税法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • 税理士法人の破産と社員税理士の責任

    2023年01月27日

    今回は、税理士法人の破産と社員税理士の責任について解説します。

    株式会社等は、「債務超過」あるいは「支払不能」の場合に破産申立ができます。

    しかし、合名会社は、「支払不能」の場合にしか破産申立ができません(破産法16条)。

    そして、税理士法48条21第6項は、「破産法第十六条の規定の適用については、税理士法人は、合名会社とみなす。」とされていますので、税理士法人も、「債務超過」だけでは破産できず、「支払不能」の場合のみ破産が可能です。

    「支払不能」とは、支払能力がなくなったことで、本来であれば履行すべき債務を履行できなくなる状態をいいます。つまり、収入や資産がなくて返済期日の到来している債務を返せない状態のことです。

    では、税理士法人が破産すると、その債務はどうなるのでしょうか。

    ご承知のとおり、税理士法人の社員は、無限連帯責任を負っています。

    条文としては、税理士法第48条の21は、会社法580条第1項を準用しています。

    ==================
    会社法第580条第1項

    社員は、次に掲げる場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
     
    一 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合
    ==================

    では、退社した社員については、どうか。

    次の規定も準用されています。

    ==================
    会社法612条

    1 退社した社員は、その登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。

    2 前項の責任は、同項の登記後二年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後二年を経過した時に消滅する。

    ==================

    つまり、社員税理士は、税理士法人を脱退したとしても、脱退登記後2年間は、無限連帯責任を負う、ということです。

    そして、税理士法人が破産開始決定を受けると、解散します(税理士法48条の18)。

    その結果、定款で「破産」または「解散」した場合は社員は脱退する旨定められていれば、脱退登記により上記の責任と同様になりますし(多くの場合はそうなると思います)、記載がなくても破産手続が終了すると法人格が消滅しますので、当然脱退となります。

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  • 過去の申告書の閲覧サービス

    2022年12月23日

    今回は、過去に提出した申告書を見たい場合の閲覧サービスについてです。

    新規受託をした場合に、過去の申告書がない、というケースもあると思います。

    そのような場合には、過去に提出した申告書を確認する必要がある場合があります。

    その場合の方法としては、

    ・申告書等閲覧サービス

    ・個人情報保護法による開示請求

    の2つがあります。

    今回は、申告書等閲覧サービスについてです。

    閲覧申請できるのは、納税者等及びその代理人です。

    ・所得税及び復興特別所得税申告書

    ・法人税及び地方法人税申告書、復興特別法人税申告書

    ・消費税及び地方消費税申告書

    ・相続税申告書

    ・贈与税申告書

    ・酒税納税申告書

    ・間接諸税に係る申告書

    ・各種の申請書、請求書、届出書及び報告書等

    ・納税者が上記の申告書等に添付して提出した書類

    但し、相続税申告書について、他の相続人の提出した申告書を閲覧するには、当該相続人による閲覧申請あるいは委任状が必要になります。

    つまり、閲覧申請をした人の該当箇所しか閲覧することはできない、ということです。

    詳細は、以下をご確認ください。

    申告書等閲覧サービスの実施について(事務運営指針)
    https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/sonota/050301/01.htm

    では、他の相続人の提出した相続税申告を、裁判所を通して開示請求できるか、ですが、これも難しいです。

    福岡高裁宮崎支部平成28年5月26日決定は、遺産分割調停事件において、相続税申告書等の文書提出命令の申立てについて、当該文書は、その記載内容が、「その提出により公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」(民事訴訟法220条4号ロ)に該当するとして文書提出命令の申立てが却下されています。

  • 質問検査拒否の刑罰の発動

    2022年12月16日

    今回は、質問検査拒否の刑罰が、どんな場合に発動されるのか、について裁判例をご紹介します。

    質問検査は、ご承知のとおり、任意の行政調査ですが、質問検査の拒否等には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。

