税法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • 決算承認を経ない法人税申告は無効?

    2021年02月19日

    今回は、「税理士を守る会」での質疑応答のご紹介です。

    (内容を少し変えています)

    (質問)

    法人税法74条1項は、「内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。」とされており、「確定した決算」が必要とされています。

    しかし、法人顧客からの税務申告依頼の際、株主総会議事録がないケースや、株主総会招集通知を発していないケースも多々あると思われます。

    このような場合に、法人税の申告が無効となることはありますか?

    何か念書のようなものをもらうには、どうしたらよいですか?

    (回答)

    定時株主総会による決算承認を受けた事実があるかどうかは、株主総会に出席しなければ確認ができません。

    また株主総会議事録を作成していない中小企業も多いと推測されます。

    それでも法人税の確定申告をしなければならないので、論点としては、

    ・定時株主総会による決算承認を得ない法人税確定申告の有効性

    ということになります。

    これが無効ということになると、日本中に無効な法人税申告が溢れかえることになるので、裁判所としても、有効にするロジックを構築してます。

    平成19年1月16日福岡地裁判決です。

    「決算がなされていない状態で概算に基づき確定申告がなされた場合は無効にならざるを得ないが、会社が、年度末において、総勘定元帳の各勘定の閉鎖後の残高を基に決算を行って決算書類を作成し、これに基づいて確定申告した場合は、当該決算書類につき株主総会又は社員総会の承認が得られていなくても、確定申告は無効とはならず、有効と解すべきである。」

    そこで、以下の点に注意して申告業務を受任していただければと思います。

    ・総勘定元帳の各勘定の閉鎖後の残高を基に決算を行っているか

    ・当該決算書類に基づき税務書類を作成する

    実際に確認できない場合には、上記の点及び「仮に上記事実と異なることによって会社が損害を被った場合にも、税理士に対して損害賠償その他一切の請求をしない」旨について会社から誓約書をもらうとよろしいかと思います。

    「税理士を守る会」は、こちら
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/

  • 近時の重加算税取消裁決(過少申告とは別の隠蔽仮装)

    2020年12月25日

    今回は、重加算税の取消裁決について解説します。

    令和元年6月24日裁決です。

    (事案)

    ●請求人は運送業を営んでいる。

    ●請求人は、従業員分の売上げやその費用の額の一部を事業所得の計算の起訴から除外して収支内訳書を作成した。

    ●課税庁が過少申告加算税、延滞税、重加算税に賦課決定処分をした。

    (裁決)

    ●請求人は、従業員の売上げやその費用の額が本件事業に係る事業所得の金額の計算上売上金額又は必要経費の金額に算入されるべきことを認識しつつ、これらをあえてその集計計算から除くなどして本件各年分の売上金額及び必要経費の金額を算出し、その算出したところに基づいて本件各収支内訳書を作成の上、これに基づく本件各所得税等申告書を提出することで過少申告行為に及んだ

    ●各過少申告に至る過程で、請求人が架空名義の請求書を作成し、架空名義の本件各支払明細書を作成させ、あるいは、他人名義の預金口座に売上代金を入金させたというような事実は認められず、本件各支払明細書や領収証等の取引に関する書類を改ざんし、あるいは本件売上メモを作成し、又はこれらの書類を意図的に破棄・隠匿したなどの事実も認められない。

    ●請求人が本件各支払明細書や本件各預金通帳の全てを保存し、本件調査の際には、当初から売上金額の過少計上の事実を認めつつ、これらの書類を本件調査担当職員に提示していたという事情に鑑みると、当該行為をもって真実の所得解明に困難が伴う状況を作出するための隠蔽又は仮装の行為と評価することは困難である。

    ===================

    以上です。

    本件は、

    ●過少申告の意図があった

    ●過少申告の意図で売上等を一部除外して収支内訳書を作成した

    というものですが、隠蔽仮装を認定しませんでした。

    ポイントは、

    ●隠蔽仮装というためには、過少申告の意図とは別に「隠蔽仮装行為」が必要である

    という点です。

    判例としては、以下です。

    ===================

    重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要する(最高裁平成7年4月28日判決)

    ===================

    本件のような事例で重加算税が賦課されていることが結構あるのではないか、と思いますが、その際は、

    「過少申告の意図とは別の隠蔽仮装行為」があるかどうを精査することが重要だと思います。

  • 遺留分侵害額請求権と小規模宅地の特例

    2020年12月04日

    税理士向け記事です。

    国税庁より、遺留分侵害額請求にかかる質疑応答事例が公開されましたので、ご紹介します。

    すでに知っている先生は、読み飛ばしていただければと思います。

    【タイトル】遺留分侵害額の請求に伴い取得した宅地に係る小規模宅地等の特例の適用の可否(令和元年7月1日以後に開始した相続)

