ブログ | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 60
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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みらい総合法律事務所
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  • 女児死亡事故の場合の損害賠償額

    2005年02月21日

    21日兵庫県尼崎市市道で、横断歩道を渡っていた小学1年女児3人=いずれも(7)=に、乗用車が突っ込み、3人はひざを擦りむくなどの軽傷を負ったとのこと。原因は乗用車の一時停止違反だそうです。 (記事)
     
    軽傷で良かったですが、自動車事故の場合、打ち所が悪ければ大惨事です。仮に、7歳女児が上記交通事故で死亡した場合の損害賠償額を試算してみます。遺族慰謝料は死亡慰謝料に含ませています。弁護士費用、葬儀費用等は加算していません。大枠だけの計算です。必ずこの通りになるわけではありません。
     
    3,490,000円(女子労働者学歴計)×0.7(生活費控除)×(18.9292ー8.3064)(ライプニッツ係数)+2,000万円(死亡慰謝料)=45,951,500円
     
    安いと思いませんか?子供を失ってこの金額です。子供の場合、将来、どのくらいの収入を得るか証明しようがないため、平均賃金で計算せざるを得ないためです。しかし、子供の場合には、親の悲しみは計り知れないものがあります。慰謝料をもっと増額すべきと考えます。増額している判例もありますが、まだまだ足りないと感じています。
     
    ちなみに、男子小学生(7)だと、60,734,188円です。社会の男性の平均賃金の方が、女性の平均賃金より高いためにこのような男女差が出てきます。
     
     

  • 供託がネットでOKになります。

    2005年02月19日

    供託がインターネットを通じてできるようになるそうです。供託とは、家屋の賃貸借契約で賃料に争いがあって家主さんが受取を拒否している場合や、高利貸し等が売掛先に債権譲渡通知を何通も送りつけて誰が債権者がわからないような場合に、支払う義務がある人が法務局に金銭や有価証券等を預けることによって支払義務を免れる制度です。(記事)
     
    これまでは、わざわざ法務局に行かなければならなかったので大変でした。私たち弁護士の仕事では、供託はしょっちゅう出てきますので助かります。
     
     

  • センターラインオーバーと過失割合

    2005年02月19日

    北海道で、乗用車がセンターラインを超えて反対車線にはみ出し、対向車であるトラックに衝突し、4人が死亡したそうです。(記事)
     
    道路交通法17条により、車両は道路の左側部分を通行しなければなりません(当然ですが)。これは誰もが知っている基本的ルールなので、センターラインオーバーの事故の過失割合は、100対0が基本とされています。
     
    任意保険契約を締結していることを祈ります。
     

  • 寝屋川事件とテレビゲーム

    2005年02月16日

    大阪府寝屋川市立中央小学校で教職員3人が殺傷された事件で、少年は、小学校のころからテレビゲームに熱中していたといいます。
     
    以前よりゲームについて考えていたことがあります。
     
    テレビゲームと犯罪は相関関係があるか、というと、2つの点で関係があると考えています。
     
    1つは、「エルム街の悪夢」症状と呼んでいるのですが、現実とバーチャルの区別を明確につけることができなくなり、現実世界においてテレビゲーム的感覚の行動をとってしまう症状です。テレビゲームに熱中するときは、何時間でもそのテレビゲームの世界に入り込んで主人公として行動します。映画、テレビドラマも同様ですが、その入り込む時間数と主体性には、格段の違いがあります。そして、映画ですら、映画を見終わって映画館から出てくると主人公になったような気になって肩で風切って歩くくらいになってしまいます。(私もそうです。)
     
    その症状が重度に進行したとき、現実の世界でテレビゲームが始まります。今回の事件の事情を知らないので、今回の事件がそうだとは言いませんが、一つの見方として、少年は、自分の人生を台無しにした教師への復讐に立ち上がる主人公としてゲームを開始した、という見方をすることもできます。その場合、少年は、事件時及び事件後しばらくは自分が悪いことをした感覚は全くないということが推測されます。
     
    もう1つは、「リセット症候群」と呼んでいるものです。これは、他人が自分の思うとおりにならず、イライラがつのって突然、いきなり犯行に及ぶ場合です。テレビゲームが自分の思い通りにいかないときに、リセットボタンを押してまたゲームをやり直すことができるところからきています。
     
