税法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 2
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  • 損害賠償請求権の益金計上時期

    2022年05月26日

    今回は、不法行為に基づく損害賠償請求権の益金計上時期についての東京高裁平成21年2月18日判決(TAINS Z259-11144)です。

    (事案)

    平成16年4月に、X法人に対する税務調査で、架空外注費の損金計上が発覚した。

    調査の結果、経理部長Aの詐取行為であることが判明した。

    調査の結果、平成9年9月から平成16年3月までの間に、約1億9000万円詐取したことが判明したため、平成16年9月に損害賠償請求訴訟を提起し、同額の判決が確定した。

    (争点)

    損害賠償請求権を益金に計上すべき時期は、不法行為時か、その他の時期か?

    (判決)

    【原則】
    本件各事業年度において詐取行為により被控訴人が受けた損失額を損金に計上すると同時に益金として損害賠償請求権の額を計上するのが原則

    【例外】
    本件各事業年度当時の客観的状況に照らすと、通常人を基準にしても、本件損害賠償請求権の存在・内容等を把握し得ず、権利行使が期待できないといえるとすれば、当該事業年度の益金に計上しない取扱いが許される

    【あてはめ】

    詐取行為は、経理担当取締役が本件預金口座からの払戻し及び外注先への振込み依頼について決裁する際に乙が持参した正規の振込依頼書をチェックすれば容易に発覚する。

    決算期等において、会計資料として保管されていた請求書と外注費として支払った金額とを照合すれば、容易に発覚。

    【結論】

    通常人を基準とすると、本件各事業年度当時において、本件損害賠償請求権につき、その存在、内容等を把握できず、権利行使を期待できないような客観的状況にない。
    各事業年度において益金に計上すべき。

    ======================

    以上です。

    通常人を基準にして、

    ・本件損害賠償請求権の存在・内容等を把握し得ず、

    ・権利行使が期待できない

    場合には、例外的に不法行為のあった時の事業年度に計上しないことができる、ということになりますが、あてはめでやや厳しめに判断されることに注意が必要です。

    安易に「それは知り得なかったですね」と判断すると、誤ることがある、ということです。

    なお、本件は社内の者でしたが、社外の「他の者」からの不法行為の場合には、法人税基本通達2-1-43があります。

    ===================

    他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。以下2-1-43において同じ。)の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める。

    ===================

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  • 総則6項最高裁R4.4.19

    2022年05月05日

    今回は、相続税に関して総則6項が適用された事案において、納税者が敗訴した最高裁令和4年4月19日判決をご紹介します。

    すでにお読みになったもしれませんが、私の視点で解説します。

    (事案)

    被相続人は、平成21年1月30日、信託銀行から6億3000万円を借入、甲不動産を8億3700万円で購入した。

    被相続人は、平成21年12月21日付けで共同相続人らのうちの1名から4700万円を借り入れ、同月25日付けで信託銀行から3億7800万円を借り入れた上、同日付けで本件乙不動産を代金5億5000万円で購入した。

    平成24年6月17日(購入から約3年後)、94歳の被相続人の相続が開始した。

    本件購入と借入がなければ、課税価格は6億円以上であった。

    相続人らは、評価通達の定める方法により、本件甲不動産の価額を合計2億0004万1474円、本件乙不動産の価額を合計1億3366万4767円と評価し、課税価格の合計額は2826万1000円とされ、基礎控除の結果、相続税の総額は0円とされた。

    税務署長は、総則6項を適用し、鑑定評価額に基づき、本件甲不動産の価額が合計7億5400万円、本件乙不動産の価額が合計5億1900万円として、課税価格を8億8874万9000円、相続税の総額を2億4049万8600円とする更正処分等を行った。

    (判決)

    (原則)
    租税法における【平等原則】により、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、合理的な理由がない限り、平等原則に違反するものとして違法。

    (例外)
    評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが【実質的な租税負担の公平に反する】というべき事情がある場合には、評価通達によらない合理的な理由がある

    (本件では)

    本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはできない。

    本件購入・借入れが行われなければ本件相続に係る課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になるというのであるから、上告人らの相続税の負担は著しく軽減されることになるというべきである。

