東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 住居費の必要経費性が否認された裁判例

    2019年02月05日

    今回は、所得税確定申告における必要経費が争われた事例をご紹介します。

    東京地裁平成25年10月17日判決(TAINS Z263-12310)です。

    納税者は、女性で、夫と共同で、生命保険代理店をしていました。

    納税者が、事業所得の金額の計算上、次の支出を必要経費に算入して申告しました。

    ①納税者が居住する住宅に係る地代家賃

    ②水道光熱費

    ③長男に係る義務教育代行費用(教育費用)

    ④長男に関する係争に係る弁護士費用

    税務署は、これら支出は家事上の経費であるとして更正処分をしたので、提訴。

    【裁判所の判断】

    ●家事関連費のうち必要経費に算入することを認めるためには、当該金額が、

    ①事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であること

    ②その必要な部分の金額が明確に区分されていること

    の二つの要件を満たすことが必要。

    ①納税者が居住する住宅に係る地代家賃

    ●本件住宅において、代理店や顧客を招いて、商品説明やセミナー等を開催していたことが認められる。

    ●しかし、全体として居住の用に供されるべき3LDKの2階建て住宅であり、その構造上、本件住宅の一部について、居住用部分と事業用部分とを明確に区分することができる状態にない。

    ●リビング等を各業務の専用スペースとして常時使用し、それ以外の用向きには使用していない。

    →必要経費として認めない。

    ②水道光熱費

    ●本件住宅のうち各業務の遂行のために使用されるいわば専用スペースとして使用されていた部分はない。

    ●リビング等が各業務に使用されていた実態も明らかではないから、各業務の遂行のために必要な部分として明確に区分できない。

    →必要経費として認めない。

    ③納税者の長男は、PTSDに罹患していると診断されているが、義務教育代行費用(教育費用)と各業務との関連性が明らかではない。

    →必要経費として認めない。


    ④長男に関する係争に係る弁護士費用

    ●一般に、事業を行う者が、事業所得による収益の補填を目的として、事業所得の減少分に係る損害賠償請求訴訟を提起することを弁護士に依頼した場合には、その費用は、総収入金額を得るために直接要した費用ということができるから、その金額は必要経費に算入することができるというべきである。

    ● 本件弁護士費用は、納税者が主張するとおり、市に対し、各業務に係る売上げの減少による損害賠償を求める訴訟を提起すること及びそのための事前交渉を弁護士に委任した際の着手金である旨認めるのが相当であり、納税者と夫は、各業務に関する必要経費を依頼者名義及び夫名義で支払っていることから、本件弁護士費用の2分の1に相当する金額については、納税者の必要経費と認めるのが相当である。

    →必要経費として認められる。

    ==============

    本件で、裁判所は、家事関連費のうち必要経費に算入することを認めるための要件として、

    ①業務の遂行上の必要性

    ②明確区分性

    を要求し、各支出が、上記①②の要件を満たすかどうかを個別に検討しています。

    今年の所得税確定申告業務で参考していただければと思います。

    ちなみに、各支出が必要経費に算入することが許されるかどうか、というのは、税務判断です。

    税理士が必要な情報を入手した上で税務判断をし、それが誤りだったときには、債務不履行に基づく損害賠償に発展することもあり得ますので、税理士さんは、ご注意ください。

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  • 税理士の妻の青色事業専従者としての給与が否認された裁判例

    2019年02月04日

    今回は、税理士が、妻を青色事業専従者として、給与を事業所得の金額の計算上必要経費に算入して確定申告としたところ、「労務の対価として相当であると認められる金額を超える」として、更正処分がされた事例をご紹介します。

    鳥取地裁平成24年6月22日判決です。

    (事案)

    税理士は、次のとおり給与を支払いました。

    【妻に支払われた給与】

    平成16年 1240万円
    平成17年 1280万円
    平成18年 1280万円

    【他の使用人の平均給与額】

    平成16年 357万9167円
    平成17年 384万2250円
    平成18年 360万8375円

    【処分行政庁が抽出した類似業種青色事業者
    専従者給与】

    平成16年 285万4490円~663万円
    平成17年 296万4160円~663万円
    平成18年 301万7320円~663万円

    (裁判所の判断)

