弁護士 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 7
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 自転車の飲酒運転で車の免許が免停に!?

    2015年07月02日

    酒に酔って自転車に乗った男性が免停になったようです。

    もちろん、自転車の免許じゃありませんよ、自動車免許です。
    一体、どういうことでしょうか?

    「自転車の飲酒事故で免停=自動車運転も危険と判断-都公安委」(2015年6月25日 時事ドットコム)

    東京都公安委員会は、自転車の飲酒運転でバイクと衝突し、バイクの男性を死亡させたとして重過失致死容疑で書類送検されたアルバイト男性(30)について、道路交通法に基づき運転免許を180日間停止する処分にしました。

    事故が起きたのは、2015年1月22日午前0時50分頃。
    現場は、杉並区上高井戸の甲州街道。

    酒を飲んで自転車を運転して斜め横断した男性が、走行してきたバイクと衝突。
    バイクを運転していた男性(36)を転倒させ、死亡させたということです。

    警視庁は6月1日に書類送検していましたが、都公安委員会と警視庁は飲酒自転車運転の悪質性と、被害者が死亡したという結果の重大性を考慮し、「自動車の運転でも事故を起こす恐れがある」と判断したようです。

    自転車の危険運転を理由に、自動車運転免許の停止処分が出されるのは警視庁で2例目だということです。
    自転車の飲酒運転で、自動車免許を停止されるとは大袈裟じゃないかと思う人もいるかもしれませんが、これは法律で規定されています。

    まず、自転車であっても飲酒運転は道路交通法違反となります。

    「道路交通法」
    第65条(酒気帯び運転等の禁止)
    1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
    第117条の2
    次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

    1.第65条第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。)にあったもの。
    詳しい解説はこちら⇒「自転車でも飲酒運転は禁止です」
    https://taniharamakoto.com/archives/1961

    次に、免許停止に関する条文を見てみましょう。

    第103条(免許の取消し、停止等)
    1.免許(仮免許を除く)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。(以下、省略)
    次にあげる人や行為などが対象となります。

    ・幻覚の症状を伴う精神病(政令で定めるもの)
    ・発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気(政令で定めるもの)
    ・上記以外で自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
    ・認知症
    ・目が見えないこと、その他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として政令で定めるものが生じている者
    ・アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
    ・重大違反唆し等をしたとき(飲酒運転や救護義務違反、共同危険行為などの重大違反行為を、そそのかしてやらせること)
    ・道路外致死傷をしたとき(道路外とは、工場の構内や港湾内の埠頭、駐車場などの場所をいう)
    ・運転が、著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき
    など。

    今回は、報道からは、詳しくわかりませんが、「運転が、著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき」を適用したのでしょうか。
    近年、自転車の危険・悪質運転への罰則が厳しくなっています。

    2014年9月には、兵庫県西宮市で自転車に乗って歩行者に衝突して、そのまま立ち去ったとして市職員の男性が180日間の自動車免許停止処分を受けています。

    また、愛知県警は2015年6月1日から、自転車の飲酒運転をした人で自動車免許を持っている場合は、30~180日の期間の範囲で免許停止とするルールを運用していくとしています。

    自転車も免許制にするべきだという人もいますが、それはともかく、安易な気持ちで自転車に乗ることが重大事故を引き起こす原因にもなることは確かですから、くれぐれも用心して自転車に乗ってほしいと思います。

  • 不正アプリを使った“性的脅迫”事件が急増中!?