    そして、被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる。

    そうすると、本件各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。

    ===================

    以上です。

    ポイントは、

    ・実質的な租税負担の公平に反する場合は、評価通達によらない合理的理由がある。

    ・通達評価額と鑑定評価額の差が大きいだけでは理由にならない。

    ・相続税額の差が大きく、かつ、関係者が相続税の軽減を知り、期待して行った場合には、実質的な租税負担の公平に反する。

    ということになります。

    税負担の軽減という「客観的要素」だけではなく、税負担の軽減目的と認識という「主観的要素」を判断要素に取り入れた、ということになります。

    したがって、行為計算否認規定の場合と同様、税負担の軽減以外の合理的目的を有し、かつ、その証拠を残しておくことが大切となってきます。

    銀行融資を受ける際に、購入目的を「相続税の軽減」と説明すると、それが稟議書に記載され、反面調査で明らかになりますので、税負担の軽減以外の目的の場合には、きちんとその目的を正しく説明しておくことが大切です。

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  • 名義預金が否定された裁決例

    2022年04月21日

    今回は、課税庁による名義預金の認定が裁決により覆された事例をご紹介します。

    国税不服審判所令和3年9月17日公表裁決です。

    事案は、争点に絞って簡略化します。

    (事案)

    被相続人は、生前、「私は、平成拾参年度より以後、毎年八月中に左記の四名の者に金、○○○○円也を各々に贈与する。但し、法律により贈与額が変動した場合は、この金額を見直す。」と記載した贈与証を作成し、署名押印をしたが、預金名義である子らの署名押印はいずれもなかった。

    Aは、被相続人と配偶者ではないBとの子であり、未成年者である。

    Bは、Aの唯一の法定代理人親権者である。

    被相続人は、母Bを通して、Aの預金口座に金員を複数回に渡り入金した。

    課税庁は、母Bが本件贈与証の具体的内容を理解しておらず、被相続人の指示に従い本件預金口座に入金していたにすぎず、当該入金がAへ贈与されたものとは認識していないから、被相続人からAへの贈与は成立しておらず、本件預金口座に係る預金は被相続人の相続財産に含まれるとして、更正処分をした。

    (争点)

    本件預金口座に係る預金が名義預金として被相続人の相続財産に含まれるか。

    ※贈与は、「契約」ですので、当事者双方の意思表示の合致が必要です。

    今回のケースでは、Aは未成年者ですので、母Aが法定代理人として贈与を受諾する意思表示をしたかどうかが問題となります。

    (裁決)

    母Bは、本件贈与証を預かるとともに、被相続人の依頼により本件預金口座へ毎年入金していた。

    母Bは、本件預金口座の通帳等を口座開設当時から管理していた。

    当時、長女の唯一の親権者であった長女の母は、長女の法定代理人として、本件贈与証による贈与の申込みを受諾し、その履行として本件預金口座へ毎年入金していたと認めるのが相当である。

    本件預金口座には、利息を除き、毎年の入金以外に入金はないから、本件預金口座に係る預金は、平成13年の口座開設当初からAに帰属するものであって、相続財産には含まれない。

    ======================

    以上です。

    相続において、相続人名義の預金が被相続人の相続財産であるという名義預金の問題が生ずることがあります。

    この場合、契約書があるかないかが事実認定にとって重要となってきます。

    しかし、税務では、実態で事実認定されますので、以下のこともおさえておく必要があります。

    ・預金通帳、印鑑を受贈者(法定代理人)が管理すること

    ・その預金から受贈者のための出費をすること

    ・通帳の届出住所を常に受贈者に一致させること

    ・必要な場合は贈与税の申告をすること

    そして、誤った更正がされた場合には、争うことも必要と考えます。

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  • 少額減価償却資産の判定単位

    2022年03月31日

    今回は、少額減価償却資産の判断基準について、裁判例から検討してみたいと思います。

    中小企業の場合、取得価額が30万円未満である減価償却資産について、一定の要件のもとに損金算入を認める特例があります。

    この特例の適用においては、他の資産と一体として30万円以上の資産になるのか、あるいは、当該資産が独立した資産として30万円未満の資産となるのか、という論点があります。

    この点、最高裁平成20年9月16日判決は、PHS電話事業において、エントランス回線利用権が一回線毎に少額減価償却資産となるのか、あるいは、PHS接続装置等と一体として30万円以上の減価償却資産となるのかが争われました。