    刑罰の対象となるのは、

    ・不答弁

    ・虚偽答弁

    ・検査、採取、移動の禁止、封かんの実施の拒否・妨害・忌避

    ・物件提示又は提出の拒否

    ・虚偽記載記録の提示・提出

    です(国税通則法128条2号、3号)。

    質問検査を拒否して起訴され、無罪となった裁判例に、東京地裁昭和44年6月25日判決があります。

    裁判所は、単なる不答弁ないし拒否だけでは要件を満たすとはいえず、「その質問等についての合理的な必要が認められるばかりでなく、その不答弁等を処罰の対象とすることが不合理といえないような特段の事由が認められる場合にのみ成立する」と規範を立てました。

    その上で、当該事案においては、「被告人のように、一般のいわゆる白色申告者である場合には、単に帳簿書類を見せてほしい、得意先、仕入先の住所氏名をいってほしい、工場内を見せてほしいといわれただけで、これに応じなかったといって、ただちに不答弁ないし検査拒否として処罰の対象になるものと考えることはできない」

    ポイントとしては、

    ・質問等についての合理的な必要が認められること

    ・不答弁等を処罰の対象とすることが不合理といえないような特段の事由が認められることが必要

    ・単なる不答弁等は処罰の対象とはならない。

    ・但し、質問検査拒否の他の論点である青白申告承認取消及び消費税の仕入税額控除否認に注意(帳簿書類の備え付け、記録及び保存が法律の定めるところに従って行われていない)

    となります。

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  • 贈与契約書がなくても名義預金を否定した裁決例

    2022年10月14日

    今回は、名義預金です。

    贈与契約書がない事例において、贈与が認定され、相続財産ではないと認定された国税不服審判所令和3年9月17日裁決をご紹介します。

    (事案)

    請求人の亡夫(被相続人)が、被相続人の嫡出でない子(長女)に対し、毎年一定の金額を、長女の唯一の法定代理人である母を介して、長女名義の普通預金口座に、平成13年から平成24年までの間、入金した。

    被相続人は、長女に対し、毎年一定額を贈与する旨の贈与証を作成したが、長女や長女の母の署名押印はなかった。

    贈与証には、「私は、平成拾参年度より以後、毎年八月中に左記の四名の者に金、○○○○円也を各々に贈与する。但し、法律により贈与額が変動した場合は、この金額を見直す。」と記載されていた。

    長女の母は、本件被相続人の指示に基づきM名義口座への入金を行っていただけであった旨申述しており、M名義預金の通帳をMに渡す際には、本件被相続人がMのために積み立てていた金員である旨を説明していた。

    (争点)

    贈与契約が成立するためには、贈与者の贈与の申込みと受贈者の受諾の意思表示が必要であるが、本件で、受贈者の受諾の意思表示があったか。

    (裁決)

    長女の母は、本件被相続人から本件贈与証を預かるとともに、本件被相続人の依頼により本件長女名義口座に毎年入金し、さらに長女名義預金の通帳を長女に渡すまでの間、管理していた。

    本件贈与証の内容は、その理解が特別困難なものとはいえず、また、長女の母は、関連法人の経理担当として勤務していたことを併せ考えると、本件贈与証の具体的内容を理解していたとみるべきであり、そのことを前提とすると、母は、自身が手続を行っていた本件被相続人の預金口座から長女名義口座への資金移動について、本件被相続人から長女への贈与によるものであると認識していたと認めるのが相当である。

    長女の母は、長女の法定代理人として、本件贈与証による贈与の申込みを受諾し、その履行として本件預金口座へ毎年入金していたと認めるのが相当である。

    =========================

    以上です。

    本件では、子への贈与が認定されましたが、課税庁から贈与を否認されました。

    贈与を否認されるだけで、納税者としては、審査請求などをする苦労が増え、また、名義預金と認定されるリスクが生じる、ということです。

    そして、否認された大きな理由としては、やはり、贈与証に受贈者の署名押印がない、という点です。

    したがって、未成年者への贈与においては、未成年者の法定代理人の署名押印のある贈与契約書が重要である、ということがわかります。

    なお、本件では、法定代理人が母親だけの事例ですが、法律上、両親がいる場合には、両親が共同して親権を行使すると定められていますので、両親の署名押印が必要となります。

