税法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 2
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  • 損害賠償金と消費税

    2022年02月17日

    今回は、【税理士を守る会】でされた質疑応答をご紹介します。

    (質問)

    顧問先の社員が独立し、顧問先の顧客を奪取したことから、損害賠償を請求し、違約金を受け取りました。

    そこで、この違約金が消費税基本通達5-2-5(損害賠償金)
    「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に
    伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しない」

    に該当するかあるいは、

    「但し、(2) 無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無
    体財産権の権利者が収受する損害賠償金」は資産の譲渡等の対価に該当する

    になるか、悩んでおります。

    見解をお教えください。

    (回答)

    通達にいう「無体財産権」の侵害に該当するかどうかは別として、資産の譲渡等の対価に該当すると考えます。

    「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しない」とされている趣旨は、当該損害により、心身又は資産につきマイナスが生じ、損害賠償金を受領することにより従前の状態に戻るだけであって、「担税力」が生じない、というところにあると解されます。

    そうだとすると、損害賠償金であっても、本来売上や収入に替わるものであって、担税力を生ずるものであれば、資産の譲渡等の対価と解すべきとなります。

    この観点から、5-2-5(1)は、棚卸資産等を譲渡したと同様の経済効果が生じているのであり、(2)は、本来「特許権利用料」など売上又は収入に替わるものであり、(3)も本来引き渡しを受けていれば売上又は収入に算入すべき賃料に替わるもの、ということになります。

    今回は、顧客奪取の違約金ということなので、本来であれば、被害事務所の売上又は収入になるべきものがなくなったことによる損害が填補された(売上又は収入が違約金に替わった)、ということになるので、担税力が生じ、資産の譲渡等の対価に該当することになる、と考えます。

    通達に当てはめるとすると、無体財産権を知的財産権に限らない、とするならば、「営業権という無体財産権を侵害された」と言えるかもしれません。

    「税理士を守る会」は、こちら
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/

  • 【税理士向け】税と民事の時効の違い

    2021年12月30日

    今回は、【税理士を守る会】の質疑応答をご紹介します。

    先生方の参考になるのではないか、と考えるためです。

    (質問)

    他社から借り入れた債務がある場合に、何年もその状態になっていて、先方からも督促がされない場合に、時効のようなものが成立して債務が消滅することはありますでしょうか?

    インターネットで調べると、法人の場合は5年となっているようです。

    また、この時効成立がある場合に、このタイミングで債務免除益として税務上は益金算入が必須になるという理解になりますでしょうか?

    (回答)

    ご指摘のように、「消滅時効」という概念があります。

    法人同士の貸金債務の場合、債務の承認や督促等がなければ5年で消滅時効が完成します。

    この点、租税の時効と民事上の時効は異なりますので、ご注意ください。

    租税債権の徴収権は、【原則として】、法定納期限から5年間です(国税通則法72条1項)。

    5年経過すれば、何らの手続きを要せず、当然に消滅します。

    しかし、民事上の債権は、たとえば、消滅時効期間が5年だったとしても、5年を経過しただけでは、当然には消滅しません。

    債務者側が「援用」をしない限り、債権は存在し続ける、ということになります。

    「援用」の手続きとしては、内容証明郵便等で、債権者に対し、「債権は時効で消滅したので、消滅時効を援用します」と送れば完了です。

    法律上は、消滅時効の援用により、起算日である「権利を行使できる時」、たとえば、支払日などに遡って消滅し、その時からなかったことになります。

    しかし、税務上の処理については、「請負代金等が発生した以上は、当該債権はその発生時点の事業年度の益金の額に算入すべきものであり、それが後に消滅時効の完成により消滅したとしても、さかのぼって当該債権が発生しなかったことになるわけではない」(東京高裁平成17年10月26日判決)とされていますので、遡って処理をするわけではありません。

    「時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずる」(最高裁昭和61年3月17日判決)とされており、その時に担税力に変化が生じますので、時効が援用された時に債務が消滅したものとして処理をすることになります。

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  • 同一人に給与と外注費

    2021年12月24日

    今回は、給与か外注費か、という論点に関し、同一人に対する支払について、給与の他に支払っていた金員が外注費と認定された裁決例をご紹介します。

    なお、この裁決例を参考にするのは注意が必要です。

    国税不服審判所平成29年2月9日裁決です。

    (事案)