    最高裁は、減価償却資産の判定基準として、

    (1)1単位として取引されているか

    (2)資産としての機能を発揮して、収益の獲得に寄与するものか

    の2点を検討すべきとしました。

    そして、

    (ア)エントランス回線は1回線でも取引の対象となり、

    (イ)エントランス回線1回線に係る権利一つでもって、被上告人のPHS事業において、上記の機能を発揮することができ、収益の獲得に寄与するものということができる。

    と判示しました。

    したがって、減価償却資産の判定単位について迷ったら、上記基準に当てはめて検討していただくのがよろしいかと思います。

    なお、上記最高裁以前にも同じ論点が争われている事例もありますが、最高裁以降は、全て上記基準によって判断されることになりますので、過去事例を上記最高裁基準にあてはめて考えていくことになります。

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  • 破産と債務免除益

    2022年03月17日

    今回は、【税理士を守る会】でされた質疑応答をご紹介します。

    (質問)

    顧問先が債務超過に陥ったため、法的整理手続きを進めています。

    顧問先が委任した弁護士は特別清算を検討しているようですが、特別清算の場合には、債務免除益が発生し、税金を払いきれない可能性があります。

    破産の場合には、債務免除益を計上しなくていいと聞いたことがあります。

    これは正しいのでしょうか。

    正しいとすると、社長からの借入金や未払い給与についても同様でしょうか。

    (回答)

    特別清算については、和解型か協定型かにかかわらず、債権者との合意によって、債権が放棄される、という構成をとります。

    したがって、債務が債権者側から免除されたことになり、債務免除益の計上が必要となります。

    しかし、破産の場合は、債権者が債権届出をし、破産管財人が破産会社の財産で換価できた範囲内で配当を実施し、残余の債権が残ったまま破産手続が終結します。

    この場合、「会社が破産宣告を受けた後破産終結決定がされて会社の法人格が消滅した場合には、これにより会社の負担していた債務も消滅するものと解すべき」(最高裁平成15年3月14日判決(民集57巻3号286頁)、とされており、債務が消滅する時点では、すでに債務免除益が生ずべき法人が存在しないことになります。

    つまり、破産終結前に、債権者からの債債務免除の意思表示、消滅時効の援用その他債権が消滅する事由が生じず、債務が残ったまま破産終結決定に至る場合には、債務免除益が成立する余地がない、ということになります。

    この場合には、債務者法人が存続している状態で債務が消滅することを前提とする法人税法59条2項、法人税法施行令117条の適用の場面ではありません。

    債権者側では、債務者が消滅したために、債権が消滅してしまった、ということになります。

    社長借入金や役員への未払い給与についても同様に免除を受けることなく消滅します。

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  • 損害賠償金と消費税

    2022年02月17日

    今回は、【税理士を守る会】でされた質疑応答をご紹介します。

    (質問)

    顧問先の社員が独立し、顧問先の顧客を奪取したことから、損害賠償を請求し、違約金を受け取りました。

    そこで、この違約金が消費税基本通達5-2-5(損害賠償金)
    「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に
    伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しない」

    に該当するかあるいは、

    「但し、(2) 無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無
    体財産権の権利者が収受する損害賠償金」は資産の譲渡等の対価に該当する

    になるか、悩んでおります。

    見解をお教えください。

    (回答)

    通達にいう「無体財産権」の侵害に該当するかどうかは別として、資産の譲渡等の対価に該当すると考えます。

    「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しない」とされている趣旨は、当該損害により、心身又は資産につきマイナスが生じ、損害賠償金を受領することにより従前の状態に戻るだけであって、「担税力」が生じない、というところにあると解されます。

    そうだとすると、損害賠償金であっても、本来売上や収入に替わるものであって、担税力を生ずるものであれば、資産の譲渡等の対価と解すべきとなります。

    この観点から、5-2-5(1)は、棚卸資産等を譲渡したと同様の経済効果が生じているのであり、(2)は、本来「特許権利用料」など売上又は収入に替わるものであり、(3)も本来引き渡しを受けていれば売上又は収入に算入すべき賃料に替わるもの、ということになります。

