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  • 重加算税取消(国税不服審判所平成17年1月11日裁決)

    2019年11月19日

    今回は、国税不服審判所平成17年1月11日裁決をご紹介します。

    売上計上漏れについて、重加算税を課せられたところ、それが取り消された事例です。

    税目は、法人税。

    事案としては、請求人が事務所の窓口で受領した売上代金等については入金帳に記載しているものの、入金(売上)伝票に記載せず、その結果、売上計上漏れが生じた、というものです。

    【課税庁の主張】

    請求人が本件売上げの代金を現金で受領しているにもかかわらず益金の額に算入しなかったこと及び調査担当職員に対して「小遣い程度の金額なので使ってしまったかもしれない」と申述したことから、「隠ぺい又は仮装」があったと主張しました。

    国税不服審判所は、次のように判断して、重加算税を取り消しました。

    【裁決の理由】

    売上げに係る入金の事実を本件入金帳に記録したものの、本件売上げに係る入金(売上)伝票は起票されておらず、総勘定元帳にもその記録はなく、本件売上げに係る代金の行き先は不明である。

    このように、本件売上げが請求人の所得金額の計算上益金の額に算入されることなく申告漏れとなった理由については、請求人の事務処理上のミスからであることも否定できず、請求人が積極的に本件売上げを所得金額から除外したと認定できる事実は認められない。

    【ポイント】
    隠ぺい又は仮装が認められるためには、「納税者が故意に課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装」することが必要とされており(最高裁昭和62年5月8日判決)、過失によって売上が除外された場合には、重加算税の賦課要件を満たしません。

    本件では、「請求人の事務処理上のミスからであることも否定できず、請求人が積極的に本件売上げを所得金額から除外したと認定できる事実は認められない。」とされており、「故意」による隠ぺい又は仮装行為が否定されました。

    このように、「故意」か「過失」かによって重加算税の課税要件を満たすかどうかが決まってくるケースがありますので、重加算税を課せられた場合には、課税庁の収集した証拠によって、「隠ぺい又は仮装の故意」が立証されているか(立証責任は課税庁)、を吟味することが大切だと思います。

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  • チュートリアル徳井さんの税務申告漏れの法的解説

    2019年10月26日

    チュートリアル徳井義実氏の税務申告漏れに関し、法的に整理したいと思います。

    この点に関する事実の詳細が、吉本興業のホームページに掲載されました。

    それによると、以下のようになります。

    2009年   徳井氏が株式会社チューリップを設立
    (決算期3月) タレント活動に基づく収入は全てチューリップ社へ
            徳井氏は、チューリップ社から役員報酬としての収入を得る

    2010年3月期 不申告
    2011年3月期 不申告
    2012年3月期 不申告

    税務署から指摘を受け、
    2012年6月25日 3期分を申告

    2013年3月期 不申告
    2014年3月期 不申告
    2015年3月期 不申告

    税務署から指摘を受け、
    2015年7月23日 3期分を申告

    2016年5月 税金未納により銀行預金差押

    2016年3月期 不申告
    2017年3月期 不申告
    2018年3月期 不申告

    2018年9月  税務調査
    2018年11月 3期分を申告
    2012年3月期~2015年3月期の4年分修正申告

    【納税の内訳】
    法人税の追徴課税 約3700万円
    内、否認された経費約2000万円に対する重加算税 約180万円
    申告漏れ金額約1億1800万円に対する無申告加算税約510万円を含む。

    ================================

    本件について、以下の点を整理したいと思います。

    1 犯罪の成否
    2 なぜ、検察庁に告発されていないのか
    3 附帯税

    1 犯罪の成否

    インターネット上では、「脱税だ」との声がありますが、租税犯罪は脱税だけではありません。

    まず、正当な理由がなくて提出期限までに申告書を提出しない場合には、「単純無申告犯」が成立します(法人税法160条)。

    刑罰は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

    そして、故意に提出期限までに申告書を提出しない場合は、「申告書不提出犯」となり、刑罰が重くなります(法人税法159条3項、4項)。

    刑罰としては、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処し、またはこれを併科です。(罰金につき4項加重あり)