    請求人は、ホテルから料理長として雇傭され、給与の支給を受けていた。

    ホテルは、料理長に対し、給与の他に、「調理場委託料」の名目で金員を支払っていた。

    請求人は、料理長として、メニューの考案、価格の決定、材料の選定・発注・在庫管理及び調理などをしていたほか、調理場において勤務する請求人以外の料理人を確保し、給与の支給や出勤状況の管理等を行っていた。

    各料理人の給料は、前記「調理場委託料」から支払い、余った金員はホテルに返還しなかった。

    調理場委託料は毎月定額であり、料理人の人数や勤務状況によって変動しなかった。

    請求人は消費税の申告をしていなかった。

    税務署長は、請求人は消費税法上の事業を行っていたものであるとして、消費税及び地方消費税の決定処分、無申告加算税の賦課決定をした。

    争点は、給与を除いた「調理場委託料」についてである。

    (裁決)

    消費税法上の事業とは、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供を独立の立場で、反復、継続して行うことをいうものと解される。

    請求人の判断で本件各料理人を採用して、本件各料理人を指揮監督しながら、本件調理場における業務を行っていたものということができ、の請求人のメニューの考案、価格の決定、材料の選定・発注・在庫管理及び調理などをしていたほか、調理場において勤務する請求人以外の料理人を確保し、給与の支給や出勤状況の管理等の業務の全てが、本件法人との間の雇用契約に基づく料理長としての業務に包含されるものとは評価できないというべきである。

    そして、現に請求人は、本件法人から給与とは別に毎月「調理場委託料」名下の本件金員を受領して、この中から請求人が定めた給与を本件各料理人に支払っていたというのであるから、請求人は、独立の立場で、反復、継続して本件各料理人を雇って本件調理場を運営していたものと認められる。

    したがって、請求人は、消費税法上の「事業」を行っていたと認られる。

    ===================

    以上です。

    同一人に対する支払について、給与の他に支払っていた金員が外注費と認定された、珍しい裁決例ですが、個人的には本裁決例を参考にして実務を行うのは避けた方がよいと考えています。

    本件で、料理長が行っていた業務は、メニューの考案、価格の決定、材料の選定・発注・在庫管理及び調理などをしていたほか、調理場において勤務する請求人以外の料理人を確保し、給与の支給や出勤状況の管理等です。

    これは、まさに一般的な「料理長」が行う業務です。

    これらの業務を総合的に判断し、消費税法上の「業務」と認定されているわけです。

    では、その他に料理長は、給与の支給を受けて、ホテルの指揮命令下において、どのような労務に従事していたのか、ということです。

    給与に見合う労務があるというためには、上記料理長としての「業務」の他に、純粋な労務提供がなければなりません。

    しかし、本裁決例では、料理長が行っていた業務は、上記が全てであり、それ以外の労務提供は見えてきません。

    そうなると、本件で支払を受けていた「給与」も外注費と判断されるべきものではないか、との疑問が出てきます。

    なぜ、このようになってしまったのかというと、課税庁が、給与については問題とせず、「調理場委託料」のみを問題にしたためです。

    したがって、不服申立の対象は、「調理場委託料」のみとなり、国税不服審判所は、給与部分については判断しないこととなります。

    そのため、本件で支払われた「給与」が本来は外注費であったとしても、審判の対象にならない、ということです。

    原則として、同一人が行う業務について、指揮命令を受けているか、独立しているかは、二者択一ですので、実務においては、本件のような取り扱いは避けることをおすすめしたいと思います。

    但し、保険外交員等については、所得税通達で、以下のような定めがあるので、ご注意ください。

    これは、外交員等については、給与所得か事業所得か判断するのが難しいケースが多いために租税職員が現場で判断できるよう判断基準を決めておく、という趣旨から定められたものと解されます。

    ===================

    外交員又は集金人がその地位に基づいて保険会社等から支払を受ける報酬又は料金については、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。

    (1) その報酬又は料金がその職務を遂行するために必要な旅費とそれ以外の部分とに明らかに区分されている場合  法第9条第1項第4号《非課税所得》に掲げる金品に該当する部分は非課税とし、それ以外の部分は給与等とする。