    裁判所は、労務の対価として相当かどうかは、次の基準で判断する、としました。

    ●その給与の金額でその労務に従事した期間

    ●労務の性質

    ●その提供の程度

    ●その事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況

    ●その事業と同種の事業でその規模が類似するものに従事する者が支払いを受ける給与の状況

    ●その事業の種類及び規模並びにその収益の状況

    (あてはめ)

    本件では・・・

    妻は、長年の経験から専門性を発揮し、他の使用人の指導的立場にあり、長時間労働をするなど、他の使用人の給与とは異なってしかるべきとされました。

    しかし、税理士事務所の所得金額とほぼ同額が妻に給与として支払われていた、という特殊事情がありました。

    そこで、裁判所は、

    「税理士事務所は、税理士法に基づき、税理士の名称および資格において経営するものであり、使用人は、最終的には税理士の監督に服することを前提にしている。」

    →専従者給与の金額と税理士の事業所得の金額がほぼ等しいのは不相当

    として、必要経費として認めませんでした。

    これで終わりではありません。

    その後、裁判所は、いくらが適正額か、まで判断します。

    ●関与先の会計業務の担当件数は、税理士5分の3、妻5分の2

    ●妻が特に業務が困難な医療法人等の会計業務を一人で行ってきた

    以上の理由から、

    【税理士の事業所得金額と専従者給与額の割
    合は、3対2が合理性を有する。】

    個人で税理士事務所を開業されている税理士で、配偶者を青色事業専従者として、その給与を必要経費に算入している方がいると思います。

    その場合、給与の金額が労務の対価として相当かどうか、検討した上で支払をしないと、税務調査により否認される可能性がありますので、ご注意いただければと思います。

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  • 重加算税の説明義務違反で税理士損害賠償

    2019年02月03日

    今回は、所得税確定申告において、税理士が説明助言義務違反を理由に損害賠償請求された事例をご紹介します。

    前橋地裁平成14年12月6日判決(TAINS Z999-0062)です。

    請求額は、合計2381万3700円。

    ●事案の概要

    ・依頼者らは、自分で所得税の確定申告をしてきたが、所得が増加してきたため、平成6年度分から税理士に依頼することとした。

    ・税理士(職員)は、依頼者らに対し、確定申告書を作成するために必要な書類として、現金出納帳、預金通帳、請求書、領収書などの原始記録を提示するよう求めたが、依頼者らは、これを拒んだ。

    ・依頼者らは、税理士に対し、依頼者らが作成した平成5年度の申告書の控え、生命保険料や損害保険料の控除証明書のみを提示して、同6年度についても同5年度と同様に申告するよう要請した。

    ・税理士は、提示された上記書類のみでは事業の経費が不明なため確定申告書の経費欄を記載することができないことから、経費を推計で算出して経費の合計額のみを記載し経費欄の具体的項目の金額を記載しない方法による申告をするよう提案したが、依頼者らはこれも拒んだ。

    ・そこで、税理士は、それ以上原始資料の提示を求めることなどを断念して、依頼者らの指示通り申告した。

    ・後日、国税庁は、上記申告には脱税があるとして強制調査し、重加算税その他追加納税が発生した。

    ・そこで、依頼者らは、税理士から重加算税等の説明を受けていなかったとして、説明助言違反を理由と損害賠償を請求した。

    ●判決

    ・税理士は、依頼者の希望や要請が適正でないときには、依頼者の希望にそのまま従うのではなく、税務に関する専門家としての立場から、依頼者に対し不適正の理由を説明し、法令に適合した申告となるよう適切な助言や指導をするとともに、重加算税などの賦課決定を招く危険性があることを十分に理解させ、依頼者が法令の不知などによって損害を被ることのないように配慮する義務があるというべきである。

    ・本件では、税理士において、依頼者らが売上げや経費を実際の金額と大幅に異なる金額として申告し不正に課税を免れようとしている可能性があることを容易に認識することができた。

