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柔道大会の事故で1億2000万円の賠償命令

 >柔道大会の事故で1億2000万円の賠償命令

2017年4月27日

6年前、高校で行なわれた柔道大会で重傷を負った男性と両親が、県に
対して損害賠償を求めた訴訟の判決が出たようです。

「校内の柔道大会で後遺症 福岡県に1億2千万円賠償命令」(2017年4月24日 朝日新聞デジタル)

事故が起きたのは2011年3月、福岡県の県立高校で開かれた武道大会のクラス対抗柔道の試合中のことでした。

男性は同級生と対戦中に転倒。
畳に頭部を打ちつけた際、頚髄損傷のケガを負い、四肢麻痺などの重度の後遺障害が残ったということです。

福岡地裁での判決の概要は次の通りです。

・前年度の大会でも骨折など2件の事故があったのに、原因分析や予防策を協議した形跡がない。
・生徒らの歓声で盛り上がり、冷静さを欠く試合になって事故が起きる可能性があった。
・大会固有の危険性を十分に説明し、指導したとは認められない。
・県は、事故を未然に防止する注意義務に違反した。

以上のことから、県の過失を認め、計約1億2400万円の支払いを命じています。
【柔道では重傷事故になるケースが多い】
日本スポーツ振興センターが公表している災害共済給付のデータ(平成10~平成21年度の集計)によると、中学や高校での体育の授業における死亡・重度の障害事故の発生件数の上位は、陸上競技(87人)、水泳(24人)、バスケットボール(17人)となっています。
柔道は9人となっており、体育の授業での安全管理については一定の成果が出ていると考えられます。

しかし、部活動での死亡・重度の障害事故の発生件数を見てみると、柔道(50人)、野球(35人)、バスケットボール(33人)となっており、やはり武道である柔道で重大事故が起きる確率が高いことがわかります。

柔道における学校事故では、初心者が中上級者に投げられ、受け身を取ることができずに頭部に重傷を負うケースが多いのですが、今回の事故のように頸部に外傷を負って重大な後遺障害が残ってしまうことも多いようです。

報道内容からだけでは詳細はわかりませんが、今回の事例では、毎年この高校の武道大会は選手も応援する生徒も大変に盛り上がるもので、異様な熱気の中で学校側が安全配慮や注意義務を怠ったと判断されたものと思われます。
【被害者本人や親は損害賠償請求をすることができる】
学校の管理下、たとえば授業中や部活動中、または課外授業中、休憩時間(始業前、放課後を含む)、通学中における子供の事故では、通常は学校が加入している日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(医療費、障害・死亡見舞金)が支払われます。

しかし、今回の事故のように子供が重度の後遺障害を負ったり、死亡した場合は、災害共済給付金だけでは損害賠償金額すべてを賄えないことが多いものです。

そうした場合、被害者本人や両親は損害賠償請求をすることができます。

その相手は、民間の学校の場合は教員個人や学校になり、国公立校の場合は国や地方自治体になります。

担当教員に「注意義務違反」があった場合は、教員個人には不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
同時に、担当教員が所属する学校には、使用者として使用者責任に基づく損害賠償責任が発生します。

「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
さらに、学校は生徒に対して安全配慮義務を負担していたと考えられることから、債務不履行に基づく損害賠償責任が発生する可能性もあります。

一方、前述したように国公立校での事故の場合は、被害者本人や両親は国や地方自治体に対して損害賠償請求をすることができます。

「国家賠償法」
第1条
1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

今回の事故は、学校の武道大会におけるクラス対抗柔道の際に起きたものです。

心身の健全な発達をはかる等の学校教育における体育的行事を行う際には、教師や学校には生徒の安全に配慮する義務があります。

運動会での事故の事案について、「事前に十分に計画を練り、運営方法を検討する等の義務、競技内容、生徒の能力に応じて、生徒に対し指導、監督、注意する義務、運動会に伴う事故を回避するため、一定の場合には生徒の動静を監視して、行事の進行状況等を把握し、危険な状態が発現すれば直ちに対応できるようにしておくべき義務がある」とされています(福岡地裁平成11年9月2日)。

そして、柔道は、「武道」であり、身体接触を伴うものですから、それ自体すでに生徒の生命身体に危険がおよぶことが予見されるものです。

より一層の注意が求められると言えます。

今回の判決は、そのような注意義務に違反した、と人知恵したものと思われます。
学校事故で子供が死亡した場合や、重大な後遺障害を負った場合は、まずは示談交渉になりますが、これが決裂した場合は訴訟の提起をして裁判になってしまいます。

いずれにしても、法的な手続きは複雑で大変に難しいものですから、弁護士に相談をすることをお勧めします。
そして、あきらめずに、どのように交渉や裁判を進めていくのかを検討していくのがよいと思います。

ご相談はこちらから⇒「弁護士による学校事故SOS」
http://www.bengoshi-sos.com/school/

部活動で大けがを。教師と学校の賠償責任は?