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  • 親の事業に子が参加した場合の収益の帰属

    2022年08月18日

    今回は、親の事業(歯科医院)に子(歯科医師)が参加した場合、収入は、親に帰属するか、それぞれに帰属するか、という論点です。

    東京高裁平成3年6月6日判決(TAINS Z183-6725)です。

    (事案)

    原告は歯科医師であり、歯科医院を営んでいる。

    原告の子であるAは、歯科医師試験に合格後、当該歯科医院にて診療に従事していた。昭和57年3月に、A名義の個人事業の開業届出書を税務署に提出した。

    原告は、昭和57年および58年分の所得税について、歯科医院の総収入および総費用をAと折半して申告した。

    税務調査があり、Aは独立の事業者ではなく、原告の専従者であり、医院からの事業収入は全て原告に帰属する、として更正処分及び過少申告加算税決定処分をした。

    (判決)

    【所得の帰属の判断】

    親子が相互に協力して一個の事業を営んでいる場合における所得の帰属者が誰であるかは、その収入が何人の勤労によるものであるかではなく、何人の収入に帰したかで判断されるべき問題であつて、ある事業による収入は、その経営主体であるものに帰したものと解すべきであり(最高裁昭和37.3.16第2小法廷判決、裁判集民事59号393頁参照)

    従来父親が単独で経営していた事業に新たにその子が加わつた場合においては、特段の事情のない限り、父親が経営主体で子は単なる従業員としてその支配のもとに入つたものと解するのが相当である。

    【考慮要素】

    原告夫婦とA夫婦及びその子は、同一建物の1階と2階に住み分けており、独立の出入り口はないなどから、Aは全く別個の世帯とは認められない。

    Aが開業にあたり必要とした医療器具、医院改装の費用は原告の負担であり、売買契約等の契約者も原告であり、借入にあたり、原告所有土地建物に担保設定医院の経理上Aと原告の収支が区分されていない

    同医院の収入が昭和56年から飛躍的に増大していることが認められるとはいえ、本件で問題になつている昭和56年から同58年にかけての医院の実態は、Aの医師としての経験が新しく、かつ短かいことから言つても、原告の長年の医師としての経験に対する信用力のもとで経営されていたとみるのが相当であり、したがつて、医院の経営に支配的影響力を有しているのは原告であると認定するのが相当である。

    原告とAの診療方法及び患者が別であり、いずれの診療による収入か区別することも可能であるとしても、原告が医院の経営主体である以上、その経営による本件収入は、原告に帰するものというべきである。

    ==================

    以上です。

    子が歯科医師という資格を有し、治療を担当していたとしても、父親が全体の経営主体であり、収入金額すべてが父親の収入になる、という結論です。

    親の事業に子が参加した場合には

    (原則)

    従来父親が単独で経営していた事業に新たにその子が加わつた場合においては、特段の事情のない限り、父親が経営主体で子は単なる従業員としてその支配のもとに入つたものと解する

    その上で、例外として、「特段の事情」を検討する、という順番になります。

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  • 【税理士向け】母親名義の食堂で収益の帰属が争われた事例

    2022年07月08日

    今回は、母親名義の食堂の収益について、母親に帰属するか、請求人(子)に帰属するか、について判断した国税不服審判所平成3年11月14日裁決(TAINS F0-1-1153)をご紹介します。

    (事案)

    請求人は、昭和61年分ないし昭和63年分の所得税について、給与所得があったとして確定申告した。

    課税庁は、食堂の収益は請求人(子)に帰属するため、請求人の所得は給与所得ではなく、事業所得に当たるとして、所得税の更正及び過少申告加算税の各賦課決定をした。

    (裁決)

