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過労死の認定基準と損害賠償について法律解説


2016年5月29日

近年、「過労死」の報道を目にすることが多くなりました。

そこで今回は、増加する過労死と労働災害(労災)の関係について、法的に解説します。

 

「労災」とは労働災害の略で、労働者が業務に起因して負傷(ケガ)、疾病(病気)、障害(後遺症)、死亡に至ったもののことをいいます。

労災は、おもに「業務災害」(業務中に起きたもの)と「通勤災害」(通勤中の交通事故などによるケガや病気など)の2つに分けられます。

この業務災害のうち、病気によるものを「疾病災害」というのですが、その中でも、遺伝や生活習慣などにより、その労働者にもとから内在していた私病が業務起因で発症、または増悪して死亡に至るものを「過労死」といいます。

対象となる病気には、次のようなものがあります。

「脳血管疾患」
①脳内出血(脳出血)
②くも膜下出血
③脳梗塞
④高血圧性脳症

「虚血性心疾患等」
①心筋梗塞
②狭心症
③心停止(心臓性突然死を含む。)
④解離性大動脈瘤
次に、過労死の認定基準について見てみます。

業務災害が認定されるには、業務と労働者の負傷、疾病、障害、死亡との間の因果関係において、次の2つの基準を中心に判断されます。

「業務遂行性」……労働者が使用者(会社)の支配下にある状態
「業務起因性」……業務に内在する危険性が現実化し、業務と死傷病の間に一定の因果関係があること

さらに、過労死については厚生労働省が通達している「過労死ライン」がひとつの目安とされています。

過労死ラインとは、健康障害リスクが高まるとする時間外労働時間を指すもので、次のような基準となっています。

1.発症前の1ヵ月ないし6ヵ月間にわたって、時間外労働が、1ヵ月あたりおおむね45時間を超えて時間外労働長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる。

2.発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性は強い。

3.発症前1ヵ月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性は強い。

現在の労働行政においては、おおむね80時間がひとつの目安とされています。

たとえば、1日8時間勤務として1か月の労働日を20日とした場合、1日4時間の時間外労働をして、1日12時間勤務が続く状態です。
これが、発症前の2ヵ月ないし6ヵ月続いた場合、過労死と認定される可能性が高くなるのです。
最後に、労災給付と損害賠償について見てみます。

労災が認定された場合、「労働基準法」と「労働者災害補償保険法(労災保険法)」により国から補償を受けることができます。
この制度のメリットは、健康保険とは違って労働者に自己負担額がないことだといえます。

労働者が死亡した場合の補償には次のような労災給付があります。

「遺族補償年金」/労働者が死亡した場合、遺族に支給されるもの
「葬祭給付」/労働者が死亡した場合、支給される葬祭費

さらに、ここで忘れてはいけないのは、ご遺族の方は会社に対して損害賠償請求できる場合があることです。

なぜなら、会社には、労働者に労働させる際にはケガや病気を防ぐために安全に配慮する義務=「安全配慮義務」があるからです。
これを会社が怠った場合には、労働者側は正当な損害賠償金を請求することができるのです。

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮を」しなければいけません(労働契約法5条)。

また、最高裁昭和59年4月10日判決(川義事件)は、「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し、又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」がある、としています。

そして、東京高裁平成11年7月28日判決・システムコンサルタント事件では、使用者(会社)は、「労働時間、休憩時間、休日、休憩場所などについて適正な労働条件を確保し、さらに、健康診断を実施したうえ労働者の年齢、健康状態などに応じて従事する作業時間および内容の軽減、就労場所の変更等適切な措置を採るべき義務」を負うとされています。

使用者(会社)がこの義務に違反して、労働者に過酷な労働をさせ、それがきっかけとなって労働者の基礎疾患を増悪させ、それによって死亡させたという因果関係が肯定されるような時は、損害賠償義務が発生します。

しかし、ここで大きな問題があります。
それは、被害者やご遺族の方にとって労災の手続きや損害賠償請求は法的な知識がないと難しいということです。

そうした場合は、弁護士などの専門家に相談、依頼することをお勧めします。

万が一、労災にあってしまった場合には、こちらからご相談ください。
http://www.rousai-sos.jp/contact/

ドローンを飛ばす時の法規制について


2016年5月24日

最近、話題のドローンですが、誰もがどこででも自由に飛ばせることができるのでしょうか?

