税法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • 親の事業に子が参加した場合の収益の帰属

    2022年08月18日

    今回は、親の事業(歯科医院)に子(歯科医師)が参加した場合、収入は、親に帰属するか、それぞれに帰属するか、という論点です。

    東京高裁平成3年6月6日判決(TAINS Z183-6725)です。

    (事案)

    原告は歯科医師であり、歯科医院を営んでいる。

    原告の子であるAは、歯科医師試験に合格後、当該歯科医院にて診療に従事していた。昭和57年3月に、A名義の個人事業の開業届出書を税務署に提出した。

    原告は、昭和57年および58年分の所得税について、歯科医院の総収入および総費用をAと折半して申告した。

    税務調査があり、Aは独立の事業者ではなく、原告の専従者であり、医院からの事業収入は全て原告に帰属する、として更正処分及び過少申告加算税決定処分をした。

    (判決)

    【所得の帰属の判断】

    親子が相互に協力して一個の事業を営んでいる場合における所得の帰属者が誰であるかは、その収入が何人の勤労によるものであるかではなく、何人の収入に帰したかで判断されるべき問題であつて、ある事業による収入は、その経営主体であるものに帰したものと解すべきであり(最高裁昭和37.3.16第2小法廷判決、裁判集民事59号393頁参照)

    従来父親が単独で経営していた事業に新たにその子が加わつた場合においては、特段の事情のない限り、父親が経営主体で子は単なる従業員としてその支配のもとに入つたものと解するのが相当である。

    【考慮要素】

    原告夫婦とA夫婦及びその子は、同一建物の1階と2階に住み分けており、独立の出入り口はないなどから、Aは全く別個の世帯とは認められない。

    Aが開業にあたり必要とした医療器具、医院改装の費用は原告の負担であり、売買契約等の契約者も原告であり、借入にあたり、原告所有土地建物に担保設定医院の経理上Aと原告の収支が区分されていない

    同医院の収入が昭和56年から飛躍的に増大していることが認められるとはいえ、本件で問題になつている昭和56年から同58年にかけての医院の実態は、Aの医師としての経験が新しく、かつ短かいことから言つても、原告の長年の医師としての経験に対する信用力のもとで経営されていたとみるのが相当であり、したがつて、医院の経営に支配的影響力を有しているのは原告であると認定するのが相当である。

    原告とAの診療方法及び患者が別であり、いずれの診療による収入か区別することも可能であるとしても、原告が医院の経営主体である以上、その経営による本件収入は、原告に帰するものというべきである。

    ==================

    以上です。

    子が歯科医師という資格を有し、治療を担当していたとしても、父親が全体の経営主体であり、収入金額すべてが父親の収入になる、という結論です。

    親の事業に子が参加した場合には

    (原則)

    従来父親が単独で経営していた事業に新たにその子が加わつた場合においては、特段の事情のない限り、父親が経営主体で子は単なる従業員としてその支配のもとに入つたものと解する

    その上で、例外として、「特段の事情」を検討する、という順番になります。

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  • 【税理士向け】母親名義の食堂で収益の帰属が争われた事例

    2022年07月08日

    今回は、母親名義の食堂の収益について、母親に帰属するか、請求人(子)に帰属するか、について判断した国税不服審判所平成3年11月14日裁決(TAINS F0-1-1153)をご紹介します。

    (事案)

    請求人は、昭和61年分ないし昭和63年分の所得税について、給与所得があったとして確定申告した。

    課税庁は、食堂の収益は請求人(子)に帰属するため、請求人の所得は給与所得ではなく、事業所得に当たるとして、所得税の更正及び過少申告加算税の各賦課決定をした。

    (裁決)