    そうすると、チューリップ社は、2010年3月期~2012年3月期、2013年3月期~2015年3月期、2016年3月期~2018年3月期が提出期限までに申告書を提出していないことになり、正当な理由がないでしょうから、少なくとも、単純無申告犯が成立しそうです。

    そして、2012年6月25日に税務署から指摘を受け、3期分を申告しているので、2013年3月期以降は、提出期限までに申告書を提出しなければいけないことを知っていたはずです。

    そうすると、それ以降は、「故意」に不申告だとして、申告書不提出犯が成立する可能性があります。

    ところで、いわゆる「脱税犯」と言われる犯罪は、上記と異なります。

    法人税法では、159条1項、2項で規定してあるのですが、脱税は、「偽りその他不正の行為」による法人税を免れた場合に成立します。

    刑罰は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科です。(罰金につき2項加重あり)

    今回、これに該当する可能性があるのが、否認された経費約2000万円に対する法人税分です。

    ざっくり500万円くらいでしょうか。(重加算税の金額から逆算)

    単に不申告では、脱税に該当しません。脱税は、「偽りその他不正の行為」により法人税を免れた場合に該当するものですが、今回の不申告については、税務署は、脱税だとは見ていません。

    なぜ、それがわかるかというと、今回、不申告部分については、「重加算税」を課していないからです。

    重加算税は、「隠ぺい又は仮装」により税を免れた場合に課せられます。

    「事実を隠ペい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏することを、「事実を仮装」するとは、所得.財産あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲することをいいます(和歌山地裁昭和50年6月23日判決)。

    脱税は、「偽りその他不正の行為」という表現ですが、これは、「逋脱の意図をもって、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるようななんらかの偽計その他の工作を行うことをいう」(最高裁昭和42年11月8日判決)とされています。

    したがって、重加算税の対象行為と脱税犯の対象行為はかなり重なり合うことになります。

    この点、税務署から指摘があった部分について、特に争わずに修正申告に応じたということなので、脱税の要件を満たしているかどうかは不明です。

    2 なぜ、検察庁に告発されていないのか

    次に、脱税だとすると、なぜ、検察庁に告発されていないのか、という点ですが、これは単純に金額が少額だからです。

    国税庁の統計によると、平成29年度に重加算税を課せられた件数は、約3万件です。

    この全てを刑事告発するわけにはいきませんので、重い脱税事件に絞って、処理できる件数だけを刑事告発の対象にしています。

    昔は、1億円以上の脱税が刑事告発対象だ、と言われていましたが、最近は、数千万円の脱税でも刑事告発されているようです。

    しかし、1000万円未満の脱税で刑事告発されているものは、私は知りません。

    徳井氏の場合、仮に脱税していたとしても数百万円なので、少額ということで、刑事告発の対象となっていない、と思われます。

    しかし、単純無申告犯、申告書不提出犯については、今後、刑事手続に乗ってくる可能性があるのではないか、と思われます。

    3 附帯税

    無申告の場合には、本来納付すべき税金の他に附帯税が課せられます。

    無申告加算税、延滞税です。そして、今回は、隠ぺい又は仮装があったとして、重加算税も課せられています。

    なお、消費税、役員給与の源泉所得税などがどうなっているのか、も気になるところです。

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  • ことさら過少の重加算税認定裁判例

    2019年10月02日

    今回は、相続税の申告でことさら過少申告が重加算税賦課要件を満たす、とされた裁判例をご紹介します。

    東京地裁平成30年4月4日判決(TAINS Z888-2238)です。

    隠ぺい仮装の内容としては、相続財産である預金あるいは現金を相続財産から除外して申告した、というものです。

    裁判所は、

    ●架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべき

    という最高裁7年4月28日判決の規範を立てます。

    (認定事実)

    ●相続人は、被相続人預金口座から2000万円以上を引き出した

    ●その現金を複数の封筒に入れて自宅等に保管していた

    ●本件現金が相続財産であることを認識しつつも税理士にその存在を伝えず、本件申告から除外したことを自認した

    ●申告した相続財産である現金の額は70万円だった

    →相続人は、本件現金が被相続人の相続財産であることを認識しつつ、本件申告に係る現金から除外する意図を有していた

    ●支出(被相続人のために支払った費用)の記載額が収入(本件各口座等からの引出し)の記載額を上回っているため本件現金の存在を認識することが困難な内容の書面を作成して税理士に交付した