    人生は、自分の思い通りにいきません。そして、リセットボタンを押して始めからやり直すこともできません。なんとかそれを受け入れて乗り越えていかなければなりません。しかし、ゲームでは、自分の思い通りにいかないときに、リセットボタンを押すことにより、容易にやり直すことができます。このリセットは、とても強い誘惑であり、失敗を受け入れ、乗り越える能力を蝕みます。このリセット感覚が常態になると、現実世界でも、思い通りにいかないときに、「リセットしたい。」という誘惑に強くかられます。そして、失敗や苦境を受け入れ、乗り越える能力が低下しているので、自分ではどうしようもできなくなり、現実世界でリセットボタンを押してしまう、つまり犯行に及ぶのです。
     
    したがって、このパターンでは、そんなことをするはずがない、と思われる人が、突然に犯行に及ぶ傾向がある、と考えられます。

  • ニッポン放送株

    2005年02月13日

    ライブドアの堀江社長が、テレビで、ニッポン放送株の取得問題について、同社株の上場廃止は想定済みで、大損にはならない、と発言していることが記事になっています。
     
    もともと堀江社長は、海外の成功例を参考に(どこかは忘れました)、メディア支配に意欲を持っていたことは過去の出演ラジオ番組やテレビ番組の発言等から容易に推測できたことで、私自身、どうやって進出するのかなあと楽しみにしていました。
     
    その狙いがニッポン放送だったところ、フジテレビがTOBを仕掛けたので、急遽その対策をしなければならず、ギリギリの勝負を仕掛けたのだと推測しています。ここで仕掛けなければ、次はいつチャンスがあるかわからないからです。そんな悠長なことは我慢ができないのでしょう。ほとんど短期間で決めて実行したのでしょうね。外資の手数料が高そうです。
     
    もともとフジテレビは、50%超のTOBを仕掛けたのですから、ライブドアは、フジテレビの株主総会で議決権を行使できなくなることや、上場廃止になってしまうことは当然に想定済みだと思います。したがって、フジテレビは、25%超に下げることで反撃を開始したのではなく、TOBが失敗したときに壊滅的打撃を受けることを回避するための保険をかけただけのことだと考えます。
     
    なお、今回ライブドアが取得した35%の株の中には、村上ファンドの株が入っていると推測しています。しかし、これはデータに基づく推測ではなく、勝手な推測です。「35%の中に村上ファンドの株は入っているか。」との質問に対する回答を聞いて、他の質問に対する回答内容・回答姿勢と明らかに異なっており、不自然であること、不自然になる合理的理由がないこと、否定すると同時に表情と仕草がその質問に対する回答を拒否していたこと( 心理学の認知的不協和解消理論による)、からの推測です。 
     
    今後の成り行きが楽しみです。双方の弁護士に頑張って欲しいと思います。

  • ニッポン放送仮処分決定の分析

    2005年02月12日

    3月11日付で、ライブドアが求めたニッポン放送のフジテレビジョンに対する新株予約権の発行差止仮処分決定が出されました。結果は、5億円の担保を条件として、新株予約権の発行を差し止めるというものです。
     
    仮処分手続では、今回の新株予約権の発行が(1)「特に有利なる条件」によるものであるかどうか、(2)「著しく不公正なる方法」によるものであるかどうか、が争点となりました。
     
    しかし、(1)については、以前に書いた予想どおり、たいした争点とはならず、一刀両断されています。
     
    主要な争点は、(2)の不公正発行かどうか、という点です。
     
    新株予約権の不公正発行基準を判断した裁判所の決定は、今回が初めてだと思いますが、新株発行の不公正発行基準は、過去にいくつか判例があります。それら判例では、新株発行の主要な目的が「資金調達」であればOK、主要な目的が「経営陣の支配権維持」であればNO、という「主要目的ルール」で判断されていました。
     
    今回も、裁判所は、まずこの「主要目的ルール」のフィルターを通しています。ニッポン放送は、新株予約権発行理由を、「企業価値の維持」と「マスコミとして担う高い公共性の確保」の2点と公表しています。公共性の確保については、ライブドアの行った立会外取引の違法性を疎明しない限り認められませんから、ここでの主要な争点は、「企業価値の維持」という目的の意味です。
     
