致死)
    過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。

    第211条(業務上過失致死傷等)
    1.業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。


    ある行為をする際に、法律上要求される注意義務を著しく欠いている場合、重過失と判断されます。

    今回は、重大な過失(重過失)によって人にケガをさせたので重過失致傷でも立件されたわけです。


    直接、自転車で人をはねていない交通事故でひき逃げとして立件されるのは珍しいといえますが、近年、危険な自転車の運転の取り締まりが強化されていることと、容疑者の悪質な状況などから、東京地検への書類送検になったのだと思います。

    今後、容疑者には刑事罰だけでなく、さらに民事においては被害者への損害賠償が発生してきます。

    軽い気持ちで自転車に乗り、ながら運転で注意を怠り、事故が起きたら現場から逃走するなどというのは、あってはならないことです。

    くれぐれも注意してほしいと思います。

  • モンストのゲームデータの乗っ取りで逮捕

    2018年11月28日

    世の中には、さまざまな代行業がありますが、今回はゲーム代行業者が逮捕されたという事件について解説します。

    「人気スマホゲームで不正アクセス 乗っ取りの疑いで男逮捕」(2018年11月28日 福島民友新聞)

    人気のスマートフォン向けゲーム「モンスターストライク」(モンスト)で他人のアカウントに不正アクセスしたとして、福島県警いわき中央署は千葉県の自称ゲーム代行業の男(39)を不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕しました。

    逮捕容疑は、今年(2018年)5月24、25の両日、福島県いわき市に住む40代の会社員男性になりすまし、男性のアカウントに不正にアクセスし、ゲームデータを乗っ取った疑いです。

    同署によると、モンストの不正アクセスによる逮捕は全国で初めてだということです。


    【事件の概要】
    事件の概要は次の通りです。

    容疑者の男は、2015(平成27)年頃から依頼を受け、他人のゲームキャラクターなどを育成して報酬を受け取っていた。
    報酬の総額は1500万円以上、代行した件数は約2万件にものぼっていた。

    2018年5月、男は過去に依頼を受けた際に知った福島県いわき市の男性のアカウントに不正にアクセスし、ゲームデータを乗っ取り、パスワードなどを変え、男性が接続できない状態にした。

    その際、インターネットの匿名利用を可能にする「仮想専用網(VPN)」を使い、発信元をわかりにくくしていた。

    男は「金儲けに使うためだった」と容疑を認めており、これまで同様の手口で約200個のアカウントを乗っ取ったと供述しているという。


    【不正アクセス禁止法とは?】
    では、条文を見てみましょう。

    「不正アクセス禁止法」
    第3条(不正アクセス行為の禁止)
    何人も、不正アクセス行為をしてはならない。


    第11条(罰則)
    第3条の規定に違反した者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。


    不正アクセス禁止法は、正式名称を「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」といい、1999(平成11)年8月13日に公布、2000(平成12)年2月13日に施行された法律です。

    その目的は、インターネットなどのネットワーク上での通信における不正アクセス行為を禁止することで犯罪を防止し、秩序の維持を図り、高度情報通信社会の健全な発展に寄与すること、となっています。(第1条)

    本法の処罰対象となるのは故意犯です。
    過失犯や未遂犯は処罰の対象以外となっています。

    では、どのような行為を不正アクセスというのでしょうか?

    第2条4項では次のように規定しています。

    ・アクセス制御機能を持つ電子計算機に電気通信回線を通じてアクセスし、他人の識別符号を入力してアクセス制御機能を作動させ、本来は制限されている機能を利用可能な状態にさせる行為。(1号)

    ・電気通信回線を通じて、アクセス制御機能を持つ電子計算機にアクセスし、識別符号以外の情報や指令を入力してアクセス制御機能を作動させ、本来は制限されている機能を利用可能な状態にさせる行為。(2号)

    ・電気通信回線を通じて、アクセス制御機能を持つ他の電子計算機により制限されている電子計算機にアクセスし、識別符号以外の情報や指令を入力してアクセス制御機能を作動させ、本来は制限されている機能を利用可能な状態にさせる行為 。(3号)

    条文にある、電子計算機とはパソコンやスマホ、電気通信回線とはインターネットやLANなど、識別符号とはパスワードやID、生体認証など、アクセス制御機能とは認証機能のことです。


    「他人の識別符号を入力し」というのは、物理的にIDやパスワードを入力するのではなく、ネットなどを通じて対象となるパソコンやスマホなどにIDやパスワードを送信してアクセスすることです。