    2015年06月30日

    スマートフォンなどを使ったネット上の性的な脅迫、「ゆすり」行為が行われているようです。

    一体、どんな手口なのでしょうか?
    「不正アプリで性的脅迫 個人情報抜き取り 全国で被害」(2015年6月24日 神戸新聞)

    インターネット上で知り合った女性と性的な写真を交換するうちに、不正アプリを通じて自分のスマートフォンに登録してあるメールアドレスなどを抜き取られ、あとになって女性の関係者から「知り合いに写真をばらまく」と脅され、現金を要求される…そうした被害が全国に広がりつつあるようです。

    兵庫県警によると、手口は次の通りです。
    ・ある日、男性のスマホに突然、見ず知らずの女性からメールが届く。
    ・何度かやり取りを重ねるうちに、女性から「恥ずかしい姿を見せ合おう」と持ちかけられる。
    ・送られてきた女性の画像を開くと、自分のスマホの中の電話帳のデータなどが抜き取られる不正アプリがインストールされる。
    または、動画をやり取りするためのアプリと称したアプリを入手させられる。
    ・男性が自分の性的な恥かしい画像を送った後、女性のアカウントから見ず知らずの男がメール、もしくは電話で、「電話帳に入っているアドレス宛におまえの恥かしい画像をばらまく。嫌なら金を払え!」などと脅迫される。

    兵庫県内では2015年に入り、中高年の男性複数人から「数十万を要求された」などの相談があったようですが、今のところ現金被害は出ていないということです。

    しかし、県警サイバー犯罪対策課は、「事件の性質上、被害者は申告しにくく、実際の事件数はもっと多い」とみているとしています。
    こうした手口は、「性的な」と「ゆすり」を意味する単語を組み合わせた造語である「セクストーション(性的脅迫)」と呼ばれるもので、5年くらい前にアメリカで被害が確認され、日本では2014年頃から報告され始めているようです。

    では、法律的にはどのような罪になるかというと、「不正指令電磁的記録供用罪」に問われる可能性があります。

    「刑法」
    第168条の2(不正指令電磁的記録作成等)
    1.正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

    一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
    二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録

    2.正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
    不正指令電磁的記録供用罪については、以前にも解説しています。
    詳しい解説はこちら⇒
    「遠隔操作アプリで逮捕!?夫が妻に犯した罪とは?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1932

    妻のスマホに遠隔操作アプリを無断でインストールし、遠隔操作ができる状態にしたとして夫が逮捕された事件でした。

    そもそも、この不正指令電磁的記録供用罪は、正当な理由なしに、人のコンピュータ(電子計算機)に不正な指令を与えるウイルス(電磁気記録)などを入れる(インストール)犯罪です。

    最近では、知り合った女子大生のスマホに遠隔操作アプリを不正にインストールした大学助教授や、スマホから自動的に110番にかかるコンピューターウイルスに感染したサーバーにつながるURLを、LINE(ライン)で広めた高校生5人が逮捕、書類送検される事件も起きています。

    ネット上に流出した画像や動画は半永久的に消去されず、自分の死後も存在し続ける可能性があります。

    今回の不正アプリは、画像ではなく個人情報のデータを抜き取るものですが、男性が送ってしまったハレンチな自分の画像が将来的に悪用される危険性は否定できません。

    安易な気持ちで画像や動画をネット上でやり取りしない、見ず知らずの怪しい人物からのメールや添付データは開かないなど、自衛の意識を持っておいたほうがいいでしょう。

    また、これは犯罪なので、お金を払ってはいけませんよ。
    すぐに警察に相談することが大切です。
    お金を払っても画像が消される保証はありません。

    昔は、スキャンダル写真を撮られて脅されてお金を払うのと引き換えに、ネガを返してもらう、という方法での恐喝がありました。

    しかし、実は大量に現像されており、まだ写真が残っている、ということで、またお金を脅し取られる、というようなことが行われていました。

    デジタル画像だと、もう画像が全て消されたかどうかなど確認しようがありません。

    くれぐれも、お金を払わないよう気をつけてください。

  • 遺言公正証書が年10万件を突破したらしい

    2015年06月26日

    超高齢化社会

    超高齢化社会といわれる日本では、現在、4人に1人が65歳以上だそうです。

    そして10年後には、「2025年問題」が起きるともいわれています。
    いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることで、人口の4人に1人が75歳以上となり、社会保障財政のバランスの崩壊が懸念されているものです。

