税法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • 一年当たり平均額法を採用した裁判例(東京地裁令和2年3月24日判決)

    2021年09月30日

    今回は、取締役の退職給与について、功績倍率法ではなく、一年当たり平均額法が採用された裁判例をご紹介します。

    東京地裁令和2年3月24日判決(TAINS Z888-2350)です。

    (事案)

    原告会社は、肉用牛の飼育、肥育及び販売事業等を行う株式会社。

    本件取締役の勤続年数は17年(争点となりましたが)。

    平成19年4月~平成24年12月までの役員報酬は月額25万円。

    平成25年1月11日に最終月額報酬を100万円とする遡及増額決議を行った。

    支給退職給与は2億7000万円。

    税務署長による更正処分は、役員退職給与の適正額は6250万0672円であり、2億0749万9328円は、不相当に高額な部分の金額に該当するとした。

    (判決)

    (前提)

    役員退職給与の適正額の算定方法としては、平均功績倍率法が採用されるのが裁判例の傾向であることはご存じかと思いますので、この部分は省略します。

    本件では、平均功績倍率法は採用せず、一年当たり平均額法を採用しています。

    どのような場合に一年当たり平均額法を採用するかについて、判決では、

    一年当たり平均額法は、「最終月額報酬額が当該退職役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を反映しているとはいえないなど、功績倍率を用いた方法によることが不合理であると認められる特段の事情がある場合には・・・合致する合理的な方法となり得る」としています。

    そして、「功績倍率を用いた方法によることが不合理であると認められる特段の事情」については、次のように判示しています。

    ●本件元取締役は、遅くとも平成19年4月以降、役員報酬として月額25万円の支給を受けていたが、・・・退任の後である平成25年1月11日に、役員報酬の遡及的な追加支給がされ、その最終月額報酬額は、月額25万円の4倍に上る月額100万円とされたものである(本件遡及増額)。

    ●これは、専ら本件役員退職給与の額の算定根拠を整える目的で決定及び支給されたものといわざるを得ない。

    その上で、一年当たり平均額法を採用し、次のように計算しました。

    「1年当たり役員退職給与額の平均額及び本件役員退職給与適正額は、それぞれ、192万2538円(1円未満切上げ)、3268万2976円となり、本件役員退職給与の額2億7000万円のうち、上記の本件役員退職給与適正額を超える2億3731万7024円が不相当に高額な部分の金額となる。」

    ==================

    ポイントしては、

    ・最終月額報酬額が当該退職役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を反映していると認められる場合は、役員退職給与の過大性の計算は、平均功績倍率法で行う。

    ・最終月額報酬額が当該退職役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を反映しているとはいえないなど、功績倍率を用いた方法によることが不合理であると認められる特段の事情がある場合には、一年当たり平均額法で計算する。

    ・平均功績倍率法での役員退職給与を高額にする目的で最終報酬月額のみを増額すると、上記特段の事情として認定され、平均功績倍率法が排斥される可能性が高い

    ということになります。

    税理士として、「最終報酬月額を増額すれば高額の退職金を出せますよ」などと、くれぐれも助言しないように注意しましょう。

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  • 所得税で資格取得費用が経費否認された裁判例

    2021年09月18日

    大阪地裁令和元年10月25日判決(TAINS Z269-13330)のご紹介です。

    柔道整復師の専門学校に支払った授業料が個人事業の必要経費になるかどうかが争われた事例です。

    (事案)

    個人で整骨院を開業する納税者が、柔道整復師養成の専門学校に通学し、その授業料等を事業所得の必要経費に算入して平成25年分及び平成26年分の所得税等の確定申告をしました。

    税務署長は、本件支払額は家事上の経費に該当し、必要経費に算入されないとして、更正処分及び過少申告加算税を賦課しました。

    (判決)

    【判断枠組み】

    ●(個別対応の費用かどうか)本件支払額は、原告が免許を取得するために本件学校に対して支払った学費等の納入金であって、原告が本件各年分に行っていた事業により得る収入に直接対応する支出ではないため、事業による収入を得るため直接に要した費用(個別対応の費用)でないことは明らかである

