ニュース | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 9
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 司法試験合格者年間三千人撤廃

    2013年02月28日

    政府の法曹養成制度検討会議は27日に、司法試験の合格者数を「年間3千人程度」とした政府目標の撤廃などを盛り込んだ中間提言案(座長私案)を公表したとのことです。

    http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG27041_X20C13A3EA1000/?dg=1

    この「年間三千人程度」という政府目標は、「国民にとって身近で使いやすい法律サービスの実現」という司法制度改革の理念を実現すべく、法律家の人数を増やそう、との意図で掲げられたものです。

    しかし、弁護士の業務の広がりは予想を下回り、新たに司法修習を終えた人たちの就職先がない状況です。

    日本弁護士連合会によると、昨年12月に司法修習を終えた人のうち就職先となる法律事務所などが見つからず、弁護士登録を見送った人は26%に上ったとのこと。4人に1人が就職できていないことになりますね。

    司法修習修了者が2,080人、弁護士未登録者が546人とのことです。

    2007年時点では4%でしたから、この就職難の増加割合は深刻です。

    弁護士事務所での受け入れ人数は、合格者数が増えても増えませんので、もし、合格者が3,000人だとすると、弁護士未登録者は、単純計算で1,466人となり、約半分の人たちが就職できない、という驚くべき結果となります。

    このままの状況が継続すれば、司法試験は生涯の仕事を得るために色々なものを犠牲にしてでも取り組むべき試験ではなく、単に法律知識を身につけ、弁護士事務所への就職を申し込める資格を得るだけの試験、という感覚になりかねません。

    そのようなことになれば、優秀な人材が受験を回避することは容易に予想されるところです。

    そうなれば、法律サービスの質の低下を招き、「国民にとって身近で使いやすい法律サービスの実現」という司法制度改革の理念に反する結果となるでしょう。

    これらのことを考えると、今回、「年間三千人程度」という政府目標を撤廃する方向で議論が進んでいることは評価できるところです。

    さらに、望ましい年間目標数値まで設定できるよう期待したいと思います。

  • 動くな、俺はゲイだ!

    2013年02月24日


    東京都渋谷区の地下街で、男子中学生に「おしりにガムが付いている」などと声をかけ、近くのビルの非常階段で、男子中学生の下半身を触るなどした疑いで、男(32)が逮捕されたそうです。