    ですから、彼氏や彼女、配偶者などのメールをチェックする人がいますが、ダウンロードされたメールを盗み見るだけでは本法には抵触しないわけです。

    しかし、IDとパスワードを入力してメールサーバーにアクセスしてメールを盗み見ると、不正アクセスになります。


    【その他の禁止行為】
    不正にアクセスするだけではなく、IDやパスワードを不正に取得したり、それを保管したり、他人に提供したりしても罪になります。

    第4条(他人の識別符号を不正に取得する行為の禁止)
    何人も、不正アクセス行為の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得してはならない。


    第5条(不正アクセス行為を助長する行為の禁止)
    何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を、当該アクセス制御機能に係るアクセス管理者及び当該識別符号に係る利用権者以外の者に提供してはならない。


    第6条(他人の識別符号を不正に保管する行為の禁止)
    何人も、不正アクセス行為の用に供する目的で、不正に取得されたアクセス制御機能に係る他人の識別符号を保管してはならない。


    なお、フィッシングによる詐欺行為で不正にIDやパスワードの入力を要求しても罪になります。(第7条)

    これらに違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金、となります。(第12条)


    【被害者は民事訴訟を起こすこともできる】
    不正アクセス行為は犯罪ですが、同時に被害者としては民事で損害賠償請求をすることもできます。

    「民法」
    第709条(不法行為による損害賠償)
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


    民法上、不不法行為によって損害を与えた場合、加害者は被害者に対して損害賠償をする責任があるわけです。


    ゲームは自分でやるから楽しいのでは? と思いますが、今までに2万件のキャラ育成代行の依頼があったというのですから驚きです。

    いずれにしても、他人に自分のIDやパスワードを簡単に教えてしまうと犯罪に巻き込まれてしまう可能性があるということは、しっかり認識しておく必要があるでしょう。

  • パワハラ防止に向けた法整備が本格化するそうです

    2018年11月22日

    パワーハラスメント(パワハラ)の防止に向けて、国が法整備を進める方針を示したので解説します。

    「パワハラ防止、企業の義務に 厚労省が法整備へ 」(2018年11月19日 日本経済新聞)

    厚生労働省は、厚労相の諮問機関である労働政策審議会の分科会を開き、働きやすい環境を作るには法律による規制が不可欠だと判断し、職場のパワハラの防止措置を企業に義務付けるため法整備する方針を示しました。

    同省は、働きやすい環境を作るには法律による規制が不可欠だと判断し、2019年の国会へ関連法案の提出を目指すとしています。


    【増え続けるパワハラ問題】
    近年、パワハラ問題が深刻化しています。

    今年(2018年)6月、厚生労働省は2017年度の「個別労働紛争解決制度」(労働者と企業間のトラブルを裁判に持ち込まず迅速に解決する制度)の実施状況に関するデータを公表しています。

    それによると、民事上の個別労働紛争相談件数は前年度比1%減の25万3005件でしたが、そのうちパワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」については前年比1.6%増の7万2067件で、15年連続で増加しているうえに、内容別では6年連続で最多となっています。

    ちなみに、いじめ・嫌がらせ以外では「自己都合退職」が3万8954件、「解雇」が3万3269件と続き、「雇い止め」に関する相談は同15.7%増の1万4442件で過去最多になっています。


    【パワハラを規制する法律はない!?】
    現在、ハラスメントには50種類以上あるともいわれています。

    その中でも、たとえばセクシュアルハラスメント(セクハラ)は「男女雇用機会均等法」、マタニティーハラスメント(マタハラ)は「育児・介護休業法」などで、企業に相談窓口の設置といった防止措置が義務づけられています。

    しかし、じつはパワハラに関しては特別の法律による規制がなく、民法の損害賠償や刑法の刑事罰の法規などを適用しているのが現状です。


    【パワハラの定義とは?】
    そこで今年3月、厚生労働省は検討会がまとめた報告書を踏まえ、次の3つの要素を満たすものをパワハラの定義としています。

    (1)優越的な関係に基づく
    (2)業務上必要な範囲を超える
    (3)身体的・精神的な苦痛を与える

    たとえば、上司が業務の範囲を超えて、部下の人格を否定するような「死ね」とか「クズ」、「ゴミ」などの発言した場合はパワハラに該当する可能性が高いといえます。


    【企業側の主張は?】
    以前から企業側は、「指導との線引きが難しい」、「業務上の指導との線引きがあやふやでは、上司が部下への指導に尻込みして人材が育たない」、「中小企業には負担が大きい」などと主張し、パワハラの法規制に反対してきたようです。