    ●(期間対応の費用かどうか)ある費用が事業所得の金額の計算上、期間対応の費用に該当し、必要経費として控除されるためには、当該費用が、所得を生ずべき業務と関連し、かつ、その遂行上必要なものであることを要するものと解される

    ●業務との関連性及びその遂行上の必要性の有無については、

    (ア)当該業務の具体的な内容、性質等を前提として、

    (イ)事業者が当該費用を支出した目的、

    (ウ)当該支出が、当該業務に有益なものとして収入の維持又は増加をもたらす効果の有無及び程度(その判断に当たっては、当該支出が、当該業務に係る収入の維持又は増加ではなく、むしろ所得に含まれない人的資本の価値の維持又は増加をもたらすものであるか否かも考慮すべきである。)

    等の諸事情を考慮して判断することが相当である。

    【当てはめ】

    ●原告は、本件各年当時、自らは免許を有さずに柔道整復に該当しないカイロプラクティック等を行うとともに、柔道整復師を雇用して柔道整復を行わせるという形態の事業を営んでいた

    ●自らが免許を取得して柔道整復を行うことで本件接骨院の経営の安定及び事業拡大を図ることを目的として本件支払額を支出したものということができる

    ●しかしながら、本件支払額は、本件各年当時において、前記の形態の事業による収入の維持又は増加をもたらす効果を有するものではない

    ●原告が本件各年後に柔道整復を業として行うことにより収入を維持又は増加させる効果を有するとしても、その事業は、原告が、施術所の開設には不要な業務独占資格である免許を自ら取得した上で柔道整復を行う点において、前記の形態の事業と大きく異なったものとなる一方で、本件支払額は、業務独占資格を獲得するという所得に含まれない人的資本の価値増加を得る効果を有するものであるということができる。

    ●そうすると、本件支払額は、本件各年当時における原告の所得を生ずべき業務と関連し、かつ、その遂行上必要なものであると認めることはできない。

    ===================

    以上です。

    個人事業で整骨院を営む者が、今後の業務の維持・拡大のために柔道整復師の専門学校に支払った授業料の必要経費性が否定されたものです。

    業務に関連するか、といえば、関連するわけですが、裁判所は、「個別対応」、「期間対応」についてそれぞれ検討の上、これを否定しました。

    うっかり必要経費に入れないように、個別の検討が必要なところだと思います。

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  • 税務調査での和解は許されない

    2021年08月19日

    今回は、税務調査での妥協についてです。

    税務調査で、見解の対立が生じ、租税職員との間で、交渉が行われます。

    その結果、「ここを認めて修正申告してくれれば、そっちは見逃そう」というように、双方が妥協する場面があります。

    これは、一見、双方の譲歩による和解が成立しているようにも見えます。

    しかし、課税の場面では和解は許されません。

    民事訴訟では和解が多いですが、税務訴訟では和解は許されず、判決になります。

    それは、課税の場面では、「合法性の原則」があるためです。

    合法性の原則は、租税法は強行法規であるから、課税要件が充足されている限り、租税行政庁には租税の減免の自由はなく、また租税を徴収しない自由もなく、法律で定められたとおりの税額を徴収しなければならない、という原則です。