    http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye5288340.html

    罪名は、強制わいせつ罪。

    ニュースによると、容疑者は、「動くな、俺はゲイだ」などと言って脅した、とのことです。

    ちょっと、検討してみましょう。

    強制わいせつ罪は、13歳以上の男女に対して、暴行または脅迫によってわいせつな行為をした場合に成立します。13歳未満の場合は、暴行脅迫の要件は必要がありません。

    本人の意思に反して下半身を触って、もてあそんだような場合には、それ自体が「暴行」と評価されますので、強制わいせつ罪が成立します。痴漢などの場合はこれですね。

    しかし、今回、「動くな、俺はゲイだ」などと言って脅した、ということなので、脅迫による強制わいせつ罪、ということなのでしょうか。

    強制わいせつ罪にいう「脅迫」というのは、「害悪の告知」をいいます。

    「動くな」というのは、害悪ではありませんので、「ゲイだ」が害悪ということになるでしょうか。

    確かに、自分より体格の大きな男に、非常階段で「動くな、俺はゲイだ」と言われれば、恐怖を感じるかもしれません。

    しかし、これが「動くな、俺はオカマだ」と言われると、少し可愛い感じがします。なぜ、動いてはいけないのか、理由がわかりません。

    正しくは「うごいちゃダメよ。私はオカマよ」と言うのかもしれません。

    そして、「動くな、俺はニューハーフだ」と言われても、やはり恐怖は感じません。

    やはり、「動くな、俺はゲイだ」が一番効くようです。

    ちなみに、この害悪の告知は、相手が害悪と認識することが必要です。

    ということは、この中学生、「ゲイ」のなんたるかを知っていた、ということなのかもしれません。

    私は中学生の時、「ゲイ」の名称を知りませんでした。

    今時の中学生、おそるべし、です。

  • あおり運転で危険運転致死傷罪適用

    2013年02月10日

    危険運転致死傷罪では珍しいあおり運転で逮捕者が出ました。

    被疑事実は、2012年9月、栃木県で、少年(19)が、元交際相手の少女を見かけ、その車を追いかけて「少し驚かせてやろう」と思い、あおり運転をしたところ、元交際相手の車が怖くて速度を上げ、事故を起こし、巻き込まれた女子大学生(20)が、頭を強く打ち、意識不明の重体になったとのことです。

    そこで、警察署は、この少年を、危険運転致傷罪と道交法(ひき逃げ)の容疑で逮捕した、とのことです。

    危険運転致死傷罪の条文は、次のようになっています。

    【条文】

    刑法第208条の2(危険運転致死傷罪)

    アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。

    2  人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。

    この条文ができた時は、危険運転致死傷罪による傷害の場合に最高10年以下の懲役、死亡の場合に最高15年以下の懲役でした。

    しかし、その後の悪質な事故の多発から、刑の引き上げが論議され、平成17年(2005年)1月1日施行の改正法により、罰則が引き上げられました。

    現在は、危険運転致死傷罪による傷害の場合に最高15年の懲役、死亡の場合に最高20年の懲役です。

    今回は、死亡ではなく傷害なので、最高15年の懲役です。

    ただし、ひき逃げがセットでついているので、危険運転致死傷罪と道交法違反(ひき逃げ)の併合罪として重くなり、最高22年6ヶ月の懲役、となります。

    これまで、危険運転致死傷罪が適用されるのは、「アルコール」を飲んでの危険運転が多かったのですが、今回は、「あおり運転」で珍しいケースと言えます。

    この要件を解説します。

    「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度」

    「通行を妨害する目的」というのは、「相手を走行させない」という意味ではなく、逆に、相手に自車との衝突を避けるための回避行為をとらせるなど、相手の安全運転を妨害する目的を言います。

    相手が自車との衝突を避けるため急な回避行為をするときは、重大な事故が発生しやすいことに着目したものです。

    「重大な交通の危険を生じさせる速度」は、自車が相手方と衝突すると、重大な事故になりそうな速度、あるいはそのような重大な事故を回避することが困難な速度を言います。

    20~30キロ程度出ていれば、状況によっては危険運転致死傷罪の要件に当たると解釈されています。

    今回は、前の車を高速度であおった結果、前の車が衝突を避けるために速度を上げざるを得なくなり、安全運転が妨害された、ということですね。

    現在、危険運転致死傷罪関係で、刑法改正作業が進んでいます。

    適正な刑罰が科されるようになるとよいのですが。

    状況を見守りたいと思います。

    危険運転致死傷罪を動画で見るには、こちらです。

  • 待ち時間が長くて放火

    2013年02月03日

    $弁護士谷原誠のテレビで言えない話
    神奈川県横須賀市の病院で放火未遂で逮捕された男(62)がいます。

    この男は、3月2日に交通事故にあい、この病院に運ばれたということで、「待ち時間が長いうえに診断結果が軽く、腹が立った」ということで、病院の機械室にシンナーをまき、火をつけようとして、逮捕されたということです。