    ニッポン放送は、フジサンケイグループに残ることが「企業価値の維持」につながるのだという主張をしていたことから、裁判所は、今回の新株予約権の発行は、「現在のニッポン放送の役員」の支配権維持を目的とするものではないが、「フジサンケイグループに属する経営陣」による支配権の維持に他ならないではないか、という判断しました。つまり、フジサンケイグループに残ることを強調しすぎたばかりに、支配権維持目的を判断しやすくしてしまったものです。
     
    新株予約権発行の主要な目的が「経営陣の支配権維持目的」と判断されてしまうと、原則として、不公正発行と判断されます。不公正ではないとされるためには、それでもなお発行を正当化する「特段の事情」が必要です。
     
    今回のニッポン放送の主張は、ライブドアの支配下に入るよりもフジサンケイグループ内に残ることが「企業価値」を維持できるということですから、「特段の事情」と言えるためには、ライブドアの支配下に入ることにより、現在の企業価値が著しく毀損されることをニッポン放送側で疎明しなければなりません。
     
    この点を疎明するため、ニッポン放送側は、ライブドアの支配下に入ったときは、フジサンケイグループからの取引を全て打ち切られる、という主張を持ち出しました。しかし、長年継続的取引をしていた取引先に対して突然取引を打ち切ることができるかどうかについては、判例もわかれているところですし、ニッポン放送がライブドアの支配下に入ったことを理由に取引を打ち切るということが経営者として合理的な判断ではないことは明らかです。確かにライブドアは、ニッポン放送を支配下におさめた後の明確なビジョンを示していませんが、だからといって企業価値が著しく毀損するとも思えません。
     
     
    ライブドアが過去に他の企業の株を買い占めてすぐに高値で売り抜けるような行為をしていたり、企業を買い占めた上で企業を解体し、切り売りしたりするような行為をしていれば、今回の買い占めの目的もそのような目的であり、企業価値を著しく毀損するものだという主張も通るでしょう。しかし、ライブドアは、ニッポン放送の買収をメディア進出の足がかりと位置づけていることから、むしろ企業価値を高めることを目指していると判断されます。
     
    このようなことから、ニッポン放送側では、ライブドアの支配下に入ったときに、企業価値が著しく毀損されるということを疎明しきれず、今回の裁判に敗れる結果となったのだと考えます。

  • 自己破産件数減少

    2005年02月08日

    2004年の自己破産件数がついに減少したようです。(記事)
    前にも書きましたが、確かに相談が減少してます。
     
    それでも、1年間で21万1402件です。多いですね。

  • 裁判官の押印がない逮捕状

    2005年02月08日

    大阪、堺各簡裁で1月、裁判官が押印を忘れたまま逮捕状を発付するミスが2件相次いでいたそうです。(記事)
     
    昨日、同期の弁護士や裁判官らの食事をしたのですが、やはり話題になりました。裁判官からすると、考えられないミスだそうです。何らかの処分を受けるでしょう。
     
    裁判官の押印の逮捕状は無効なので、逮捕も無効です。無効な逮捕状に基づく勾留状も無効です。したがって、被疑者は、一旦釈放されましたが、また裁判官の押印のある逮捕状で再度逮捕されたそうです。こういう場合、予め逮捕状を取っておいて、釈放と同時に逮捕する扱いをしていると思うので、今回も一瞬だけ釈放だったのではないかと思います。
     
    無効な逮捕状で逮捕された被疑者は、国家賠償請求をすることができますが、認められてもわずかな金額です。
     
    責任が重大な仕事は、日常のわずかなことにも気が抜けないものだと思いました。
     
     

  • ライブドア弁護士辞任に関して(弁護士の立場から)