    今回は、顧客奪取の違約金ということなので、本来であれば、被害事務所の売上又は収入になるべきものがなくなったことによる損害が填補された(売上又は収入が違約金に替わった)、ということになるので、担税力が生じ、資産の譲渡等の対価に該当することになる、と考えます。

    通達に当てはめるとすると、無体財産権を知的財産権に限らない、とするならば、「営業権という無体財産権を侵害された」と言えるかもしれません。

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  • 【税理士向け】税と民事の時効の違い

    2021年12月30日

    今回は、【税理士を守る会】の質疑応答をご紹介します。

    先生方の参考になるのではないか、と考えるためです。

    (質問)

    他社から借り入れた債務がある場合に、何年もその状態になっていて、先方からも督促がされない場合に、時効のようなものが成立して債務が消滅することはありますでしょうか?

    インターネットで調べると、法人の場合は5年となっているようです。

    また、この時効成立がある場合に、このタイミングで債務免除益として税務上は益金算入が必須になるという理解になりますでしょうか?

    (回答)

    ご指摘のように、「消滅時効」という概念があります。

    法人同士の貸金債務の場合、債務の承認や督促等がなければ5年で消滅時効が完成します。

    この点、租税の時効と民事上の時効は異なりますので、ご注意ください。

    租税債権の徴収権は、【原則として】、法定納期限から5年間です(国税通則法72条1項)。

    5年経過すれば、何らの手続きを要せず、当然に消滅します。

    しかし、民事上の債権は、たとえば、消滅時効期間が5年だったとしても、5年を経過しただけでは、当然には消滅しません。

    債務者側が「援用」をしない限り、債権は存在し続ける、ということになります。

    「援用」の手続きとしては、内容証明郵便等で、債権者に対し、「債権は時効で消滅したので、消滅時効を援用します」と送れば完了です。

    法律上は、消滅時効の援用により、起算日である「権利を行使できる時」、たとえば、支払日などに遡って消滅し、その時からなかったことになります。

    しかし、税務上の処理については、「請負代金等が発生した以上は、当該債権はその発生時点の事業年度の益金の額に算入すべきものであり、それが後に消滅時効の完成により消滅したとしても、さかのぼって当該債権が発生しなかったことになるわけではない」(東京高裁平成17年10月26日判決)とされていますので、遡って処理をするわけではありません。

    「時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずる」(最高裁昭和61年3月17日判決)とされており、その時に担税力に変化が生じますので、時効が援用された時に債務が消滅したものとして処理をすることになります。

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  • 同一人に給与と外注費

    2021年12月24日

    今回は、給与か外注費か、という論点に関し、同一人に対する支払について、給与の他に支払っていた金員が外注費と認定された裁決例をご紹介します。

    なお、この裁決例を参考にするのは注意が必要です。

    国税不服審判所平成29年2月9日裁決です。

    (事案)

    請求人は、ホテルから料理長として雇傭され、給与の支給を受けていた。

    ホテルは、料理長に対し、給与の他に、「調理場委託料」の名目で金員を支払っていた。

    請求人は、料理長として、メニューの考案、価格の決定、材料の選定・発注・在庫管理及び調理などをしていたほか、調理場において勤務する請求人以外の料理人を確保し、給与の支給や出勤状況の管理等を行っていた。

    各料理人の給料は、前記「調理場委託料」から支払い、余った金員はホテルに返還しなかった。

    調理場委託料は毎月定額であり、料理人の人数や勤務状況によって変動しなかった。

    請求人は消費税の申告をしていなかった。

    税務署長は、請求人は消費税法上の事業を行っていたものであるとして、消費税及び地方消費税の決定処分、無申告加算税の賦課決定をした。

    争点は、給与を除いた「調理場委託料」についてである。

    (裁決)

    消費税法上の事業とは、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供を独立の立場で、反復、継続して行うことをいうものと解される。

    請求人の判断で本件各料理人を採用して、本件各料理人を指揮監督しながら、本件調理場における業務を行っていたものということができ、の請求人のメニューの考案、価格の決定、材料の選定・発注・在庫管理及び調理などをしていたほか、調理場において勤務する請求人以外の料理人を確保し、給与の支給や出勤状況の管理等の業務の全てが、本件法人との間の雇用契約に基づく料理長としての業務に包含されるものとは評価できないというべきである。

