損害賠償金と消費税 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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損害賠償金と消費税

2022年02月17日

今回は、【税理士を守る会】でされた質疑応答をご紹介します。

(質問)

顧問先の社員が独立し、顧問先の顧客を奪取したことから、損害賠償を請求し、違約金を受け取りました。

そこで、この違約金が消費税基本通達5-2-5(損害賠償金)
「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に
伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しない」

に該当するかあるいは、

「但し、(2) 無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無
体財産権の権利者が収受する損害賠償金」は資産の譲渡等の対価に該当する

になるか、悩んでおります。

見解をお教えください。

(回答)

通達にいう「無体財産権」の侵害に該当するかどうかは別として、資産の譲渡等の対価に該当すると考えます。

「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しない」とされている趣旨は、当該損害により、心身又は資産につきマイナスが生じ、損害賠償金を受領することにより従前の状態に戻るだけであって、「担税力」が生じない、というところにあると解されます。

そうだとすると、損害賠償金であっても、本来売上や収入に替わるものであって、担税力を生ずるものであれば、資産の譲渡等の対価と解すべきとなります。

この観点から、5-2-5(1)は、棚卸資産等を譲渡したと同様の経済効果が生じているのであり、(2)は、本来「特許権利用料」など売上又は収入に替わるものであり、(3)も本来引き渡しを受けていれば売上又は収入に算入すべき賃料に替わるもの、ということになります。

今回は、顧客奪取の違約金ということなので、本来であれば、被害事務所の売上又は収入になるべきものがなくなったことによる損害が填補された(売上又は収入が違約金に替わった)、ということになるので、担税力が生じ、資産の譲渡等の対価に該当することになる、と考えます。

通達に当てはめるとすると、無体財産権を知的財産権に限らない、とするならば、「営業権という無体財産権を侵害された」と言えるかもしれません。

「税理士を守る会」は、こちら
https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/