    ●申告までの期間が短く、税理士がその内容について十分な検証ができないという状況下で、税理士からの現金の有無に関する質問に対する回答を殊更に避けた

    ●実際に保管されている現金の額と著しく異なる金額が相続財産である現金の額として本件申告書に記載されていることを認識しつつ、あえてこの相違につき税理士に指摘しなかった

    →相続財産を過少に申告するという上記の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たる

    ===============

    重加算税の事案において、納税者の積極的な行為がないような場合には、この裁判例で引用されている

    ●当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をした

    という規範を用いられることが多いです。

    重加算税通達では「調査等の際の具体的事実についての質問に対し、虚偽の答弁等を行い、又は相手先をして虚偽の答弁等を行わせていること及びその他の事実関係を総合的に判断して、申告時における隠蔽又は仮装が合理的に推認できること。」としています。

    税務調査において虚偽答弁があっただけでは隠ぺい仮装を認定することはできず、その他の事情も総合的に判断して、

    「当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をした」

    と言えるかどうか、がポイントとなります。

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  • 「純然たる第三者間取引」の誤解を解く

    2019年08月26日

    中小企業の株の売買において、価額算定を誤ると、時価取引ではないとして、課税の対象になります。

    この点について、「純然たる第三者間取引であれば否認されることはない」と言われることがあります。

    しかし、これは不正確です。

    この見解の根拠は、「法人税法基本通達逐条解説」(税務研究会)の「9-1-14」に関する次の一節と思われます。

    「なお、本通達は、気配相場の無い株式について評価損を計上する場合の期末時価の算定という形で定められているが、関係会社間等においても気配相場のない株式の売買を行う場合の適正取引価額の判定に当たっても、準用させることになろう。
    ただし、純然たる第三者間取引において種々の経済性を考慮して定められた取引価額は、たとえ上記したところの異なる価額であっても、一般に常に合理的なものとして是認されることになろう。」

    そして、国税不服審判所平成11年2月8日裁決において、課税庁側の主張として、「法人税法上、売買取引における取引価額については、それが純然たる第三者間において種々の経済性を考慮して定められた価額であれば、一般には常に合理的なものとして是認されるが、本件譲渡のように、親会社と子会社の代表者との譲渡で純然たる第三者間の取引ではなく、かつ、その合意価額が合理的に算定されていないと認められる場合には、当事者間の合意があったとしてもその合意価額は客観的交換価値を示すものとは認められない。」とされていますので、課税庁は、この見解に依拠しているものと思われます。

    そこで、時価を作り出すために、本来意図する株取引の前に、純粋第三者間取引をかませて、「時価」を作りだそう、と考える人が出てきます。

    しかし、この方法を採用すると、後日の税務調査で否認され、もし、税理士が助言した場合には、税理士損害賠償に発展する恐れがあります。

    なぜなら、ここで注意すべきなのは、上記基準は、「純然たる第三者間取引」であれば、それだけで時価と認定されるわけではない、ということです。

    時価と認められるためには、要件がもう一つ加わります。

    (1)純然たる第三者間取引であること

    (2)取引価格が種々の経済性を考慮して定められたこと

    つまり、純然たる第三者間取引であるだけではダメで、(2)の要件を満たして、はじめて合理的なものとして、是認される、ということになります。

    この点について、東京地裁平成19年1月31日判決(税務訴訟資料257号順号10622)では、納税義務者が親族関係のない独立第三者間取引であると主張したのに対し、裁判所は、譲渡価格が譲渡人と納税義務者との間でのせめぎ合いにより形成された客観的価値ではないとして、納税者敗訴判決をしています。

    したがって、「純然たる第三者間取引」であっても、それだけで安心せず、その取引価格が、きちんと売主と買主の経済合理性に根ざしたせめぎ合いによって決定されたかどうか、を確認しておく必要があります。

    そして、その交渉過程を証拠化して、保存していく必要があると思います。

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  • 重加算税と青色申告承認取消処分との関係

    2019年08月12日

    青色申告承認の取消は、法人税法127条、所得税法150条に規定しています。法人税法127条1項は、次のような規定です。

    第百二十一条第一項(青色申告)の承認を受けた内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡って、その承認を取り消すことができる。