今回は、ドローンと航空法について解説します。

「祭りでドローン、男を書類送検…改正法初適用」(2016年5月20日 読売新聞)

岐阜県警は5月19日、国の承認を受けないまま、祭り会場で小型無人機「ドローン」を飛ばしたとして、専門学校生の男(20)を航空法違反の疑いで岐阜地検大垣支部に書類送検しました。

男は4月2日午後4時頃、同県大垣市の公園で開催されていた「大垣市すのまた桜まつり」の会場で、国土交通相の承認を受けずにドローンを飛ばした疑いです。

ドローンは墜落しましたが、けが人はいなかったようです。
男は、「桜がきれいで、空撮した映像を見たかった」などと話し、容疑を認めているということです。

同県警によると、2015年12月施行の改正航空法で禁じられた、祭りなど人が多く集まる場所でのドローン飛行を巡って同法が適用されたのは全国で初めてとしています。
そもそも、ドローン(Drone)とはミツバチのオスバチを表す言葉だそうで、急加速や急停止、急転回にホバリングといった飛行性能から名付けられたようです。

ドローンはラジコンとは違い、遠隔操作やコンピュータ制御による自動操縦で飛行する小型の無人航空機で、以前は軍事用に使われていました。
それが小型化、低価格化により民間でも使われるようになり、商業用としてはグーグルやアマゾン、ドミノピザなどが配達のテストを始めているようです。

今では安い物なら1万円以下で買えるようになったため、一般の個人が使い始めたことで墜落事故などさまざまな問題が出てきています。

2015年4月22日に首相官邸に墜落したものは、実際はドローンではなくラジコンタイプのマルチコプターだったようですが、飛ばした男が威力業務妨害罪で逮捕されたこの事件はメディアでも大きく取り上げられたことから覚えている人も多いでしょう。

こうした事件を背景に、日本ではドローンの使用を規制するため、航空法を一部改正した「改正航空法」が2015年12月10日に施行されています。

「改正航空法」
第2条(定義)
22.この法律において「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。
遠隔操作や自動操縦で飛行させることができるドローンやラジコンで、機体本体とバッテリーの合計が200グラム以上のものを無人航空機とするわけです。(200グラム未満のものは模型航空機に分類)

次に飛行についてのルールを見てみます。

第132条(飛行の禁止空域)
何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。ただし、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合においては、この限りでない。

1.無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそ
れがあるものとして国土交通省令で定める空域
2.前号に掲げる空域以外の空域であつて、国土交通省令で定める人
又は家屋の密集している地域の上空
「航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域」とは、①空港等周辺に設定された進入表面等の上空の空域、②地表または水面から150メートル以上の高さの空域です。(「航空法施行規則」第236条の1)

「人又は家屋の密集している地域の上空」とは、国勢調査の結果を受け設定されている人口集中地区の上空で、地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通大臣が告示で定める区域を除きます。(「航空法施行規則」第236条の2)

これらの空域では、国土交通大臣の許可を受けなければ無人飛行機を飛行させてはいけないということです。

続いて、無人航空機の飛行方法を見てみます。

第132条の2(飛行の方法)
無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。ただし、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、次の各号に掲げる方法のいずれかによらずに飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないことについて国土交通大臣の承認を受けたときは、その承認を受けたところに従い、これを飛行させることができる。
1.日出から日没までの間において飛行させること。
2.当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること。
3.当該無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に国土交通省令で定める距離を保つて飛行させること。
4.祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること。
5.当該無人航空機により爆発性又は易燃性を有する物件その他人に
危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で国土交通省令で定めるものを輸送しないこと。
6.地上又は水上の人又は物件に危害を与え、又は損傷を及ぼすおそ
れがないものとして国土交通省令で定める場合を除き、当該無人航空機から物件を投下しないこと。
簡単にまとめると次のようになります。

・空港や住宅地の上空では飛行禁止
・日中のみ、ドローンとその周辺を注意深く監視しながら、人と物の距離は30メートルを保って(「航空法施行規則」第236条の2)飛行させること。
・多くの人が集合しているイベントなど、人が密集している場所の上空も飛行禁止。
・危険物を運んだり、機体から物を落下させてはいけない。

これらに違反した場合は、50万円以下の罰金となります。(「改正航空法」第157条の4)

なお、屋内や網などで四方・上部が囲まれた空間では上記のルールは適用されません。

また、国土交通大臣の許可・承認を受けるには所定の申請書を飛行させる10日前までに国土交通省か各空港事務所に提出する必要があるので覚えておいてください。
ドローンを飛ばして、自分で空撮写真や映像を撮影できるのは楽しいでしょう。

しかし、ドローンが人に墜落すれば死傷事故になりかねません。
また、小型カメラを搭載できることから悪意のある盗撮への懸念や、テロでの使用の危険性も指摘されています。