    ・依頼者の指示どおりの申告をした場合に、依頼者らが将来脱税を指摘されて重加算税や延滞税などを課せられる危険があることを何ら説明しないまま、依頼者の指示どおりに所得税等確定申告手続を行ったことは、税務に関する専門家である税理士としての立場から、依頼者に対し不適正の理由を説明し、法令に適合した申告となるよう適切な助言や指導をするとともに、重加算税などの賦課決定を招く危険性があることを十分に理解させ、依頼者が法令の不知などによって損害を被ることのないように配慮する義務に違反しており、税理士の債務不履行になる。

    ・但し、依頼者らの責任は重く、過失相殺として9割を減ずる。

    賠償額は、238万1370円。

    以上です。

    このように、税理士が何度も依頼者に原始資料を提示するよう求め、依頼者がこれを拒んだ場合(つまり、責任が依頼者にある場合)であっても、将来依頼者に生ずる不利益を説明しておかなければ、税理士に説明助言義務違反が発生します。

    しかし、このような場合、往々にして「言った、言わない」の議論になりますので、説明した旨を書面、メール等の証拠に残しておくようにしましょう

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  • 脱税の量刑解説(法人税法違反、所得税法違反、相続税法違反)

    2017年07月12日

    2016年度中に全国の国税局が強制調査(査察)を実施し、処理を終えた脱税事件は193件で、前年度比12件増、脱税総額は約161億円で、同約23億円増でした。

    このうち、検察庁に告発したのは132件で、不起訴となった事件は2件でした。

    ということは、「国税局から検察庁に告発された場合は、ほぼ確実に起訴される」ということがわかりますね。

    脱税総額が前年度を上回ったのは2年ぶりとなっています。

    脱税の法的な内容が知りたい方は、こちら⇒「脱税事件で告発されると?

    これまで、国税庁は個別の告発事件については公表をしていませんでした。
    しかし、今後はすべての事件について、法人や個人の名称、告発の概要などを公表する方針を明らかにしています。

    そこで今回は、過去の脱税事件に関する量刑についてまとめました。
    脱税は、けっして軽い罪ではないことを十分理解していただきたいと思います。

    脱税事件:量刑ファイル001


    事件の概要

    舞台となったのは、レース用自動車やバイクの部品開発で知られる会社の社長(75)が元監査役と共謀し、2000(平成12)年10月期までの3年間に会社の所得約28億円を隠し、約10億円を脱税したとして、2011(平成23)年、法人税法違反罪で社長に懲役2年、法人に罰金2億4000万円が最高裁で確定していた。

    2017(平成29)年4月、男性は有罪判決を不服として、東京高裁に再審請求を申し立てた。(会社も同日、さいたま地裁に再審請求)

    男性は再審請求書で、「隠したとされた所得は元監査役が会社から不正に引き出したもので、自分はまったく知らなかった」と主張し、元監査役の資金流用が認められた民事訴訟の資料を新証拠として提出した。(元監査役は二審判決で懲役3年)

    判決

    法人税法違反
    脱税額:約10億円
    社長:懲役2年
    監査役:懲役3年
    会社:罰金2億4000万円

    引用

    2017年4月26日 産経新聞

     

    脱税事件:量刑ファイル002


    事件の概要

    葬儀会社2社の元実質経営者が、2011(平成23)年の各決算期までの3年間に、架空経費の計上などで計約3億8000万円の所得を隠し、法人税計約1億1000万円を免れたとして法人税法違反罪に問われた。東京地裁は2016年6月、被告の男(65)に対し、懲役1年6月、執行猶予4年、罰金1700万円(求刑懲役1年6月、罰金2千万円)、法人としての2社には、罰金計1050万円(求刑同1200万円)を言い渡した。

    被告は、1980年代に流行したキャラクター「なめ猫」の発案者で、裁判長は判決理由の朗読後、「いくら才覚があっても、ルールを守らなければビジネスマンとしては失格です。ルールをなめてはいけません」と説諭した。

    判決

    法人税法違反
    脱税額:約1億1000万円
    社長:懲役1年6月、執行猶予5年、罰金2000万円
    会社(2社):罰金計1050万円

    引用

    2016年6月9日 産経新聞

     