    (2) (1)以外の場合で、その報酬又は料金が、固定給(一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるものを除く。以下この項において同じ。)とそれ以外の部分とに明らかに区分されているとき。  固定給(固定給を基準として支給される臨時の給与を含む。)は給与等とし、それ以外の部分は法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

    (3) (1)及び(2)以外の場合  その報酬又は料金の支払の基因となる役務を提供するために要する旅費等の費用の額の多寡その他の事情を総合勘案し、給与等と認められるものについてはその総額を給与等とし、その他のものについてはその総額を法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

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  • 【税理士向け】令和4年度税制改正大綱

    2021年12月16日

    先週発表された令和4年度税制改正大綱で、税理士法や附帯税関連でいくつか気になるものがありました。

    (1)税理士事務所の該当性の判断の見直し

    税理士法基本通達40-1は、「法第40条に規定する『事務所』とは、継続的に税理士業務を執行する場所をいいます。そして、継続的に税理士業務を執行する場所であるかどうかは、外部に対する表示の有無、設備の状況、使用人の有無等の客観的事実によって判定するものとする。」と規定しています。

    改正では、このうち、

    ・設備の状況

    ・使用人の有無

    などの物理的な事実により判断しない運用を行う、としています。

    (令和5年4月1日より)

    (2)懲戒と廃業

    これまで懲戒処分を受けそうな時に、自主廃業して税理士資格を喪失することによって懲戒を免れる、という方法がとられてきましたが、この方法は今後取れません。

    「税理士であった者」に対して「懲戒すべきであった」旨の決定がされる制度に変わるためです。

    そして、この決定を受けた場合には、税理士業務の禁止の場合には、欠格事由に、税理士業務の停止の場合には、一定期間登録拒否事由に該当することになります。

    (令和5年4月1日以降の違反行為に適用)

    (3)懲戒処分の除籍期間

    懲戒の事由があったときから10年を経過したときは、懲戒の手続を開始することができない、とされています。

    (令和5年4月1日以降にした違反行為に適用)ということなので、当分無関係です。

    (4)法人版事業承継税制

    特例承継計画の提出期限は令和5年3月末でしたが、1年延長し、令和6年3月末となりました。

    適用期限の令和9年12月末は延長されません。

    (5)過少申告加算税等の加重

    (一)税務調査において、帳簿提示提出拒否または帳簿に記載すべき売上等の金額の2分の1以上が記載されていない場合には、10%が加算されます。

    (二)税務調査において、帳簿に記載すべき売上等の金額の3分の1以上が記載されていない場合には、5%が加算されます。

    (6)隠蔽仮装行為があった場合の損金不算入

    隠蔽仮装行為があった場合、明らかな取引及び金額など以外は損金算入が否定されます。

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  • 一年当たり平均額法を採用した裁判例(東京地裁令和2年3月24日判決)

    2021年09月30日

    今回は、取締役の退職給与について、功績倍率法ではなく、一年当たり平均額法が採用された裁判例をご紹介します。

    東京地裁令和2年3月24日判決(TAINS Z888-2350)です。

    (事案)

    原告会社は、肉用牛の飼育、肥育及び販売事業等を行う株式会社。

    本件取締役の勤続年数は17年(争点となりましたが)。

    平成19年4月~平成24年12月までの役員報酬は月額25万円。

    平成25年1月11日に最終月額報酬を100万円とする遡及増額決議を行った。

    支給退職給与は2億7000万円。

    税務署長による更正処分は、役員退職給与の適正額は6250万0672円であり、2億0749万9328円は、不相当に高額な部分の金額に該当するとした。

    (判決)

    (前提)

    役員退職給与の適正額の算定方法としては、平均功績倍率法が採用されるのが裁判例の傾向であることはご存じかと思いますので、この部分は省略します。

    本件では、平均功績倍率法は採用せず、一年当たり平均額法を採用しています。

    どのような場合に一年当たり平均額法を採用するかについて、判決では、

    一年当たり平均額法は、「最終月額報酬額が当該退職役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を反映しているとはいえないなど、功績倍率を用いた方法によることが不合理であると認められる特段の事情がある場合には・・・合致する合理的な方法となり得る」としています。