    以下の事実を認定して、母親名義の食堂の収益は、請求人(子)に帰属するとしました。

    ・本件食堂の営業許可名義は、母親名義である。

    ・食堂の収益は母親が事業所得として申告していた。

    ・食堂の建物は母親名義であるが、改築費用2573万円については、請求人が借入をして工事費用を負担した。

    ・上記借入金の返済は、食堂の収入金で行われた。

    ・請求人は約20年食堂の営業に従事し、仕入れ交渉、契約、材料の調理など営業活動で主要な役割を果たしており、母親は高齢で日常的に営業活動に従事していなかった。

    ・売上金の管理は請求人の名義で行われていた。

    ===================

    本件は、もともと母親が経営していた食堂について、明確に事業の承継が行われたことがないにもかかわらず、実態から、請求人を経営者と認定したものです。

    実質所得者課税の原則の見解には、法律的帰属説と経済的帰属説がありますが、多くの裁判例では、法律的帰属説で判断されています。

    法律的帰属説は、形式と実質が相違している場合には、実質に即して帰属を判定すべきとされています。

    本件のような事例では、上記のように、様々な点を検討しないと適切に事実認定ができません。

    以下のような事実関係を確認する必要があります。

    ・建物は誰の名義で所有又は賃借されているか

    ・売上金の管理は誰が行っているか

    ・仕入れ等の交渉、契約は誰が行っているか

    ・経営方針、人事等の決定は誰が行っているか

    ・重要な設備は誰が費用負担をしているか

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  • 同一人に給与と外注費

    2022年06月17日

    今回は、【税理士を守る会】でされた質疑応答をご紹介します。

    (質問)

    顧問先の業務で、定型的な業務と、時間が散発的で業務時間外にも発生する流動的な業務があります。

    そこで、1人の社員と定型的な業務については雇用契約を、流動的な業務について業務委託契約を締結したいと考えていますが、法律上可能でしょうか。

    (回答)

    当該社員をAとし、使用者を会社と仮定します。

    雇用契約の場合、Aは会社の指揮監督下にあり、業務委託契約の場合、Aは会社から独立しており、仕事の諾否の自由を有しています。

    この2つは二者択一であり、指揮監督下にありながら、独立している、ということはありえません。

    したがって、たとえば、Aの雇用契約における勤務時間が9時~17時である場合、この時間内に業務委託契約上の仕事が発生することはありえません。

    流動的な業務が勤務時間外である場合には、理論的には可能ですが、運用が非常に難しいです。

    なぜならその業務については、Aは会社から空間的時間的支配を受けず、指揮命令から解放されており、業務を受けるかどうかは自由であり、業務に対する危険と責任を負担する、という性質を持っており、A及び会社双方がその認識のもとに業務を行うことは難しいためです。

    なお、同一人に給与と外注費を支給することを認めたかのように誤解されることがある国税不服審判所平成29年2月9日裁決がありますが、これは外注費部分についてしか国税不服審判所の判断はされておらず、給与部分については判断されていないので、参考になりません。

    また、所得税通達204-22で保険外交員について給与所得と事業所得の両方を認めるものがありますが、これはそもそも外交員等については、給与所得か事業所得か判断するのが難しいケースが多いために租税職員が現場で判断できるよう判断基準を決めておく、という趣旨から例外的に定められたものと解されます。

    それ以外については、上記の結論になると考えます。

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  • 分掌変更退職給与が否認された裁判例・東京地裁平成29年1月12日判決

    2022年06月02日

    今回は、分掌変更退職給与が認められなかった裁判例をご紹介します。

    東京地裁平成29年1月12日判決(TAINS Z267-12952)、控訴棄却、上告棄却です。

    (事案)

    乙は、原告会社において平成16年5月28日から平成23年5月30日まで代表取締役の職にいた。

    乙は、平成23年5月30日に取締役に再任されたが、甲が代表取締役に選任され、乙は代表取締役を退任した。

    乙の月額報酬は、代表取締役を退任する前の205万円から約3分の1に相当する70万円に引き下げられた。

    原告は、乙の退職慰労金を5609万6610円とする旨の決議をし、損金に参入した。

    後日の税務調査により指摘を受け、原告は、修正申告をしたが、その後、本件退職慰労金は損金に参入されるべきであるとして更正の請求をした。

    税務署長は、更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。

    (判決)

