ブログ | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 54
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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  • ふん尿投げつけ→暴行

    2005年09月16日

    最近多発していた車から歩行者へのふん尿投げつけ事件で、大阪府警は、大手電機メーカーの男を暴行罪などの疑いで取り調べをはじめたそうです。ここ7月から9月にかけて8件も発生していたようです。被害者は、10代から30代の女性。

    暴行罪は、刑法208条に定められています。不法な物理力の行使を言います。歩行者へふん尿を投げつける行為は、「不法」であり、かつ「物理力の行使」です。殴ったり蹴ったりしなくても、つばをはきかけたり、今回のように物を投げつけたりしても暴行です。過去にあった判例では、「食塩をふりかけた」というものがあります。むやみに他人に食塩をふりかけるのはやめましょう。

    また、今回は、器物損壊罪(刑法261条)も問題になるでしょう。何も壊していませんが、ふん尿を投げつけられた衣服は今後着ることができるでしょうか。「損壊」には、物理的に損壊する場合だけでなく、事実上または感情上その物を本来の用途に従って使用できなくすることも含みます。過去の判例では、他人の飲食器に放尿したケースで器物損壊罪が適用されています。

    食事中の方には、申し訳ございませんが、犯行現場までどうやってふん尿を運んだのか、車内はどんなニオイだったのか、とても気になります。

  • 弁護士が未成年者略取で逮捕

    2005年09月09日

    横浜市の弁護士(47歳)が、離婚した妻が養育している長女(9歳)を福岡市内の私鉄駅で連れ去ったとして、未成年者略取罪で逮捕したそうです。

    逮捕された弁護士は「自分の子供を連れ戻しただけ」と供述しているとのことです。

    自分の子供を連れ去って逮捕されるのですから、相当色々な経緯があったのでしょう。これまでにもたびたびトラブルになっていたことが推測されます。

    親の子に対する気持ちは強いものがあると思いますが、弁護士という職業についている以上、法の手続にしたがって権利を実現するよう自らを律しなければなりません。

  • 記事見出し無断使用が不法行為

    2005年09月08日

    読売新聞がインターネット向けに配信した記事の見出しを、無断で使用して広告収入を得ていた会社に対し、読売新聞が訴えた裁判の控訴審判決が、10月6日に知財高裁でありました。

    読売新聞側は、記事の見出しが「著作物」にあたり、著作権を侵害すると主張しましたが、判決では記事の見出しの著作物性は否定しました。しかし、見出しは、読売新聞東京本社の多大の労力、費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること、相応の苦労・工夫により作成されたものであること、見出しのみでも有料での取引対象とされる実情があることなどから、見出しは法的保護に値する利益となり得るものと判断しました。

    その上で、裁判所は見出しの無断使用を不法行為と認め、請求を棄却した一審判決を変更し、約23万8000円の支払いを命じました。

    つまり、記事の見出しは「著作物」ではないが、読売新聞が苦労して作った財産的価値のある見出しを、無断で使って利益をあげるな、ということです。

    したがって、新聞の記事の見出しを使用する場合が全て不法行為にあたるわけではありません。使い方が違法だっただけです。この判例によっても、個人のブログ等で新聞の記事の見出しを引用し、事件内容にコメントをすること自体は何ら不法行為にあたりませんので、ご心配なく。(もちろん内容にもよりますが)

  • 「ペコちゃん」窃盗に懲役7年

    2005年09月07日

    9月7日の日経新聞夕刊の見出しです。

    「ペコちゃん」窃盗に懲役7年

    群馬県内のレストランなどで、「ペコちゃん」人形を盗んだそうです。記事を読むと求刑11年だそうです。しかし、普通の(常習ではない)窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役です。「ペコちゃん」を盗んだことを理由として他の物を盗んだよりも刑罰が重くなることはありません。

    もっと記事を読むと、窃盗だけでなく、「強盗傷害」も入っているようです。「強盗傷害」が入れば、それ単独でも法定刑が無期又は7年以上の懲役です。悪質であれば11年の求刑、7年の実刑も頷けます。

    記事内容をよく読まないと、見出しだけでは、誤解を招きます。見出しの目的は、読者の注意をひきつけることなのか、内容を端的に表現することなのか、ということだと思います。(他の目的もあるのでしょうか。)今回は、前者のような気がします。日経新聞は、後者だと思っていました。残念です。