    そして、「功績倍率を用いた方法によることが不合理であると認められる特段の事情」については、次のように判示しています。

    ●本件元取締役は、遅くとも平成19年4月以降、役員報酬として月額25万円の支給を受けていたが、・・・退任の後である平成25年1月11日に、役員報酬の遡及的な追加支給がされ、その最終月額報酬額は、月額25万円の4倍に上る月額100万円とされたものである(本件遡及増額)。

    ●これは、専ら本件役員退職給与の額の算定根拠を整える目的で決定及び支給されたものといわざるを得ない。

    その上で、一年当たり平均額法を採用し、次のように計算しました。

    「1年当たり役員退職給与額の平均額及び本件役員退職給与適正額は、それぞれ、192万2538円(1円未満切上げ)、3268万2976円となり、本件役員退職給与の額2億7000万円のうち、上記の本件役員退職給与適正額を超える2億3731万7024円が不相当に高額な部分の金額となる。」

    ==================

    ポイントしては、

    ・最終月額報酬額が当該退職役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を反映していると認められる場合は、役員退職給与の過大性の計算は、平均功績倍率法で行う。

    ・最終月額報酬額が当該退職役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を反映しているとはいえないなど、功績倍率を用いた方法によることが不合理であると認められる特段の事情がある場合には、一年当たり平均額法で計算する。

    ・平均功績倍率法での役員退職給与を高額にする目的で最終報酬月額のみを増額すると、上記特段の事情として認定され、平均功績倍率法が排斥される可能性が高い

    ということになります。

    税理士として、「最終報酬月額を増額すれば高額の退職金を出せますよ」などと、くれぐれも助言しないように注意しましょう。

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  • 所得税で資格取得費用が経費否認された裁判例

    2021年09月18日

    大阪地裁令和元年10月25日判決(TAINS Z269-13330)のご紹介です。

    柔道整復師の専門学校に支払った授業料が個人事業の必要経費になるかどうかが争われた事例です。

    (事案)

    個人で整骨院を開業する納税者が、柔道整復師養成の専門学校に通学し、その授業料等を事業所得の必要経費に算入して平成25年分及び平成26年分の所得税等の確定申告をしました。

    税務署長は、本件支払額は家事上の経費に該当し、必要経費に算入されないとして、更正処分及び過少申告加算税を賦課しました。

    (判決)

    【判断枠組み】

    ●(個別対応の費用かどうか)本件支払額は、原告が免許を取得するために本件学校に対して支払った学費等の納入金であって、原告が本件各年分に行っていた事業により得る収入に直接対応する支出ではないため、事業による収入を得るため直接に要した費用(個別対応の費用)でないことは明らかである

    ●(期間対応の費用かどうか)ある費用が事業所得の金額の計算上、期間対応の費用に該当し、必要経費として控除されるためには、当該費用が、所得を生ずべき業務と関連し、かつ、その遂行上必要なものであることを要するものと解される

    ●業務との関連性及びその遂行上の必要性の有無については、

    (ア)当該業務の具体的な内容、性質等を前提として、

    (イ)事業者が当該費用を支出した目的、

    (ウ)当該支出が、当該業務に有益なものとして収入の維持又は増加をもたらす効果の有無及び程度(その判断に当たっては、当該支出が、当該業務に係る収入の維持又は増加ではなく、むしろ所得に含まれない人的資本の価値の維持又は増加をもたらすものであるか否かも考慮すべきである。)

    等の諸事情を考慮して判断することが相当である。

    【当てはめ】

    ●原告は、本件各年当時、自らは免許を有さずに柔道整復に該当しないカイロプラクティック等を行うとともに、柔道整復師を雇用して柔道整復を行わせるという形態の事業を営んでいた

    ●自らが免許を取得して柔道整復を行うことで本件接骨院の経営の安定及び事業拡大を図ることを目的として本件支払額を支出したものということができる

    ●しかしながら、本件支払額は、本件各年当時において、前記の形態の事業による収入の維持又は増加をもたらす効果を有するものではない

    ●原告が本件各年後に柔道整復を業として行うことにより収入を維持又は増加させる効果を有するとしても、その事業は、原告が、施術所の開設には不要な業務独占資格である免許を自ら取得した上で柔道整復を行う点において、前記の形態の事業と大きく異なったものとなる一方で、本件支払額は、業務独占資格を獲得するという所得に含まれない人的資本の価値増加を得る効果を有するものであるということができる。