    【照会要旨】
    被相続人甲(令和元年8月1日相続開始)の相続人は、長男乙と長女丙の2名です。乙は甲の遺産のうちA宅地(特定居住用宅地等)及びB宅地(特定事業用宅地等)を遺贈により取得し、相続税の申告に当たってこれらの宅地について小規模宅地等の特例を適用して期限内に申告しました(小規模宅地等の特例の適用要件はすべて満たしています。)。

    その後、丙から遺留分侵害額の請求がなされ、家庭裁判所の調停の結果、乙は丙に対し遺留分侵害額に相当する金銭を支払うこととなりましたが、乙はこれに代えてB宅地の所有権を丙に移転させました(移転は相続税の申告期限後に行われました。)。
    丙は修正申告の際にB宅地について小規模宅地等の特例の適用を受けることができますか。

    【国税庁による回答は、ウェブサイトで】

    https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/01/05.htm

    ====================

    上記について、法的な解説をします。

    答えとしては、

    ・乙には譲渡所得税

    ・丙は小規模宅地の特例は不適用

    となります。

    原理は、同じです。

    2020年7月1日より前に開始された相続では、不動産について、遺留分減殺請求権が行使された時、不動産は物権共有となっていました。

    しかし、相続法改正により、遺留分侵害額請求は、【金銭請求】となりました。

    したがって、たとえば、不動産について、遺留分侵害額請求権を行使した場合には、物権共有ではなく、「金●●円の請求権」となります。

    そうすると、乙から見ると、「金●●円の債務」となるわけで、この債務を不動産の所有権を丙に移転することにより、債務を消滅させる、ということになるので、法律上、「代物弁済」となります。

    ということは、乙は、その所有する不動産を丙に譲渡して債務を消滅させた、ということになるので、通常の不動産譲渡と同様に、譲渡所得税の課税問題となります。

    そして、丙は、金銭請求権の弁済に代えて不動産の所有権に移転を受けた、ということになるため、「相続又は遺贈により取得した」ことにはなりません。

    したがって、小規模宅地の特例の要件を満たさない、という結論になります。

    法律上の性質を知っていれば類似事例も全て解決できると思いますが、結論だけ憶えていると、基本的なことでも「あれ?」となることもあるかと思いますので、念のための解説でした。

  • 質問応答記録書に署名押印しないと?

    2020年11月18日

    さて、今回は、「質問応答記録書」についてです。

    税務調査の過程で、質問応答記録書が作成さ

    れることがあります。

    質問応答記録書は、租税職員が質問し、納税

    義務者等が回答した際に、その内容を記録し、

    記録後に回答者に対して署名押印を求めるものです。

    従前は、租税職員が質問し、納税義務者等が

    回答した内容を証拠に残す際には、納税義務

    者等の回答内容を書面に記載して、申述書、

    確認書、供述書、嘆願書などの表題の書面を

    作成して、納税義務者等の署名押印を得るこ

    とが多かったと思います。

    この扱いが、平成25年6月から、質問応答

    録取書の作成に改められたものです。

    関連文書としては、

    ●平成25年6月の国税庁課税総括課作成の

    「質問応答記録書作成の手引」

    ●平成29年6月30日課税総括課情報 

    「質問応答記録書作成の手引について(情報)」

    があります。 

    質問応答記録書は、

    「事案によっては、この質問応答記録書は、

    課税処分のみならず、これに関わる不服申立

    て等においても証拠資料として用いられる場

    合があることも踏まえ、第三者(審判官や裁

    判官)が読んでも分かるように、必要・十分

    な事項を完結明瞭に記載する必要がある」

    (手引)とされており、更正するかどうかを

    判断する上での証拠資料となるのはもとより、

    処分取消訴訟等において証拠として提出され

    ることが前提とされています。

    そして、質問応答記録書は、回答者には交付

    されません。

    また、「証拠書類等の客観的な証拠により課税要件

    の充足性を確認できる事案については、原則

    として、質問応答記録書等の作成は要しない

    ことに留意する」(手引)