    11月19日に開かれた労働政策審議会の分科会でも、「義務化するにしても、過去の判例を踏まえた定義の明確化が必要だ」と訴えた企業側の委員もいたということです。

    そこで厚生労働省は、「セクハラなどと同じ規制をパワハラにかけても企業の大きな負担にはならない」、「業務上適正な範囲内の指導はパワハラには当たらない」として、判断基準をわかりやすく示すため、典型的な類型や該当しない具体例も示す、としています。


    【労働者側の主張は?】
    労働側の委員はパワハラが社会問題になっている背景を踏まえて、防止措置だけでなく、ハラスメントの行為自体を禁止する規定を法律に盛り込むべきだと主張したようです。

    しかし、行為禁止は民法など他の法令との関係の整理や違法行為の明確化など課題が多く、厚生労働省は見送る方向としています。


    【法制度の整備で何が変わるのか?】
    厚生労働省は、今回示した対策方針で「パワハラ防止については、喫緊の課題であり、対策を抜本的に強化することが社会的に求められている」としたうえで、「防止措置を講じることを法律で義務づけるべき」と明記しました。

    では、パワハラに関して具体的に何がどう変わるのでしょうか。

    具体的な防止措置はこれから策定する指針で示すとしていますが、次のようなパワハラ防止措置を企業側に義務づけていくと考えられます。

    ・加害者への懲戒規定を作り、社内に周知・啓発する
    ・相談窓口を設置する
    ・社内調査体制を整備する(迅速な調査、被害者保護、加害者への懲戒など)
    ・被害者や加害者のプライバシーを保護する
    ・再発防止のために社員研修などを実施する
    ・被害相談を理由とした解雇など不利益な取り扱いを禁止し、周知する

    その他にも次のような内容が盛り込まれるようです。

    ・対策に取り組まない企業に対しては、厚生労働省が是正指導・勧告などの行政指導をして改善を求める。

    ・行政指導に従わない場合は、企業名を公表することができるとの規定を設ける。

    ・カスタマーハラスメント(顧客や取引先からの過剰なクレームなど)を「職場のパワハラに類するもの」と捉え、その防止策も労政審分科会に提示し、企業が講ずることが望ましい取り組みを指針に盛り込んで周知する。

    ・セクハラ対策を強化するため、男女雇用機会均等法に被害相談をした従業員に対して、解雇などの不利益な取り扱いをすることを禁じる規定を明記する。

    ・取引先などで従業員がセクハラを受けた時の対応や、社外で従業員がセクハラをしないよう配慮に努めることも指針で明確化する。

    ・「女性活躍推進法」を改正して、従業員301人以上の企業に対し女性管理職の比率や採用割合などを公表するよう義務づけているものを、従業員101人以上300人以下の企業に拡大する。


    これらパワハラに関する具体的な法制化の結果、実際にパワハラがなくなるかどうかは、各企業がどのような制度設計をするかに大きく影響されるでしょう。

    また、社内において制度が正しく機能しているかどうかについては、つねに、しっかりとチェックしていく必要があると思います。

  • バドミントンで失明、ペアの相方に1300万円の賠償命令!

    2018年11月20日

    今回は、趣味のスポーツを楽しんでいた際の事故について、チームメート間で被害者と加害者に分かれて訴訟が起きた件について解説します。

    「バドで左目負傷、ペア女性に1300万賠償命令」(2018年10月29日 読売新聞)

    東京都内の40歳代の女性が、バドミントンでダブルスを組んだ相方のラケットが目に当たって大けがをしたとして損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁の判決が出ました。

    東京高裁は、ペアの女性の全責任を認めて約1300万円の支払いを命じたということです。

    事故発生から今回の判決までの経緯は次の通りです。

    2014年12月、趣味のバドミントン教室の仲間ら4人が都内の体育館でプレーしている最中、ペアの女性が相手コートから飛んできたシャトルを打ち返そうとバックハンドでラケットを振ったところ、ネット際にいた原告の左目に当たった。

    原告は、左目の瞳孔が広がって光の調節が難しくなり、日常生活に支障をきたすようになったため、慰謝料やパートの休業補償などを求めて提訴。

    1審・東京地裁は、「原告も一定程度の危険を引き受けて競技していた」と判断し、損害賠償額を約780万円とする判決を出していた。

    今回の2審の控訴審では、被告側は「原告が危険を避けるべきだった」と主張。

    東京高裁は、被告は原告を視界に収める後方の位置でプレーしていたことから、「被告は原告の動きに注意し、ラケットが当たらないように配慮すべきだった」、「バドミントンはボクシングのように身体接触のある競技ではなく、原告は他の競技者によって危険が生じるとは認識していなかった」と判断。