今後は、さらなる法律の整備や規制があるかもしれませんが、まずはルールを守り、人を傷つけることないようにドローンを楽しんでほしいと思います。

以上は、2016年5月24日時点の法律に基づいています。

学校の野球部活動での事故で県に賠償命令


2016年5月18日

高校の部活動中の事故により後遺症が残ったとして、被害者が損害賠償請求していた訴訟の判決が出たようです。

「部活中、打撃投手の頭部に打球…県に賠償命令」(2016年5月14日 読売新聞)

2011年5月、某県立高校の1年生だった男性が、野球部の練習中、グラウンドで打撃投手を務めていた際に右側頭部に打球を受け、頭蓋骨骨折などの重傷を負った。

日本高野連は打撃練習時に投手にヘッドギアを着用することを義務付けているが、男性は頭部を保護するヘッドギアを装着していなかったという。

男性は脳挫傷などの後遺症が残ったとして、県に約2400万円の損害賠償を求めて提訴していた。

静岡地裁の判決では、「職務上の注意義務に違反して事故を生じさせた」として教諭の過失を認定。
「指導教諭は注意義務に違反し、職務行為の違法性が認められる」として、県に約890万円の支払いを命じた。
大切な子供の人生が一瞬のうちに暗転してしまう学校での死傷事故。
一体、誰に責任があるのでしょうか? 損害賠償請求は誰に対して行うべきなのでしょうか?
【学校での事故によるケガには災害給付金が支払われる】
通常、学校や保育所の管理下における子供の事故、災害では、学校や保育所が加入している独立行政法人日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(医療費、障害・死亡見舞金)が支払われることになります。

・災害共済給付金には、医療費の他、障害見舞金または死亡見舞金が含まれます。

・学校や保育所の管理下とは、授業中(保育中)、部活動や課外授業中、休憩時間(始業前、放課後を含む)、通学(通園)中をいいます。
しかし、大きなケガのため重い障害を負った場合など、災害共済給付金だけでは損害賠償金額をすべて賄えないことが多いという問題があります。

その場合、被害者と親御さんは学校に損害賠償請求することができます。
【使用者責任とは?】
学校で起きた事故で子供が死傷した場合、損害賠償請求する相手として、まず担当教員や部活の顧問教員を想定する方もいると思います。

しかし、その教員を雇用しているのは学校であり、学校には「使用者責任」があるため、教職員の故意または過失によって生じた事故では、使用者である学校も損害賠償義務を負うことになります。

公立校であれば「国家賠償法」、私立校ならば「民法第715条」が適用されます。
損害賠償請求に関しては、「民法第709条」が適用されます。

「国家賠償法」
第1条
1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

今回、県に賠償命令が下されたのは、教員が県立高校の公務員だった、ということですね。

部活動については、「学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、顧問の教諭を始め学校側に生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務のあることを否定することはできない」(最高裁昭和58年2月18日判決)とされています。

したがって、部活動において生徒が怪我をした場合、学校側が生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき注意義務を怠った場合には、教師や学校に損害賠償責任が発生することになります。

今回については、日本高野連は打撃練習時に投手にヘッドギアを着用することを義務付けているが、男性は頭部を保護するヘッドギアを装着していなかった、ということで、顧問の教師らの指導監督が不十分であった、と認定されたものと思われます。

【学校で起きた死亡・重度の障害事故の発生件数】
次に、平成10~21年度における、中学・高校での体育の授業、および運動部活動での死亡・重度の障害事故の発生件数について、日本スポーツ振興センターが公表している災害共済給付のデータから見てみましょう。

「中学・高校での体育の授業における死亡・重度の障害事故の発生件数」
・陸上競技/87人
・水泳/24人
・バスケットボール/17人
・サッカー/16人
・器械体操等/10人
・柔道/9人
・バレーボール/8人
「中学・高校での運動部活動における死亡・重度の障害事故の発生件数」
・柔道/50人
・野球/35人
・バスケットボール/33人
・ラグビー/31人
・サッカー/26人
・陸上競技/19人
・バレーボール/14人
・テニス/14人

格闘技である柔道や、硬いボールを使用する野球などで事故が多く発生していることが読み取れます。

もし、授業中、課外活動中などにお子さんが怪我をしたような場合には、加害者である生徒などの他に、教師や学校にも損害賠償できる可能性があることを憶えておきましょう。

そして、そのような場合には、法律が認めているわけですから、泣き寝入りする必要はありません。

弁護士などの専門家に相談して、慰謝料など適切な損害賠償金を手にするための対応をされることをお勧めします。

ご相談はこちらから⇒「弁護士による学校事故SOS」
http://www.bengoshi-sos.com/school/

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