    とされていることから、質問応答記録書が作

    成が開始される事案は、原則として、それま

    での調査により収集された客観的な証拠では

    、課税要件の充足性を確認することができな

    いと判断されていることがわかります。

    質問応答記録書は、納税者が署名押印を拒否しても、

    調査担当者が回答者が署名・押印を拒否したことや

    その理由などを奥書し、署名押印することで書類としては完成します。

    そして、一度完成すると、その後、訂正・追加・

    削除等を申し立てても、訂正等を行ってはならないと

    されていますので、誤りがある場合には、その場で申立て、

    記載してもらう必要があります。

  • 無申告で重加算税取消

    2020年11月06日

    今回は、無申告事例において、重加算税賦課決定が取り消された裁決例をご紹介します。

    令和2年2月13日裁決です。

    (事案)

    ●請求人は昭和60年に設立された有限会社である

    ●請求人は設立以降平成15年の事業年度までは税理士に依頼し、確定申告をしていたが、翌事業年度から申告していない

    ●平成30年に税務調査が行われ、調査の結果、期限後申告をした

    ●課税庁は、本件無申告は隠蔽又は仮装に基づくものと認定し、重加算税賦課決定をした

    (裁決)

    ●請求人が、法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認められる場合には、重加算税賦課要件を満たす

    ●請求人が平成16年の事業年度に申告をしなかったのは、従前の税理士に依頼を断られたからである

    ●その後も複数名の税理士に税務代理を依頼したが、断れていることからすると、漫然と無申告の状態を放置していたわけではなく、むしろ、申告をしようとしていたことがうかがえる

    ●税務調査において、代表者は、一度は請求書などを捨てたと申述したものの、翌日には管理していた書類を調査官に提示したことからすると、直ちに虚偽の答弁を行ったとまで評価することはできない

    ●請求人は、申告の必要性を認識しながら、これをしなかったことは認められるものの、税を免れようとする確定的な意思に基づいて無申告を貫いていたとまで評価することはできない

    ==================

    以上です。

    規範としては、やはり、「意図を外部からもうかがい得る特段の行動」が使用されています。

    そして、その認定にあたっては、他の裁決例でもよくでてきますが、

    ●仮装又は隠蔽の意図が貫かれているか

    ←税務調査で隠そうとしているか、あるいは素直に応じているか

    が重視されています。

    また、今回は、無申告の事例なので、「無申告を貫こうとする態度」と矛盾する行動を探して主張することになります。

    そうすると、税理士に依頼して申告しようとしていた、という事実主張が力を発揮する、ということになっています。

    重加算税については、取消事例も多いので、重加算税賦課決定がされた際は、適法性について精査することをおすすめしたいと思います。

  • 税理士法人では会計業務に注意

    2020年10月30日

    今回は、税理士法人向けに、ちょっと注意しておかなければならない点について、解説をします。

    税理士法人の社員税理士には、競業禁止規定があります。

    ====================
    税理士法48条の14 1項

    税理士法人の社員は、自己若しくは第三者のためにその税理士法人の業務の範囲に属する業務を行い、又は他の税理士法人の社員となつてはならない。

    ====================

    この理由については、

    (1)法人の事業上の秘密を保ち、利益衝突を避ける必要があること

    (2)税理士法人の業務と税理士個人の業務とが混在すると、顧客である納税者等にとって、委嘱の相手方である税理士の立場が法人の社員としての立場なのか、個人の税理士としての立場なのかが暖昧で法律関係が不明確となり、顧客(納税者等)の保護に欠ける面があること

    とされています。

    そして、税理士法人とは別に記帳代行業務を行う法人を別に設立することもあると思います。

    この場合には、社員税理士が、記帳代行会社の役員に就任し、会計業務を行うことが多いでしょう。

    さて、この場合に、税理士法人の定款の目的に、「会計業務」が記載されていると、問題が生じます。

    税理士法基本通達

    ====================

    48の14-1 法第48条の14の規定により、会計業務を行う税理士法人の社員税理士は、自己又は第三者のために会計業務を行うことは禁止されるので、例えば、当該社員税理士が、会計業務を行う他の法人の無限責任社員又は取締役に就任して当該他の法人のために会計業務を行うことはできないことに留意する。

    ====================
    このように競業禁止規定に違反してしまうことになります。

    税理士法人の場合には、会計業務は切り分けなければならない、ということです。

    税理士法人の場合には、ご注意いただきたいと思います。

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  • 法人の高額譲受と課税関係

    2020年10月14日

    今回は、東京地裁令和元年10月18日判決(TAINS Z888-2288)をご紹介します。

    内容としては、高額譲り受けにより取得した土地の購入価額と時価との差額がどう処理されるか、についてです。

    ====================

    (事案)

