道路交通法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 2
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 飲酒運転の車に同乗した女子大生が詐欺被害に!?

    2016年01月06日

    飲酒運転が犯罪であることは誰でも知っていると思います。
    では、飲酒運転の車に乗せてもらった場合はどうでしょうか?

    今回は飲酒運転を悪用した詐欺事件について解説します。

    「元近大生ら、飲酒運転の車に同乗させ示談金詐取」(2016年1月5日 読売新聞)

    奈良県警は、飲酒運転の車に女子大生を同乗させて事故を起こしたと装い、示談金名目で現金を騙し取ったとして元近畿大生の男(20)など4人を詐欺容疑で逮捕しました。

    2015年9月、男とその共犯容疑者らは奈良市内の店で女子大生(21)と一緒に飲食。
    男が飲酒運転をして女子大生(21)を車で送る際、通行人役の男と接触事故を起こしたように偽装。
    「全員、飲酒運転の同罪だ。退学になるかもしれない」などと話し、女子大生から示談金として130万円を騙し取ったということです。

    同様の示談金の支払いを装う手口では、2015年9月~10月にかけて計6人から約370万円を騙し取った疑いがあり、他にも近畿大生を中心に十数件の被害があることから被害総額は1000万円を超えるとみて県警は調べを進めるとしています。

    別の報道では、4人の中には弁護士の息子役もいて、事故現場から父親に電話をして「同乗者も示談金を払わないといけない」と法律の確認をする芝居も打っていたようです。

    今回、注目したいのは、飲酒運転に同乗したことで退学になるかもしれない、というところが弱みになったということです。

    今回、容疑者らがお金をだまし取ることが成功したのは、犯罪に踏み込ませる⇒それを弱みとして騙す(脅す)⇒現金などの財産を出させる、という構図があるためです。

    では、この女子大生はどんな罪を犯していたのでしょうか?

    「道路交通法」
    第65条(酒気帯び運転等の禁止)
    1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
    2.何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
    3.何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
    4.何人も、車両の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。
    第4項に注目してください。
    「運転者が飲酒運転であることを知りながら車に同乗してはいけない」、とあります。

    報道内容からは女子大生が「飲酒運転同乗は罪」であることを知っていたのかどうかわかりませんが、今回の事件は罪を犯した弱みにつけ込んだ詐欺事件ということになります。

    ちなみに、飲酒運転には「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」があり、以下のような違いがあります。

    「酒酔い運転」
    ・アルコールの影響により車両等の正常な運転ができない状態での運転
    ・行政処分では違反点数35点、免許取り消し(欠格期間3年)
    ・酒酔い運転をした者の罰則は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
    ・運転者が酒酔い運転の場合の同乗者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される

    「酒気帯び運転」
    ・呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上0.25mg/l 未満
    ・行政処分では違反点数13点、免許停止期間90日
    ・酒気帯び運転をした者の罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
    ・運転者が酒気帯び転の場合の同乗者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処される

    飲酒運転同乗は罪の意識が低く、これが罪になることすら知らない人もいるかもしれません。

    しかし、酒酔い運転の同乗者は、「自分で酒気帯運転をした場合」と同じ重さの刑罰を受ける、ということです。

    また、酒酔い運転の同乗者は、公務執行妨害罪や業務妨害罪と同じ重さの刑罰となっています。

    飲酒運転の車に乗る、ということは、「飲酒運転を容認する」という態度ですから、厳しい処罰を受けることになるのです。

    仮に「一緒に公務執行妨害しようぜ!」とか「会社で暴れて業務妨害しようぜ!」とそそのかされたなら、それらは犯罪という意識から、なかなか罪を犯すことはないでしょう。

    しかし、飲酒運転の同乗者も同罪です。

    このことをしっかり認識しておく必要があります。

    飲んだら乗るな、助手席も! ということですね。

     

  • 過労運転をさせた社長が逮捕!?

    2015年10月17日

    ある運送会社の社長が、自らは運転していないのに道路交通法違反で逮捕されたようです。

    一体、どんな罪を犯したというのでしょうか?

    「過労運転黙認容疑で運送会社社長を逮捕 月400時間拘束続く」(2015年10月15日 産経新聞)

    兵庫県警交通捜査課などは、トラック運転手に長時間にわたる運転をさせたとして、同県加古川市の運送会社社長(67)を、道路交通法違反(過労運転の下命)容疑で逮捕しました。

    2014年11月、過労運転の恐れがあることを知りながら、トラック運転手の男性社員(60)に大阪市から広島県福山市までの運送を命じた容疑としています。

    事の発端は、県警が高速道路の路側帯に停車していた同社の運転手に事情を聞いたところ、「仮眠中だった」と話したことから、同社の運行業務の実態を捜査。
    そこで、過労運転が常態化していた疑いが強まったため、会社側の管理責任を問えると判断したようです。

    社長の男は、「過労とわかっていたが、会社の利益のために運転させた」と容疑を認めているということです。

    過去には、事故発生後に同容疑で立件したケースはありますが、事故が発生する前に適用する例は全国的にも珍しいとしています。
    【道路交通法違反“過労運転の下命”とは?】
    「道路交通法」は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的としています。(第1条)