    以下の事実を認定して、母親名義の食堂の収益は、請求人(子)に帰属するとしました。

    ・本件食堂の営業許可名義は、母親名義である。

    ・食堂の収益は母親が事業所得として申告していた。

    ・食堂の建物は母親名義であるが、改築費用2573万円については、請求人が借入をして工事費用を負担した。

    ・上記借入金の返済は、食堂の収入金で行われた。

    ・請求人は約20年食堂の営業に従事し、仕入れ交渉、契約、材料の調理など営業活動で主要な役割を果たしており、母親は高齢で日常的に営業活動に従事していなかった。

    ・売上金の管理は請求人の名義で行われていた。

    ===================

    本件は、もともと母親が経営していた食堂について、明確に事業の承継が行われたことがないにもかかわらず、実態から、請求人を経営者と認定したものです。

    実質所得者課税の原則の見解には、法律的帰属説と経済的帰属説がありますが、多くの裁判例では、法律的帰属説で判断されています。

    法律的帰属説は、形式と実質が相違している場合には、実質に即して帰属を判定すべきとされています。

    本件のような事例では、上記のように、様々な点を検討しないと適切に事実認定ができません。

    以下のような事実関係を確認する必要があります。

    ・建物は誰の名義で所有又は賃借されているか

    ・売上金の管理は誰が行っているか

    ・仕入れ等の交渉、契約は誰が行っているか

    ・経営方針、人事等の決定は誰が行っているか

    ・重要な設備は誰が費用負担をしているか

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  • 同一人に給与と外注費

    2022年06月17日

    今回は、【税理士を守る会】でされた質疑応答をご紹介します。

    (質問)

    顧問先の業務で、定型的な業務と、時間が散発的で業務時間外にも発生する流動的な業務があります。

    そこで、1人の社員と定型的な業務については雇用契約を、流動的な業務について業務委託契約を締結したいと考えていますが、法律上可能でしょうか。

    (回答)

    当該社員をAとし、使用者を会社と仮定します。

    雇用契約の場合、Aは会社の指揮監督下にあり、業務委託契約の場合、Aは会社から独立しており、仕事の諾否の自由を有しています。

    この2つは二者択一であり、指揮監督下にありながら、独立している、ということはありえません。

    したがって、たとえば、Aの雇用契約における勤務時間が9時~17時である場合、この時間内に業務委託契約上の仕事が発生することはありえません。

    流動的な業務が勤務時間外である場合には、理論的には可能ですが、運用が非常に難しいです。

    なぜならその業務については、Aは会社から空間的時間的支配を受けず、指揮命令から解放されており、業務を受けるかどうかは自由であり、業務に対する危険と責任を負担する、という性質を持っており、A及び会社双方がその認識のもとに業務を行うことは難しいためです。

    なお、同一人に給与と外注費を支給することを認めたかのように誤解されることがある国税不服審判所平成29年2月9日裁決がありますが、これは外注費部分についてしか国税不服審判所の判断はされておらず、給与部分については判断されていないので、参考になりません。

    また、所得税通達204-22で保険外交員について給与所得と事業所得の両方を認めるものがありますが、これはそもそも外交員等については、給与所得か事業所得か判断するのが難しいケースが多いために租税職員が現場で判断できるよう判断基準を決めておく、という趣旨から例外的に定められたものと解されます。

    それ以外については、上記の結論になると考えます。

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  • 分掌変更退職給与が否認された裁判例・東京地裁平成29年1月12日判決

    2022年06月02日

    今回は、分掌変更退職給与が認められなかった裁判例をご紹介します。

    東京地裁平成29年1月12日判決(TAINS Z267-12952)、控訴棄却、上告棄却です。

    (事案)

    乙は、原告会社において平成16年5月28日から平成23年5月30日まで代表取締役の職にいた。

    乙は、平成23年5月30日に取締役に再任されたが、甲が代表取締役に選任され、乙は代表取締役を退任した。

    乙の月額報酬は、代表取締役を退任する前の205万円から約3分の1に相当する70万円に引き下げられた。

    原告は、乙の退職慰労金を5609万6610円とする旨の決議をし、損金に参入した。

    後日の税務調査により指摘を受け、原告は、修正申告をしたが、その後、本件退職慰労金は損金に参入されるべきであるとして更正の請求をした。

    税務署長は、更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。

    (判決)

