最終報酬月額0円の場合、役員退職金をいくらにするか? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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最終報酬月額0円の場合、役員退職金をいくらにするか?

2021年06月18日

今回は、「税理士を守る会」の会員の先生から寄せられた質問をご紹介します。

質疑内容は、一般化できるよう改変しています。

【質問】

これまで役員報酬がないまま事業を続けてきた法人の社長が退職するにあたり役員退職金を出そうとしています。

社長は他の他の収入を得ているので、特に役員報酬が必要なかったためです。

最終報酬月額が0円の場合は、どのように考えればよいでしょうか。

また、後日否認された場合の税賠も心配です。

【回答】

役員退職金については、裁判所は、原則として「功績倍率法」によっていることはご承知のことと思います。

功績倍率法が、最終報酬月額を基準にしているのは、

・役員の最終報酬月額は、特別な場合を除いて役員の在職期間中における最高水準を示す

・役員の在職期間中における会社に対する功績を最もよく反映している

ことを理由にしています(東京高裁平成元年1月23日判決他)。

しかし、会社によっては、上記が当てはまらない場合があり、その場合には、功績倍率法を採用することが適当でない、という場合もあります。

そのような場合には、「1年当たり平均額法」を採用する裁判例もあります(札幌地判昭和58年5月27日など)。

裁決例でも、「最終報酬月額が役員の在職期間を通じての会社に対する貢献を適正に反映したものでないなどの特段の事情があり低額であるときは、最終報酬月額を基礎とする功績倍率法により適正退職給与の額を算定する方法は妥当でなく、最終報酬月額を基礎としない1年当たり平均額法により算定する方法がより合理的である。」(昭和61年9月1日裁決抜粋)とされています。

ところが、この「1年当たり平均額法」も、同業類似法人の退職金を元に算出するので、納税者側では、正確に計算することができません。

そこで、裁判例の中には、死亡退職した役員の役員Aの最終報酬が月額5万円であった事例において、Aが設立した会社の取引先やAの事業経験を原告会社に引き継がせたことからすると、Aの功績を適正に反映したものとしては低額に過ぎ、平均功績倍率法の適用上、Aの適正報酬月額は、原告代表者B(Aの長男)の報酬月額の平均額の2分の1の額とするのが相当である、として、適正報酬に引き直した上で計算すべき、としたものがあります(高松地裁平成5年6月29日判決、TAINS Z195-7150)。

功績倍率法採用の趣旨からすると、上記裁判例の考え方は合理的と思いますので、上記を参考に、

・適正な最終報酬月額を算定し、

・功績倍率法を適用して

退職金を計算するのがよろしいかと思います。

しかし、この方式で退職金を計算しても、後日の税務調査で否認される可能性があります。

そこで、「税理士を守る会」で、納税者のリスク説明と税理士の免責を得るために提供している「役員退職給与に関する確認書」の末尾「以上を前提に、当社では、」の次に、以下の記載をするのがよろしいかと思います。
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「●氏の最終報酬月額は0円ですが、それは、●氏には別の収入があるという特別の事情があったためであり、過去の裁判例で、低額に過ぎる最終報酬月額の場合には、適正な報酬月額に引き直して計算すべき、とした裁判例があるため(高松地裁平成5年6月29日判決、TAINS Z195-7150)、●氏にかかる適正な最終報酬月額を●●円と計算した上で」
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※「税理士を守る会」の書式を見ないと、全貌は理解できないかと思いますが、参考にしていただければと思います。
「税理士を守る会」は、こちら
https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/