    では、「過労運転の下命」とはどういうものでしょうか?
    関連する条文を見てみましょう。

    第66条(過労運転等の禁止)
    何人も、前条第1項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
    ※これに違反した場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第117条の2の2第7号)
    ※前条(第65条)第1項とは、酒気帯び運転の禁止です。
    ※薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転した場合は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第117条の2第3号)
    第75条(自動車の使用者の義務等)
    1.自動車の使用者(安全運転管理者等その他自動車の運行を直接管理する地位にある者を含む。)は、その者の業務に関し、自動車の運転者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることを命じ、又は自動車の運転者がこれらの行為をすることを容認してはならない。

    四 第66条の規定に違反して自動車を運転すること。
    運転者に十分な休養を与えずに、正常な運転ができない状態にも関わらず運転をさせたり、運転することを容認した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第117条の2の2第10号)
    つまり、第66条は運転者、第75条は使用者(事業者)に対する規定ということになります。

    ちなみに、使用者(事業者)は運転者に対して、制限速度を超えるスピードで運転させたり、飲酒運転を容認してもこの罪に問われることになるので注意が必要です。
    【過労運転の定義とは?】
    では、過労運転には一定の基準や定義があるのでしょうか?

    トラック運転者の労働条件の改善を図るために策定された、労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)では、次のように規定しています。

    ・1ヵ月の拘束時間は、原則として293時間が限度
    ・ただし、労使協定を締結した場合は、320時間まで延長できる
    ・1日の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長する場合は16時間が限度
    ・1日の休息時間は、継続8時間以上を与えなければならない
    ・1日の拘束時間が15時間を超える回数は、1週間に2回まで。
    ・1日の運転時間は、2日平均で1日あたり9時間が限度
    ・1週間の運転時間は、2週間ごとの平均で44時間が限度
    ・連続運転時間は、4時間が限度

    これらの「限度」を超えると過労運転になる可能性があります。

    過去の判例では、上記の基準も参考に過労運転にあたるかどうかが争われているので、ドライバーを管理する立場の人や会社の社長などは注意が必要です。
    ところで、警視庁が公表している「平成26年中の交通事故の発生状況」によると、交通事故の総件数から見れば少ないものの、過労運転が原因の交通事故は378件起きています。

    過労状態で自動車を運転して、集中力の低下や居眠り運転などによる交通事故を起こしてしまえば、大惨事になりかねません。

    使用者や管理者は法律を守って、ドライバーに十分な休息を与えなければいけません。
    また、ドライバー自身も無理をせず安全運転に努めて、事故や交通違反がないようにしてほしいと思います。

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  • 高速道路でやってはいけない12の違反行為

    2015年07月27日

    毎日、暑い日が続きます。
    夏本番、海に山にと遠出をする人も多いでしょう。

    そこで今回は、高速道路と法律に関する質問にお答えします。

    Q)現在、大学4年生です。最後の夏休み、友人と日本全国を旅する計画を進めています。そこで質問なのですが、高速道路でやってはいけない行為にはどんなものがあるのでしょうか? 知らずにやって、それが違反となったら嫌なので高速道路に関する法律を教えてください。

    A)高速道路上での主な交通違反について、以下に解説します。
    ①「速度超過違反」(第22条/第118条1項1号)
    高速道路では、特に指定がない場合の法定最高速度は100キロです。(自動車専用道路は60キロ)
    反則金が科せられる場合、反則金を納めれば刑事処分にはなりませんが、40キロ超過以上から刑事手続きとなり、6ヵ月以下の懲役又は10万円以下の罰金となります。

    違反点数:6点(40キロ以上)/12点(50キロ以上)
    反則金:9,000円~100,000円(普通車)
    刑事手続きの場合: 6ヵ月以下の懲役又は10万円以下の罰金
    ②「最低速度違反」(第75条の4/第120条1項12号)
    速度を落とす場合や危険を防止するためにやむを得ない場合を除いて、道路標識等で指定された最低速度、あるいは法定最低速度の50キロ以下で走行すると違反になります。

    違反点数:1点
    反則金:6,000円(普通車)・7,000円(大型車)
    刑事手続の場合:5万円以下の罰金
    ③「通行帯違反(追い越し車線だけを走行)」(第20条1項/第120条1項3号)

    道路の混み具合にかかわらず、本線車道の一番右側(追越車線)だけを走行し続けると違反になります。
    追い越し後は、もとの車線に戻らなければいけません。
    なお、追い越し車線だけを走行していると速度超過になりやすいので注意が必要です。

    違反点数:1点
    反則金:6,000円(普通車)・7,000円(大型車)
    刑事手続の場合:5万円以下の罰金
    ④「追い越し違反(先行車両の左側からの追い越し)」(第20条3項/第120条1項3号)

    先行車両を追い越すときは、右側を走行して追い越さなければいけません。
    高速道路を走行していると、車線変更して左側から追い越していく自動車がありますが、これは違反となります。

    違反点数:2点
    反則金:9,000円(普通車)・12,000円(大型車)
    刑事手続の場合:5万円以下の罰金
    ⑤「車間距離の不保持違反(あおり運転の禁止)」(第26条/第119条1項1号の4)

    同一の進路を進行している他の自動車の直後を進行するときは、その自動車が急停止したときでも追突を避けることができる車間距離をとらなければいけません。
    100キロ走行の場合、車間距離は100メートル取るのが理想的だといわれています。
    速度の遅い自動車を後ろからあおる運転手がいますが、これは違反行為ですし、重大な事故につながりかねないので十分に注意してください。

    違反点数:2点
    反則金:6,000円(普通車)・12,000円(大型車)
    刑事手続の場合:3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
    ⑥「通行区分違反(路肩走行禁止)」(第17条1項/第119条1項2号の2)