    脱税事件:量刑ファイル003


    事件の概要

    脱税に協力してもらう謝礼として大阪国税局職員に現金を渡したなどとして、贈賄や法人税法違反などの罪に問われた同局OBの元税理士で被告の男(63)の判決公判が大阪地裁で開かれた。

    裁判所は、「税理士としての知識を悪用し、脱税工作を主導した」として懲役6年、罰金7000万円(求刑懲役8年、罰金1億円)を言い渡した。

    事件が起きたのは2011(平成23)年9月。

    顧問先の税務調査の日程を教わるなどした見返りに元国税局職員の被告の男(45歳・加重収賄罪などで1、2審有罪、上告中)に120万円を渡したほか、顧問先の脱税を指南するなどした。

    被告側は公判で、贈賄について「謝礼として金を渡したことはない」と無罪を主張したが、裁判長は捜査段階で収賄を認めた元国税局職員の供述を「具体的で信用できる」と判断し、贈賄罪の成立を認めた。

    裁判長は、顧問先に指南するなどして脱税した額は計約2億7千万円に上るとし、「税務行政の公正、社会の信頼を著しく害した」と非難した。

    量刑

    法人税法違反
    脱税額:約2億7000万円
    税理士:懲役6年、罰金7000万円

    引用

    贈賄、脱税指南の国税OBに懲役6年 国税局汚職事件 大阪地裁」(2016年3月18日 産経新聞)

     

    脱税事件:量刑ファイル004


    事件の概要

    「ハンドパワーで病気の痛みを取る」と称して資金を集めていたセミナー企画会社(福岡県)の脱税事件で、福岡地裁は法人税法違反などに問われた元社長の女(66)に対し、懲役2年(求刑・懲役3年6月)の実刑判決を言い渡した。

    共犯に問われた前社長の男(60)には懲役1年8月(求刑・懲役2年6月)、元役員の女(50)には同1年4月(同・懲役2年)、法人としての同社には罰金1億5000万円(同・罰金2億6000万円)を、それぞれ言い渡した。

    被告3人は、2008(平成20)年2月期~2010(平成22)年2月期の3年間で、売り上げの一部を除外し、経費を水増し請求するなどして約27億円の同社の所得を隠し、約8億円の法人税を脱税したなどとして起訴されていた。

    量刑

    法人税法違反
    脱税額:約8億円
    元社長:懲役2年
    前社長:懲役1年8月
    元役員:懲役1年4月
    会社:罰金1億5000万円

    引用

    2014年5月29日 読売新聞

     

    脱税事件:量刑ファイル005


    事件の概要

    2010(平成22)年5月~2012(平成24)年12月にかけて、キャバクラなどの飲食店グループの従業員らの給与から源泉徴収した所得税約3億6900万円を脱税し、2010年と2011年分の消費税と地方消費税計約4千万円も脱税したとして、経営者の妻が所得税法違反や消費税法違反などの罪に問われた。

    福岡地裁は2017年3月、被告(70)に対して懲役3年、執行猶予5年、罰金2千万円(求刑懲役5年、罰金1億3600万円)の判決を言い渡した。

    裁判所は、「被告はグループ全体の金銭管理を統括し、経営者の夫に協力してグループにとって自由になる金を留保し、他の使途に流用する犯行に及んだ。

    脱税額は高額で、厳しい非難に値する」と指摘。 一方、脱税した約4億円を完納し、関与を認めて反省している点を考慮し、懲役刑の執行を猶予した。

    量刑

    所得税法、消費税法違反
    脱税額:所得税約3億6000万円、消費税約4000万円
    経営者の妻:懲役3年、執行猶予5年、罰金2000万円
    (完納済み)

    引用

    4億円脱税で女に有罪 福岡地裁」(2017年3月15日 産経新聞)

     

    脱税事件:量刑ファイル006


    事件の概要

    2017年5月、東京地裁は、印税収入を隠すなどして約2600万円を脱税したとして、所得税法違反の罪に問われた著述業の男(59)に、懲役1年、執行猶予4年、罰金600万円(求刑懲役1年、罰金800万円)の判決を言い渡した。