    そして、同項3号は、

    その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること

    とされており、重加算税の要件である隠ぺい仮装が要件となっています。

    所得税法も同旨の規定です。

    重加算税の隠ぺい又は仮装と、青色申告承認取消の隠ぺい又は仮装は、一般的に同義と理解されています。

    青色申告制度は、帳簿書類を備え付け、それに取引を記帳している納税者が少ない状況の中で、昭和24年のシャウプ勧告に基づいて、昭和25年に取り入れられたものです。

    その趣旨は、

    「青色申告承認の制度は、納税者が自ら所得金額及び税額を計算し自主的に申告して納税する申告納税制度のもとにおいて、適正課税を実現するために不可欠な帳簿の正確な記帳を推進する目的で設けられたものであって、適式に帳簿書類を備え付けてこれに取引を忠実に記載し、かつ、これを保存する納税者に対して特別の青色申告書による申告を承認し、青色申告書を提出した納税者に対しては、推計課税を認めないなどの納税手続上の特典及び各種準備金、繰越欠損金の損金算入などの所得計算上の特典を与えるものである。」(最高裁昭和49年9月20日判決、刑集28巻6号291頁、TAINS Z999-9019)

    とされています。

    重加算税は、国税通則法第68条1項で、「重加算税を課する。」と規定し、重加算税の賦課要件を備えた時には、合法性の原則により、税務署長には裁量の余地はなく、重加算税賦課決定をしなければならないのに対し、青色申告承認の取消処分は、「その承認を取り消すことができる。」として、税務署長に裁量の余地を認める規定の仕方をしています。

    この点について、大阪高裁昭和38年12月26日判決(TAINS Z037-1259)は、「青色申告書提出承認を取消すべきか否かについて同法は税務署長に合理的な範囲内に於て裁量権を与えている」としています。

    この裁量権に基づき、国税庁平成12年7月3日課法 2-10「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」は、次のように定めています。

    3 隠ぺい、仮装等の場合における青色申告の承認の取消し
    (青色申告の承認を取り消す場合) 
    (1) 青色申告の承認を受けている法人につき、次のいずれかに該当する場合には、(5)の場合を除き、法第127条第1項第3号の規定によりその該当することとなった事業年度以後の事業年度について、その承認を取り消す。

    イ 無申告のために所得金額の決定をした場合又は所得金額の更正をした場合において、その事業年度の当該決定又は更正後の所得金額(以下「更正所得金額」という。)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額(以下「不正所得金額」という。)が、当該更正所得金額の50%に相当する金額を超えるとき(当該不正所得金額が500万円に満たないときを除く。)。

    ロ 欠損金額を減額する更正(所得金額があることとなる更正を含む。)をした場合において、その事業年度の当該更正により減少した部分の欠損金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく金額(以下「不正欠損金額」という。)が、当初の申告に係る欠損金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額。以下「申告欠損金額」という。)の50%に相当する金額を超えるとき(当該不正欠損金額が500万円に満たないときを除く。)。

    この通達により、隠ぺい又は仮装があった場合でも、隠ぺい又は仮装の事実に基づく不正所得金額や不正欠損金額が、更正所得金額や申告欠損金額の

    (1)50%以下の場合

    (2)不正所得金額や不正欠損金額が500万円未満である場合

    は、青色申告承認は取り消されない、ということになります。

    (計算例)
    当初申告所得金額 1000万円
    更正後の所得金額 2500万円
    隠ぺい又は仮装に基づく更正に基づく不正所得金額 500万円

    隠ぺい又は仮装に基づく更正に基づく不正所得金額は500万円なので、(2)の要件は満たしませんが、

    (1)により、青色申告承認取消にならない場合

    =2500万円✕50%=1250万円以下の場合ということになり、本件では、隠ぺい又は仮装に基づく更正による増差所得金額は500万円なので、青色申告承認取消にならない、ということになります。

    (1)(2)どちらかの要件を満たせば、課税実務上、青色申告承認の取消にはならない、ということになります。

    個人についての通達は、国税庁平成12年7月3日課法 4-17「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」です。