    また、「スポーツであることを理由に加害者の責任が否定されるのであれば、国民が安心してスポーツに親しむことができなくなる」とも指摘。
    そのうえで、被告にすべての責任があると認定した。


    スポーツのプレー中における事故について、チームメートにすべての責任があるとしたということは、過失割合が0対100ですから、異例な司法判断ですね。

    報道からだけでは詳しいところはわかりませんが、法的根拠は不法行為責任ということになると思います。

    「民法」
    第709条(不法行為による損害賠償)
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


    危険な結果を予見でき、かつ、結果を回避することができるのに、回避しなかった結果、損害が発生したという判断です。

    私はバドミントンの競技経験者ではありませんが、ダブルスの場合、前衛の選手は後ろを向いてはいけない、と指導されることが多いという話も聞きます。

    報道によると、後衛の人がバックハンドで振ったラケットが前衛の人の左目を直撃したということは、前衛の人は後ろを振り向いていたとはいかないまでも、少なくとも顔は前を向かずに横を向いていたということが考えられます。

    1審・東京地裁は、「原告も一定程度の危険を引き受けて競技していた」と判断し、今回の2審・高裁判決では「被告にすべての責任がある」と認定しており判断が分かれたわけですが、今後、被告側が上告するのか、事の行方を見守りたいと思います。

    不法行為の成立自体は認定されそうなので、あとは被害者に過失があったかどうか、また、バドミントンは危険を伴う競技なのか、などが争点と言えそうです。

    ただ、大学時代まで体育会でスポーツをしてきた者からすると、今回の判決がアスリートや子供たちを萎縮させはしないか、また一般のスポーツ愛好家が「これでは怖くてスポーツを楽しめない」と思ってしまうとしたら、それは不幸なことだとも感じます。

    今年は、アメリカのメジャーリーグだけでなく日本のプロ野球でも、打者がヘルメットの耳当て部分にフェイスガードを装着している姿が目立ちました。

    これは、「Cフラップ」と呼ばれるものだそうで、頬骨やあごを守るために装着しているわけですが、これからはバドミントンだけでなく、ラケットを使うテニスや卓球などでもフェイスガードやマスクを装着しなければいけない時代になるのでしょうか。

    スポーツ愛好家は、今後はスポーツ保険への加入なども検討していく必要があるかもしれません。

  • 自転車の飲酒運転で逮捕!

    2018年09月18日

    今回は、飲酒運転は自転車でも法律違反になる、という件について解説します。

    「自転車を“酒酔い運転” 36歳女を逮捕 アルコール基準値6倍 「こいでいない」と容疑否認 福岡県」(2018年9月12日 テレビ西日本)

    福岡県田川市で、36歳の女が自転車の酒酔い運転の疑いで現行犯逮捕されました。

    容疑者の女は酒を飲んで自転車に乗ったことは認めているものの、「地面を蹴って進んだだけでペダルはこいでいない」という趣旨の供述をしており、容疑を否認しているようです。

    事件が起きたのは、9月12日午前3時過ぎ。
    警察官が歩道上を自転車で蛇行しながら走る女を発見。
    職務質問をしたところ、体が前後左右にふらつき、ろれつが回らない状態で、呼気から基準値の6倍のアルコールが検出されたため、逮捕に至ったということです。

    報道によると、自転車の酒酔い運転による容疑者逮捕は過去10年間で3件しかない極めてまれなケース。
    警察は、「公共に及ぶ危険も加味して逮捕に踏み切った」としているということです。


    酒に酔って自転車に乗っただけで逮捕とは大げさな……と思う人もいるかもしれませんが、これは法律に規定されていることです。

    早速、条文を見てみましょう。

    「道路交通法」
    第65条(酒気帯び運転等の禁止)
    1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。