    したがって、税務調査の場面でも、課税要件が充足されている限り、「ここは見逃そう」ということは許されないわけです。

    では、なぜ、税務調査の場面で、和解のようなことが行われているのか、というと、理論的には、「課税要件を充足していないと認定した」ということになります。

    合法性の原則により、課税要件が充足している限り、課税を行わなければならないので、課税要件が充足していないと判断する必要がある、ということになります。

    税務調査の立ち会いを行っていると、課税庁と和解をしているように感じることもあると思いますが、理屈ではどうなるのか、について考えてみました。

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  • 審査請求を活用しよう

    2021年08月10日

    今回は、もっと国税不服審判所に対する審査請求を利用した方がいいのではないか、ということです。

    税務調査の結果、修正申告の勧奨に応じない場合には、更正がされる場合があります。

    この場合、再調査の請求あるいは国税不服審判所に対する審査請求ができます。

    どうせダメだろう、と思うかもしれませんので、今回は統計をお知らせします。

    まずは令和元年度。

    審査請求の処理件数は、2,846件です。

    そのうち、全部又は一部が認容(納税者が主張が認められた)件数は、375件。

    つまり、13.2%です。

    そして、令和2年度。

    審査請求の処理件数は、2.328件です。

    そのうち、全部又は一部が認容(納税者が主張が認められた)件数は、233件。

    つまり、10%です。

    これが高いと感じるか、低いと感じるかは、人それぞれです。

    しかし、すでに更正がされており、納税を済ませているはずですので、審査請求をすることに、課税上の不利益はありません(税理士又は弁護士報酬の出費はありますが)。

    それで、10分の1の確率で請求が認められる、というのであれば、もっと審査請求を活用してもよいのではないか、と思います。

    特に、私の感覚では、重加算税について、「隠ぺい又は仮装」の要件を満たしていない賦課決定がされていることが多いです。

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  • 法人が不法行為を受けた時の収益計上時期

    2021年07月30日

    今回は、法人が詐欺など不法行為によって損失を受けた場合の課税関係について解説します。

    法人が、詐欺など不法行為によって損失を受けた時は、「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの(法人税法22条3項3号)に該当し、損失が発生した年度の損金に計上すべき]
    ものとされています(最高裁昭和43年10月17日判決)。

    そして、不法行為ということになると、損失と同時に、民法により、詐欺をした者に対する損害賠償請求権が発生しています。

    これは、債権を取得した、ということになりますので、益金に計上することになります。

    では、いつ計上すべきなのか、についてですが、法人税基本通達2-1-43があります。

    ===================

    他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。以下2-1-43において同じ。)の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める。

    ===================

    この通達により

    ・原則として損金算入と同時に益金算入

    ・実際に支払を受けた事業年度に益金算入も認める

    となります。

    あとは、貸倒損失の要件該当性を検討することになります。

    「回収可能性」の論点です。

    そして、注意を要するのは、本通達の適用範囲は、「他の者」です。

    「他の者」には、法人の役員または従業員は含まれない、と解されています(法人税基本通達逐条解説257頁)。

    では、法人の役員または従業員の不法行為により損害を受けた場合には、どの事業年度に益金算入するのか。

    これについては、裁判例もあり、長くなるので、後日、動画で解説したいとおもいます。

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  • 最終報酬月額0円の場合、役員退職金をいくらにするか?

    2021年06月18日

    今回は、「税理士を守る会」の会員の先生から寄せられた質問をご紹介します。

    質疑内容は、一般化できるよう改変しています。

    【質問】

    これまで役員報酬がないまま事業を続けてきた法人の社長が退職するにあたり役員退職金を出そうとしています。

    社長は他の他の収入を得ているので、特に役員報酬が必要なかったためです。

    最終報酬月額が0円の場合は、どのように考えればよいでしょうか。

    また、後日否認された場合の税賠も心配です。

    【回答】

    役員退職金については、裁判所は、原則として「功績倍率法」によっていることはご承知のことと思います。

    功績倍率法が、最終報酬月額を基準にしているのは、

    ・役員の最終報酬月額は、特別な場合を除いて役員の在職期間中における最高水準を示す

    ・役員の在職期間中における会社に対する功績を最もよく反映している

    ことを理由にしています(東京高裁平成元年1月23日判決他)。

    しかし、会社によっては、上記が当てはまらない場合があり、その場合には、功績倍率法を採用することが適当でない、という場合もあります。

    そのような場合には、「1年当たり平均額法」を採用する裁判例もあります(札幌地判昭和58年5月27日など)。

    裁決例でも、「最終報酬月額が役員の在職期間を通じての会社に対する貢献を適正に反映したものでないなどの特段の事情があり低額であるときは、最終報酬月額を基礎とする功績倍率法により適正退職給与の額を算定する方法は妥当でなく、最終報酬月額を基礎としない1年当たり平均額法により算定する方法がより合理的である。」(昭和61年9月1日裁決抜粋)とされています。