    道路の路側帯(路肩)は車道ではないので、故障や事故などでやむを得ず駐停車するとき以外は走行してはいけません。
    渋滞のときなど、路肩走行をする自動車を見かけることがありますが、これは違反行為です。
    イライラするからといって路肩を走らないようにしてください。

    違反点数:2点
    反則金:9,000円(普通車)・12,000円(大型車)
    刑事手続の場合:3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
    ⑦「車道での横断、転回、後退の禁止」(第75条の5/第119条1項2号の2)

    車道は一方通行なので横断、転回、後退はできません。
    ICの降り口を通り越してしまったために逆走して戻るなどという、とんでもないことをする人や、最近では高齢者ドライバーの逆走のニュースが増えていますが、これも非常に危険ですから絶対にやってはいけません。

    違反点数:2点
    反則金:9,000円(普通車)・12,000円(大型車)
    刑事手続の場合:3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
    ⑧「駐停車違反」(第75条の8第1項/第119条の2第1項2号)

    高速道路では、法令の規定や警察官の命令、または危険を防止するために一時停止するとき以外は駐停車が禁じられています。
    絶景ポイントで景色を見るために路肩に駐車、などということをしている人はいませんか?
    これも禁止行為ですから、やってはいけません。

    違反点数:2点
    反則金:7,000円(普通車)・15,000円(大型車)
    刑事手続の場合:15万円以下の罰金
    ⑨「故障車両表示義務違反」(第75条の11/第119条の2第1項2号)

    故障や、その他の理由でやむを得ず駐停車するときは、停止表示器材などで自動車が停止していることを表示しなければいけません。
    路肩に故障車を移動して表示器材を設置し、後続車に対する安全対策をとったら、運転者や同乗者は速やかに安全な場所に避難して警察が到着するのを待つようにしましょう。
    けっして、駐停車している車内に残ったり、その周囲に立っていたりしてはいけません。
    高速道路で事故を起こしたり、自動車が故障して車外に出たところを後続車にはねられるという死傷事故も起きていますから、十分注意してください。

    違反点数:1点
    反則金:6,000円(普通車)・7,000円(大型車)
    刑事手続の場合:2万円以下の罰金又は科料
    ⑩「高速道路での運転者の遵守事項違反」(第75条の10/第119条第1項12号の3)

    高速道路で自動車を運転するときは、運転者はあらかじめ、燃料、冷却水、原動機のオイルの量、貨物の積載の状態などを点検し、問題があれば防止策を講じなければいけません。

    違反点数:2点
    反則金:9,000円(普通車)・12,000円(大型車)
    刑事手続の場合:2万円以下の罰金又は科料
    その他にも次のような禁止事項があります。

    「合図義務違反」
    高速走行する際、事故なく安全運転するためには自分の意思を他車の運転者に示すことが大切です。

    「座席シートベルト装着違反」
    シートベルトは全座席で装着が義務付けられています。後部座席でシートベルトを装着しないと、運転者に違反点数1点が課されます。
    高速道路での事故は大惨事につながりかねない危険性があります。
    夏の楽しいレジャーを台無しにしないように、また事故を起こして他者を傷つけることのないように、定期的に休憩を取るなどして運転には十分注意して旅を楽しんでいただきたいと思います。

  • 持病で免取・免停された人が年間7711人!

    2015年07月21日

    病気のために自動車運転免許の取り消し、停止をされる人が年々増加しているようです。

    今回は、自動車運転と病気の関係について解説します。

    「持病で免停・取り消し7711件…法改正1年」(2015年7月16日 読売新聞)

    警察庁は、病気などを理由に運転免許の取り消し・停止などの行政処分を受けたケースが昨年6月からの1年間で7711件あり、前年同期の約2.5倍に上ったと発表しました。

    これは、てんかんなどの運転に支障を及ぼす可能性のある病状の申告を義務化した改正道交法が昨年6月に施行され、1年が経過した5月末時点での全国の状況を集計したもの。

    7711件の内訳は、最多が「てんかん」の2313件、次いで「認知症」の1165件、「統合失調症」は1006件、「再発性の失神」が926件など。

    処分内容は、免許の「取り消し」が4214件、「停止」が3461件で、免許取得時に保留されたケースなどが36件あったということです。
    2014年6月の改正道路交通法が成立したきっかけは、2011年4月に栃木県鹿沼市で起きた、てんかん発作で意識を失った運転者によるクレーン車暴走で小学生6人が死亡した交通事故でした。

    翌2012年4月、事故の遺族が運転免許制度の見直しなどを求める署名を警察庁に提出。
    また同月、京都市東山区の祇園で、てんかんの発作を起こした男の軽ワゴン車が暴走し、運転者を含む通行人ら8人が死亡、11人が重軽傷を負った事故が発生。

    5月、こうした事態を受けて、警察庁が運転免許を取得・更新する際の持病の申告を義務づけることなどを検討する有識者会議を設置して検討の上、道路交通法が改正され、2014年6月に施行されました。