    第117条の2(罰則)
    次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

    1.第65条第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。)にあったもの。


    第2条(定義)
    1.この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

    十一 軽車両 
    自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう。


    道路交通法上、自転車は車両の一種である「軽車両」に規定されるため、酒に酔って運転すると法律違反になるということです。


    近年、自転車による悪質な危険運転が問題になっています。
    そこで、2015(平成27)年には道路交通法が改正され、危険運転に対する罰則が強化されています。

    詳しい解説はこちら⇒「自転車の危険運転に安全講習義務づけに」
    http://taniharamakoto.com/archives/1854

    自転車による死亡事故では、加害者に有罪判決が出ています。

    詳しい解説はこちら⇒「自転車死亡事故で禁錮2年、執行猶予4年」
              https://taniharamakoto.com/archives/3128/

    自転車は車両の一部ですから、当然ながら、ひき逃げは犯罪です。

    詳しい解説はこちら⇒「自転車のひき逃げ事故で逮捕!」
              https://taniharamakoto.com/archives/2661/

    また、自転車の飲酒運転で自動車の運転免許が停止になることがあります。

    詳しい解説はこちら⇒「自転車の飲酒運転で車の免許が免停に!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1988/

    自転車だからといって、軽い気持ちで運転してはいけません。
    まずは、次のページで法律とルールをしっかり学ぶことをお勧めします。

    「大人も子供も知っておきたい!自転車法律ルール25」
    https://taniharamakoto.com/archives/1917/

    今回のケースでは負傷者などがなく、よかったと思います。

    とにかく、自動車だけでなく「飲んだら乗るな」は自転車でも守るべきだということですね。

    みなさん、気をつけましょう。

  • FAXでの名誉毀損に注意。

    2018年09月06日

    ネットの発達のおかげで、以前よりは使われなくなってしまったファクス(ファックス、FAX)ですが、その原型は1843年、イギリス人のアレクサンダー・ベインよって発明されたそうです。

    日本の和暦では、なんと江戸時代後期の天保14年です。

    ちなみに、アレクサンダー・グラハム・ベルが電話を発明したのが1876年、トーマス・エジソンが真空管を発明したのが1883年ということですから、じつはかなり歴史が古いことに驚きます。

    今回は、そんなFAXが使われた犯罪について解説します。
    男が女に送ったFAXには、一体何が書かれていたのでしょうか……。

    「元交際女性の職場に“中傷ファクス”…ごみ処理施設の係長ら逮捕 京都」(2018年8月29日 産経新聞)

    京都府警上京署は、かつての交際相手だった女性を中傷する文書を勤務先に送りつけたとして、男(52)と、その知人(47)を名誉毀損の疑いで逮捕しました。

    報道によると、今年(2018年)5月9日と14日、容疑者の男が以前交際していた会社員女性(46)の勤務先に、「専務の女になれば祇園で店を持たせてやると言われたと言い回っている」などと女性を中傷する文書をファクスで送信し、名誉を傷つけたというものです。

    2人は、いずれも容疑を認めているということです。


    名誉毀損とはどういう罪なのか、条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第230条(名誉棄損)
    1.公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。


    ポイントは、「事実の有無にかかわらず」という部分です。

    つまり、今回のようなケースでは容疑者が被害者女性に送ったFAXの内容が事実かどうかは問われないということです。

    なお、名誉毀損は刑事事件だけでなく民事事件でも問題になる可能性があります。
    被害者女性は、名誉を侵害されたとして損害賠償を請求することができるのです。

    関連する条文は次の通りです。

    「民法」
    第709条(不法行為による損害賠償)
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


    第710条(財産以外の損害の賠償)
    他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。


    第723条(名誉毀損における原状回復)
    他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。


    今回の事件はFAXを使ったものでしたが、近年では時代的にもSNSなどを使った名誉棄損被害が起きています。

    この場合、ネット上の投稿が名誉毀損やプライバシーの侵害と認められるなら、被害者は「発信者情報開示請求」をすることができます。

    詳しい解説はこちら⇒
    「中傷投稿やツイートに対抗する法的手段とは?」
    http://taniharamakoto.com/archives/1299

    男女の仲のもつれは、リベンジポルノやストーカー事件に発展することもあります。

    詳しい解説はこちら⇒
    「リベンジポルノには新たな法律が適用されます!」
    https://taniharamakoto.com/archives/1909/

    「ストーカー規制法が改正!SNSへの書き込みも規制対象に!」
    https://taniharamakoto.com/archives/2494/

    みなさん、気をつけましょう。

  • 自転車死亡事故で禁錮2年、執行猶予4年

    2018年08月28日

    今回は、自転車による死亡事故で有罪判決が出たという報道について解説します。

    「元女子大学生に有罪=スマホ自転車で死亡事故-横浜地裁支部」(2018年8月27日 時事通信)