    厚生労働省のデータによれば、2012年には65歳以上の1人を現役世代(20~64歳)2.4人で支える構造になっていました。
    これが2050年には、65歳以上の1人を現役世代1.2人で支えなければいけなくなるということです。

    大変な時代がやって来るのでしょうか…。

    ところで、高齢者の方を巡る問題には遺産相続にまつわるトラブルがあります。
    相続=争族といわれるように、兄弟や親族間で骨肉の争いになることもあるのが相続問題です。

    そこで今回は、遺産相続トラブルを防止する方法としての「遺言」について法的に解説します。

    「遺言公正証書:年10万件 背景に家族の形多様化 確実な相続を期待」(2015年6月22日 毎日新聞)

    遺産相続を巡るトラブルを防ぐために、公証人の助言を受けて作られる遺言公正証書の年間作成件数が2014年に初めて10万件を突破したようです。

    日本公証人連合会(日公連)によると、1971年には約1万5000件だった遺言公正証書の作成件数は、2014年には10万4490件にまで増加。

    高齢化の進展に加え、家族の形態が多様化し、法律の定めとは異なる相続を望む人が増えていることが背景にある、としています。

    公正証書遺言とは?

    遺言には、「特別方式」と「普通方式」の2つの方式があります。

    特別方式は、死期が迫っている、一般社会から隔離されているなど特別な場合の遺言方式です。

    普通方式には、次の3つの遺言があります。
    ・「自筆証書遺言」…遺言者が遺言内容の全文、日付、氏名すべてを自分で記載して、捺印をするもの。
    ・「公正証書遺言」…公証人に作成してもらうもの。
    ・「秘密証書遺言」…遺言内容と氏名を自筆し、捺印した書面を封筒に入れ封印したものを公証人に証明してもらうもの。

    自筆証書遺言については以前、解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒「自筆証書遺言の書き方」
    https://taniharamakoto.com/archives/1372

    「一度書いた遺言書を変更したくなったら!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1509

    自筆証書遺言は、自分で書ける手軽さはありますが、書き方には厳格なルールがあり、定められた方式でなければ無効となってしまいます。

    一方、公正証書遺言は、公証人に証明、作成してもらわなければいけないという手間がかかりますが、証書は公証役場に保管されるため、破棄、隠匿、改ざんの心配がないなどのメリットがあります。

    公正証書遺言の特徴、その他のメリットについて以下にまとめます。

    ・公証人が作成するので、不備などで無効になる心配がなく、内容が整った遺言を作成することができる。
    ・家庭裁判所で検認の手続を経る必要がないので、相続開始後は速やかに遺言の内容を実現することができる。
    ・病気などで自書が困難な場合でも公証人が作成してくれる。
    ・作成手数料は遺産額で決まる。たとえば、1000~3000万円の場合では相続人1人あたり2万3000円となっている。

    公正証書遺言の作成件数が増加している要因とは?

    では、なぜ公正証書遺言を作成する人が増えているのでしょうか?
    報道にもあるように、背景には複数の要因があると考えられます。

    「家族形態の多様化」
    ・子供のいない夫婦で、仲の良くない兄弟や、疎遠な親族などに財産を遺したくないと考える場合。
    ・事実婚だが、パートナーには遺産を遺したい場合。

    などのように、家族の形が多様化していることで、法律の定めに縛られずに遺言として生前に遺しておきたい人が増えているようです。

    詳しい解説はこちら⇒
    「子供のいない妻は夫の遺産を100%相続できない!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1541
    「相続税などの増税」
    2015年1月1日から相続税・贈与税が改正されているのは、みなさんご存じだったでしょうか?