    ところが、この「1年当たり平均額法」も、同業類似法人の退職金を元に算出するので、納税者側では、正確に計算することができません。

    そこで、裁判例の中には、死亡退職した役員の役員Aの最終報酬が月額5万円であった事例において、Aが設立した会社の取引先やAの事業経験を原告会社に引き継がせたことからすると、Aの功績を適正に反映したものとしては低額に過ぎ、平均功績倍率法の適用上、Aの適正報酬月額は、原告代表者B(Aの長男)の報酬月額の平均額の2分の1の額とするのが相当である、として、適正報酬に引き直した上で計算すべき、としたものがあります(高松地裁平成5年6月29日判決、TAINS Z195-7150)。

    功績倍率法採用の趣旨からすると、上記裁判例の考え方は合理的と思いますので、上記を参考に、

    ・適正な最終報酬月額を算定し、

    ・功績倍率法を適用して

    退職金を計算するのがよろしいかと思います。

    しかし、この方式で退職金を計算しても、後日の税務調査で否認される可能性があります。

    そこで、「税理士を守る会」で、納税者のリスク説明と税理士の免責を得るために提供している「役員退職給与に関する確認書」の末尾「以上を前提に、当社では、」の次に、以下の記載をするのがよろしいかと思います。
    ===================
    「●氏の最終報酬月額は0円ですが、それは、●氏には別の収入があるという特別の事情があったためであり、過去の裁判例で、低額に過ぎる最終報酬月額の場合には、適正な報酬月額に引き直して計算すべき、とした裁判例があるため(高松地裁平成5年6月29日判決、TAINS Z195-7150)、●氏にかかる適正な最終報酬月額を●●円と計算した上で」
    ===================

    ※「税理士を守る会」の書式を見ないと、全貌は理解できないかと思いますが、参考にしていただければと思います。
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  • 虚偽表示を理由に更正の請求を認めなかった事例

    2021年06月03日

    今回は、更正の請求についてです。

    それほど頻繁に活用するものではないと思いますので、23条1項と2項の関係などを研究する機会も少ないと思います。

    今回は、最高裁平成15年4月25日判決(TAINS Z253-9333)を取り上げて、この点について考えてみたいと思います。

    (事案)

    亡父の相続に関して遺産分割協議に基づき相続税の申告をした後、他の相続人から遺産分割協議無効確認の訴えを提起され、同訴訟において、上記遺産分割協議が通謀虚偽表示により無効である旨の判決が確定したのを受けて、国税通則法23条2項1号に基づき更正の請求をしたところ、更正をすべき理由がない旨の処分を受けた事案です。

    ====================
    国税通則法23条2項1号

    納税申告書を提出した者又は第二十五条(決定)の規定による決定・・・を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合・・・には、同項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求・・・をすることができる。

    一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して二月以内

    ====================

    ということで、条文の文言上は、要件に当てはまる事案です。

    (裁判所の判断)

    納税者敗訴です。

    「上告人は、自らの主導の下に、通謀虚偽表示により本件遺産分割協議が成立した外形を作出し、これに基づいて本件申告を行った後、本件遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したとして更正の請求をしたというのである。そうすると、上告人が、法23条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由があるとはいえないから、同条2項1号により更正の請求をすることは許されないと解するのが相当である。したがって、本件処分は適法」

    ====================

    文言上要件に当てはまるにもかかわらず、認めなかった理由が詳しく書いてありませんので、以下、解説します。

    国税通則法23条1項は、納税義務者が課税標準等又は税額等の計算が法律の規定に従っていなかったこと又は計算に誤りがあったことにより、税額を過大に申告した場合等に法定申告期限から5年以内に限り更正をすることができるようにした規定です。

    これに対し、2項は、後発的に課税要件事実に変動が生じた場合に、確定した租税法律関係を変動した状況に適合させるのが趣旨です。

    国税通則法施行令を見ていただくと、全て申告時には予知しえなかった事態又はやむを得ない事由がその後において生じた場合の救済規定です。

    ということは、本件のように、自ら通謀虚偽表示をしていたような場合には、本来であれば、1項により更正の請求をすべき場合であり、更正の請求期間内に更正がやむを得なかった納税者を救済する趣旨の規定である2項の適用を予定していない、ということになります。