    ●納税者である会社は不動産の売買等を目的とする株式会社である。

    ●納税者が第三者との間で債権債務が存在していたところ、土地の売買に際して債権債務を相殺することにした。

    ●土地の時価は、7283万9889円であったところ、売買代金額は、1億8421万7112円であった。

    ●納税者は、この売買代金額全額を売上原価として損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、税務署長から、購入価額のうち時価との差額は損金に算入できないとして更正等をした。

    (判決)

    ●法人が時価よりも高額の売買代金により不動産等の資産を購入した場合も、売買代金と時価との差額は、買主たる法人から売主に「供与」された「経済的な利益」であり、そのうち「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」については、「経済的な利益の‥‥無償の供与」をした場合における当該「経済的な利益」の時価として、法人税法37条7項が定義する「寄附金の額」に該当することになるから、当該金額は損金算入限度額を超えて損金の額に算入されないこととなるものと解される。

    ●この場合も、売買契約という当事者の選択した法形式を否認して時価による売買と差額分の金銭の贈与という二つの法律行為があったとみなすものでも、当該法律行為を売買と贈与の混合契約であるとみなすものでもなく、当該法律行為は私法上の性質としては売買契約であることを前提に、その売買代金額の一部を法人税法の適用上「寄附金の額」と評価しているものにすぎず、当該法律行為の私法上の性質を変更するものではないと解される。

    ===================

    以上のとおり、判示して納税者敗訴(土地の購入価額と時価との差額は寄付金)としました。

    ポイントは、「購入価額と時価との差額」は、「経済的な利益の‥‥無償の供与」となる、ということです。

    そして、これは、

    ・「売買契約」を否認するものではない

    ・「売買+金銭贈与」と認定するものではない

    ・「売買契約と贈与契約の混合契約」と認定するものではない

    ということです。

  • 給与所得と事業所得の区別の例示

    2020年09月22日

    今回は、給与所得と事業所得の区別基準です。

    情報公開により取得された国税局の内部文書を整理しました。

    東京国税局 平成15年7月 第28号法人課税課速報(源泉所得税関係)(TAINS H150700-28)です。

    この中に、実務において、給与所得と事業所得を判定する際に参考となる例示が記載されています。

    ある事実関係があると、給与所得と事業所得のどちらに判例が傾くか、という例示です。
    ===================

    ●給与所得の認定に傾く例示

    労働基準法の適用を受ける

    支払者が作成している組織図・配席図に記載がある

    役職(部長、課長等)がある

    服務規程に従うこととされている

    有給休暇制度がある

    他の従集員と同様の福利厚生を受けることができる(社宅の貸与、結婚祝金、レクリェーション、健康診断等)         |
    通勤手当の支給を受けている

    他の従業員と同様の手当を受けることが可能(住居手当、家族手当等)        
    時間外(残業)手当、賞与の制度がある

    退職金の支給の対象とされている

    労働組合に加入できる者である

    支払者からユニフォーム、制服等が支給(貸与)されている

    名刺、名札、名簿等において支払者に帰属しているようになっている

    業務に当たって、支払者側のマニュアルに従うこととされている

    支払者の作ったスケジュールに従うこととされている

    本来の請負業務のほか、支払者の依頼・命令により、他の業務を行うことがある

    勤務時間の指定がある

    勤務場所の指定がある

    旅費、交通費を会社が負担している

    報酬の最低保障がある

    その対価が材料代等の実費とそれ以外に区分して請求される

    ●事業所得の認定に傾く例示

    支払を受ける者の提供する労務が許認可を要する業務の場合、本人は資格を有している(例 運送業) 
                
    その業務に係る材料等の在庫を自己で保管している

    報酬について値引き、値上げ等の判断を行うことができる

    その対価の支払者以外の顧客を有しているか
    以前にも他の支払者のもとで同様な業務を行っていた

    店舗を有し一般客の求めに応じているものである

    その対価の支払者以外の者からの受注を受けることが禁止されている

    同業者団体の加入者である

    使用人を有している者である

    支払を受ける者がその業務について自己の負担で損害保険等に加入している

    業務の遂行の手順、方法などの判断は本人が行う

    遅刻、無断欠勤の場合、それに見合う報酬が支払われないほか罰金(報酬の減額)がある
    その対価に係る請求書等の作成がされている
    その対価が経費分も含めて一括で請求されている

    ==================

    関与先で行われている金員の支払の判定の際に参考にしていただければと思います。

    また、たとえば、事業所得と判定したのであれば、実際の運用を、上記の【事業所得の認定に傾く例示】が多く含まれるように関与先に助言指導をしていくことをおすすめします。

