暴力団は、自動車保険に入れない!では、被害者は!?
暴力団関係者と判明する時期は、①契約時、②契約中、の2段階がある。
契約時に暴力団関係者と判明した場合は、これまでも保険契約を断ってきた。しかし、契約中に暴力団関係者と判明した場合には、中途解約が難しく、更新時まで待って、更新を拒絶したという。
そこで、保険約款を変更して、契約途中で暴力団関係者と判明した場合もすぐに保険契約を解除できるようにする、ということだ。
日本では、すでに47都道府県全てに暴力団排除条例が施行されており、企業は、暴力団に経済的利益を与えることが禁止されている。
損保会社が暴力団関係者と保険契約を締結し、保険事故があると、暴力団に保険金が支払われる。これは、暴力団に経済的利益を与えることになるため、今回の動きは、条例や今回のみずほ銀行の騒動を踏まえた当然の行動といえる。
しかし、私は、このような措置によって、自動車事故の被害者に生ずる不利益について心配せざるを得ない。
つまり、損保会社が、暴力団との自動車保険契約を拒絶し、または解除することによって、暴力団関係者は、自動車に関し、任意保険が無保険状態となる。
もちろん、自賠責保険の加入は義務づけられているが、同法の保護は、被害者救済のための最低限の保障を定めるにすぎない。
自賠責保険の金額を超える損害賠償金については、事実上被害者が泣き寝入りする結果となるのではないか、ということである。
自賠責保険の金額は、たとえば、死亡の場合は、最高3,000万円である。
そこで、仮に、40歳男性で年収800万円、家族が妻と子供1人、という例で、死亡事故の損害賠償金を算出してみたい。
この場合、概算で、1億1150万円が、損害賠償額となる。
この損害賠償額は、被害者が今後働いて得られるお金や慰謝料など、被害者の遺族が当然もらえてしかるべき賠償金である。
自賠責保険で、3,000万円をもらったとしても、残りの8,150万円が回収不能となってしまうおそれがあるのである。
損保各社は、契約途中で暴力団関係者と判明した場合は、その後の事故でも保険金を支払う、というが、そのうち暴力団関係者の全ては自動車保険に加入できなくなってしまう。
その場合の保護はない。
そのあたりも考えて、政策的保護も検討すべきである。
なお、暴力関係者の自動車が任意保険未加入であることを想定して、被害者が取り得る手段がある。
それは、自分に保険をかけておくことである。
自分の自動車保険に、「無保険者傷害特約」がついていれば、相手が任意保険未加入であっても損害賠償額に相当する保険金が被害者に支払われる。
「人身傷害補償特約」も有効だ。
自動車事故は、私たちの想定外の時に被害に遭う。
想定外の事故の際に身を守るために、自分の保険を見直してみるのもいいだろう。
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