    そのようなことから、本件判例では、2項の適用が認められなかったと考えられます。

    このように租税法では、文理解釈が原則とされるものと、法律の趣旨に反する適用は排除される傾向にありますので、ご注意いただきたいと思います。

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  • 名義借りを戻して贈与税課税

    2021年05月21日

    名義借りの土地を真実の所有者名義に戻した時に贈与税を課税された事案です。

    東京地裁昭和43年10月5日判決(TAINS Z053-2256)です。

    (事案)

    原告Xと妻Aは夫婦であったところ、昭和23年9月13日、Xが土地の譲渡を受けるに際し、当時原告が電気工事請負業の債務が多額であったことから、差し押さえを免れる目的で、妻A名義で所有権移転登記をした。

    その後、昭和36年5月4日、妻A名義の土地を原告を買主とし、売買を原因とする所有権移転登記がされた。

    課税庁は、昭和38年11月30日、妻Aから原告に対し、土地を贈与したとして、贈与税及び加算税を賦課した。

    原告は、課税処分の無効確認訴訟を提起した。

    (裁判所の判断)

    本件土地は昭和23年9月13日以降今日に至るまで原告の所有であり、ただ登記簿上でAの名義を使用していたにすぎないこと、従つて昭和36年5月4日の登記による本件所有権の移転は、実質的な所有者への名義の回復をしたものに他ならず、なんら実体上の権利の変動を伴つてはいないものであるということができる。してみれば、本件課税処分は、権利の変動がないのに拘らず、これありと誤認してなされたものであり、右誤認がないとすれば、本件処分はなされなかつた関係に立つものであるから、右の誤認は重大なかしに該当するといわなければならない。

    行政処分の要件の存在を肯定する処分庁の認定にかしがある場合、その処分が無効であるとするためには、そのかしが重大、かつ客観的に明白でなければならず、行政処分のかしが、客観的に明白であるということは、処分関係人の知、不知とは無関係に、かつ、権限ある国家機関の判定をまつまでもなく、何人の判断によつても、ほぼ同一の結論に到達しうる程度に明らかであることを指すものと解するのが相当である。そして、この見解によると、本件誤認のかしが明白であるか否かは、被告側において、より詳細な調査を行なつたとしたならば、判明したであろうような事情(それが被告側の怠慢によつて明らかとされなかつた場合であると否とを問わず)をも基礎として判断すべきではなく、権限ある国家機関の判断をまつまでもなく、何人が認定してもほぼ同一の結論に到達しうる程度に明らかな処分当時の事情にもとづき判断すべきこととなるものと解すべきである。

    その上で、本件かしは、「明白ではない」として、納税者敗訴判決をしました。

    控訴棄却、上告棄却です。

    ===================

    まず、税務判例を読み慣れた先生には、違和感があると思いますが、それは、おそらく、本件が処分取消訴訟ではなく、課税処分の無効確認訴訟であるからだと推測します。

    処分取消訴訟であれば、処分に重大なかしがあれば、取消の結論になると考えられるためです。

    出訴期間を経過していたのか、何らかの事情があったと推測します。

    本件では、土地の所有名義を真実の所有者に回復した事案ですが、このような行為をする際には、課税関係について、とても悩みます。

    諸事情の総合考慮による事実認定なので、裁判所がどう事実認定をするか正解に判断できず、正解をを導き出すのが困難であるためです。

    そこで、個別通達に該当するかどうか、慎重に検討することになります。

    また、その上で、将来の税務調査による否認の可能性があること、その場合、課税処分の不利益があること、その場合でも税理士に対して損害賠償をしないこと(債務免除)の一筆をもらっておくことが大切です。

    個別通達のURLを記載しておきます。

    名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて(直審(資)22 直資 68 昭和39年5月23日)

    https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/640523/01.htm

    「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」通達の運用について(直審(資)34 直資 103 昭和39年7月4日)

    https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/640704/01.htm

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  • 決算承認を経ない法人税申告は無効?