    火は警備員に消し止められたので、大事には至っていないようです。

    確かに病院の中には、待ち時間が長い病院があります。

    怪我をしていればストレスがたまりますので、イライラすることもあるでしょう。

    病院には、待ち時間解消のための工夫が求められると思います。

    しかし、だからといって、放火してよいわけではありません。

    まして、「診断結果が軽くて腹が立つ」というのは、どういうことでしょうか。

    診断結果が軽ければ結構なことだと思うのですが・・・。

    放火は、とても重い罪です。

    一歩間違えると多数の犠牲者を出す大惨事となりますから、当然ですね。

    昭和57年2月8日に、東京都千代田区永田町のホテルニュージャパンで起きた火災では、33人が死亡し、34名の負傷者を出したといいます。

    今回のように、現実に人がいる建造物を放火した場合、法定刑は、次のいずれかです。

    ・死刑
    ・無期懲役
    ・5年以上の有期懲役

    ちなみに、殺人罪の法定刑と同じです。

    わざと人を殺した場合と同じ法定刑で罰せられるのです。

    以下に重く罰せられるかがわかるでしょう。

    幸い、人に被害がなかったので、死刑や無期懲役刑はないと思いますが、ちょっと頭にきて犯すにはその罪は重すぎますね。

    ちなみに、人がいない建造物などに放火する場合には、2年以上の有期懲役となります。

    人がいなくても、火がつくと、まわりの建造物などに燃え移る危険性もあるので、重くなっているのですね。

    火は危ないですから、気をつけてくださいね。

    ちなみに、男女間の火遊びも、危険ですよ。( ̄ ̄― ̄ ̄)ニヤリ

  • なりすまし医師が立件へ

    2012年09月24日

    医師になりすまして約2300人の健康診断をした男が立件されるそうです。

    ニュースによると、病院は、東京都板橋区の高島平中央総合病院で、平成22年~23年で、週1、2回のペースで健康診断を担当する非常勤医師として採用され、採血、レントゲン、心電図の検査なども行なっていたそうなので、同病院で健康診断を受けた方は、問い合わせた方がよいかもしれませんね。

    容疑は、今のところ、医師法違反と詐欺らしいです。

    詐欺というのは、医師と偽って、報酬を得たからですね。

    医師法では、医師でなければ、(1)医業をしてはならず、(2)医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならないと規定とし、この二つに違反した場合には3年以下の懲役または200万円以下の罰金あるいはこれの併科を定めています。

    国家資格業では、だいたいこのような規定があり、弁護士でない者は(1)弁護士である旨の標示や記載をしてはならず、(2)報酬を得る目的で法律事務を行ってはいけません。

    弁護士の仕事をしていると、たまに(2)の方が出てきますね。

    いきなり当事者と無関係の人が本人の委任状を持って、「代理人」として登場してくるケースです。

    たとえば、「債権回収」。

    売掛金や貸金などが回収できなくて、困っている人に近づき、「オレが回収してやるから、回収した金額の半分を報酬としてくれ」

    などと言い、相手を脅して回収したりします。

    地上げなどもそうですね。

    土地や建物の賃借人と、立ち退くように交渉し、立ち退かせた場合に、成功報酬をもらう、というような場合です。

    交通事故の被害者に近づき、示談交渉を代行して、その賠償金の一部を報酬としてもらう人もいます。

    このように、弁護士と標示するかどうかは別として、報酬を得て法律事務を行うような行為は、全て弁護士法に違反する行為で、刑事罰の対象となります。

    罰則は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金です。

    ニセ医師の場合、人の身体・健康に直接影響がありますので、危険ですね。

    コワイから、こういうのは、やめて欲しい。
    (+o+)

    ニュース
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120923-00000518-san-soci

  • 働かないのは、犯罪か?

    2012年09月23日

    奈良県警田原本署は、6月下旬ころから9月16日深夜までの間、田原本町内において、働く能力がありながら収入もないのに仕事もせず一定の住居を持たないでうろついていた男(54歳)を、軽犯罪法違反で現行犯逮捕した、と発表しました。