    改正法で規定された「第90条」(免許の拒否等)に関する内容は以下の通りです。
    ・幻覚を伴う精神病や意識・運動障害をもたらす病気がある者には与えないか、6ヵ月を超えない範囲で免許を保留することができる。
    ・免許の取得・更新の際、「質問票」を各都道府県の公安委員会に提出し、病状を報告することを義務づける。
    ・質問内容は、運転に支障を及ぼしかねない病状などについて、「はい」か「いいえ」で答えるもの。
    過去5年以内に、「病気で意識を失ったことがあるか」、「体を思い通りに動かせなくなったか」、「十分な睡眠時間を取ったのに日中、眠り込んだ経験があるか」、「アルコールへの依存性」、「医師による運転中止の助言の有無」など5項目。
    ・具体的な病気は、一部のてんかん、統合失調症、睡眠障害、認知症、アルコール・薬物中毒など。
    ・医師の診断の必要ありと判断された場合、主治医または専門医の診断書を提出。運転に支障ありと判断されれば、免許の取り消しや停止の処分。
    ・虚偽申告した場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金
    ところで、てんかんなどの政令で定める病気の人の運転は、道路交通法だけでなく「自動車運転死傷行為処罰法」にも関わってきます。

    「自動車運転死傷行為処罰法」
    第3条(危険運転致死傷)
    1.アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する。
    2.自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
    政令で定める「特定の病気」には以下のものがあります。
    1.統合失調症
    2.てんかん
    3.再発性の失神
    4.低血糖症
    5.そう鬱病
    6.重度の睡眠障害
    詳しい解説はこちら⇒
    「自動車運転死傷行為処罰法:病気の影響による“危険運転致傷”が初適用!」
    https://taniharamakoto.com/archives/1520

    ただ、これらの病気の人が自動車事故を起こしたからといって、すべてで罪が成立するわけではなく、「過失」なのか「故意」なのかが問題になってくるので注意が必要です。

    「自動車運転死傷行為処罰法」の
    詳しい解説はこちら⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236
    生活の足として、もしくは仕事での使用など自動車は便利なものですが、
    いずれにせよ、上記の病気の人や自覚症状のある人は医師の診断を受けて自分が運転できる状態なのかどうか判断しなければいけません。

    今回、発表された統計では本人や家族から警察へ相談した件数は7万744件で前年同期の約1.3倍だったようです。
    家族など周囲の人が注意深く見守り、問題がありそうなら本人に忠告する、診察を勧めるなどのケアも必要でしょう。

    持病による事故は重大な結果を引き起こす可能性が高いものです。
    本人も周囲の人も十分注意してください。

  • 自転車の飲酒運転で車の免許が免停に!?

    2015年07月02日

    酒に酔って自転車に乗った男性が免停になったようです。

    もちろん、自転車の免許じゃありませんよ、自動車免許です。
    一体、どういうことでしょうか?

    「自転車の飲酒事故で免停=自動車運転も危険と判断-都公安委」(2015年6月25日 時事ドットコム)

    東京都公安委員会は、自転車の飲酒運転でバイクと衝突し、バイクの男性を死亡させたとして重過失致死容疑で書類送検されたアルバイト男性(30)について、道路交通法に基づき運転免許を180日間停止する処分にしました。

    事故が起きたのは、2015年1月22日午前0時50分頃。
    現場は、杉並区上高井戸の甲州街道。

    酒を飲んで自転車を運転して斜め横断した男性が、走行してきたバイクと衝突。
    バイクを運転していた男性(36)を転倒させ、死亡させたということです。

    警視庁は6月1日に書類送検していましたが、都公安委員会と警視庁は飲酒自転車運転の悪質性と、被害者が死亡したという結果の重大性を考慮し、「自動車の運転でも事故を起こす恐れがある」と判断したようです。

    自転車の危険運転を理由に、自動車運転免許の停止処分が出されるのは警視庁で2例目だということです。
    自転車の飲酒運転で、自動車免許を停止されるとは大袈裟じゃないかと思う人もいるかもしれませんが、これは法律で規定されています。

    まず、自転車であっても飲酒運転は道路交通法違反となります。

    「道路交通法」
    第65条(酒気帯び運転等の禁止)
    1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
    第117条の2
    次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

    1.第65条第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。)にあったもの。
    詳しい解説はこちら⇒「自転車でも飲酒運転は禁止です」
    https://taniharamakoto.com/archives/1961

    次に、免許停止に関する条文を見てみましょう。

    第103条(免許の取消し、停止等)
    1.免許(仮免許を除く)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。(以下、省略)
    次にあげる人や行為などが対象となります。

    ・幻覚の症状を伴う精神病(政令で定めるもの)
    ・発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気(政令で定めるもの)
    ・上記以外で自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
    ・認知症
    ・目が見えないこと、その他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として政令で定めるものが生じている者
    ・アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
    ・重大違反唆し等をしたとき(飲酒運転や救護義務違反、共同危険行為などの重大違反行為を、そそのかしてやらせること)
    ・道路外致死傷をしたとき(道路外とは、工場の構内や港湾内の埠頭、駐車場などの場所をいう)
    ・運転が、著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき
    など。

    今回は、報道からは、詳しくわかりませんが、「運転が、著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき」を適用したのでしょうか。
    近年、自転車の危険・悪質運転への罰則が厳しくなっています。

    2014年9月には、兵庫県西宮市で自転車に乗って歩行者に衝突して、そのまま立ち去ったとして市職員の男性が180日間の自動車免許停止処分を受けています。

    また、愛知県警は2015年6月1日から、自転車の飲酒運転をした人で自動車免許を持っている場合は、30~180日の期間の範囲で免許停止とするルールを運用していくとしています。

    自転車も免許制にするべきだという人もいますが、それはともかく、安易な気持ちで自転車に乗ることが重大事故を引き起こす原因にもなることは確かですから、くれぐれも用心して自転車に乗ってほしいと思います。