    スマートフォンを操作しながら自転車を運転し、女性に衝突して死なせたとして重過失致死罪に問われた元女子大学生(20)の判決が横浜地裁川崎支部であり、禁錮2年、執行猶予4年(求刑禁錮2年)が言い渡されました。

    判決によると、事件が起きたのは2017年12月7日。
    元女子大学生は電動アシスト自転車で走行中、川崎市麻生区の歩行者専用道路で、当時77歳の女性に衝突して転倒させ、2日後に脳挫傷などで死亡させました。

    その際、元女子大学生は左耳にイヤホンをした状態で、右手に飲料の容器を持ち、左手でスマホのメッセージを送受信しながら少なくとも約33秒間走行し、スマホをポケットにしまった直後に事故を起こしたとしています。

    裁判長は、「歩行者を死傷させ得るとの自覚を欠いた運転は自己本位で過失は重大」と指摘したものの、時速約9キロと比較的低速であり、被告が反省の弁を述べていることなどから執行猶予付き判決としました。
    なお、元女子大学生は事故後、大学を自主退学したということです。

    判決後、被害者女性の娘(49)は取材に対し、「判決は母の命の重さに比べて軽いと思う。法律が時代に合っていない」と話したということです。


    【統計データから見る自転車事故】
    警察庁交通局が公表している統計データ「平成29年における交通死亡事故の特徴等について」によると、2017(平成29)年の自転車関連事故件数は9万0407件で、全交通事故に占める割合は19.1%になっています。

    前年(平成28年)は、9万0837件で18.2%ですから、比較すると事故件数は減少傾向にあるもの、割合としては増加していることがわかります。

    また、自転車事故の相手当事者は、自動車が84%でもっとも多く、以下、二輪車(5%)、歩行者(3%)、自転車同士(3%)、自転車単独(2%)となっています。

    なお、自転車側には法令違反も多く、安全不確認、一時不停止、信号無視、交差点安全進行義務違反などがあったということです。


    【交通事故に関連する法律】
    次に、法的な面から考えてみます。

    今回の法定刑は「重過失致死罪」です。
    関連する条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第209条(過失傷害)
    1.過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。

    第210条(過失致死)
    過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。

    第211条(業務上過失致死傷等)
    1.業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。


    過失により人にケガをさせた場合は過失傷害罪、死亡させた場合は過失致死罪になります。

    重過失致死罪は、重大な過失(重過失)によって人を死亡させた罪のことです。
    ある行為をする際に、法律上要求される注意義務を著しく欠いている場合、重過失と判断されることになります。

    ところで、交通事故に関する法律には「自動車運転死傷行為処罰法」や「道路交通法」などがあります。

    詳しい解説はこちら⇒
    「自動車運転死傷行為処罰法の弁護士解説(2)」
    https://taniharamakoto.com/archives/1236/
    自動車運転死傷行為処罰法には、「危険運転致死傷罪」や「過失運転致死傷罪」が規定されていますが、今回なぜこれらの刑罰が適用されなかったのかというと、自動車ではなく自転車だったからです。

    しかし、自転車だからといって気軽な気持ちで運転していると、今回の事故のように相手を死傷させてしまうこともあります。

    被害者やご遺族は大きな悲しみと損害を受けることになりますが、一方の当事者である加害者も大きな代償を背負うことになります。


    今回の事件のように、加害者は逮捕や在宅起訴をされて、悪質性が高い場合は実刑を受け、実名を報道されることがあります。

    さらに加害者は、慰謝料などの損害賠償金を被害者に支払うことになります。
    死亡事故や、高次機能障害、脊髄損傷などの重大な後遺障害の場合は億単位の金額になることもあります。

    交通事故では、被害者とご遺族、そして加害者も人生が大きく変わってしまいます。
    関わったすべての人を不幸にしてしまうのが交通事故なのです。

    自動車の運転は気をつけていても、自転車の運転はよそ見をしたり、信号無視をしたり、あるいは見通しが悪くても確認しなかったり、という人も多いように思います。

    しかし、自転車と歩行者がぶつかって、歩行者側の当たり所が悪いときには、本件のような重大事故となり、刑事処罰を受ける可能性がある、ということを憶えておきましょう。

  • 地蔵契約に要注意。

    2018年06月30日

    今回は、お地蔵さんと契約書のお話をします。

    といっても昔話ではありません、法律に関するお話です。


    【事件の概要】
    「“悪霊たたり”と祈りや地蔵契約、被害数千万か」(2018年6月28日 読売新聞)