    今回の改正は、遺産から差し引くことができる基礎控除額が下げられたのが大きなポイントでした。

    以前の基礎控除額は、「5000万円+1000万円×相続人の数」でした。
    改正後の現在では、「3000万円+600万円×相続人の数」というように40%も引き下げられています。

    たとえば、8000万円の遺産を配偶者と2人のこどもが相続する場合、今までは、5000万円+1000万円×3人=8000万円で、相続税はかかりませんでした。
    これが、現在では法定相続分どおりに相続するとすると、単純計算で175万円かかることになります。
    また、見方を変えれば、4800万円の遺産があれば相続税が発生してしまうということになります。

    こうした増税にともなうトラブル防止のためにも公正証書遺言のニーズが高まっているようです。
    「認知症の急激な増加問題」
    超高齢化にともない、認知症の人が急激に増えています。

    厚生労働省の公表資料によると、65歳以上の高齢者のうち認知症の人は推計15%、約462万人。
    発症の可能性のある400万人も含めると、4人に1人が認知症とその予備軍だという調査結果があります。

    認知症が原因の行方不明者は2年連続で1万人を超えていますし、事故に巻き込まれる可能性があります。
    詳しい解説はこちら⇒「鉄道事故の賠償金は、いくら?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1421

    また、自筆証書遺言の場合、保管や管理の問題が出てきますし、死後に遺言の有効性そのものを巡って親族間の訴訟に発展してしまう例もあります。

    こうした事態を避けるために、生前に公正証書遺言を作成し公証役場でしっかり管理してもらいたいという人が増えているようです。
    以前は、遺言書を作るなんて縁起が悪いと考える人も多かったのですが、時代が変わり、価値観が多様化してきたことで遺言書の需要が高まっています。

    備えあれば憂いなし。
    自分の死後の争族を防止するためにも、財産についての備えも万全にしておきたいものです。

    相続に関する相談はこちらから⇒
    http://www.bengoshi-sos.com/about/0902/

  • リベンジポルノ防止に動きあり

    2015年06月23日

    はたして、被害拡大に歯止めをかけられるでしょうか。
    リベンジポルノに関して、各方面で動きが出てきました。

    「リベンジポルノをLINEで拡散…全国初の摘発」(2015年6月22日 読売新聞)

    警視庁は、リベンジポルノ画像を無料通話アプリ「LINE(ライン)」で拡散させたとして、26歳と27歳の無職の男2人をリベンジポルノ被害防止法違反と名誉毀損容疑で逮捕しました。
    被害を受けた女性が警視庁に相談して発覚したようです。

    報道によると、今年4月下旬、ゲーム仲間の男女でつくるLINEの3つのグループに、26歳の男が撮影したメンバーである20歳代女性の上半身裸の画像を投稿。
    27歳の男が画像を保存したうえで、別のグループのLINEに投稿して拡散するなどして、不特定多数が閲覧可能な状態にしたとしています。

    容疑者の男は、「自分が買ってきたおみやげを女性が捨てたと聞き、仕返しをしようと思った」と供述。

    LINEを使ったリベンジポルノの摘発は全国初ということです。
    リベンジポルノは卑劣な犯罪であること、そして被害の発生を防止するために「リベンジポルノ被害防止法」が成立したことは以前、解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒
    「リベンジポルノには新たな法律が適用されます!」

    リベンジポルノには新たな法律が適用されます!

    リベンジポルノ被害防止法の目的は次の通りです。

    私事性的画像記録の提供等により、私生活の平穏を侵害する行為を処罰するとともに、私事性的画像記録に係る情報の流通によって、個人の名誉及び私生活の平穏が侵害される被害の発生、又はその拡大を防止することを目的とする。(第1条)

    私事性的画像記録とは、以下のものをいいます。

    1.性交又は性交類似行為に係る人の姿態。
    2.他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの。
    3.衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの。
    (第2条)

    第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、プライベートで撮影した画像を不特定、または多数の者に提供した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第3条)

    ちなみに、今回の逮捕容疑には名誉毀損もありますが、こちらの刑罰も3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法第230条)
    さて、今回の事件はLINEを使ったリベンジポルノの初摘発でしたが、時を同じくしてGoogle(グーグル)では動きがあったようです。

    「グーグル、リベンジポルノ画像を削除へ 米」(2015年6月20日 CNN.co.jp)