    裁判所は、「個人の脱税として軽視できない規模。長期間、巧妙に秘匿工作をしており悪質だ」と述べ、離婚に備えて資金を残したかったとする被告の動機は「納税しない理由になり得ない」と指摘した。

    判決によると、2011(平成23)年~2013(平成25)年、印税を米国の銀行口座に入金させて隠すなどして、所得税計約2600万円を免れた。

    被告は、NHK教育テレビ(現Eテレ)の英会話番組に講師として出演していたほか、多くの著書がある。

    量刑

    所得税法違反
    脱税額:約2600万円
    個人:懲役1年、執行猶予4年、罰金600万円

    引用

    2017年5月9日 産経新聞

     

    脱税事件:量刑ファイル007


    事件の概要

    元社長は2004(平成16)年に約22億円を脱税したとして逮捕、起訴され、2008(平成20)年に懲役4年の判決が確定していた。

    法人にも罰金6億円が言い渡され、その後、会社は清算した。

    量刑

    元社長:懲役4年
    会社:罰金6億円

    引用

    2016年2月1日 産経新聞

     

    脱税事件:量刑ファイル008


    事件の概要

    2015年7月、東京地裁は、いわゆる霊感商法で得た収入を少なく申告するなどして所得税を免れたとして所得税法違反罪に問われた会社員の男(35)に対し、「納税に対する規範意識の低さは強く非難されるべきだ」として、懲役1年、執行猶予3年、罰金1300万円(求刑懲役1年、罰金1800万円)を言い渡した。

    被告は起訴事実を認めており、裁判官は「本税や延滞税を納付し、加算税についても今後納付していくと述べており、反省もしている」として執行猶予とした。

    判決によると、被告は実際の所得金額の一部しか申告しない「つまみ申告」の手口などで、2011(平成23)年と2012(平成24年)の個人所得計約1億6500万円を隠したとしている。

    量刑

    所得税法違反
    脱税額:不明。所得隠し約1億6500万円
    個人:懲役1年、執行猶予3年、罰金1300万円
    (完納済み)

    引用

    2015年7月17日 産経新聞

     

    脱税事件:量刑ファイル009


    事件の概要

    さいたま地裁は2015年6月、低額宿泊所の入居者から生活保護費を搾取する、いわゆる「貧困ビジネス」で得た所得から約6184万円を脱税したとして、所得税法違反罪に問われた宿泊所運営者で元機械製造会社社長の男(73)に対し、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金1500万円(求刑・懲役1年6月、罰金2000万円)を言い渡した。

    裁判長は、「被告の脱税率が99%を上回り、国の課税権を著しく侵害している」と指摘したが、前科がなく事実関係を争わずに反省していることなどを執行猶予の理由とした。

    判決などによると、被告は2009(平成21)年~2010(平成22)年に宿泊所の運営による所得が計約1億6900万円あったにもかかわらず、その大半を知人や親族名義の複数口座に預金するなどして隠し、所得税計約6184万円を免れたとしている。

    量刑

    所得税法違反
    脱税額:約6184万円
    個人:懲役1年6月、執行猶予3年、罰金1500万円

    引用

    生活保護搾取「貧困ビジネス」脱税 宿泊所運営者に有罪判決 さいたま地裁」(2015年6月26日 産経新聞)

     

    脱税事件:量刑ファイル010


    事件の概要

    大阪地裁は2017年1月、和歌山県の社会福祉法人への寄付を装い、相続税約4億9000万円を脱税したとして相続税法違反罪などに問われた元税理士の男(64)に対し、「遺言書を偽造するなど犯行は計画的で悪質」として、懲役3年、執行猶予4年、罰金800万円(求刑懲役3年、罰金1000万円)を言い渡した。

    また、大阪地裁は2017年5月、共謀した和歌山県議の男(58)に対し、「立場と人脈を利用して寄付を受け入れさせ、脱税に重要な役割を果たした」として、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金500万円(求刑・懲役1年6月、罰金500万円)を言い渡した。