    役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的には退職したと同様の事情にあると認められるときは、その分掌変更等の時に退職給与として支給される金員も、従前の役員としての在任期間中における継続的な職務執行に対する対価の一部の後払いとしての性質を有する限りにおいて、退職給与に該当する。

    その上で、判決では、退職の事実を否定するにあたり、次の事実を認定しています。

    ●乙は、原告の代表取締役を退任した後も、常勤の相談役として毎日出社をし、退任前と同じ代表取締役の執務室の席において執務をしていた

    ●甲の席は乙の席の隣に設けられ、乙と甲が共同して原告の経営に当たる執務環境が整えられていた

    ●代表者の甲は、原告の売上げや粗利、従業員の成績の管理、棚卸し、従業員からの報告事項、夏季賞与の査定やその支払のための借入れ、冬季賞与の査定、マシニングの管理や設置などについて、案件ごとに乙に確認を求め、その助言に従って業務を実施するなどしていた

    ●税務調査において、代表取締役を退任した後も退任前と同様の業務を継続しており、甲に対し引継ぎとして仕事を教えている旨述べている

    ●代表取締役を退任した後も、代表者会議への出席を継続し、出席をしなくなった営業会議及び合同会議についても、各会議の議事録に甲が決裁印を押した後のものを確認した上で「相談役」欄に押印していた

    ●10万円を超える支出について必要となる決裁のための稟議書についても、原則として甲が決裁欄に押印した後に「相談役」欄に押印をしていた。

    ●乙は、原告の資金調達等のため、多数回にわたり、単独でE銀行結城支店の担当者との面談や交渉をしており、同銀行の担当者も、原告の交渉窓口で原告の実権を有するのは乙であると認識し、交渉等のために原告を訪問するに当たり、乙に対し面談の約束を取り付けていた

    (結論)

    乙は、原告の代表取締役を退任した後も、引き続き相談役として原告の経営判断に関与し、対内的にも対外的にも原告の経営上主要な地位を占めていたものと認められるから、甲が代表取締役に就任したことにより乙の業務の負担が軽減されたといえるとしても、本件金員の支給及び退職金勘定への計上の当時、役員としての地位又は職務の内容が激変して実質的には退職したと同様の事情にあったとは認められない。

    =====================

    以上です。

    今回の判決で指摘された内容から、顧問先への助言で参考になるポイントは、以下です。

    ・毎日出勤しない

    ・代表取締役の時の執務室は使わない

    ・現代表取締役と同列とみなされる机の配置にしない

    ・経営上の重要な意志決定に関与しない

    ・人事に関与しない

    ・経営上の重要な会議に参加しない

    ・議事録を決裁しない

    ・支出に関し、決裁しない

    ・金融機関などとの交渉に関与しない

    なお、顧問先に助言をしたら、助言をしたことを証拠化しておくことをお忘れなく。

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  • 損害賠償請求権の益金計上時期

    2022年05月26日

    今回は、不法行為に基づく損害賠償請求権の益金計上時期についての東京高裁平成21年2月18日判決(TAINS Z259-11144)です。

    (事案)

    平成16年4月に、X法人に対する税務調査で、架空外注費の損金計上が発覚した。

    調査の結果、経理部長Aの詐取行為であることが判明した。

    調査の結果、平成9年9月から平成16年3月までの間に、約1億9000万円詐取したことが判明したため、平成16年9月に損害賠償請求訴訟を提起し、同額の判決が確定した。

    (争点)

    損害賠償請求権を益金に計上すべき時期は、不法行為時か、その他の時期か?