 >部活動で大けがを。教師と学校の賠償責任は?

2017年2月16日

高校の部活動で負ったケガに対する損害賠償請求訴訟で、裁判所が学校法人に対して損害賠償金の支払いを命じる判決があったので解説します。

「部活事故 清風学園に賠償命令 顧問の安全配慮違反認める」(2017年2月15日 毎日新聞)

大阪市天王寺区にある私立清風高校に在学中、日本拳法部の練習で大ケガをした元部員の男性(19)と両親が高校を運営する学校法人「清風学園」に対し、計約770万円の賠償を求めた訴訟の判決が大阪地裁でありました。

原告の主張は、ケガをしたのは当時の顧問が適切な指導を怠ったため、というものです。

事故から裁判までの経緯は次の通りです。

事故が起きたのは、2013年7月。
当時1年生だった被害者男性は初心者として日本拳法部に入部。
2ヵ月後、有段者の部員と組み手の練習中に左脚をつかまれて転倒。
顧問は2人から離れた場所にいたという。

帰宅後、容体が急変し、病院に搬送されたところ、後頭部に急性硬膜下血腫が発症しているとの診断。
その後、4度の手術を受け、男性は一命を取り留めた。

判決は次の通りです。

・初心者が上級者と組み手練習を行う場合は、顧問はできる限りそばに付き添って指導し、危険な技を止める安全配慮義務があった。

・顧問が普段から上級者に手加減するよう指導していた点は認めるが、注意喚起が不十分で指導を徹底していなかった。

・そのうえで、「事故を予見できなかった」とする学校側の主張を退け、学校側に計約250万円の損害賠償金の支払いを命じた。
この高校の日本拳法部は2012年の全国大会の団体戦で3位にもなった強豪のようですが、中学校や高校の部活動においては行き過ぎた指導や安全配慮義務を怠ったことによる死亡事故や重傷事故が後を絶ちません。

では万が一、子供が部活動で大ケガを負った場合、法的にはどのような部分が争点になるのでしょうか?
【刑事事件の場合】
まず、生徒の死亡や重傷事故について刑事事件としては、部活動は学校の活動であり、担当教員や顧問の指導下にあるわけなので、故意または過失があった場合、学校長や担当教員は「業務上過失致死傷罪」に問われる可能性があります。

「刑法」
第211条(業務上過失致死傷等)
1.業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
「過去の事例」
高校のラグビー部の部活動中、生徒が日射病で倒れて死亡した事件。
担当教員には、業務上過失致死罪で禁錮2か月執行猶予1年の有罪判決が出された。
(東京高裁昭和51年3月25日判決)

山岳部の部活動での岩登り中、2名が転落して死亡した事件。
引率教師が業務上過失致死罪に問われ、罰金3万円の有罪判決が出された。
(札幌地裁昭和30年7月4日判決)
【民事事件の場合】
部活動中の事故の場合、民事事件としては、担当教員に「注意義務違反」や「安全配慮義務違反」があったかどうかが問題になってきます。

判例では次のようなものがあります。

「部活動は、学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、顧問の教諭を始め学校側に生徒を指導監督し、事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務がある」

「ただし、課外のクラブ活動が本来生徒の自主性を尊重すべきものであることに鑑みれば、何らかの事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合は格別、そうでない限り、顧問の教諭としては、個々の活動に常時立会い、監視指導すべき義務まで負うものではない」
(最高裁昭和58年2月18日判決)

つまり、担当教員は「事故が発生する危険性を具体的に予見することが可能な場合」には、個々の活動に立会い、監視指導しなければならないということです。

今回の事故と類似のケースとして、ある高校のボクシング部の練習中、初心者の生徒が頭部にパンチを受けて硬膜下出血により死亡した事例が過去にありました。

・ボクシングは極めて危険性の高い競技であること
・死亡した生徒は初心者であり、数日前まで体調不良で部活動を休んでいたこと
・相手が全国大会出場者で上級レベルであったこと

これらのことから、
・顧問教諭は、生徒に対しパンチが当たる可能性のある練習を避ける必要があった
・この練習をさせるにしても、ヘッドギアを装着させたり相手にパンチを当てないように注意するなど事故を未然に防止する高度の注意義務があった
・それにもかかわらず、これらを怠った