    そして、現に請求人は、本件法人から給与とは別に毎月「調理場委託料」名下の本件金員を受領して、この中から請求人が定めた給与を本件各料理人に支払っていたというのであるから、請求人は、独立の立場で、反復、継続して本件各料理人を雇って本件調理場を運営していたものと認められる。

    したがって、請求人は、消費税法上の「事業」を行っていたと認られる。

    ===================

    以上です。

    同一人に対する支払について、給与の他に支払っていた金員が外注費と認定された、珍しい裁決例ですが、個人的には本裁決例を参考にして実務を行うのは避けた方がよいと考えています。

    本件で、料理長が行っていた業務は、メニューの考案、価格の決定、材料の選定・発注・在庫管理及び調理などをしていたほか、調理場において勤務する請求人以外の料理人を確保し、給与の支給や出勤状況の管理等です。

    これは、まさに一般的な「料理長」が行う業務です。

    これらの業務を総合的に判断し、消費税法上の「業務」と認定されているわけです。

    では、その他に料理長は、給与の支給を受けて、ホテルの指揮命令下において、どのような労務に従事していたのか、ということです。

    給与に見合う労務があるというためには、上記料理長としての「業務」の他に、純粋な労務提供がなければなりません。

    しかし、本裁決例では、料理長が行っていた業務は、上記が全てであり、それ以外の労務提供は見えてきません。

    そうなると、本件で支払を受けていた「給与」も外注費と判断されるべきものではないか、との疑問が出てきます。

    なぜ、このようになってしまったのかというと、課税庁が、給与については問題とせず、「調理場委託料」のみを問題にしたためです。

    したがって、不服申立の対象は、「調理場委託料」のみとなり、国税不服審判所は、給与部分については判断しないこととなります。

    そのため、本件で支払われた「給与」が本来は外注費であったとしても、審判の対象にならない、ということです。

    原則として、同一人が行う業務について、指揮命令を受けているか、独立しているかは、二者択一ですので、実務においては、本件のような取り扱いは避けることをおすすめしたいと思います。

    但し、保険外交員等については、所得税通達で、以下のような定めがあるので、ご注意ください。

    これは、外交員等については、給与所得か事業所得か判断するのが難しいケースが多いために租税職員が現場で判断できるよう判断基準を決めておく、という趣旨から定められたものと解されます。

    ===================

    外交員又は集金人がその地位に基づいて保険会社等から支払を受ける報酬又は料金については、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。

    (1) その報酬又は料金がその職務を遂行するために必要な旅費とそれ以外の部分とに明らかに区分されている場合  法第9条第1項第4号《非課税所得》に掲げる金品に該当する部分は非課税とし、それ以外の部分は給与等とする。

    (2) (1)以外の場合で、その報酬又は料金が、固定給(一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるものを除く。以下この項において同じ。)とそれ以外の部分とに明らかに区分されているとき。  固定給(固定給を基準として支給される臨時の給与を含む。)は給与等とし、それ以外の部分は法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

    (3) (1)及び(2)以外の場合  その報酬又は料金の支払の基因となる役務を提供するために要する旅費等の費用の額の多寡その他の事情を総合勘案し、給与等と認められるものについてはその総額を給与等とし、その他のものについてはその総額を法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

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  • 【税理士向け】令和4年度税制改正大綱

    2021年12月16日

    先週発表された令和4年度税制改正大綱で、税理士法や附帯税関連でいくつか気になるものがありました。

    (1)税理士事務所の該当性の判断の見直し

    税理士法基本通達40-1は、「法第40条に規定する『事務所』とは、継続的に税理士業務を執行する場所をいいます。そして、継続的に税理士業務を執行する場所であるかどうかは、外部に対する表示の有無、設備の状況、使用人の有無等の客観的事実によって判定するものとする。」と規定しています。

    改正では、このうち、

    ・設備の状況

    ・使用人の有無

    などの物理的な事実により判断しない運用を行う、としています。

    (令和5年4月1日より)

    (2)懲戒と廃業

    これまで懲戒処分を受けそうな時に、自主廃業して税理士資格を喪失することによって懲戒を免れる、という方法がとられてきましたが、この方法は今後取れません。

    「税理士であった者」に対して「懲戒すべきであった」旨の決定がされる制度に変わるためです。

    そして、この決定を受けた場合には、税理士業務の禁止の場合には、欠格事由に、税理士業務の停止の場合には、一定期間登録拒否事由に該当することになります。

    (令和5年4月1日以降の違反行為に適用)