    米検索大手のグーグルは、「リベンジポルノ」を同社の検索結果から削除するための新施策を講じると発表しました。

    短文投稿サイト「ツイッター」や交流サイト大手「フェイスブック」は3月にリベンジポルノ禁止をサイト上に明示。
    IT企業が相次いで対策に乗り出していることから、グーグルもこの流れに沿ったようで、誰でも削除要請フォームに入力し、本人の同意なしに投稿されたヌード写真や性的な画像の削除を求めることができるようにするということです。

    これまでは、「不適切な画像」として法的要請なしにグーグルが削除してきたのは、社会保障番号などの個人情報か児童ポルノに限られていました。
    しかし、同社の上級副社長(検索担当)は、「リベンジポルノは被害者、特に女性をおとしめる目的でしかない」と指摘したうえで、「本人の同意なしに共有されたヌード写真や性的に露骨な画像について、検索結果から削除してほしいとする人々の要求を尊重したい」と述べたということです。

    今回の対応は、日本を含む各国で適用されるとしています。
    これは非常によい決定だと思います。

    ネット上の中傷投稿やリベンジポルノなどへの法的手段としては、投稿者に対する不法行為(名誉棄損)に基づく「発信者情報開示請求」をしていくことが必要ですが、この手続きは難しく労力がかかるものです。

    詳しい解説はこちら⇒「中傷投稿やツイートに対抗する法的手段とは?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1299

    しかし、被害者にとって今後は手続きが非常にスムーズになり、対応しやすくなるのなら大歓迎でしょう。
    一度ネット上に広まった画像などを完全に消去するのは不可能ですし、グーグルの対応がリベンジポルノを根絶するわけではないとしても、一定の抑制効果は期待できるのではないでしょうか。

    リベンジポルノへの対策と厳罰化の動きは、日本だけでなく世界的にも広がっています。

    別れた後に問題となる可能性のある画像や動画の扱いについては、男性も女性も十分注意してほしいと思います。

  • 解雇問題の金銭的解決実現なるか?

    2015年06月19日

    地獄の沙汰も金次第、そんなことわざがあります。
    どんな問題でもお金で解決できる、という意味で使われますね。

    ところで先日、解雇などの労働紛争の金銭解決についての調査結果の報道がありました。
    今後、会社と従業員の関係が変わっていきそうな気配です。

    そこで今回は、労働トラブルとお金の関係について解説したいと思います。

    「<解雇など労働紛争>金銭支払いの解決が9割超える」(2015年6月15日 毎日新聞)

    解雇などに関する労働紛争のうち、労働局による「あっせん」、「労働審判」と、「裁判での和解」の計約1500件を調査したところ、金銭の支払いによる解決が9割を超えていたことが厚生労働省の公表でわかりました。

    労働局による「あっせん」は、2012年度に4つの労働局が受理した853件を調査。
    使用者(会社)側と労働者(従業員)側が合意に至ったのは324件で、全体の約38%。
    そのうち313件(96.6%)が金銭の支払いで解決しており、金額の中央値は15万6400円。
    労使間の合意が成立するまでの期間は、中央値で1.4ヵ月でした。

    「労働審判」は、2013年に4つの地裁が結論を出した452事例を調査。
    金銭解決は434事例(96%)で、金額の中央値は110万円。
    申立日から審判の終了までの期間は、中央値で2.1ヵ月。

    「裁判での和解」は、2013年に4つの地裁で成立した193事例を調査。
    金銭による和解は174事例(90.2%)で、金額の中央値は230万円。
    民事訴訟の解決までには平均6ヵ月以上かかっているようです。

    また、正社員は労働審判や裁判を活用する傾向が強く、非正規労働者は、あっせんを使う割合が高かったということです。

    なお、この調査は、2014年に政府が閣議決定した「日本再興戦略改訂2014」で、新たな紛争解決の仕組みとして解雇の金銭解決を制度化するための基礎資料として使われる予定で、厚生労働省は2015年内に制度の骨格をまとめる方針。