    役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的には退職したと同様の事情にあると認められるときは、その分掌変更等の時に退職給与として支給される金員も、従前の役員としての在任期間中における継続的な職務執行に対する対価の一部の後払いとしての性質を有する限りにおいて、退職給与に該当する。

    その上で、判決では、退職の事実を否定するにあたり、次の事実を認定しています。

    ●乙は、原告の代表取締役を退任した後も、常勤の相談役として毎日出社をし、退任前と同じ代表取締役の執務室の席において執務をしていた

    ●甲の席は乙の席の隣に設けられ、乙と甲が共同して原告の経営に当たる執務環境が整えられていた

    ●代表者の甲は、原告の売上げや粗利、従業員の成績の管理、棚卸し、従業員からの報告事項、夏季賞与の査定やその支払のための借入れ、冬季賞与の査定、マシニングの管理や設置などについて、案件ごとに乙に確認を求め、その助言に従って業務を実施するなどしていた

    ●税務調査において、代表取締役を退任した後も退任前と同様の業務を継続しており、甲に対し引継ぎとして仕事を教えている旨述べている

    ●代表取締役を退任した後も、代表者会議への出席を継続し、出席をしなくなった営業会議及び合同会議についても、各会議の議事録に甲が決裁印を押した後のものを確認した上で「相談役」欄に押印していた

    ●10万円を超える支出について必要となる決裁のための稟議書についても、原則として甲が決裁欄に押印した後に「相談役」欄に押印をしていた。

    ●乙は、原告の資金調達等のため、多数回にわたり、単独でE銀行結城支店の担当者との面談や交渉をしており、同銀行の担当者も、原告の交渉窓口で原告の実権を有するのは乙であると認識し、交渉等のために原告を訪問するに当たり、乙に対し面談の約束を取り付けていた

    (結論)

    乙は、原告の代表取締役を退任した後も、引き続き相談役として原告の経営判断に関与し、対内的にも対外的にも原告の経営上主要な地位を占めていたものと認められるから、甲が代表取締役に就任したことにより乙の業務の負担が軽減されたといえるとしても、本件金員の支給及び退職金勘定への計上の当時、役員としての地位又は職務の内容が激変して実質的には退職したと同様の事情にあったとは認められない。

    =====================

    以上です。

    今回の判決で指摘された内容から、顧問先への助言で参考になるポイントは、以下です。

    ・毎日出勤しない

    ・代表取締役の時の執務室は使わない

    ・現代表取締役と同列とみなされる机の配置にしない

    ・経営上の重要な意志決定に関与しない

    ・人事に関与しない

    ・経営上の重要な会議に参加しない

    ・議事録を決裁しない

    ・支出に関し、決裁しない

    ・金融機関などとの交渉に関与しない

    なお、顧問先に助言をしたら、助言をしたことを証拠化しておくことをお忘れなく。

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  • 損害賠償請求権の益金計上時期

    2022年05月26日

    今回は、不法行為に基づく損害賠償請求権の益金計上時期についての東京高裁平成21年2月18日判決(TAINS Z259-11144)です。

    (事案)

    平成16年4月に、X法人に対する税務調査で、架空外注費の損金計上が発覚した。

    調査の結果、経理部長Aの詐取行為であることが判明した。

    調査の結果、平成9年9月から平成16年3月までの間に、約1億9000万円詐取したことが判明したため、平成16年9月に損害賠償請求訴訟を提起し、同額の判決が確定した。

    (争点)

    損害賠償請求権を益金に計上すべき時期は、不法行為時か、その他の時期か?