    被告は、「正当な寄付だと考えていた」と無罪を主張したが、裁判長は「相続税対策と知った上で協力した」と指摘し、報酬として計900万円を受け取ったと認定した。

    判決によると、この事件は、元税理士の男や和歌山県議の男が、死亡した兄の遺産を相続した男(73歳・相続税法違反罪などで起訴、控訴中)ら5人と共謀して、2014(平成26)年9月、約10億5000万円の遺産のうち約8億5千万円を和歌山県日高川町の社会福祉法人に寄付したように装い、相続税約4億9千万円を不正に免れたというもの。

    量刑

    相続税法違反
    脱税額:約4億9000万円
    元税理士:懲役3年、執行猶予4年、罰金800万円
    和歌山県議:懲役1年6月、執行猶予3年、罰金500万円

    引用

    4.9億円遺産脱税 元税理士に有罪 大阪地裁判決」(2017年1月11日 産経新聞)

    いかがでしょうか。

    適正な納税を心がけましょう。

    国税局査察部(マルサ)が入った方、脱税で刑事事件になりそうな方は、こちらからご相談ください。⇒ご相談

  • 脱税事件で告発されると?

    2015年02月18日

    今回は、企業の脱税について解説します。

    「8700万円脱税で有罪 元薬局経営者に横浜地裁」(2015年2月13日 産経新聞)

    約8700万円を脱税したとして、法人税法違反罪に問われた横浜市と千葉県市川市の薬局2社の実質的な元経営者だった被告(男性・50歳)に、懲役1年、執行猶予3年の判決が言い渡されました。

    また同時に、横浜地裁は、法人としての横浜市の薬局には罰金1200万円、市川市の薬局には罰金1000万円を言い渡した、ということです。

    判決によると、被告は、平成21~23年の売り上げなど計約3億円の所得を隠し、法人税を免れたということで、裁判官は「架空経費の計上や広告宣伝費の水増しなどさまざまな手段で所得を隠した態様は悪質」と指摘したようです。

    平成26年10月、東京国税局の告発を受け、横浜地検は被告の男性を在宅起訴。

    被告の男性は、すでに修正申告し、薬局2社は現在、商号変更しているということです。

    脱税とは?

    脱税とは、納税義務者、または徴収納付義務者が、偽り、その他不正の行為により、所得税ないし法人税をのがれ、またはその還付を受けることです。(所得税法第238条、法人税法第159条)

    刑罰は、10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらを併科となります。

    ただし、事情によって、罰金の額は、脱税額を限度として増額される場合があります。

    今回も、脱税額が高額だったので、1200万円とされたのでしょう。

    犯行の手口としては、売上除外、架空経費の計上などが典型的なものです。


    脱税犯の成立に必要な故意とは?

    脱税犯は故意犯なので、犯罪が成立するには故意であることが必要とされます。

    具体的には、以下の認識が必要となります。

    ①納税義務の存在の認識

    所得があり、かつ納税する義務があるという事実を認識していること。


    ②偽り、その他不正の行為の認識

    自分の行為が、偽り、その他不正の行為であることを認識していること。


    ③逋(ほ)脱の結果についての認識

    所得が存在するにもかかわらず、これに対する正当な税額の一部、または全部を免れる結果になることを認識していること。

    ちなみに、「逋脱」とは裁判実務上の慣用的な用法で、ここでは単純に、税をのがれること=脱税=逋脱、と理解してください。


    また、報道などを見ていると「申告漏れ」という言葉を目にすることがあります。

    では、「申告漏れ」と「所得隠し」の違いは何かというと、過失か故意かの違いということになります。

    たとえば、計算の誤りによって所得が少なくなっていた場合、税法の解釈の誤りによる過少申告、所得を得ていることを知らなかった場合、申告手続きが遅れてしまった場合など意図的ではない場合は、申告漏れとして取り扱われます。