    そして、税務署長の合理的な裁量は、無制限に認められるわけではありません。

    横浜地裁平成17年6月22日判決(税資255号順号10060頁)は、「青色申告制度の趣旨及び青色申告承認の取消しの意義に適合しない目的や動機に基づいて青色申告承認取消処分がされたり、裁量権の行使が、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮してされたために、その判断が上記の観点から合目的的かつ合理的なものとして許容される限度を超え、著しく不当である場合には、その青色申告取消処分は、税務署長に委ねられた裁量権の範囲を逸脱し、又はその濫用があったものとして、違法となるものと解すべきである」として、一定の場合には、信義則・裁量権の逸脱、濫用として、処分が違法となる場合があることを判示しました。

    したがって、たとえ隠ぺい又は仮装があり、それを理由として青色申告取消処分がなされた場合であっても、その処分が信義則・裁量権の逸脱、濫用ではないか、が検討されることになります。

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  • 重加算税の「隠ぺいし、又は仮装した」とは?

    2019年08月12日

    重加算税は、国税通則法68条に規定されています。

    同条1項の重加算税の賦課要件は、

    ①過少申告加算税の賦課要件が満たされる場合に、
    ②納税者が
    ③国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、
    ④その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき
    ⑤納税申告書を提出したとき

    と分解することができます。

    ここでは、③の「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、」に関する事例を解説します。

    国税通則法68条1項に規定する「‥‥の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ペいし、又は仮装し」たとは、最高裁判決により定義されてはいませんが、和歌山地裁昭和50年6月23日判決(TAINS Z082-3588)が、「不正手段による租税徴収権の侵害行為を意味し、「事実を隠ペい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏することを、「事実を仮装」するとは、所得.財産あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲することをいい」いずれも行為の意味を認識しながら故意に行うことを要するものと解すべきである。」として以降、概ねこのように解されています。

    また、大阪高裁平成3年4月24日判決(TAINS Z183-6701)は、「『隠ぺい・仮装』とは、租税を脱税する目的をもつて、故意に納税義務の発生原因である計算の基礎となる事実を隠匿し、又は、作為的に虚偽の事実を付加して、調査を妨げるなど納税義務の全部または一部を免れる行為を」いう、としています。

    国税庁は、「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点178頁)において、「『隠蔽』とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、また『仮装』とは、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいう(名古屋地裁昭和55年10月13日判決)」としています。

    「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」では、次のような行為が隠ぺい仮装の具体例として挙げられています。

    ・二重帳簿の作成

    ・帳簿書類の隠匿、虚偽記載等

    ・特定の損金算入又は税額控除の要件とされる証明書その他の書類の改ざん、虚偽の申請書提出

    ・簿外資産の利息収入、賃貸料収入等の果実の不計上

    ・簿外資産による役員賞与その他の費用の支出

    ・同族会社を名義貸し等で非同族会社にすること

    いずれにしても、単なる過少申告では重加算税賦課要件を満たしません。隠ぺい仮装行為が必要ということです。

    この点、最高裁平成7年4月28日判決は、「重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要する。」としています。

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  • 重加算税で押さえておくべき最高裁判決6選

    2019年08月11日

    今回は、重加算税で押さえておくべき最高裁判決をご紹介しておきます。

    重加算税賦課要件は、国税通則法68条に規定されています。その1項は、次のような規定です。

    「第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額・・・に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。」

    条文上の要件を分解すると、以下のようになります。

    ①過少申告加算税の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)

    ②納税者が

    ③その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、

    ④隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していた

    以上の要件を満たすと、効果として、隠ぺい又は仮装した部分に相当する税額につき、過少申告加算税に代えて、35%の割合を乗じた重加算税が課せられます。

    重加算税が賦課された際には、当該重加算税賦課決定が適法になされたのか、あるいは違法なのか、について判断しなければなりませんが、そのためには、重加算税に関して出されている最高裁判決を押さえておく必要があります。

    そこで、重加算税に関して押さえておくべき最高裁判決6選をご紹介します。

    【ルール1】 隠ぺい又は仮装行為と過少申告行為との関係

    重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要する(最高裁平成7年4月28日判決)

    【ルール2】 つまみ申告について

    (1)各確定申告の時点において、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図を持っており

    (2)必要に応じ事後的にも隠ぺいのための具体的工作を行うことも予定して、

    (3)会計帳簿類から明らかに算出し得る所得金額の大部分を脱漏し、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出した