として、顧問教諭の過失が認められています。
つまり、こうしたケースの場合は、「事故が発生する危険性を具体的に予見することができた」ということになります。

そのため、担当教員には次のことなどに配慮して、適切に、かつ未然に事故を防ぐ注意義務が課されることになります。

・部活動自体に内在する危険の程度(当然、武道や格闘技は危険性が高い)
・生徒の年齢・体格・健康状態
・生徒の技能レベル
・環境(特に屋外でのスポーツ)

担当教員が、これらの注意義務に違反した場合、民間の学校であれば教員個人には不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
担当教員が所属する学校には、使用者として使用者責任に基づく損害賠償責任が発生します。

「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
さらには、学校は生徒に対して安全配慮義務を負担していたと考えられることから、債務不履行に基づく損害賠償責任が発生する可能性もあります。

なお、国公立校の場合は適用される法律が変わり、損害賠償の責任主体は国または地方公共団体となります。

「国家賠償法」
第1条
1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
ここまで解説してきたように、学校の部活動では、担当教員には生徒たちの身体に危険が生じないように配慮する義務と責任があります。
そして、その義務を怠った場合には損害賠償責任が発生する可能性があることを学校も教員一人ひとりも、しっかり認識することが大切です。

また、ケガをした本人や両親は、泣き寝入りする必要はありません。
ケガによる損害賠償を請求する権利があるのですから、しっかりと請求するべきです。

ただし、示談交渉や訴訟になるにしても、法的手続きなどは大変に難しいものですから、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

ご相談はこちらから⇒http://www.bengoshi-sos.com/school/

学校の部活動での死亡事故の慰謝料は?(弁護士解説)

 >学校の部活動での死亡事故の慰謝料は?(弁護士解説)

2016年8月12日

学校のクラブ活動(部活動)で、生徒の死亡事故が起きてしまうことがあります。

親も両親も、当然、本人も、部活動で死亡事故が起きるなど、考えもしません。

しかし、実際には、不注意により、死亡事故が起きてしまうことがあり、その場合、法的にはどのような問題が発生するのか、ということになります。

まず、部活動は学校の活動であり、担当教師の指導下にあるわけですから、生徒の死亡について、担当教師の故意あるいは過失がある場合には、業務上過失致死罪の成立が問題となります。

過去の事例では、高校のラグビーの部活動中、生徒が日射病で倒れ、死亡した事件で、担当教師が業務上過失致死罪にとわれ、禁錮2か月執行猶予1年の有罪判決がなされた事例があります(東京高裁昭和51年3月25日判決)。

また、山岳部で岩登りが行われ、途中2名が転落した死亡した事件で、引率の教師が、業務上過失致死罪にとわれ、罰金3万円の有罪判決がなされた事例もあります(札幌地裁昭和30年7月4日判決)。

次に、生徒が死亡した、ということは、その損害をどうするのか、という民事上の問題もでてきます。

学校の管理下における死亡事故について、スポーツ振興センターにおける災害共催給付金制度があり、事故の態様によって、異なる金額の給付がされる制度があります。

次に、生徒の死亡について、他の生徒の行為に起因するものであるならば、その生徒の注意義務違反があったかどうかが問われます。

場合によっては、その生徒あるいは親に対し、不法行為に基づく慰謝料など損害賠償請求をしていくことになります。

次に、部活動中の事故、ということであれば、担当指導教師に注意義務違反がなかったか、について、検討しなければなりません。
部活動は、「学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、顧問の教諭を始め学校側に生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務がある」とされています(最高裁昭和58年2月18日判決)。

ただし、「課外のクラブ活動が本来生徒の自主性を尊重すべきものであることに鑑みれば、何らかの事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合は格別、そうでない限り、顧問の教諭としては、個々の活動に常時立会い、監視指導すべき義務まで負うものではない」(同最高裁判例)とされています。

逆に言うと、事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能な場合」には、顧問の教諭は、個々の活動に立会い、監視指導しなければならない、ということになります。

たとえば、高校ボクシング初心者である部員が、練習中に頭部にボクシングパンチを受けて、硬膜下出血により死亡した事例で、ボクシングが極めて危険性の高いものであること、当該部員が初心者であって数日前まで体調不良で部活を休んでいたこと、相手が全国大会出場者で上級レベルであったこと、等から、顧問教諭は、生徒に対し、パンチが当たる可能性のある練習を避けるか、させるにしてもヘッドギアを装着させたり相手にパンチを当てないように注意するなど事故を未然に防止する高度の注意義務があったのに、これを起こった、として、過失を認めています。