    (判決)

    【原則】
    本件各事業年度において詐取行為により被控訴人が受けた損失額を損金に計上すると同時に益金として損害賠償請求権の額を計上するのが原則

    【例外】
    本件各事業年度当時の客観的状況に照らすと、通常人を基準にしても、本件損害賠償請求権の存在・内容等を把握し得ず、権利行使が期待できないといえるとすれば、当該事業年度の益金に計上しない取扱いが許される

    【あてはめ】

    詐取行為は、経理担当取締役が本件預金口座からの払戻し及び外注先への振込み依頼について決裁する際に乙が持参した正規の振込依頼書をチェックすれば容易に発覚する。

    決算期等において、会計資料として保管されていた請求書と外注費として支払った金額とを照合すれば、容易に発覚。

    【結論】

    通常人を基準とすると、本件各事業年度当時において、本件損害賠償請求権につき、その存在、内容等を把握できず、権利行使を期待できないような客観的状況にない。
    各事業年度において益金に計上すべき。

    ======================

    以上です。

    通常人を基準にして、

    ・本件損害賠償請求権の存在・内容等を把握し得ず、

    ・権利行使が期待できない

    場合には、例外的に不法行為のあった時の事業年度に計上しないことができる、ということになりますが、あてはめでやや厳しめに判断されることに注意が必要です。

    安易に「それは知り得なかったですね」と判断すると、誤ることがある、ということです。

    なお、本件は社内の者でしたが、社外の「他の者」からの不法行為の場合には、法人税基本通達2-1-43があります。

    ===================

    他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。以下2-1-43において同じ。)の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める。

    ===================

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  • 総則6項最高裁R4.4.19

    2022年05月05日

    今回は、相続税に関して総則6項が適用された事案において、納税者が敗訴した最高裁令和4年4月19日判決をご紹介します。

    すでにお読みになったもしれませんが、私の視点で解説します。

    (事案)

    被相続人は、平成21年1月30日、信託銀行から6億3000万円を借入、甲不動産を8億3700万円で購入した。

    被相続人は、平成21年12月21日付けで共同相続人らのうちの1名から4700万円を借り入れ、同月25日付けで信託銀行から3億7800万円を借り入れた上、同日付けで本件乙不動産を代金5億5000万円で購入した。

    平成24年6月17日(購入から約3年後)、94歳の被相続人の相続が開始した。

    本件購入と借入がなければ、課税価格は6億円以上であった。

    相続人らは、評価通達の定める方法により、本件甲不動産の価額を合計2億0004万1474円、本件乙不動産の価額を合計1億3366万4767円と評価し、課税価格の合計額は2826万1000円とされ、基礎控除の結果、相続税の総額は0円とされた。

    税務署長は、総則6項を適用し、鑑定評価額に基づき、本件甲不動産の価額が合計7億5400万円、本件乙不動産の価額が合計5億1900万円として、課税価格を8億8874万9000円、相続税の総額を2億4049万8600円とする更正処分等を行った。

    (判決)

    (原則)
    租税法における【平等原則】により、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、合理的な理由がない限り、平等原則に違反するものとして違法。

    (例外)
    評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが【実質的な租税負担の公平に反する】というべき事情がある場合には、評価通達によらない合理的な理由がある

    (本件では)

    本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはできない。

    本件購入・借入れが行われなければ本件相続に係る課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になるというのであるから、上告人らの相続税の負担は著しく軽減されることになるというべきである。

    そして、被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる。

    そうすると、本件各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。

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    以上です。

    ポイントは、

    ・実質的な租税負担の公平に反する場合は、評価通達によらない合理的理由がある。

    ・通達評価額と鑑定評価額の差が大きいだけでは理由にならない。

    ・相続税額の差が大きく、かつ、関係者が相続税の軽減を知り、期待して行った場合には、実質的な租税負担の公平に反する。

    ということになります。

    税負担の軽減という「客観的要素」だけではなく、税負担の軽減目的と認識という「主観的要素」を判断要素に取り入れた、ということになります。

    したがって、行為計算否認規定の場合と同様、税負担の軽減以外の合理的目的を有し、かつ、その証拠を残しておくことが大切となってきます。

    銀行融資を受ける際に、購入目的を「相続税の軽減」と説明すると、それが稟議書に記載され、反面調査で明らかになりますので、税負担の軽減以外の目的の場合には、きちんとその目的を正しく説明しておくことが大切です。

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