    というような事情が認められる場合には、重加算税の賦課要件を満たすことになる(最高裁平成6年11月22日判決)。

    【ルール3】 納税者自身の積極的な行為がない場合

    納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の右賦課要件が満たされる(最高裁平成7年4月28日判決)。

    【ルール4】 税理士が隠ぺい又は仮装行為をした場合

    納税者と税理士との間に事実を隠ぺいし、又は仮装することについて意思の連絡があったと認められる場合には、賦課要件を満たすことになる(最高裁平成17年1月17日判決)。

    【ルール5】税理士が納税者に無断で隠ぺい又は仮装行為をした場合

    以下の場合には、隠ぺい仮装行為を納税者本人の行為と同視できるとして、重加算税の賦課要件を満たす、ということになる(最高裁平成18年4月20日判決)

    (1)納税者において当該税理士が隠ぺい仮装行為を行うこと若しくは行ったことを認識し、又は容易に認識することができたこと

    (2)法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたこと

    (3)納税者においてこれを防止せずに隠ぺい仮装行為が行われたこと

    (4)に基づいて過少申告がされたこと

    【ルール6】 過少申告の認識

    納税者が故意に課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではない(最高裁昭和62年5月8日判決)。

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  • 税務調査における争点整理表と納税者主張整理書面

    2019年06月29日

    今回は、税務署の内部書類である「争点整理表」についてです。

    【争点整理表とは?】

    争点整理表とは、争訟が見込まれる等の事案において作成するものですが、平成24年6月27日国税庁長官「署課税部門における争点整理表の作成及び調査審理に関する協議・上申等に係る事務処理手続について(事務運営指針)」(TAINSコードH240627課総2-21)によると、争点整理表には、

    ・事実経過

    ・争点の概要

    ・争点に係る法律上の課税要件

    ・調査担当者の事実認定(又は法令解釈)その事実、証拠書類等

    ・納税者側の主張、その事実、証拠書類等

    ・審理担当者等の意見

    を記載することとされています。

    どういう場合に作成するかですが、形式基準として、次の場合に作成するものとされています。

    次の処分等が見込まれる事案

    (イ)重加算税賦課決定

    (ロ)増額更正・決定

    (ハ)青色申告承認の取消し

    (ニ)更正の請求に理由がない旨の通知

    (ホ)偽りその他不正な行為による6年前・7年前の年分(事業年度)への遡及

    (ヘ)調査着手後6ヶ月以上の長期仕掛事案

    (ト)以上の事案以外で、署の定める重要事案審議会の署長付議対象に該当することが見込まれる修正申告若しくは期限後申告対象事案又は過怠税賦課決定処分対象事案

    したがって、後日、重加算税賦課決定が見込まれる事案においては、必ず「争点整理表」が作成されることがわかります。

    【争点整理表に基づく事実認定】

    また、事実認定については、「抽出した課税要件に照らして、調査によって抽出した証拠(相手方の主張を含む。)について事実関係時系列表により整理を行い、直接証拠(事実を直接示している証拠)や間接証拠(事実の存在を推認できる証拠)から事実認定を行う。なお、税務当局が認定した事実及び主張する事実については、全てその根拠(証拠)が必要であり、税務当局側が立証責任を負うこととなる」(留意点)とされています。

    【争点整理表に納税者主張を記載させる方法】

    納税者としては、重加算税賦課決定を回避するためには、この争点整理表における「納税者側の主張」「事実、証拠書類等」に自らの主張を正確に記載させることが重要なポイントなるものと思われます。

    そのために有効なのが、「納税者主張整理書面」です。

    書面で主張していかないと、調査担当者の側から見た「納税者側の主張」しか争点整理表に記載されず、審理担当者もそれを前提にして意見をします。

    しかし、書面で主張及び証拠を提出しておけば、それが争点整理表に記載され、審理担当者も納税者側の正確な主張を検討した上で、重加算税賦課決定をするかどうかの意見を付するものと考えられます。

    ぜひ、ご活用いただきたいと思います。

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  • 従業員の行為による重加算税は二段階論法

    2019年06月29日

    今回は、重加算税に関する裁決例をご紹介します。

    国税不服審判所平成21年9月9日裁決(TAINS J78-3-20)です。

    (事案)