    一方、労働組合などからは、「解雇を容易にすることにつながる」との反発が出ているということです。
    【あっせんと労働審判の違いとは?】
    厚生労働省が6月に公表した「平成26年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、総合労働相談件数は103万3047件で、前年比1.6%減ですが、7年連続で100万件を突破しています。

    個別労働紛争の相談内容のトップは「いじめ・嫌がらせ」で6万2191件(21.4%)、2位が「解雇」で3万8966件(13.4%)、3位が「自己都合退職」で3万4626件(11.9%)。
    また、労働者からの相談が全体の81.7%、事業主からの相談は10.4%となっています。

    労働紛争の解決法には、主に①個別労働紛争解決制度(あっせん等)、②労働審判、③民事訴訟による裁判、があります。

    あっせんとは、紛争調整委員会が紛争の当事者間の調整を行い、話し合いを促進することによって、紛争の解決を図る制度です。

    対象となるのは、労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争で、募集・採用に関するものは対象になりません。

    平成26年度の統計では、助言・指導申出件数は23万8806件で、1ヵ月以内に97.3%が解決。
    あっせん申請件数は5010件で、2ヵ月以内での解決は92.0%となっています。

    労働審判とは、労働審判官(裁判官)1名と労働関係に関する専門的な知識と経験を有する労働審判員2名で構成された労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で審理を行い、適宜調停を試みながら、調停による解決に至らない場合には紛争の実情に即した解決をするための労働審判を行うという紛争解決手続です。

    労働審判手続によって労働紛争が解決しない場合には、訴訟手続に移行する点に大きな特色があります。
    【金銭解雇の制度化は成立するのか?】
    ところで、今回の報道にある「日本再興戦略改訂2014」とは何かというと、アベノミクスによる経済の成長戦略を一過性のもので終わらせずに持続させるための改革案ということのようです。

    2014年6月に閣議決定され、その後、「労働市場改革」、「農業の生産性拡大」、「医療・介護分野の成長産業化」など規制改革にフォーカスして議論を重ね、1年後の今月に新たな答申をまとめ、これが公表されています。

    保険調剤薬局の営業を病院内でもできるように医薬分業を規制緩和することや、税金が低く抑えられている農地(耕作放棄地)への課税強化などとともに提言されたのが、労働者の解雇の金銭解決です。
    実際、アメリカなどの諸外国では解雇された従業員が裁判で争い、「解雇は無効」という判決が出た後、職場に戻る代わりに金銭を受け取る仕組みがあり、こうした制度も参考にしながら、経済界、産業界が硬直した雇用市場を改善するために解雇の金銭解決の制度化を求めていました。

    実際問題として、私は多くの労働紛争を解決してきましたが、解雇された従業員が「解雇無効だ!」と会社を訴え、1年後に解雇無効の判決を勝ち取ったからといって、もう裁判を争った会社には戻りたくないし、会社の方でも戻って欲しくない、と思っているケースが大半なわけです。

    そうだとすると、解雇の問題を金銭で解決しよう、というのは、それなりの合理性を持っていると言えます。

    報道にもあるように、労働者から見ると、あっせんは短期間で解決しますが、手にする金額は低くなります。
    対して、裁判では時間と費用がかかりますが和解金も高くなるという傾向があります。

    政府は、こうしたバラツキをなくし、解雇問題の金銭解決の方法を知らない労働者の「泣き寝入り」を防ぐためにも、また経営者側に対しては解雇紛争の決着の仕組みを明確にできるメリットがあることからも、新制度を導入して利用しやすくするという目的があるとしています。

    一方で、新制度が導入された場合、解雇数が増大するという懸念もあり、厚生労働省は5月末の段階では一旦、新制度導入については見送るとしていました。
    ところが、今月に入って政府の規制改革会議が2015年内での検討再開を安倍晋三首相に提言したということです。