    (判決)

    【原則】
    本件各事業年度において詐取行為により被控訴人が受けた損失額を損金に計上すると同時に益金として損害賠償請求権の額を計上するのが原則

    【例外】
    本件各事業年度当時の客観的状況に照らすと、通常人を基準にしても、本件損害賠償請求権の存在・内容等を把握し得ず、権利行使が期待できないといえるとすれば、当該事業年度の益金に計上しない取扱いが許される

    【あてはめ】

    詐取行為は、経理担当取締役が本件預金口座からの払戻し及び外注先への振込み依頼について決裁する際に乙が持参した正規の振込依頼書をチェックすれば容易に発覚する。

    決算期等において、会計資料として保管されていた請求書と外注費として支払った金額とを照合すれば、容易に発覚。

    【結論】

    通常人を基準とすると、本件各事業年度当時において、本件損害賠償請求権につき、その存在、内容等を把握できず、権利行使を期待できないような客観的状況にない。
    各事業年度において益金に計上すべき。

    ======================

    以上です。

    通常人を基準にして、

    ・本件損害賠償請求権の存在・内容等を把握し得ず、

    ・権利行使が期待できない

    場合には、例外的に不法行為のあった時の事業年度に計上しないことができる、ということになりますが、あてはめでやや厳しめに判断されることに注意が必要です。

    安易に「それは知り得なかったですね」と判断すると、誤ることがある、ということです。

    なお、本件は社内の者でしたが、社外の「他の者」からの不法行為の場合には、法人税基本通達2-1-43があります。

    ===================

    他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。以下2-1-43において同じ。)の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める。

    ===================

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  • 総則6項最高裁R4.4.19

    2022年05月05日

    今回は、相続税に関して総則6項が適用された事案において、納税者が敗訴した最高裁令和4年4月19日判決をご紹介します。

    すでにお読みになったもしれませんが、私の視点で解説します。

    (事案)

    被相続人は、平成21年1月30日、信託銀行から6億3000万円を借入、甲不動産を8億3700万円で購入した。

    被相続人は、平成21年12月21日付けで共同相続人らのうちの1名から4700万円を借り入れ、同月25日付けで信託銀行から3億7800万円を借り入れた上、同日付けで本件乙不動産を代金5億5000万円で購入した。

    平成24年6月17日(購入から約3年後)、94歳の被相続人の相続が開始した。

    本件購入と借入がなければ、課税価格は6億円以上であった。

    相続人らは、評価通達の定める方法により、本件甲不動産の価額を合計2億0004万1474円、本件乙不動産の価額を合計1億3366万4767円と評価し、課税価格の合計額は2826万1000円とされ、基礎控除の結果、相続税の総額は0円とされた。

    税務署長は、総則6項を適用し、鑑定評価額に基づき、本件甲不動産の価額が合計7億5400万円、本件乙不動産の価額が合計5億1900万円として、課税価格を8億8874万9000円、相続税の総額を2億4049万8600円とする更正処分等を行った。

    (判決)

    (原則)
    租税法における【平等原則】により、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、合理的な理由がない限り、平等原則に違反するものとして違法。

    (例外)
    評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが【実質的な租税負担の公平に反する】というべき事情がある場合には、評価通達によらない合理的な理由がある

    (本件では)

    本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはできない。

    本件購入・借入れが行われなければ本件相続に係る課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になるというのであるから、上告人らの相続税の負担は著しく軽減されることになるというべきである。

    そして、被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる。

    そうすると、本件各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。

    ===================

    以上です。

    ポイントは、

    ・実質的な租税負担の公平に反する場合は、評価通達によらない合理的理由がある。

    ・通達評価額と鑑定評価額の差が大きいだけでは理由にならない。

    ・相続税額の差が大きく、かつ、関係者が相続税の軽減を知り、期待して行った場合には、実質的な租税負担の公平に反する。

    ということになります。

    税負担の軽減という「客観的要素」だけではなく、税負担の軽減目的と認識という「主観的要素」を判断要素に取り入れた、ということになります。

    したがって、行為計算否認規定の場合と同様、税負担の軽減以外の合理的目的を有し、かつ、その証拠を残しておくことが大切となってきます。

    銀行融資を受ける際に、購入目的を「相続税の軽減」と説明すると、それが稟議書に記載され、反面調査で明らかになりますので、税負担の軽減以外の目的の場合には、きちんとその目的を正しく説明しておくことが大切です。