    岩手県警は、「悪霊のたたりがある」と電話の勧誘で不安をあおり、おはらいなどの契約を必要書類を渡さずに結んだとして、首都圏に住む20~50歳代の男女11人を特定商取引法違反(書面不交付)の疑いで逮捕しました。

    事件が起きたのは、今年(2018年)3月初旬頃。
    暴力団関係者を含む男女11人は共謀して、東京都内の事務所から近畿地方の60歳代の無職女性に電話をかけ、数十万円でおはらいや地蔵の建設などをするよう持ちかけたということです。

    岩手県警は2017年12月、岩手県南部の女性から「電話でお祈りを持ちかけられて金を払ったが、不安になった」と相談を受けたことで捜査を開始。

    捜査線上に浮かんできた男女11人は、内容を示した書面を渡さずに契約を結び、代金を郵送などで送らせておきながら地蔵は立てていなかったことから同容疑で逮捕し、さらに詐欺容疑も視野に捜査をしているとしています。

    被害者は全国に50人以上で、容疑者らは1件あたり数十万~数百万円の契約を持ちかけており、被害額は数千万円以上に上る見込みで、同県警は被害状況や集めた金の流れを含め霊感商法の実態を調べているということです。

    それだけ地蔵を建てたい人がいるということでしょうが、庭に地蔵がいたら、怖い気もします。

    【特定商取引法とは?】
    先祖の悪因縁(カルマ)や悪霊のたたりがあると言って相手を不安にさせて、つぼや数珠、水晶などの商品を高額で売りつけたり、除霊と称してインチキな祈祷をするという、いわゆる霊感商法が問題になったのは1970年代後半でした。

    霊感商法への苦情や相談が、日本各地の国民生活センターや消費生活センターに相次いで寄せられたことから表面化し、1980年代には国会でもたびたび取り上げられたことで社会問題となったものです。

    人の弱みにつけ込む悪徳な手口ですが、今回の事件では特定商取引法が適用されています。

    まずは条文を見てみましょう。

    「特定商取引に関する法律」
    第4条(訪問販売における書面の交付)
    販売業者又は役務提供事業者は、営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたとき又は営業所等において特定顧客から商品若しくは特定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたときは、直ちに、主務省令で定めるところにより、次の事項についてその申込みの内容を記載した書面をその申込みをした者に交付しなければならない。ただし、その申込みを受けた際その売買契約又は役務提供契約を締結した場合においては、この限りでない。(以下省略)


    これに違反した場合は、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます。(第71条)

    特定商取引法は、1976(昭和51)年に施行された法律で、正式名称を「特定商取引に関する法律」といいます。

    この法律の目的は、訪問販売など業者と消費者間でトラブルが生じやすい取引について、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることです。
    勧誘行為の規制など事業者が守るべきルールと同時に、クーリングオフなどの消費者を守るルールなどについても定めています。


    【特定商取引の形態】
    この法律で特定商取引として定義しているのは次のものです。

    ・訪問販売(キャッチセールスやアポイントセールスを含む)
    ・通信販売
    ・電話勧誘販売
    ・連鎖販売取引(いわゆる、マルチ商法やネットワークビジネス等)
    ・特定継続的役務提供(エステサロン、語学教室、学習塾、家庭教師、パソコン教室、結婚情報等)
    ・業務提供誘引販売取引
    ・訪問購入(貴金属や着物など不用品の訪問買い取り等)


    【特定商取引の行政規制】
    特定商取引法では、事業者に対して次のような規制を行なっています。

    ・氏名等の明示の義務付け
    勧誘開始前に、事業者名や勧誘目的であることなどを消費者に告げるように義務付けています。

    ・不当な勧誘行為の禁止
    価格や支払い条件等についての不実告知(虚偽の説明)、故意に告知しないこと、相手を威迫、困惑させる勧誘行為などを禁止しています。

    ・広告規制
    広告をする際、重要事項の表示を義務付け、また虚偽や誇大な広告を禁止しています。

    ・書面交付義務
    契約締結時に重要事項を記載した書面を交付することを義務付けています。

    また、事業者と消費者間のトラブル防止、消費者救済のために次のことが認められています。

    ・消費者による契約の解除(クーリング・オフ)
    ・消費者が誤認し、契約の申し込みや承諾の意思表示をした場合の取り消し
    ・消費者が中途解約する際などに事業者が請求できる損害賠償額の上限の設定