    2021年02月19日

    今回は、「税理士を守る会」での質疑応答のご紹介です。

    (内容を少し変えています)

    (質問)

    法人税法74条1項は、「内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。」とされており、「確定した決算」が必要とされています。

    しかし、法人顧客からの税務申告依頼の際、株主総会議事録がないケースや、株主総会招集通知を発していないケースも多々あると思われます。

    このような場合に、法人税の申告が無効となることはありますか?

    何か念書のようなものをもらうには、どうしたらよいですか?

    (回答)

    定時株主総会による決算承認を受けた事実があるかどうかは、株主総会に出席しなければ確認ができません。

    また株主総会議事録を作成していない中小企業も多いと推測されます。

    それでも法人税の確定申告をしなければならないので、論点としては、

    ・定時株主総会による決算承認を得ない法人税確定申告の有効性

    ということになります。

    これが無効ということになると、日本中に無効な法人税申告が溢れかえることになるので、裁判所としても、有効にするロジックを構築してます。

    平成19年1月16日福岡地裁判決です。

    「決算がなされていない状態で概算に基づき確定申告がなされた場合は無効にならざるを得ないが、会社が、年度末において、総勘定元帳の各勘定の閉鎖後の残高を基に決算を行って決算書類を作成し、これに基づいて確定申告した場合は、当該決算書類につき株主総会又は社員総会の承認が得られていなくても、確定申告は無効とはならず、有効と解すべきである。」

    そこで、以下の点に注意して申告業務を受任していただければと思います。

    ・総勘定元帳の各勘定の閉鎖後の残高を基に決算を行っているか

    ・当該決算書類に基づき税務書類を作成する

    実際に確認できない場合には、上記の点及び「仮に上記事実と異なることによって会社が損害を被った場合にも、税理士に対して損害賠償その他一切の請求をしない」旨について会社から誓約書をもらうとよろしいかと思います。

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  • 近時の重加算税取消裁決(過少申告とは別の隠蔽仮装)

    2020年12月25日

    今回は、重加算税の取消裁決について解説します。

    令和元年6月24日裁決です。

    (事案)

    ●請求人は運送業を営んでいる。

    ●請求人は、従業員分の売上げやその費用の額の一部を事業所得の計算の起訴から除外して収支内訳書を作成した。

    ●課税庁が過少申告加算税、延滞税、重加算税に賦課決定処分をした。

    (裁決)

    ●請求人は、従業員の売上げやその費用の額が本件事業に係る事業所得の金額の計算上売上金額又は必要経費の金額に算入されるべきことを認識しつつ、これらをあえてその集計計算から除くなどして本件各年分の売上金額及び必要経費の金額を算出し、その算出したところに基づいて本件各収支内訳書を作成の上、これに基づく本件各所得税等申告書を提出することで過少申告行為に及んだ

    ●各過少申告に至る過程で、請求人が架空名義の請求書を作成し、架空名義の本件各支払明細書を作成させ、あるいは、他人名義の預金口座に売上代金を入金させたというような事実は認められず、本件各支払明細書や領収証等の取引に関する書類を改ざんし、あるいは本件売上メモを作成し、又はこれらの書類を意図的に破棄・隠匿したなどの事実も認められない。

    ●請求人が本件各支払明細書や本件各預金通帳の全てを保存し、本件調査の際には、当初から売上金額の過少計上の事実を認めつつ、これらの書類を本件調査担当職員に提示していたという事情に鑑みると、当該行為をもって真実の所得解明に困難が伴う状況を作出するための隠蔽又は仮装の行為と評価することは困難である。

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    以上です。

    本件は、

    ●過少申告の意図があった

    ●過少申告の意図で売上等を一部除外して収支内訳書を作成した

    というものですが、隠蔽仮装を認定しませんでした。

    ポイントは、

    ●隠蔽仮装というためには、過少申告の意図とは別に「隠蔽仮装行為」が必要である

    という点です。

    判例としては、以下です。

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    重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要する(最高裁平成7年4月28日判決)

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    本件のような事例で重加算税が賦課されていることが結構あるのではないか、と思いますが、その際は、

    「過少申告の意図とは別の隠蔽仮装行為」があるかどうを精査することが重要だと思います。