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  • 名義預金が否定された裁決例

    2022年04月21日

    今回は、課税庁による名義預金の認定が裁決により覆された事例をご紹介します。

    国税不服審判所令和3年9月17日公表裁決です。

    事案は、争点に絞って簡略化します。

    (事案)

    被相続人は、生前、「私は、平成拾参年度より以後、毎年八月中に左記の四名の者に金、○○○○円也を各々に贈与する。但し、法律により贈与額が変動した場合は、この金額を見直す。」と記載した贈与証を作成し、署名押印をしたが、預金名義である子らの署名押印はいずれもなかった。

    Aは、被相続人と配偶者ではないBとの子であり、未成年者である。

    Bは、Aの唯一の法定代理人親権者である。

    被相続人は、母Bを通して、Aの預金口座に金員を複数回に渡り入金した。

    課税庁は、母Bが本件贈与証の具体的内容を理解しておらず、被相続人の指示に従い本件預金口座に入金していたにすぎず、当該入金がAへ贈与されたものとは認識していないから、被相続人からAへの贈与は成立しておらず、本件預金口座に係る預金は被相続人の相続財産に含まれるとして、更正処分をした。

    (争点)

    本件預金口座に係る預金が名義預金として被相続人の相続財産に含まれるか。

    ※贈与は、「契約」ですので、当事者双方の意思表示の合致が必要です。

    今回のケースでは、Aは未成年者ですので、母Aが法定代理人として贈与を受諾する意思表示をしたかどうかが問題となります。

    (裁決)

    母Bは、本件贈与証を預かるとともに、被相続人の依頼により本件預金口座へ毎年入金していた。

    母Bは、本件預金口座の通帳等を口座開設当時から管理していた。

    当時、長女の唯一の親権者であった長女の母は、長女の法定代理人として、本件贈与証による贈与の申込みを受諾し、その履行として本件預金口座へ毎年入金していたと認めるのが相当である。

    本件預金口座には、利息を除き、毎年の入金以外に入金はないから、本件預金口座に係る預金は、平成13年の口座開設当初からAに帰属するものであって、相続財産には含まれない。

    ======================

    以上です。

    相続において、相続人名義の預金が被相続人の相続財産であるという名義預金の問題が生ずることがあります。

    この場合、契約書があるかないかが事実認定にとって重要となってきます。

    しかし、税務では、実態で事実認定されますので、以下のこともおさえておく必要があります。

    ・預金通帳、印鑑を受贈者(法定代理人)が管理すること

    ・その預金から受贈者のための出費をすること

    ・通帳の届出住所を常に受贈者に一致させること

    ・必要な場合は贈与税の申告をすること

    そして、誤った更正がされた場合には、争うことも必要と考えます。

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  • 少額減価償却資産の判定単位

    2022年03月31日

    今回は、少額減価償却資産の判断基準について、裁判例から検討してみたいと思います。

    中小企業の場合、取得価額が30万円未満である減価償却資産について、一定の要件のもとに損金算入を認める特例があります。

    この特例の適用においては、他の資産と一体として30万円以上の資産になるのか、あるいは、当該資産が独立した資産として30万円未満の資産となるのか、という論点があります。

    この点、最高裁平成20年9月16日判決は、PHS電話事業において、エントランス回線利用権が一回線毎に少額減価償却資産となるのか、あるいは、PHS接続装置等と一体として30万円以上の減価償却資産となるのかが争われました。

    最高裁は、減価償却資産の判定基準として、

    (1)1単位として取引されているか

    (2)資産としての機能を発揮して、収益の獲得に寄与するものか

    の2点を検討すべきとしました。

    そして、

    (ア)エントランス回線は1回線でも取引の対象となり、

    (イ)エントランス回線1回線に係る権利一つでもって、被上告人のPHS事業において、上記の機能を発揮することができ、収益の獲得に寄与するものということができる。

    と判示しました。

    したがって、減価償却資産の判定単位について迷ったら、上記基準に当てはめて検討していただくのがよろしいかと思います。

    なお、上記最高裁以前にも同じ論点が争われている事例もありますが、最高裁以降は、全て上記基準によって判断されることになりますので、過去事例を上記最高裁基準にあてはめて考えていくことになります。