    ●そうすると、本件支払額は、本件各年当時における原告の所得を生ずべき業務と関連し、かつ、その遂行上必要なものであると認めることはできない。

    ===================

    以上です。

    個人事業で整骨院を営む者が、今後の業務の維持・拡大のために柔道整復師の専門学校に支払った授業料の必要経費性が否定されたものです。

    業務に関連するか、といえば、関連するわけですが、裁判所は、「個別対応」、「期間対応」についてそれぞれ検討の上、これを否定しました。

    うっかり必要経費に入れないように、個別の検討が必要なところだと思います。

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  • 税務調査での和解は許されない

    2021年08月19日

    今回は、税務調査での妥協についてです。

    税務調査で、見解の対立が生じ、租税職員との間で、交渉が行われます。

    その結果、「ここを認めて修正申告してくれれば、そっちは見逃そう」というように、双方が妥協する場面があります。

    これは、一見、双方の譲歩による和解が成立しているようにも見えます。

    しかし、課税の場面では和解は許されません。

    民事訴訟では和解が多いですが、税務訴訟では和解は許されず、判決になります。

    それは、課税の場面では、「合法性の原則」があるためです。

    合法性の原則は、租税法は強行法規であるから、課税要件が充足されている限り、租税行政庁には租税の減免の自由はなく、また租税を徴収しない自由もなく、法律で定められたとおりの税額を徴収しなければならない、という原則です。

    したがって、税務調査の場面でも、課税要件が充足されている限り、「ここは見逃そう」ということは許されないわけです。

    では、なぜ、税務調査の場面で、和解のようなことが行われているのか、というと、理論的には、「課税要件を充足していないと認定した」ということになります。

    合法性の原則により、課税要件が充足している限り、課税を行わなければならないので、課税要件が充足していないと判断する必要がある、ということになります。

    税務調査の立ち会いを行っていると、課税庁と和解をしているように感じることもあると思いますが、理屈ではどうなるのか、について考えてみました。

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  • 審査請求を活用しよう

    2021年08月10日

    今回は、もっと国税不服審判所に対する審査請求を利用した方がいいのではないか、ということです。

    税務調査の結果、修正申告の勧奨に応じない場合には、更正がされる場合があります。

    この場合、再調査の請求あるいは国税不服審判所に対する審査請求ができます。

    どうせダメだろう、と思うかもしれませんので、今回は統計をお知らせします。

    まずは令和元年度。

    審査請求の処理件数は、2,846件です。

    そのうち、全部又は一部が認容(納税者が主張が認められた)件数は、375件。

    つまり、13.2%です。

    そして、令和2年度。

    審査請求の処理件数は、2.328件です。

    そのうち、全部又は一部が認容(納税者が主張が認められた)件数は、233件。

    つまり、10%です。

    これが高いと感じるか、低いと感じるかは、人それぞれです。

    しかし、すでに更正がされており、納税を済ませているはずですので、審査請求をすることに、課税上の不利益はありません(税理士又は弁護士報酬の出費はありますが)。

    それで、10分の1の確率で請求が認められる、というのであれば、もっと審査請求を活用してもよいのではないか、と思います。

    特に、私の感覚では、重加算税について、「隠ぺい又は仮装」の要件を満たしていない賦課決定がされていることが多いです。

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  • 法人が不法行為を受けた時の収益計上時期

    2021年07月30日

    今回は、法人が詐欺など不法行為によって損失を受けた場合の課税関係について解説します。

    法人が、詐欺など不法行為によって損失を受けた時は、「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの(法人税法22条3項3号)に該当し、損失が発生した年度の損金に計上すべき]
    ものとされています(最高裁昭和43年10月17日判決)。

    そして、不法行為ということになると、損失と同時に、民法により、詐欺をした者に対する損害賠償請求権が発生しています。

    これは、債権を取得した、ということになりますので、益金に計上することになります。

    では、いつ計上すべきなのか、についてですが、法人税基本通達2-1-43があります。

    ===================

    他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。以下2-1-43において同じ。)の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める。