    さきほど、私の事務所で話題になりましたので書いてみました。

  • K-1損害賠償事件

    2005年09月04日

    K-1の石井和義元社長の脱税事件に絡み、石井元社長が、伊藤寿永光(すえみつ)元イトマン常務に、証拠隠滅の工作資金をだまし取られたとして3億7000万円の損害賠償請求訴訟を起こしていましたが、10月4日に東京地裁で判決がありました。

    裁判所は「脱税の刑事責任を免れるための証拠隠滅工作の過程で、共犯者の裏切りにあったというべきで、支払い自体が不法。自らの違法行為が原因の被害を司法は救済しない」」と述べて、請求を棄却したそうです。

    本来、支払自体が不法であれば、支払自体が公序良俗違反で無効になり、受け取った人はお金を返還しなければならなくなります。

    しかし、そうすると、不法な目的のために支払をした人が自分の損失を取り戻すことに裁判所が協力してしまうことになってしまいます。したがって、その場合には裁判所による救済を拒否するため、「不法原因給付」という制度が定められています。

    つまり、不法な原因で給付をした者は、その給付したものの返還を請求できない、という制度です。本件では、脱税の刑事責任を免れるための証拠隠滅工作という不法な原因で給付をしたものですから、不当利得返還請求はできなくなります。

    ただし、騙し取られたという損害賠償請求の場合、受け取った人、つまり伊藤氏の方が不法の程度が大きい時には、場合によっては損害賠償請求が成り立つ場合があります。

    不法原因給付のその他の例としては、愛人契約として、お金を前払いした人が、後で払ったお金の返還を求めるような場合に適用されています。男の方は、「借用書」を作成させたりして、外観を整えようしますが、だいたい法廷で愛人契約であることが明らかになり、恥ずかしい思いをしているようです。

  • 麻原弁護団、控訴趣意書未提出

    2005年09月03日

    オウム真理教の麻原彰晃被告人の控訴事件において、8月31日が控訴趣意書提出期限となっていましたが、弁護団は、精神鑑定への立ち会いや鑑定医に対する尋問を拒否されたとして提出しなかったそうです。

    これに対し、 東京高裁(須田賢(すだ・まさる)裁判長)は「法令を無視し、弁護人としての基本的な責務を放棄するもので、著しく被告人の利益を侵害している」などと非難した上で、直ちに趣意書を提出するようあらためて要請しています。た。

    刑事訴訟法では、「控訴申立人は、裁判所の規則で定める期間内に控訴趣意書を控訴裁判所に差し出さなければならない」と定めています。そして、刑事訴訟法規則は、これを受けて「裁判所は、・・・控訴趣意書を差し出すべき最終日を指定」することとなっています。この最終日が8月31日だっということです。

    この日を過ぎると、裁判所が「遅延がやむを得ない」と認めるときに限り、期間内に提出されたものとみなされ、審判の対象となります。 遅延がやむを得ないと認められないときは、控訴棄却で第一審判決確定です。

    しかし、この点に関し、東京高裁では「やむを得ない遅れとは認められない可能性が相当強まった」と指摘しており、予断を許さない状況になってきています。

    弁護団の戦略があるのでしょうが、内部事情を知らない私としては、弁護団は、1つ弱みを作ってしまったような気がします。

  • 派遣社員が9億9000万円横領

    2005年07月27日

    東京三菱銀行の元派遣社員の女性(54)が約12年にわたって合計9億9000万円の預金を着服し続けたそうです。金融庁は、東京三菱銀行に対し、8月26日付で、法令遵守体勢の不備による業務改善命令を出しています。

    女性の行為は、業務上横領罪で刑事告訴されています。

    横領額9億9000万円は驚きですが、それよりも驚いたのは、このうち、約7億4000万円を借金の返済にあてたという点です。

    普通に考えて、派遣社員がこれだけの借金をできるものではありません。借金返済の詳細は明らかではないので、想像するより他ありません。「借金」というのは、

    ①自分の借金、と②他人の借金、③その混合、の可能性があります。

    自分であっても他人であっても無担保で7億4000万円の返済が生ずる借金をそうそうできるものではありません。不動産を所有しており、その購入資金やビル、マンション等の建築資金に対する借金か、不動産を担保にした事業資金ということでしょうか。12年前ということは、平成5年ころです。バブル崩壊後少ししてからですから、テナント賃料下落に耐えられなくなったか、株購入資金も借金であったか、事業収入が低迷したか、いずれにしても想像の域を出ません。