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  • 破産と債務免除益

    2022年03月17日

    今回は、【税理士を守る会】でされた質疑応答をご紹介します。

    (質問)

    顧問先が債務超過に陥ったため、法的整理手続きを進めています。

    顧問先が委任した弁護士は特別清算を検討しているようですが、特別清算の場合には、債務免除益が発生し、税金を払いきれない可能性があります。

    破産の場合には、債務免除益を計上しなくていいと聞いたことがあります。

    これは正しいのでしょうか。

    正しいとすると、社長からの借入金や未払い給与についても同様でしょうか。

    (回答)

    特別清算については、和解型か協定型かにかかわらず、債権者との合意によって、債権が放棄される、という構成をとります。

    したがって、債務が債権者側から免除されたことになり、債務免除益の計上が必要となります。

    しかし、破産の場合は、債権者が債権届出をし、破産管財人が破産会社の財産で換価できた範囲内で配当を実施し、残余の債権が残ったまま破産手続が終結します。

    この場合、「会社が破産宣告を受けた後破産終結決定がされて会社の法人格が消滅した場合には、これにより会社の負担していた債務も消滅するものと解すべき」(最高裁平成15年3月14日判決(民集57巻3号286頁)、とされており、債務が消滅する時点では、すでに債務免除益が生ずべき法人が存在しないことになります。

    つまり、破産終結前に、債権者からの債債務免除の意思表示、消滅時効の援用その他債権が消滅する事由が生じず、債務が残ったまま破産終結決定に至る場合には、債務免除益が成立する余地がない、ということになります。

    この場合には、債務者法人が存続している状態で債務が消滅することを前提とする法人税法59条2項、法人税法施行令117条の適用の場面ではありません。

    債権者側では、債務者が消滅したために、債権が消滅してしまった、ということになります。

    社長借入金や役員への未払い給与についても同様に免除を受けることなく消滅します。

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  • 損害賠償金と消費税

    2022年02月17日

    今回は、【税理士を守る会】でされた質疑応答をご紹介します。

    (質問)

    顧問先の社員が独立し、顧問先の顧客を奪取したことから、損害賠償を請求し、違約金を受け取りました。

    そこで、この違約金が消費税基本通達5-2-5(損害賠償金)
    「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に
    伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しない」

    に該当するかあるいは、

    「但し、(2) 無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無
    体財産権の権利者が収受する損害賠償金」は資産の譲渡等の対価に該当する

    になるか、悩んでおります。

    見解をお教えください。

    (回答)

    通達にいう「無体財産権」の侵害に該当するかどうかは別として、資産の譲渡等の対価に該当すると考えます。

    「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しない」とされている趣旨は、当該損害により、心身又は資産につきマイナスが生じ、損害賠償金を受領することにより従前の状態に戻るだけであって、「担税力」が生じない、というところにあると解されます。

    そうだとすると、損害賠償金であっても、本来売上や収入に替わるものであって、担税力を生ずるものであれば、資産の譲渡等の対価と解すべきとなります。

    この観点から、5-2-5(1)は、棚卸資産等を譲渡したと同様の経済効果が生じているのであり、(2)は、本来「特許権利用料」など売上又は収入に替わるものであり、(3)も本来引き渡しを受けていれば売上又は収入に算入すべき賃料に替わるもの、ということになります。

    今回は、顧客奪取の違約金ということなので、本来であれば、被害事務所の売上又は収入になるべきものがなくなったことによる損害が填補された(売上又は収入が違約金に替わった)、ということになるので、担税力が生じ、資産の譲渡等の対価に該当することになる、と考えます。

    通達に当てはめるとすると、無体財産権を知的財産権に限らない、とするならば、「営業権という無体財産権を侵害された」と言えるかもしれません。

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