    (3)懲戒処分の除籍期間

    懲戒の事由があったときから10年を経過したときは、懲戒の手続を開始することができない、とされています。

    (令和5年4月1日以降にした違反行為に適用)ということなので、当分無関係です。

    (4)法人版事業承継税制

    特例承継計画の提出期限は令和5年3月末でしたが、1年延長し、令和6年3月末となりました。

    適用期限の令和9年12月末は延長されません。

    (5)過少申告加算税等の加重

    (一)税務調査において、帳簿提示提出拒否または帳簿に記載すべき売上等の金額の2分の1以上が記載されていない場合には、10%が加算されます。

    (二)税務調査において、帳簿に記載すべき売上等の金額の3分の1以上が記載されていない場合には、5%が加算されます。

    (6)隠蔽仮装行為があった場合の損金不算入

    隠蔽仮装行為があった場合、明らかな取引及び金額など以外は損金算入が否定されます。

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  • 一年当たり平均額法を採用した裁判例(東京地裁令和2年3月24日判決)

    2021年09月30日

    今回は、取締役の退職給与について、功績倍率法ではなく、一年当たり平均額法が採用された裁判例をご紹介します。

    東京地裁令和2年3月24日判決(TAINS Z888-2350)です。

    (事案)

    原告会社は、肉用牛の飼育、肥育及び販売事業等を行う株式会社。

    本件取締役の勤続年数は17年(争点となりましたが)。

    平成19年4月~平成24年12月までの役員報酬は月額25万円。

    平成25年1月11日に最終月額報酬を100万円とする遡及増額決議を行った。

    支給退職給与は2億7000万円。

    税務署長による更正処分は、役員退職給与の適正額は6250万0672円であり、2億0749万9328円は、不相当に高額な部分の金額に該当するとした。

    (判決)

    (前提)

    役員退職給与の適正額の算定方法としては、平均功績倍率法が採用されるのが裁判例の傾向であることはご存じかと思いますので、この部分は省略します。

    本件では、平均功績倍率法は採用せず、一年当たり平均額法を採用しています。

    どのような場合に一年当たり平均額法を採用するかについて、判決では、

    一年当たり平均額法は、「最終月額報酬額が当該退職役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を反映しているとはいえないなど、功績倍率を用いた方法によることが不合理であると認められる特段の事情がある場合には・・・合致する合理的な方法となり得る」としています。

    そして、「功績倍率を用いた方法によることが不合理であると認められる特段の事情」については、次のように判示しています。

    ●本件元取締役は、遅くとも平成19年4月以降、役員報酬として月額25万円の支給を受けていたが、・・・退任の後である平成25年1月11日に、役員報酬の遡及的な追加支給がされ、その最終月額報酬額は、月額25万円の4倍に上る月額100万円とされたものである(本件遡及増額)。

    ●これは、専ら本件役員退職給与の額の算定根拠を整える目的で決定及び支給されたものといわざるを得ない。

    その上で、一年当たり平均額法を採用し、次のように計算しました。

    「1年当たり役員退職給与額の平均額及び本件役員退職給与適正額は、それぞれ、192万2538円(1円未満切上げ)、3268万2976円となり、本件役員退職給与の額2億7000万円のうち、上記の本件役員退職給与適正額を超える2億3731万7024円が不相当に高額な部分の金額となる。」

    ==================

    ポイントしては、

    ・最終月額報酬額が当該退職役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を反映していると認められる場合は、役員退職給与の過大性の計算は、平均功績倍率法で行う。

    ・最終月額報酬額が当該退職役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を反映しているとはいえないなど、功績倍率を用いた方法によることが不合理であると認められる特段の事情がある場合には、一年当たり平均額法で計算する。

    ・平均功績倍率法での役員退職給与を高額にする目的で最終報酬月額のみを増額すると、上記特段の事情として認定され、平均功績倍率法が排斥される可能性が高い

    ということになります。

    税理士として、「最終報酬月額を増額すれば高額の退職金を出せますよ」などと、くれぐれも助言しないように注意しましょう。

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