  • 自転車でも飲酒運転は禁止です

    2015年06月05日

    仕事帰りに一杯飲んで、ほろ酔いで駅から自転車に乗って家に帰っただけ…では済まない時代になったようです。

    「自転車を酒酔い運転、道交法違反容疑で書類送検」(2015年6月2日 読売新聞)

    京都府警中京署は、酒に酔って自転車に乗ったなどとして、京都市中京区のホテル従業員の男(52)を道路交通法違反の容疑で書類送検しました。

    男は3月31日夜、同区の市道で酒に酔った状態で自転車を走らせたところ、女性(35)が乗る自転車と接触したことで飲酒運転が発覚。
    女性にケガはなかったようですが、付近の防犯カメラには男が蛇行運転する姿が映っており、調べに対して「自宅で飲酒後、飲食店で焼酎を飲んだ」と供述しているとのことです。

    府警が統計を取り始めた2010年以降、自転車の酒酔い運転の摘発は初めてのことで、同署は起訴を求める「厳重処分」の意見をつけたということです。
    自転車の飲酒運転が犯罪!? と思った人もいるかもしれませんが、じつは「道路交通法」にはしっかりと規定されています。

    「道路交通法」
    第65条(酒気帯び運転等の禁止)
    1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
    第117条の2
    次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

    1.第65条第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。)にあったもの。
    道路交通法では、自転車は「軽車両」という車両の一種であるため、65条が適用されるわけです。

    たかが自転車、では済まされないということです。

    ところで6月1日に、「改正道路交通法」が施行されました。

    これは、重大な事故につながりかねない自転車による「危険行為」を繰り返した運転者に安全講習の受講を義務づけるもので、これまで自転車の悪質運転が問題視されてきたことから改正されたものです。

    詳しい解説はこちら⇒「自転車の危険運転に安全講習義務づけに」
    https://taniharamakoto.com/archives/1854

    改正法では、次の14の項目を危険行為に規定しています。
    ・信号無視
    ・酒酔い運転
    ・通行禁止違反
    ・歩行者専用道路での徐行違反
    ・一時停止違反
    ・通行区分違反
    ・歩道での歩行者妨害
    ・路側帯の歩行者妨害
    ・交差点での右折車優先妨害
    ・遮断機が下りた踏切への立ち入り
    ・交差点での優先道路通行車の妨害
    ・環状交差点での安全進行義務違反
    ・ブレーキなし自転車の運転
    ・携帯電話を使用しながら運転するなどの安全運転義務違反

    これらの危険行為をした14歳以上の運転者は、まず警察官から指導・警告を受け、交通違反切符を交付されますが、3年以内に2回以上の交付で安全講習の対象となり、受講しないと5万円以下の罰金が科せられることになります。

    今回の事案については、発生したのは3月ですが、飲酒運転に蛇行運転で、さらに相手にぶつかっていることで悪質であることと、改正道路交通法が施行されたこともあって、京都府警初の飲酒自転車運転の摘発になったということでしょう。

    さて、14の危険行為…どうでしょう、バレなければ平気と思ってやっている人、違反だと知らずにやっている人さまざまいると思いますが、この機会に交通ルールと法律を学んで違反のないように自転車を利用してください。

    仮に、今回のように書類送検の後に起訴され、有罪判決となれば前科一犯となってしまいます。

    今後は、仕事帰りにお酒を飲んで帰るときなど十分注意していただきたいと思います。

  • 運転中の携帯電話で逮捕ですかっ!?

    2015年05月09日

    世の中、便利になるのはいいことですが、そのうち便利さゆえの問題が生じて、結局は法律で取り締まらなければならなくなる…そんな残念なことが社会のさまざまな場面で見受けられます。

    携帯電話やスマホもそうですね。
    広く普及している現在では、その使い方やシチュエーションで問題が起きることがあります。

    そこで今回は、携帯電話を使いながらやってしまったことで逮捕された、という事件を解説します。
    一体、何をしてしまったのでしょうか?

    「運転中に携帯電話容疑 反則金未納で女逮捕/浦和署」(2015年5月7日 埼玉新聞)

    埼玉県警運転管理課と浦和署は、道交法違反(携帯電話使用等)の疑いで、越谷市の女(40)を逮捕しました。

    そもそもは2012年9月、さいたま市の県道で携帯電話の画面を注視しながら自動車運転をしていたことによる違反なのですが、女は反則金を支払わず、同署が通知書を郵送するなど複数回出頭を要請していたにもかかわらず、応じなかったということで今回の逮捕となったようです。

    容疑者の女は、「収入がなくて納付できなかった」と供述しているということです。

    収入がなくても、3年近くも自動車には乗ることができたということでしょうか?
    ガソリン代は、どうしていたのでしょうか?