    確かに、現行の労働関係法では社員は守られているため、会社は簡単に解雇をすることはできません。
    いわゆる問題社員を解雇したくても、なかなかできないという問題を抱えている企業も増加しています。

    また、2013年には解雇を巡る裁判が966件提訴され、そのうち195件で解雇無効が確定していますが、裁判で不当解雇との判決が出ても、結局は職場にいづらくなって会社を辞めてしまう労働者も多くいます。

    私は、個人的には賛成なわけですが、労働者に不当に不利益がおよばないよう、労働者側の意見もよく聞いて、制度化していただきたいと思います。

    そして、もし、トラブルになったら・・・・

    労働トラブルの相談はこちらから⇒ http://roudou-sos.jp/flow/

    不当解雇された時の知識は、こちら。
    不当解雇問題を弁護士に相談すべき7つの理由
    https://roudou-sos.jp/kaikopoint/

  • TBSテレビ「ひるおび」生出演

    2015年06月13日

    2015年6月12日放送分のTBSテレビ「ひるおび」に生出演しました。

    先日、北海道で、痛ましい事故が起きました。

    4人が死亡し、一人は長い距離を引きずられて死亡した、ひき逃げ事故です。

    この事故は、法律の適用が難しいので、交通事故に詳しい法律専門家として、コメンテーター出演したものです。

    故人のご冥福をお祈りいたします。

  • フジテレビ「とくダネ」出演

    2015年06月13日

    2015年6月9日放送分のフジテレビ「とくダネ」から、法律専門家として取材を受けました。

    フリップ出演でしたが。

  • 安全配慮義務を怠ると会社は損害賠償請求される!?

    2015年06月09日

    中華料理店の料理人が、重い鍋を振りすぎて体を壊したとして会社を訴えた訴訟の判決が出たようです。

    裁判所は、どのような判決を下したのでしょうか?

    「鍋振り続け脚の骨損傷…餃子の王将と男性が和解」(2015年6月5日 読売新聞)

    「重い中華鍋を立ったまま振らされ続け、脚の骨を損傷した」として、中華料理チェーン「餃子の王将」の大阪府内のフランチャイズ店で働いていた男性(40歳代)が運営会社に対し約3600万円の損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁であり、運営会社が男性に400万円を支払う条件で和解が成立したようです。

    報道によると、男性は2009年7月から調理場スタッフとして週6日、1日約12時間勤務。
    1回に15~20人前の食材が入った中華鍋を振っていたところ、股関節に負担がかかり、痛みを訴えたが調理を続けさせられ、2011年1月に退職。
    その後、病院で「脚の付け根の骨の一部が壊死している」と診断され、人工股関節を入れたということです。

    男性は、「鍋の重さは食材を含め5キロ以上あり、過酷な業務で症状が悪化した。店には安全配慮義務違反があった」と主張。
    運営会社は、「業務との因果関係はない」と反論していたようです。

    なお、和解について運営会社は取材に応じず、フランチャイズ契約を結ぶ王将フードサービスは「コメントできない」としているということです。
    5キロ以上の中華鍋を1日に何度も振り続ける仕事を、体感的に想像するのは未経験者にとっては難しいですが、大変な重労働であることはわかります。
    しかし、男性が体を壊す前に会社も本人も、できることはなかったのでしょうか?

    今回の事案でポイントとなったのが「安全配慮義務違反」です。

    労働契約法では、使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければならないとされています。

    この安全配慮義務に違反した結果、労働者に傷病が発生した場合には、会社は、債務不履行責任として損害賠償義務を負担します。

    その損害賠償とは、今回の例で言うと、治療費、入院看護費用、入院雑費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料、後遺症に基づく慰謝料、逸失利益、などです。

    その合計が、400万円という和解金となった、ということですね。

    仕事上、労働者が怪我をしたり、病気になった場合には、労災保険給付がされることがありますが、これ以外にも、会社に前記のような安全配慮義務違反があった場合には、別途会社は損害賠償責任を負担する可能性があります。