    ===================

    この通達により

    ・原則として損金算入と同時に益金算入

    ・実際に支払を受けた事業年度に益金算入も認める

    となります。

    あとは、貸倒損失の要件該当性を検討することになります。

    「回収可能性」の論点です。

    そして、注意を要するのは、本通達の適用範囲は、「他の者」です。

    「他の者」には、法人の役員または従業員は含まれない、と解されています(法人税基本通達逐条解説257頁)。

    では、法人の役員または従業員の不法行為により損害を受けた場合には、どの事業年度に益金算入するのか。

    これについては、裁判例もあり、長くなるので、後日、動画で解説したいとおもいます。

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  • 最終報酬月額0円の場合、役員退職金をいくらにするか?

    2021年06月18日

    今回は、「税理士を守る会」の会員の先生から寄せられた質問をご紹介します。

    質疑内容は、一般化できるよう改変しています。

    【質問】

    これまで役員報酬がないまま事業を続けてきた法人の社長が退職するにあたり役員退職金を出そうとしています。

    社長は他の他の収入を得ているので、特に役員報酬が必要なかったためです。

    最終報酬月額が0円の場合は、どのように考えればよいでしょうか。

    また、後日否認された場合の税賠も心配です。

    【回答】

    役員退職金については、裁判所は、原則として「功績倍率法」によっていることはご承知のことと思います。

    功績倍率法が、最終報酬月額を基準にしているのは、

    ・役員の最終報酬月額は、特別な場合を除いて役員の在職期間中における最高水準を示す

    ・役員の在職期間中における会社に対する功績を最もよく反映している

    ことを理由にしています(東京高裁平成元年1月23日判決他)。

    しかし、会社によっては、上記が当てはまらない場合があり、その場合には、功績倍率法を採用することが適当でない、という場合もあります。

    そのような場合には、「1年当たり平均額法」を採用する裁判例もあります(札幌地判昭和58年5月27日など)。

    裁決例でも、「最終報酬月額が役員の在職期間を通じての会社に対する貢献を適正に反映したものでないなどの特段の事情があり低額であるときは、最終報酬月額を基礎とする功績倍率法により適正退職給与の額を算定する方法は妥当でなく、最終報酬月額を基礎としない1年当たり平均額法により算定する方法がより合理的である。」(昭和61年9月1日裁決抜粋)とされています。

    ところが、この「1年当たり平均額法」も、同業類似法人の退職金を元に算出するので、納税者側では、正確に計算することができません。

    そこで、裁判例の中には、死亡退職した役員の役員Aの最終報酬が月額5万円であった事例において、Aが設立した会社の取引先やAの事業経験を原告会社に引き継がせたことからすると、Aの功績を適正に反映したものとしては低額に過ぎ、平均功績倍率法の適用上、Aの適正報酬月額は、原告代表者B(Aの長男)の報酬月額の平均額の2分の1の額とするのが相当である、として、適正報酬に引き直した上で計算すべき、としたものがあります(高松地裁平成5年6月29日判決、TAINS Z195-7150)。

    功績倍率法採用の趣旨からすると、上記裁判例の考え方は合理的と思いますので、上記を参考に、

    ・適正な最終報酬月額を算定し、

    ・功績倍率法を適用して

    退職金を計算するのがよろしいかと思います。

    しかし、この方式で退職金を計算しても、後日の税務調査で否認される可能性があります。

    そこで、「税理士を守る会」で、納税者のリスク説明と税理士の免責を得るために提供している「役員退職給与に関する確認書」の末尾「以上を前提に、当社では、」の次に、以下の記載をするのがよろしいかと思います。
    ===================
    「●氏の最終報酬月額は0円ですが、それは、●氏には別の収入があるという特別の事情があったためであり、過去の裁判例で、低額に過ぎる最終報酬月額の場合には、適正な報酬月額に引き直して計算すべき、とした裁判例があるため(高松地裁平成5年6月29日判決、TAINS Z195-7150)、●氏にかかる適正な最終報酬月額を●●円と計算した上で」
    ===================

    ※「税理士を守る会」の書式を見ないと、全貌は理解できないかと思いますが、参考にしていただければと思います。
    「税理士を守る会」は、こちら
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/