    「?」が頭に浮かんだかもしれませんね。

    「罪は何だ!?」と。

    罪は、軽犯罪法違反です。

    軽犯罪法第1条4号には、次のような規定があります。

    生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの

    住居を持たず、働かずにうろつく行為自体が反社会的であるとともに、犯罪の温床にもなりやすい、ということで処罰の対象とされているものです。

    上記に該当する場合、拘留又は科料に処せられます。

    働く能力を有する路上生活者は一網打尽ですね。

    ちなみに、親のすねをかじる「ニート」は、この要件には当てはまりません。

    なぜなら、親の住居という「一定の住居」を持っているためです。

    また、ハローワークなどに通っているが、なかなか就職口が見つからない人も、この要件には当てはまりません。

    なぜなら、「職業に就く意思」があるためです。

    この罪が成立するのは、以下の要件を満たす場合です。

    (1)生計の途がないこと
    (2)働く能力があること
    (3)職業に就く意思がないこと
    (4)一定の住居を持たないこと
    (5)諸方をうろういたこと

    上記に当てはまる方、今からでも遅くありません。

    働きましょう!(*・`д・)ガンバルッス!!

  • スカート内を盗撮すると、無罪!?

    2012年09月14日


    スカート内を盗撮すると、犯罪か!?

    この点は、これまでにも何度ニュースになったこともあり、ご存じの方も多いと思います。

    スカート内を盗撮すると、それぞれの県の迷惑防止条例に違反します。

    事件は、9月10日の起こりました。

    飛行機が兵庫県上空あたりを飛んでいるとき、男が客室乗務員のスカート内をボールペン型のカメラで撮影したとして、同日逮捕されました。

    男は罪を認めましたが、なんと、東京地検は、男を処分保留で釈放。

    理由としては、盗撮時点での場所の特定が困難、ということです。
    http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012101200614

    どいうことでしょうか?

    スカート内の盗撮行為は、法律で罰則を定めたものはないので、兵庫県迷惑防止条例で逮捕されました。

    「兵庫県」迷惑防止条例ということは、その罪が、兵庫県内で行われることが必要です。

    しかし、スカート内を盗撮した時、飛行機が兵庫県の上空を飛んでいたのか、どうか、断定できなかった、ということです。

    兵庫県上空を飛んでいたかどうかを特定するためには、スカート内を盗撮した正確な時刻を確定し、その時刻に、兵庫県上空を飛んでいたことを確定しなければなりません。

    どちらかが不明だったのでしょう。

    こう考えると、

    「飛行機内でのハイジャックや暴行罪などは、起訴されるのに、なぜ!?」

    という疑問がわくかもしれません。

    これは、法律と条例の違いです。

    ハイジャックや暴行罪は、法律で規定されています。

    どこの県であろうと、日本全国で適用されますので、必ずしも県を特定する必要はありません。

    しかも、日本の飛行機内であれば、公海上でも、国外でも、刑法が適用されます。

    しかし、条例は、その県のみに適用されますので、犯罪が発生した県を特定しないといけないわけですね。

    法律って、難しいですね~。

  • 個人情報漏洩は、犯罪?

    2012年09月09日


    今年6月のことですが、個人情報流出がらみの逮捕者が出ています。

    ソフトバンクモバイル代理店の元店長が、携帯電話契約者の個人情報を、会社外の探偵業者に渡し、報酬を受け取っていたそうです。

    容疑は、不正競争防止法違反。

    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120629/crm12062907290008-n1.htm

    不正競争防止法は、窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為や、その営業秘密を使用、開示する行為、不正取得された営業秘密を使用、開示する行為、事業者から開示された営業秘密を、不正に利益を得る目的あるいは事業者に損害を被らせる目的で使用、開示する行為などを禁止しています。

    違反した場合には、当然罰則があります。

    罰則は、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、又はこれを併科です。

    重いですね。

    携帯電話会社では、当然個人情報を営業秘密として取り扱っているはずですので、不正競争防止法が適用されるわけですね。

    会社で働いていると、顧客情報その他、個人情報を利用する場面も多いと思います。

    個人情報については細心の注意を払って取り扱っているものと思いますが、ちょっとした出来心で、個人情報を外部に売却したような場合には、罪に問われる可能性もありますので、ご注意ください。

  • 不倫と旅館業法違反の関係

    2012年09月03日


    宿泊したホテルのタオルや備品を持ち帰ったことは、ありませんか?

    逮捕されるかもしれませんよ!