    印刷の請負及び製本紙器の製作などを目的とする株式会社の本社工場生産管理課長又は生産管理部生産管理課長が、請求人の所有する余剰紙を請求人に無断で売却し、その売却代金を受領したにもかかわらず、個人的な飲食、ゴルフ、旅行等の遊興費に費消して、請求人の売上に計上していなかった行為が、請求人の隠ぺい又は仮装にあたる、とされたものです。

    (裁決の要旨)

    ●元課長は、本件各事業年度において、経営に従事する立場にはない

    ●本件紙取引の対象となった支給紙の払出しの指示を出す業務を行ってはいたものの、印刷用紙の保管及び管理に関する業務を遂行する職務及び権限を請求人から与えられていなかった

    ●本件余剰紙を自己の判断で売却する権限を有していなかった

    ●本件紙取引は、元課長が、請求人から窃取した本件余剰紙を、架空会社の名義を使用して売却したものである

    ●請求人は、印刷の請負及び製本紙器の製作等を目的とし、印刷用紙の販売を目的としていない

    ●本件各事業年度において、請求人が所有・管理していた、本件余剰紙以外の印刷用紙が他に販売された事実はなく、外注先に対し有償で支給された事実もなかった

    ●買取人は、本件紙取引が請求人との取引であるとは認識していなかった

    ⇒以上のことを総合考慮すれば、本件紙取引に係る収益は、請求人の売上げとはいえない。

    判断の要点は、以下のとおりです。

    ●印刷用紙の販売は納税者の業務の範囲内か

    ●従業員は販売する権限を持っていたか

    ●買取人は納税者との取引として認識したいたか

    そして、ここがポイントですが、本件は重加算税に関する裁決例として紹介されますが、実は、「実質所得者課税」に関する論点であるということです。

    「隠ぺい・仮装」については判断されておらず、「誰の収益か」が問題となっている、ということです。

    このように、従業員の行為が問題となるケースでは、「隠ぺい・仮装」の前に、「実質所得者課税」について検討し、その後に「隠ぺい・仮装」があったかどうか、が検討される、という二段階構造になっていることに注意が必要です。

    このような問題意識は、口頭でのやり取りではなかなか気づかず、書面化することで明確になり、課税庁の誤りも明らかになってくると思います。

    参考にしていただければと思います。

    そんな時は、納税者側から、積極的に書面を提出していくのが有効です。

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  • 立証責任で課税庁が敗訴した裁判例

    2019年06月23日

    課税要件事実に関する立証責任については、「所得の存在及びその金額について決定庁が立証責任を負うことはいうまでもないところである」(最高裁昭和38年3月3日判決、月報9巻5号668頁)とされており、課税庁に立証責任があるのが原則です。

    したがって、課税庁は税務調査によって事実を調査し、証拠を収集し、課税処分をする場合には、後日処分取消訴訟などで争われたとしても、立証に成功すると判断することが必要となります。この判断を誤り、後日の処分取消訴訟等で立証に失敗した場合には、課税処分が違法となります。

    では、「立証した」とは、どういうことなのか、あるいは、「立証していない」というのはどういうことなのでしょうか。

    実際の裁判例で見てみましょう。

    東京高裁平成15年1月29日判決のアルゼ事件があります。

    事案としては、納税者Xが、A社からパチスロ機のメイン基板合計6万6455枚を1枚当たり1万4000円で購入し、これらをB社に対し1枚当たり8万円で販売する取引をして43億8603万円の売買利益を得ていたにもかかわらず、米国法人C社がこの取引をしていたかのように仮装し、同取引によって得た所得等を申告しなかったとして、消費税及び地方消費税について、それぞれ更正処分及び重加算税賦課決定処分をした事案です。

    課税庁は、本件各取引が、売買契約の内心的効果意思のない通謀虚偽の意思表示によるもので無効であるにもかかわらず、取引があるように仮装したものである、と主張しました。

    課税町に立証責任がある、ということは、この「通謀虚偽表示」と、「取引の仮想」を立証する責任がある、ということです。

    裁判所は、各種証拠を検討した上で、本件各取引が、「いずれも通謀虚偽の意思表示によるものであって、被控訴人が明立から明立基板を購入しこれをECJに販売したものであると認めることはできず、他に、これを認めることができる的確な証拠はない。」として、納税者勝訴判決をしました。