    犯罪の動機解明の過程で、この借金がなんであったか明らかにされるでしょう。

  • 刺客

    2005年07月24日

    自民党の「刺客戦略」が、ニュースやワイドショーを賑わせています。

    私の友達が「刺客」の1人になっており、ビックリです。

  • 駒大苫小牧高暴力事件

    2005年07月23日

    高校野球連覇の駒大苫小牧高の野球部部長が部員に暴力を振るい、問題になっているようです。

    日本高野連は、今後、審議委員会で処分を検討し、大会運営委員会で対応を決めるとのこと。優勝旗を返還すべきとの話もあるようですね。

    感覚的には、優勝旗返還は、部員達に可愛そうだと思います。部長の暴力にも耐え、一生懸命練習し、勝ち取った優勝旗ですから。

    体罰の是非という問題は置いておくとしても、批判は色々とあるでしょう。

    高野連の田名部参事は「速やかな対応を呼びかけてきたが、明徳義塾の出場辞退の直後ということもあり、ゆゆしきことだ。指導者が暴力をふるうと、部員間の暴力も防げない。大変深刻に受け止めている」などと述べたそうです。

    しかし、指導者が暴力をふるうと、なぜ部員間の暴力が防げないのか、このコメントには、論理性があるとは思えません。指導者の暴力と部員間の暴力とは、何の因果関係もないと思います。

    次のような批判もあるでしょう。「高知県の明徳義塾は、大会前に不祥事が発覚し、出場を辞退した。その処分との公平性から考えても、優勝旗は返還させるべきだ。」

    しかし、明徳義塾は、あくまでも自ら出場を辞退したのであって、処分を受けたわけではないので、同列に論ずることはできません。自ら辞退した高校との公平性を論ずる意味がないものと考えます。それに、これは論理ではありませんが、明徳義塾は、部員による不祥事です。「部員達が可愛そう」という感情が揺さぶられる度合いは少ないように思われます。

    また、次のような批判もあるかもしれません。「オリンピックでは、優勝した後で薬物使用が判明したときは、優勝が取り消される。同じアマチュアスポーツである以上、今回も不祥事が優勝後に判明したといっても、優勝を取り消すべきだ。」

    しかし、オリンピックでの薬物利用による優勝が取り消されるのは、薬物の使用が身体能力に影響を与えており、正当な競技成績の前提を欠くからです。今回は、部長による生徒への暴力であり、正当な競技成績の前提を欠くことにはなりません。

    高野連、及び駒大苫小牧高が、どのような判断をするのか、見守りたいと思います。

  • リフォーム業者に業務停止命令

    2005年07月20日

    経済産業省は、8月10日付で、住宅リフォーム販売事業者である西日本基礎株式会社に対し、特定商取引法違反で6ヶ月間の業務停止命令を出すとともに、都道府県等の関係機関による特定商取引法の執行を強化するため、通達改正を行いました。 経済産業省

    最近、高齢者を狙った悪質な住宅リフォーム会社の契約勧誘行為が社会問題化しており、この動きに対応したものだと思われます。

    訪問販売については、「特定商取引に関する法律」というものがあり、前記会社は、この法律に違反していると認定されています。違反が認定されたのは、以下のとおりです。

    ①不実告知(契約を必要とする事情に関する事項の説明で虚偽の説明を行うこと。)(特定商取引法6条1項6号)

    ②勧誘目的等不明示(訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って、業者の氏名、勧誘目的であること、提供する商品や役務、をそれぞれ明らかにしなければなりません。)(特定商取引法3条)

    ③迷惑勧誘(顧客に対し、迷惑をおぼえさせるような仕方で勧誘してはいけません。)(特定商取引法7条3号)

    上記会社は、「地盤沈下していますよ。このままでは来年になったら大変なことになりますよ。基礎工事をした方がいいですよ。」等と虚偽の説明をして①に違反し、「下水道の検査に来ました。」等と声をかけるだけで勧誘目的を明示しなかったことから②に違反し、何度も「工事はしません。」と断っている顧客に執拗に勧誘して③に違反しているとのことです。

    訪問販売では、当初顧客は、商品やサービスは不要と考えており、勧誘目的をはじめから明示してしまっては、ほとんど販売は成功しないでしょう。したがって、訪問販売では、ほとんどが②の勧誘目的は明示できないのが実情ではないでしょうか。

    上記知識を仕入れておいて、悪質訪問販売を撃退しましょう。