    それはさておき、早速、条文を見てみましょう。

    「道路交通法」
    第71条5の5(運転者の遵守事項)
    自動車又は原動機付自転車を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。
    これに違反し、道路における交通の危険を生じさせた者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処されます。(第119条9の3)

    念のため、ここで禁止されているのは手を使って送受信する無線通話装置(携帯電話等)であり、傷病者の救護や公共の安全の維持のため走行中に緊急で、やむを得ずに使う場合は除外されていることは覚えておいてください。

    ところで、「携帯電話を使いながら自動車運転しただけで逮捕とはおおげさじゃないか?」

    と思った人もいるかもしれませんが、通常は、いきなり逮捕とはなりません。

    今回のように出頭要請を無視し続けていると逮捕ということになります。

    また、仮に罰金を支払えない場合は、金額分の労役を日数で科されますから注意が必要です。
    たとえば、5万円の罰金なら拘置所で10日間の労役というのが通常です。

    ともかく、警察から被疑者として出頭要請された場合は、素直に出頭しなければならないということです。

    ちなみに、これは自転車の場合でも同じです。

    道路交通法第71条6号に基づき、各自治体が「道路交通規則」を定めていますが、ちなみに、東京都道路交通規則では、携帯電話・メールをしながらの運転が禁止されています。

    違反した場合は5万円以下の罰金です。

    とにかく、便利だからといって携帯電話やスマホを使いながらの自動車運転は、たとえ交通違反の点数は2点だとしても大変危険ですし、法律で禁止されているわけですから、やってはいけません。

    「注意一秒、ケガ一生」の標語は自分のためだけではありません、周りの人のためでもあります。

    肝に銘じておきましょう。

  • 大人も子供も知っておきたい!自転車法律ルール25

    2015年03月27日

    あとから振り返ってみると、どうやってできるようになったのか?
    思い出せないことがあります。

    自転車の乗り方も、そのひとつかもしれません。
    親や兄弟、友人から教えてもらった人もいるでしょうし、誰からも教えてもらうことなく、ある日突然乗れるようになったという人もいるでしょう。

    私も子供の頃のことなのでよく覚えていませんが、乗れるようになったときはうれしくて、夢中でペダルを漕いだことは今でも覚えています。

    ところで、自転車の乗り方を教えてもらったことのある人はいても、道路を走るときの自転車のルールについて教えてもらったことのある人は、あまりいないのではないでしょうか?

    自動車の免許を取得するために、教習所に行ったときに初めて道路交通法の規則を知ったという人も多いかもしれません。

    今回は、そんな状況にふと疑問を感じた、小学生のお子さんのいる読者の方からの質問にお答えします。

    Q:9歳の息子がいます。だんだん、やんちゃになって危ないことに面白味を感じることも多くなってきたようです。ところで今、親として心配なのは交通事故についてです。息子は自転車が好きで、よく外出するのですが、見ていると危なっかしいのです。事故が起きる前に交通ルールを教えることは大切だと思っています。でも、交通ルールを教える授業などありませんから親が教えるしかありません。子供に教えるべき自転車のルールを教えてください。

    A:まずは、「道路交通法」について学ぶ必要があります。しかし、1~132条まであるので、ここでは自転車に関する部分を中心に解説していきます。
    【道路交通法とは?】
    道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的としたものです。(第1条)

    1960(昭和35)年に、それまであった「道路交通取締法」が廃止されて道路交通法が施行されました。

    その後、1978年に自動二輪者のヘルメット着用義務化、1992年に運転席と助手席のシートベルト義務化(一般自動車道)、1999年に運転中の携帯電話の使用禁止、2000年に6歳未満の幼児に対するチャイルドシート義務化などが行われ、その他、飲酒運転やひき逃げなどの罰則強化等を経て、現在に至ります。
    【自転車とは】
    ・道路交通法上、自転車は車両の一種である「軽車両」です。
    ・ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車であって、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものです。
    ・車体の長さは190センチ以内、幅は60センチ以内。(内閣府令)
    ・ブレーキが、走行中容易に操作できる位置にあること、など。
    ・一般の自転車の乗車人員は、16歳以上の運転者の場合、幼児用座席を設けた自転車に6歳未満の幼児を1人に限り乗車させることができます。
    【自転車で禁止されている行為とは】
    先月、2015年6月施行に向けた新たな「改正道路交通法」の施行令が閣議決定されました。

    詳しい解説はこちら⇒
    「自転車の危険運転に安全講習義務づけに」
    https://taniharamakoto.com/archives/1854

    この施行令は、自転車運転による違反の取り締まり強化と事故抑制を目指して、悪質な自転車運転者に対して安全講習の義務化を盛り込んだものですが、この中で自転車の悪質運転・危険行為について14項目を規定しています。

    では、この14項目を中心に、大人から子供まで自転車に関する「してはいけないこと」を罰則が重い順に解説していきます。
    <5年以下の懲役又は100万円以下の罰金>(第117条の2第1号)
    〇酒酔い運転(第65条)
    ※もちろん子供はお酒を飲んではいけませんが、大人も自動車と同様に飲酒運転は違反行為です。
    <1年以上の懲役又は30万円以下の罰金>
    〇徹夜や過労などで自転車に乗ってフラフラと走行する(第66条)
    <3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金>
    〇信号無視(第7条)

    〇通行禁止道路の走行(第8条)
    ※道路標識等によって禁止されている道路や場所は通行してはいけません。

    〇右側通行(第17条の2)
    ※自転車は、道路の左側に設けられた路側帯を通行しなければいけません。

    〇遮断機が下りた踏切への立ち入り(第33条2項)

    〇交差点での優先道路通行車の妨害(第38条2項)

    ※交差道路が優先道路の場合、通行する車の妨害をしてはいけません。

    〇横断歩道での歩行者優先(第38条1項)
    ※横断歩道で歩行者がいる時は、その直前で一時停止して、歩行を妨げてはいけません。

    〇歩道での歩行者妨害(第63条の4の2項)

    〇一時停止違反(第43条)
    ※道路標識のある場所では一時停止しなければいけません。

    〇整備不良車の運転(第62条)
    ※壊れているなどの整備不良自転車を運転してはいけません。

    〇環状交差点での安全進行義務違反(第37条の2)
    <5万円以下の罰金>
    〇無灯火運転(第52条)
    ※夜間(日没から日出まで)は灯火して運転しなければいけません。