    したがって、会社は、常に、労働者の安全に配慮しなければならない、ということです。

    餃子の王将も、本件を契機として、再発防止策を社内で策定しているのではないでしょうか。

    問題が起こった時は、その問題に対処すると同時に、再発防止策を検討、策定することがとても重要です。

    労働問題の相談は、こちら。
    http://roudou-sos.jp/

  • フジテレビ「とくダネ!」出演

    2015年06月09日

    2015年6月9日放送のフジテレビ「とくダネ!」から取材を受け、法律専門家としてコメントしました。

    内容としては、住居侵入罪および迷惑防止条例についてです。

  • 自転車でも飲酒運転は禁止です

    2015年06月05日

    仕事帰りに一杯飲んで、ほろ酔いで駅から自転車に乗って家に帰っただけ…では済まない時代になったようです。

    「自転車を酒酔い運転、道交法違反容疑で書類送検」(2015年6月2日 読売新聞)

    京都府警中京署は、酒に酔って自転車に乗ったなどとして、京都市中京区のホテル従業員の男(52)を道路交通法違反の容疑で書類送検しました。

    男は3月31日夜、同区の市道で酒に酔った状態で自転車を走らせたところ、女性(35)が乗る自転車と接触したことで飲酒運転が発覚。
    女性にケガはなかったようですが、付近の防犯カメラには男が蛇行運転する姿が映っており、調べに対して「自宅で飲酒後、飲食店で焼酎を飲んだ」と供述しているとのことです。

    府警が統計を取り始めた2010年以降、自転車の酒酔い運転の摘発は初めてのことで、同署は起訴を求める「厳重処分」の意見をつけたということです。
    自転車の飲酒運転が犯罪!? と思った人もいるかもしれませんが、じつは「道路交通法」にはしっかりと規定されています。

    「道路交通法」
    第65条(酒気帯び運転等の禁止)
    1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
    第117条の2
    次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

    1.第65条第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。)にあったもの。
    道路交通法では、自転車は「軽車両」という車両の一種であるため、65条が適用されるわけです。

    たかが自転車、では済まされないということです。

    ところで6月1日に、「改正道路交通法」が施行されました。

    これは、重大な事故につながりかねない自転車による「危険行為」を繰り返した運転者に安全講習の受講を義務づけるもので、これまで自転車の悪質運転が問題視されてきたことから改正されたものです。

    詳しい解説はこちら⇒「自転車の危険運転に安全講習義務づけに」
    https://taniharamakoto.com/archives/1854

    改正法では、次の14の項目を危険行為に規定しています。
    ・信号無視
    ・酒酔い運転
    ・通行禁止違反
    ・歩行者専用道路での徐行違反
    ・一時停止違反
    ・通行区分違反
    ・歩道での歩行者妨害
    ・路側帯の歩行者妨害
    ・交差点での右折車優先妨害
    ・遮断機が下りた踏切への立ち入り
    ・交差点での優先道路通行車の妨害
    ・環状交差点での安全進行義務違反
    ・ブレーキなし自転車の運転
    ・携帯電話を使用しながら運転するなどの安全運転義務違反

    これらの危険行為をした14歳以上の運転者は、まず警察官から指導・警告を受け、交通違反切符を交付されますが、3年以内に2回以上の交付で安全講習の対象となり、受講しないと5万円以下の罰金が科せられることになります。

    今回の事案については、発生したのは3月ですが、飲酒運転に蛇行運転で、さらに相手にぶつかっていることで悪質であることと、改正道路交通法が施行されたこともあって、京都府警初の飲酒自転車運転の摘発になったということでしょう。

    さて、14の危険行為…どうでしょう、バレなければ平気と思ってやっている人、違反だと知らずにやっている人さまざまいると思いますが、この機会に交通ルールと法律を学んで違反のないように自転車を利用してください。

    仮に、今回のように書類送検の後に起訴され、有罪判決となれば前科一犯となってしまいます。

    今後は、仕事帰りにお酒を飲んで帰るときなど十分注意していただきたいと思います。