弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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    証拠破棄でも重加算税取り消し

    2024年04月25日

    今回は、相続税の申告をしなかった事案において、証券会社との取引を示すメモを破棄した事実があり、重加算税を賦課されたものの、それが取り消された平成28年3月20日裁決を解説いたします。

    (事案)

    被相続人は、平成24年3月に死亡し、被相続人は請求人である配偶者と子2人。

    請求人らは、法定申告期限までに相続税の申告をしなかった。

    平成26年9月に、税務調査が開始された。

    調査担当職員から証券会社との取引はなかったか、と問われ、請求人らは、「知らない」と回答したが、実際には取引があった。

    切り取られた香典メモが発見され、同メモには、「A証券 5,000」の記載があった。

    請求人らは、平成27年1月に期限後申告をした。

    処分庁は、重加算税賦課決定をした。

    原処分庁の主張は、メモの破棄行為及び税務調査における虚偽答弁を主な理由として、請求人には、不申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動があるというもの。

    (裁決)

    請求人らは、申告義務は認識していた。

    法定申告期限までに相続税申告をしない旨の意思の合致があったとまではにわかに認めることはできない(合意の合致の立証責任)。

    請求人らは、事前通知から実地調査までの間に、調査に対し積極的には協力しない旨の漠然とした合意が形成された。

    虚偽答弁やメモ破棄は、申告期限から約1年8ヶ月後であり、準備を要するような計画的なものではなく、とっさにとった行動とも評価しうる。

    相続税を申告しない意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたとまでは認めることができない。

    ======================

    以上です。

    隠蔽又は仮装の意図は、法定申告期限又は申告時点で必要です。

    本件で、メモ破棄は、申告期限から約1年8ヶ月後ですので、これをもって直ちに、「申告期限において隠蔽仮想の意思があったと認定することはできません。

    そこで、虚偽答弁やメモの破棄は、申告期限における隠蔽仮想の意思が貫かれた結果であるかどうかが問われることになります。

    今回は、虚偽答弁や証拠破棄がとっさに行ったものか、あるいは、当初より計画され、又は予定されていたものかどうかについて事実認定できていません。

    その結果、立証責任により、原処分庁の立証が不十分として重加算税の賦課要件を満たさない、という結論になったものと考えられます。

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