    〇ブレーキなし、もしくは故障したままでの自転車運転(第63条の9)

    詳しい解説はこちら⇒
    「こんなことで逮捕とは…ブレーキなし自転車(ピスト)で全国初逮捕」
    https://taniharamakoto.com/archives/1208
    <2万円以下の罰金又は科料>
    〇路側帯の歩行者妨害(第17条2項)
    ※路側帯では歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければいけません。

    〇並走の禁止(第19条)(第68条)

    〇歩道での徐行違反(第63条の4の2項)

    〇2人乗り運転(第55条)
    ※ただし、16歳以上の運転者が安全基準を満たした幼児2人同乗用自転車を運転する場合は、その幼児用座席に幼児2人を乗車させることができます。

    〇ベルを鳴らしながら走って歩行者を退かせようとする行為(第54条2項)
    ※むやみに警報器を鳴らしてはいけません。
    なお、道路交通法第71条6号に基づく各自治体の「道路交通規則」では、次の行為が禁止されています。(ここでは東京都道路交通規則から抜粋)
    違反した場合は5万円以下の罰金です。

    〇傘をさしての片手運転
    〇携帯電話・メールをしながらの運転
    〇ペットを連れての運転
    〇イヤホンをつけたままでの運転
    〇警音器の整備されていない自転車の運転
    いかがだったでしょうか?
    今回は、25個を紹介したので一度に覚えるのは大変かもしれませんね。

    しかし、自転車に関する交通規則や法律は、自分の身を守るためにも、人を傷つけないためにも大切です。

    この機会にぜひ、大人も子供もしっかり交通規則と法律を覚えて、自転車ライフを楽しんでほしいと思います。

  • 自転車の危険運転に安全講習義務づけに

    2015年01月28日

    普段、何気なく気軽に乗っている自転車ですが、近年、自転車運転に関する重大な事故が問題になっています。

    そうした実態を受けて、政府は今年6月の施行に向けた新たな「改正道路交通法」の施行令を閣議決定しました。
    違反者に対して厳しい規定になるようです。

    「酒酔い、信号無視、携帯使用運転… 悪質自転車にブレーキ」(2015年1月20日 東京新聞)

    自転車運転による違反の取り締まり強化と事故抑制を目指して、悪質な自転車運転者に対して安全講習の義務化を盛り込んだ改正道路交通法の施行令が閣議決定されました。

    施行令では、酒酔い運転や信号無視など計14項目の悪質運転を危険行為と規定。

    危険行為をした運転者はまず、警察官から指導・警告を受け、従わない場合には、交通違反切符を交付されるが、3年以内に2回以上の交付で講習の対象となり、受講しないと5万円以下の罰金が科せられることになるようです。
    なお、講習は3時間で内容や方法は施行までに決めるとしています。

    所管する警察庁によると、全国での対象者は年間数百人になる見通しだということです。
    2013年6月に成立した改正道路交通法で、都道府県の公安委員会は危険行為を繰り返した運転者に対して、講習の受講を命じることができるようになったことで、警察庁は危険行為の具体的な中身や対象者、開始時期を検討していたようですね。

    自転車での危険行為に規定されているのは以下の14の行為です(道路交通法施行令41条の3)。

    ・信号無視(法7条)

    ・遮断機が下りた踏切への立ち入り(法33条2項)

    ・安全運転義務違反(携帯電話の使用やイヤホンを装着しながらの運転、傘差し運転など)(法70条)

    ・一時停止違反(法43条)

    ・ブレーキ不良自転車の運転(法63条の9第1項)

    ・酒酔い運転(法65条1項)

    ・歩道での歩行者妨害(法63条の4第2項)

    ・通行区分違反(法17条1項、4項または6項)

    ・通行禁止違反(法8条1項)

    ・歩行者専用道路での車両の徐行違反(法9条)

    ・路側帯の歩行者通行妨害(法17条の2第2項)

    ・交差点での安全進行義務違反(法36条)

    ・交差点での優先道路通行車の妨害(法37条)

    ・環状交差点での安全進行義務違反(法37条の2)

    これらの行為が違反だということ知っている人も、知らない人もいるでしょうが、どれも重大事故につながる危険性のある行為だということは、しっかり認識してほしいと思います。

    ところで、警察庁の統計によれば、平成25年度の交通事故件数は573,465件で、そのうち自転車の事故は121,040件。
    死亡者数は、4,373人のうち自転車によるものは603人です。

    詳しく見ていくと、自転車事故の類型でもっとも多いのが、車両同士の出会いがしらの衝突で約64,000件、以下、左折時の衝突と右折時の衝突が、それぞれ約15,000件となっています。

    警察庁が平成24年に公表した「自転車の交通事故の実態と自転車の交通ルールの徹底方策の現状」によれば、自転車運転の交通違反による検挙数は平成16年の85件から、平成23年には約7倍の3,956件に急増。
    もっとも多い違反は、平成23年では制動装置不良自転車運転で1,277件、次いで遮断踏切立ち入り、信号無視となっていて、自転車乗用中の死傷者のじつに3分の2が何らかの法令違反をしていたということです。

    交通事故全体の2割以上が自転車による事故という状況は改善していかなければならない問題でしょう。

    また、自転車事故による高額賠償金の問題も忘れてはいけません。

    自転車による死亡事故については以前、解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒
    「自転車での死亡事故が多発中!損害賠償金は一体いくら?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1648