    本裁判例では、裁判所が、重加算税の課税要件事実の主張立証責任が国にあることを前提とした上で、重加算税の課税要件事実の立証が成功しなかったとして、立証責任により国敗訴判決をしたものと理解しています。

    また、主張立証責任が問題となった事例に、東京高裁平成27年3月25日判決(判例時報2267号24頁)のIBM事件があります。有名な事件です。

    上告審は上告不受理決定です。

    この事案は、日本IBMの全株式を保有していた納税者Xが、自己の保有する日本IBMの株式を日本IBMに譲渡した上で、Xと日本IBMが連結納税者制度の適用を選択しました。株式譲渡によりXには約4000億円の損失が発生していたことから、当時の法制度によると、日本IBMが国内で事業活動を行うことによる所得何年にもわたり繰越欠損金と相殺されて、課税されない状態が続くことになりました。

    そこで、課税庁は、法人税法132条の同族会社の行為計算否認規定を適用して、課税処分を行ったというものです。

    法人税法132条は、「税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。」と規定しています。

    本件では、一連の行為が、「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となる」に該当するかどうかが争われたものです。

    裁判所は、「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となる」かどうかの判断基準として、「法人税法132条1項の趣旨に照らせば、同族会社の行為又は計算が、同項にいう『これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの』か否かは、専ら経済的、実質的見地において当該行為又は計算が純粋経済人として不合理、不自然なものと認められるか否かという客観的、合理的基準に従って判断すべきものと解される〔最高裁昭和53年4月21日第二小法廷判決・訟務月報24巻8号1694頁(最高裁昭和53年判決)、最高裁昭和59年10月25日第一小法廷判決・集民143号75頁参照〕」と規範を定立しました。

    その上で、本件一連の行為が、独立当事者間の通常の取引と異なるものであり、経済的合理性を欠くとの国の主張について、「本件各譲渡が、本件税額圧縮・・・の実現のため、被控訴人の中間持株会社化・・・・と一体的に行われたという控訴人の主張は、本件全証拠によっても認めることができないというほかない」と判示し、また、本件一連の行為が、全体として独立当事者間の通常の取引と異なるものであり、経済的合理性を欠くとの国の主張について、「そもそも、控訴人は、本件各譲渡が独立当事者間の通常の取引と異なると主張しているのにもかかわらず、独立当事者間の通常の取引であれば、どのような譲渡価額で各譲渡がされたはずであるのかについて、何ら具体的な主張立証をしていない」として、主張立証責任を理由に納税者勝訴の判決をしました。

    したがって、税務調査において、調査担当者から税務処理を否認された場合でも、課税庁の主張する課税要件に該当するかどうかの立証責任は課税庁にあることを明確にし、その上で、課税要件事実が立証しきれているかどうかを吟味する必要があります。

    とは、言っても、「立証しきれているかどうか」は、どうやって判断するか、わからない、という疑問があるかもしれません。

    これは、「証明度」の問題です。

    事実をどの程度、証拠によって「証明」すれば、裁判所に事実を認定してもらえるのか、とうい問題です。

    証明度に関しては、有名な判決があります。「ルンバール事件判決」です。

    ルンバ-ル事件判決(最高裁昭和50年10月24日判決、民集29巻9号1417頁)は、化膿性髄膜炎に罹患した幼児の治療として、医師が「ルンバール」という治療をした後に幼児にけいれん発作等及び知能障害等の病変が生じたことについて、同病変等がルンバール施術のショックによる脳出血によるものと認定できるかどうかが争われた事案です。

    この事案において、最高裁は、証明度について、「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである」と判示しています。

    そして、経験則を用いて、病変等がルンバール施術のショックによる脳出血によるものと認定しました。

    この裁判例から、証明度について次のことが言えることになります。

    ①立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではない

    ②経験則に照らして全証拠を総合検討する

    ③因果関係については高度の蓋然性を証明する

    ④通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる

    したがって、税務調査において、課税庁から納税者の税務処理を否認された場合には、課税等が主張する課税要件事実が、収集された証拠により、この証明度に達しているかを吟味する必要があります。

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