    2005年02月05日

    本業が忙しく、全然ブログが更新できませんでした。この間に、ライブドアの主任の弁護士が「個人的理由」により辞任してしまいました。
     
    様々な疑問が飛び交っているようですので、疑問に対して意見を述べてみたいと思います。
     
    Q「事件の途中で弁護士が降りることはよくあること?」
     
    A「一般的には、よほどの理由がない限り、辞任することはありません。特に本件のように、緊急的な仮処分事件の最中に辞任することは、滅多にあることではありません。」
     
    Q「過剰取材が原因?」
     
    A「過剰取材が原因で辞任することはまず考えられません。電話での取材申し込み、待ち伏せによる取材等に対しては、裁判中を理由にすべてノーコメントを貫くことが可能です。他の原因があるはずです。」
     
    Q「報酬のトラブル?」
     
    A「弁護士報酬は着手金と報酬金にわかれます。今回の場合、着手金を払ってもらっていなければ辞任するのは当然ですが、それは考えにくいのではないでしょうか。報酬の決定方法についても、今回は、和解ではなく、仮処分決定ないし却下までいくでしょうから、事前の取り決めがあるはずです。したがって、報酬のトラブルは考えにくいと思います。」
     
    Q「状況が不利になり、負けるのが嫌になったから辞任したのではないか?」
     
    A「あり得ません。如何に依頼者の状況が不利であろうとも、その状況の中で依頼者のために全力を尽くすのが弁護士です。しかし、依頼者が決定的な嘘をついており、それが原因で依頼者と衝突して相互の信頼関係が失われた場合には、辞任することがあります。しかし、それは、信頼関係の問題であり、事件の勝ち負けとは関係有りません。」
     
    Q「ライブドアからクビになったのでは?」
     
    A「これは可能性があります。依頼者から解任されれば弁護士は事件を継続できません。依頼者が弁護士を解任したことがわかると、裁判所は、ライブドアがかなり内部的にも問題を抱えていると推測し、裁判に悪影響を及ぼします。そこで、悪影響を回避するため、個人的理由により辞任した形を取った可能性は否定できません。」
     
    Q「フジテレビから買収されたのでは?」
     
    A「あり得ないでしょう。そんなことをしたら、懲戒になります。いくらもらっても買収されることはないでしょう。」
     
    Q「主任弁護士辞任によりライブドアは不利になるか。」
     
    A「これは否定できません。まず裁判所や世論に与える印象がよくありません。もちろん、裁判所は印象で判断するわけではありませんが、判断するに際し、内部のトラブルを推測させ、微妙な影響を与えることはあります。次に、裁判というのは、まず戦略を立て、その戦略に則って主張立証を行うものです。途中で弁護士が変わることは、手術中に医者が変わることと似ています。望ましいことではありません。」
     
    Q「辞任により、仮処分の結論が延びる可能性は?」
     
    A「あります。今回は、第1回審尋が3月1日、第2回が3月4日とかなりの短期間で決着を着けようとしていました。ペース的には、来週中に裁判所が結論を出すこともあり得ると予測していました。主任弁護士が交替になることで、ペースに狂いが生ずることは考えられます。」
     

  • 「一太郎」が特許権侵害!?

    2005年02月01日

    松下電器産業がジャストシステムの「一太郎」「花子」を特許権侵害を理由に製造販売差し止めと在庫廃棄処分を求めた訴訟の判決で、東京地裁は、松下電器の請求を認める判決を出したそうです。(記事)
     
    「一太郎」は私も使用しているのですが、ジャストシステムの約4割の売上だそうです。同社は控訴するでしょうが、敗訴判決が確定したときには倒産の危機にさらされるでしょう。株価も一気に下がりそうです。
     
    判決には仮執行宣言がついていません。本来判決は確定しなければ強制執行ができませんが、仮執行宣言は、判決が確定しなくても仮に強制執行ができてしまう制度です。今回、判決が確定しないままに製造販売差し止めと在庫廃棄を認めることは、取り返しのつかない事態を生じさせるので、当然のことながら、仮執行宣言がついていないことになります。
     
    したがって、ジャストシステムは、控訴をすることにより、当面一太郎を販売し続けることになるのではないかと思われます。
     
    控訴審にいった場合には、裁判所から和解の勧告があるでしょうし、ジャストシステム側も和解の動きを探ることでしょう。松下電器産業にとっても和解により経済的利益を得た方が良いように思いますが、どういう戦略でくるでしょうか。
     
    個人的には一太郎はなくなってほしくありません。