    死亡事故では、9,000万円以上の高額賠償金が認められたケースもあります。

    自転車の事故で9,000万円とは高すぎる! と思う人もいるかもしれませんが、被害者や家族にとっては人生を狂わされた慰謝料や今後働いて得られたはずの収入もあります。
    寝たきりであれば、生涯にわたる介護費用の負担が莫大なものになることを考えれば、けっして高すぎる金額ではないことがわかるでしょう。

    こうした問題に対処するためには、保険制度の整備も急務です。

    自転車には、自動車の自賠責保険のような強制保険制度がないため、任意の自転車保険に加入するか、火災保険や自動車保険、傷害保険の「個人賠償責任補償」の特約をつけるなどして、個人で自衛することも大切です。

    自転車は、大人から子供まで楽しめて、便利だからといって、ルールを無視していいわけではありません。
    ましてや、人を傷つけてしまうことがあれば、被害者も加害者も双方の人生が台無しになってしまいます。

    取り返しがつかないことになる前に、まずは子供から大人まで、自転車の交通法規をしっかり学んで実践していくという自覚が望まれます。

  • アイドルたちが書類送検!路上ライブは犯罪!?

    2014年10月13日

    1957年に出版された、アメリカ人作家ジャック・ケルアックの小説『路上』(原題:On the Road)は、ヒッピーたちから熱狂的に支持され、音楽や文学など、いわゆるカウンターカルチャーに大きな影響を与えたといわれています。

    主人公たちがアメリカ大陸を自由に放浪する様子は、当時の若者たちのあこがれでもあったのでしょう。

    路上が若者文化の発信場所のひとつなのは古今東西変わらず、日本でも1980年代初頭、原宿の歩行者天国(ホコ天)で「竹の子族」と呼ばれる若者たちが派手な衣装に身を包みステップを踏んで踊ることが大きなブームになりました。

    現代の日本でも、駅前や公園などで路上パフォーマンスをする若者たちがいますね。
    売れないアーティストやアイドルたちの中には、お金をかけずに自分たちのパフォーマンスを見てもらう手段ということで、路上ライブを積極的に行う人たちもいます。

    ところで先日、そんな路上ライブで10人が書類送検されるという事件が起きました。

    一体、彼らはどんな犯罪行為をしてしまったのでしょうか?

    「新宿駅前で無許可ライブ容疑、アイドルら10人書類送検」(2014年10月8日 朝日新聞デジタル)

    警視庁新宿署は8日、新宿駅前の路上でライブを無許可で行ったとして、関西を拠点とする女性アイドルグループの18歳~26歳のメンバー7人と、ものまねタレントの男2人、グループの責任者の男(24)の計10人を道路交通法違反(道路の不正使用)の疑いで書類送検しました。

    報道によると、このアイドルグループはこれまでにも9回、無許可でライブを開いて客を集め、CDを販売するなどして道路を不正に使用した疑いがあり、新宿署はライブの度に注意し、グループは2度と行わないとする誓約書を毎回書いていたとしています。

    今年に入り、新宿駅周辺での路上ライブに関する苦情が545件寄せられていることから、同署は取り締まりを強化したようです。
    さて、道路と交通に関する法律に「道路交通法」があります。

    1960年に施行された同法は、第1条に次のように規定しています。

    「道路交通法」
    第1条(目的)
    この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。
    今回の違反容疑は、道路の不正使用です。条文を見てみましょう。

    第77条(道路の使用の許可)
    1.次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長の許可を受けなければならない。
    警察署長の許可が必要な行為には以下のようなものがあります。

    〇道路での工事や作業
    〇道路での石碑や銅像、広告などの設置
    〇道路での露店や屋台などの出店
    〇一般交通に著しい影響を及ぼすような使用行為(祭礼行事、ロケーシヨン等)
    〇道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為

    これらに違反した者は、3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金です。

    また、各都道府県には「道路交通規則」というものがあります。
    東京都の道路交通規則にも許可が必要な行為が細かく定められています。

    〇祭礼行事、記念行事、式典、競技会、仮装行列、パレード、街頭行進など
    〇旗、のぼり、看板、あんどんなどを持って楽器を鳴らし、又は特異な装いをして、広告又は宣伝をすること
    〇車両等に広告又は宣伝のため著しく人目をひくように、装飾その他の装いをして通行すること
    〇ロケーション、撮影会その他これらに類する行為
    〇拡声器、ラジオ、テレビ、映写機等を備え付けた車両等により、放送又は映写をすること
    〇演説、演芸、奏楽、放送、映写その他の方法により、道路に人寄せをすること
    〇消防、水防、避難、救護その他の訓練を行なうこと
    〇交通の頻繁な道路で寄附を募集し、若しくは署名を求め、又は物を販売若しくは交付すること
    〇ロボットの移動を伴う実証実験又は人の移動の用に供するロボットの実証実験をすること

    路上ライブやパフォーマンスは、許可を取っていなければ犯罪になる可能性があるということです。

    ちなみに以前、道路でやってはいけない行為について解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒「走行中の車からポイ捨てすると犯罪!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1323

    若さと、その情熱から自己表現をしたい気持ちはよくわかります。

    警察も、そのためにいきなり逮捕するのではなく、9回も注意し、反省を促してきていました。

    日本は法治国家です。

    売れるようになりたい気持ちはわかりますが、あくまで法律の範囲内で工夫し、努力をしていかなければなりません。