    微妙な判定になる場合には、説明と将来否認される可能性がある旨の証拠化もおすすめしたいと思います。

  • 事業所得と雑所得の判断基準の要素

    2020年09月10日

    今回は、事業所得と雑所得の判定をする際に、どのような要素を検討すべきか、についてご紹介します。

    雑所得と認定されると、以下のようなものが否定されることになります。

    ・給与所得等他の所得との損益通算

    ・純損失の3年の繰越し・繰り戻し

    ・青色申告特別控除

    ・青色事業専従者給与の適用

    ・事業所得に認められる各種優遇税制の適用

    (最高裁昭和56年4月24日判決・弁護士顧問料事件)では、事業所得は、次のような業務から生ずる所得とされています。

    (1)自己の計算と危険

    (2)独立して営まれ

    (3)営利性、有償性を有し

    (4)反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務

    これを更に詳しくしたのが、名古屋地裁昭和60年4月26日判決で、次のような判断基準を挙げています。

    ==================

    ・経済的行為の営利性

    ・有償性の有無

    ・継続性、反覆性の有無

    ・自己の危険と計算による企画遂行性の有無

    ・当該経済的行為に費やした精神的、肉体的労力の程度

    ・人的、物的設備の有無

    ・当該経済的行為をなす資金の調達方法

    ・その者の職業、経歴及び社会的地位

    ・生活状況及び当該経済的行為をなすことにより相当程度の期間継続して安定した収益を得られる可能性が存するか否か

    ⇒等の諸要素を総合的に検討して社会通念に照らしてこれを判断すべきである

    ==================

    では、これらの基準に照らし、実際の事例でどう判断されたかについてですが、これは、別の機会にYouTubeで解説していきたいと思います。

  • 給与所得の事業所得の区別の判断基準(最高裁判決)

    2020年08月31日

    今回は、所得税法上の給与所得と事業所得の区別の判断基準について、有名な最高裁判決を確認しておきたいと思います。

    ある役務の提供が給与所得か事業所得かを判断するについては、消費税基本通達1-1-1を参考にしている先生も多いと思います。

    しかし、同通達は、「出来高払いの給与と請負による報酬」の区分に関する判断基準を示しているもので、総括的に給与所得と事業所得の区分に関する判断基準を示しているものではありません。

    同通達は、次のような表現となっています。

    ===================

    出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。

    ===================

    そして、請負契約を前提とした4要素が示されているわけです。

    したがって、これに当てはまらない場合には、給与所得と事業所得の区別の判断基準を示した最高裁判決の基準に照らして検討することになるかと思います。

    (最高裁昭和56年4月24日判決・弁護士顧問料事件)です。

    弁護士の顧問料が給与所得か事業所得かが争われた事案です。

    何度もお読みになった先生が多いかと思います。

    同判決では、事業所得は次の要素を持っているとされています。

    (1)自己の計算と危険
    (2)独立して営まれ
    (3)営利性、有償性を有し
    (4)反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務

    これに対し、給与所得は次の要素を持っているとされています。

    (1)指揮命令に服して労務提供
    (2)空間的、時間的な拘束
    (3)継続的ないし断続的に労務又は役務の提供

    そして、同判決では、弁護士の顧問料を事業所得としています。

    理由は、以下のとおりです。

    ===================

    (1)各顧問契約には勤務時間、勤務場所についての定めがない(時間的、空間的拘束の否定)

    (2)契約はその頃常時数社との間で締結されており、特定の会社の業務に定時専従する等格別の拘束を受けるものではない(指揮命令、時間的拘束の否定)

    (3)契約の実施状況は、多くの場合電話により、時には右各社の担当者が法律事務所を訪れて随時法律問題等につき相談するため、弁護士が出向くことはない(指揮命令、空間的拘束の否定)

    (4)相談回数は会社によつて異なり、月に二、三回というところや半年に一回、一年に一回というところもある(継続的、断続的労務提供、時間的拘束の否定)

    (5)各社はいずれも本件顧問料を弁護士の業務に関する報酬にあたるものとして支払っており、各種保険料などを控除しておらず賞与等も払っていないので、雇用契約と認識していない。(当事者の認識)

    ===================

    消費税基本通達1-1-1も、この基準を請負契約に当てはめたものと考えられます。

    (1)その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。(時間的・空間的拘束の有無、独立性の有無))

    (2)役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。(指揮命令)

    (3)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。(自己の計算と危険の有無、継続的役務提供の対価)

    (4)役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。(自己の計算と危険の有無、独立性の有無)

    したがって、通達で当てはまらない場合には、最高裁判決に立ち戻って判断するのがよいと思います。