    マルサの調査

    脱税事件は、国税局の査察部(通称「マルサ」)による調査から始まるのが通常です。

    マルサは、納税者にバレないように調査を進め、証拠を収集していきます。

    そして、脱税の疑いが濃厚になったところで、会社や自宅、関連先に同時にガサ入れに入ります。

    そこで、帳簿やパソコンその他関連資料をごっそりと持って行ってしまいます。

    また、金庫その他に脱税した現金や金、その他の財産が隠されていないかどうか探すことになります。

    これを通称「たまり」と言います。

    脱税した場合、そのお金を預金などに入れておくとすぐにバレてしまうので、隠しておくことが多いのです。そして、その「たまり」は、脱税の有力な証拠ともなります。

    収入が決まっているのに、それに見合わない多額の資産があるのは、脱税した証拠ではないか、ということです。

    その後、マルサによる取り調べが長期間続き(平均すると6ヶ月程度でしょうか)、調書を取られ、刑事処分相当、ということになると、刑事告発されることになります。


    告発・起訴の目安

    以前は、刑事告発されるのは、脱税額が3年間で1億円以上というのが目安とされていたのですが、近年ではその額はどんどん下がってきています。

    たとえば、今回の事件と同日付で報道されていた事案では、2年間で法人税約4600万円を脱税したとして、東京都八王子市の建設会社と社長が、法人税法違反の容疑で東京国税局から東京地検に告発されていたことがわかっています。

    また、2011年には茨城県守谷市の金属売買・建築物解体会社の代表取締役と知人のホテル従業員が共謀して法人税約1104万円を脱税したとして逮捕されています。

    なお、悪質性が高い場合は、もっと低くても告発されることがあり、不正還付を指導した人が、600万円の不正還付を指導した、として刑事告発された事例もあります。

    税理士や脱税請負人などが絡んでいると、悪質事案として刑事告発されやすいです。

    刑事告発されて起訴された場合、有罪率は極めて高いです。

    東京国税局管内での第一審ですが、有罪率は、

    平成25年度は100%
    平成26年度は97.6%
    平成27年度は100%

    となっています。


    脱税事件での量刑事情

    脱税事件で刑事上、考慮される量刑の事情には以下の要素があります。

    これらを総合的に判断し、刑の種類や程度が決められます。

    ということは、私たち弁護士の関心事も以下にあり、量刑で有利になるように被告人を指導してゆくことになります。

    ①逋脱税額
    ②逋脱率
    ③逋脱の手段・方法
    ④逋脱の動機
    ⑤逋脱した資金の使途
    ⑥逋脱所得の取得原因
    ⑦罪証隠滅工作の有無および、その方法
    ⑧修正申告・納税状況
    ⑨経理体制の改善
    ⑩同種の前科・前歴


    罰金の目安

    罰金刑の場合、その額の目安は脱税額のおよそ10~30%が一般的です。

    東京国税局管内で告発された脱税事件における第一審において、

    平成25年度は、1件あたり犯則税額4600万円に対し、1人(社)あたり罰金額は1100万円ですから、23%

    平成26年度は、1件あたり犯則税額4900万円に対し、1人(社)あたり罰金額は1200万円ですから、24%

    平成27年度は、1件あたり犯則税額6400万円に対し、1人(社)あたり罰金額は1600万円ですから、25%

    という結果になっています。


    課される税金

    本税のほかに、過少申告加算税などの各種加算税、延滞税、重加算税など多額の納税が科せられます。

    本来支払うべき税金に、これら加算税等と罰金を加えると、もともとの脱税額の2倍を超える金額を追加で払わなければならないケースもあります。

    さらに懲役も科せられるのですから、言葉は悪いですが、脱税は割に合わない行為であるということを経営者の方には今一度認識してほしいと思います。

    もちろん、脱税は犯罪ですから、経営者の人たちには法律順守を第一に日々、経営に勤しんでいただきたいと思います。

    社長は所得は隠してはいけません。

    社長が隠していいのは「企業秘密」と「日々の善行」です。

    最後に、ユダヤの格言です。

    「金持ちをほめる者は、金持ちをほめているのではなく、金をほめているのである」

    ちなみに、私は弁護士資格とともに、税理士資格も持っていますので、マルサの査察の相談や脱税の相談も多く受けております。

    脱税で告発された時のご相談は、こちらから。⇒ご相談