    今回は、このうち、契約締結時に重要事項を記載した書面を交付する義務を怠った、ということでしょう。

    地蔵に関する重要事項を読んでみたいところです。

    【契約書の重要性】
    法的には、法人を含む人と人の間で権利義務を発生させる合意を「契約」といいます。

    当事者間で意思表示の合致があれば、契約の内容は自由に決めることができますし、じつは契約書がなくても契約は成立します。
    これを「契約自由の原則」といいます。

    つまり、契約というのは「口約束」でも成立するわけですが、これはとても危険です。
    トラブルにまで発展すれば、大抵の場合「言った」、「言わない」、「そんな契約はした覚えはない」、「話が違う」といった争いになってしまうからです。

    そうしたトラブルや紛争を未然に防ぐためにも、契約書は作成するべきです。
    また、仮に裁判になった場合は、契約書や覚書、合意書などの書面が重要な証拠になります。

    なお、契約に関してトラブルになった場合は弁護士などの法律の専門家に相談することをお勧めします。

    契約書が必要な場合はその用途に応じて400種類の書式をダウンロードできるサービスがありますので、ぜひ利用してください。

    詳しくはこちら⇒「マイ法務」
    https://myhoumu.jp/

  • 飲食店で勝手にゲームをやらせると犯罪!?

    2018年06月14日

    ゲームバーという形態のお店があるようですが、経営者などが逮捕されるという事件が起きたので解説します。

    さて、その逮捕容疑とは?

    「著作権法違反容疑でゲームバー経営者逮捕 京都と神戸4店舗」(2018年6月13日 毎日新聞)

    京都府警と兵庫県警は、家庭用ゲーム機を置いた「ゲームバー」と呼ばれる飲食店で、著作権者の許可を得ずに客にゲームをさせたとして、京都市内の2店舗と神戸市内の2店舗の経営者ら男4人を著作権法違反(上映権の侵害)容疑で逮捕した。

    逮捕されたのは、京都市内の経営者(32)と店長(29)と別店舗の経営者(32)、さらに神戸市の経営者(31)の計4人。
    両府県警によると、4人とも容疑を認めているという。

    いずれも、今年(2018年)4月、飲食物を提供するとともに、店内に「ニンテンドースイッチ」や「プレイステーション4」などを設置し、ゲームソフトを貸し出して遊ばせていたが、著作権を持つ任天堂(京都市)やカプコン(大阪市)などに使用の許可を取っていなかった。

    ゲーム会社などでつくる「コンピュータソフトウェア著作権協会」は、これまでゲームバーに対して警告を出すなどの対策を行なってきたが、4店舗は従わなかったため、協会が両府県警に相談していた。

    京都府警によると、ゲームバーの摘発は全国初だという。


    まずは、今回の違反行為に抵触した条文を見てみましょう。

    「著作権法」
    第22条の2(上映権)
    著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。

    これに違反した場合は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処され、またはこれらが併科されます。

    ◆著作権は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的としています。(第1条)

    ◆著作権は、特許権や商標権などとともに知的財産権とも呼ばれます。

    ◆著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができます。(第63条1項)
    また、許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができます。(第63条2項)

    ◆著作権における著作物とは次のものなどをいいます。(第10条)

    1.小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
    2.音楽の著作物
    3.舞踊又は無言劇の著作物
    4.絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
    5.建築の著作物
    6.地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
    7.映画の著作物
    8.写真の著作物
    9.プログラムの著作物

    ◆上記、著作物の著作権者に無断で次の権利を侵害するのは違法です。

    「著作権に含まれる権利の種類」
    ・複製権(第21条)
    ・上演権及び演奏権(第22条)
    ・上映権(第22条の2)
    ・公衆送信権等(第23条)
    ・口述権(第24条)
    ・展示権(第25条)
    ・頒布権(第26条)
    ・譲渡権(第26条の2)
    ・貸与権(第26条の3)
    ・翻訳権、翻案権等(第27条)


    この数年、カラオケ動画や音楽教室、飲食店などの店舗、結婚式などのイベント等での音楽の使用と著作権が問題になっていますが、法律上、今回のようなゲームバーという形態の店舗でも著作権者の許可を取らずに無断で使用すれば、逮捕される可能性があるということです。

    なお民事としては、著作権者は「差止請求権」(著作権法第112条)や「損害賠償請求権」(民法第709条)などを求めることができます。

    憶えておきたいものです。

    そうしないと、

    ゲームバーが、「ゲームオーバー」になってしまいます。(>_<)