    愛媛県大洲市のホテルから、客室内にあったガウン2着、バスタオル2枚、フェイスタオル2枚、灰皿、小物入れのカゴなど備品9点(計2万2700円相当)を盗んだとして、22歳の女性が逮捕されました。

    女性は、「きれいだったから気に入った。家でも使えると思って持って帰った」と容疑を認めているそうです。

    ちょっと盗みすぎですが、やってしまった人もいるのではないでしょうか。

    ホテル室内にある備品は、ホテルの所有物ですが、無断で持ち帰ると、窃盗罪、ということになります。

    タオル1枚とかなら、ホテルも黙認するかもしれませんが、9点は盗みすぎですね。

    ニュースによると、現場に残された資料などから、この女性が浮上した、ということです。

    旅館や旅館業法が適用されるシティホテルなどでは、旅館業法6条1項に基づき、宿泊者名簿を備え付け、住所氏名などを記入させるので、宿泊者名簿から女性が浮上するはずですが、今回は、そうではなかったようです。

    ラブホテルでしょうか。

    そして、何を現場に残したのでしょうか。

    ちなみに、ホテルの宿泊者名簿に偽名を記載したり、ウソの住所を書いたりした場合には、旅館業法違反で、拘留又は科料に処せられます。

    犯罪なのです。(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

    不倫の時に犯しがちです。(+o+)

    やめましょう。(不倫も、旅館業法違反も)

  • 無銭宿泊は、詐欺罪が成立する

    2012年09月02日

    無銭宿泊のニュースは珍しい。

    秋田県仙北市の温泉旅館で宿泊代など計約50万円を支払わなかったとして、詐欺容疑で、男女7人が逮捕されました。

    ニュースによると、容疑者らは、8月27日~31日まで宿泊したが、旅館側から代金精算を求められたのに、「現金は持ってない」と答え、警察に通報されたようです。

    そりゃ捕まるでしょう。

    7人もいて、どういうつもりだったのでしょうね。

    詐欺罪は、次のような経過をたどります。

    ・欺罔行為(だまし)
        ↓
    ・錯誤(勘違い)
        ↓
    ・交付
        ↓
    ・財産・利益の移転

    今回は、27日の予約の電話時点で、「代金を支払う気がないのに、あたかも代金を支払うかのように騙し」、旅館側は、「てっきり代金を支払ってくれる」と錯誤に陥って予約を受け入れています。

    そして、宿泊サービスを提供し、容疑者らは、その利益を得ています。

    したがって、詐欺罪が成立する、というわけです。

    しかし、お金を持っていて、代金を支払う気がある場合には、詐欺罪が成立しません。

    でも、「代金を支払う気があるかどうか」は、内心の問題であり、誰もわかりませんよね。

    今回、逮捕されたポイントは、容疑者らが「お金をもっていなかった」というところにあります。

    お金もないのに、合計50万円もする温泉旅館に泊まるとなれば、「払う気があった」と言っても信じてもらえないでしょう。

    ということは、お金を持っていて、「払う気があったが、サービスが気に入らないから、払わない」と言えば、どこにも騙しが入っていないので、詐欺罪ではない、ということです。

    無銭飲食でも同じです。

    お金がないのに、飲食店で飲食をして、そのまま逃げようとして捕まると、逮捕されます。

    しかし、お金を持っていて、「まずかったから、払わない」と言えば、逮捕されません。

    もちろん、サービスを受けていて代金を支払わないのですから、民事上の問題は残ります。

    お金を持っていなければ、「払う気がなかった」とみなされるでしょう。

    では、飲食店に入り、飲食をした後で、財布がないことに気づいたら?

    その場合、理論的には騙す意図がないので詐欺罪ではありません。

    しかし、大いに疑われることでしょう。

    その場合は、電話して誰かに持ってきてもらうか、手持ちの自分の身分証明になるものを店に預け、念書を書くなどし、騙すつもりがなかったことを伝えるようにしましょう。