このような場合には、「事故の発生する危険性を具体的に予見可能」であった、ということになります。

そして、教師は、具体的には、

・クラブ活動自体に内在する危険の程度(武道などは危険が高いことになります)

・生徒の年齢・体格・健康状態

・技能レベル

・環境(特に屋外でのスポーツ)

などに配慮して適切に事故を未然に防ぐ注意義務が課されることになります。

これらの注意義務に違反した場合、民間の学校であれば、教師個人には、不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。

また、教師の所属する学校は、教師の使用者として、使用者責任に基づく損害賠償責任が発生することになります。

また、学校は生徒に対して安全配慮義務を負担していたと考えられますのから、債務不履行に基づく損害賠償責任も発生する可能性もあります。

学校が国公立の場合には、法律が異なってきて(国家賠償法)、損害賠償の責任主体は、国または地方公共団体となります。

では、過去の裁判例で、学校の部活動で死亡事故が起きた場合に、どのような判決が出されているか、見ていきましょう。

学校部活動の死亡事故その1

【高松高裁平成27年5月29日判決】

県立高校の野球部所属の生徒が練習中に熱中症に罹患して死亡した事故について、野球部監督教諭に過失があったとして、県の国家賠償責任が認められた学校事故。

当時、グランドの気温は29度以上あり、その中で100メートルダッシュを続けさせていました。

判決は、生徒は、ダッシュを続けていたところ、足がつったために、一旦ダッシュを中断したが、教師から促されて再度ダッシュを再開した。この時、走れるような状態まで回復したとはいえ、熱痙攣の状態に陥っていたのであり、そのことは監督も認識することができたこと、監督は生徒に100mダッシュを再開させる以上、熱中症を念頭に置いて生徒の状況を注視し、生徒に少しでも異常な状況があれば即座にAの100mダッシュを中止させ、給水・塩分摂取・休憩を命じ、必要に応じ、熱中症に対する応急処置や病院への搬送措置を講ずるべき注意義務を負っていたにもかかわらず、この注意義務を怠った、と認定し、県の損害賠償責任を肯定しました。

そして、裁判所は、県に対し、スポーツ振興センターから支給された見舞金合計2922万9186円を除き、慰謝料など損害賠償金として、約4500万円の支払を命じました。

【新潟地裁高田支部平成9年1月30日判決】

中学校の柔道部員が部活動としての柔道の練習中に頭部を打って死亡した事故につき、指導教諭及び校長に過失があるとして、国家賠償法に基づく地方公共団体に対して裁判が起こされた事例。

担当教師は、部員たちが基本的な練習を軽視する傾向があり、出席しようと思っていた時刻には投げ込みまで練習が進むことは予想できたはずであり、投げ込みにおいて、正しい「後ろ腰」ができない生徒が「後ろ腰」をやりたがっており、受け身についても完全にマスターしたとはいえない被害生徒と練習相手となることも予想しえたのに、当日は、そのような点について部長に注意を与えず、また、安全対策として決められていた巡視する者を決めることを提案する事もせず、他に何ら柔道活動についての安全につき配慮していなかったことからすると、当該教師は、自ら立ち会うことができないときは、練習を中止させるか、危険を予想されない練習内容にとどめるべき義務、すなわち生徒に対する安全配慮を怠った過失がある、と認定しました。

また、校長についても監督義務違反がある、と認定されました。

その結果、裁判所は、死亡見舞金1700万円、死亡給付金500万円の合計2200万円を除き、合計で3400万円余の慰謝料その他の損害賠償を命じました。

このように、学校のクラブ活動(部活動)に起きた事故について、教師は、生徒達の身体に危険が生じないように配慮する注意義務がありますが、その注意義務を怠った場合には、損害賠償責任が発生する場合があります。

もし、お子さんが学校の部活動中に事故に遭われた場合には、弁護士にご相談することをおすすめします。

ご相談は、こちらから。
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学校の柔道事故での慰謝料は?(弁護士解説)

 >学校の柔道事故での慰謝料は?(弁護士解説)

2016年8月10日

学校で部活や授業で柔道をやることがありますが、そこで怪我をして、重い後遺障害が残ったり、場合によっては死亡したり、ということが起こります。

まず、授業については、学校の教育活動の中心をなすものであり、生徒は教師の指導に従わなければならないわけですから、授業を実施する教師は、授業中に生徒の心身に生じうる危険を予見し、回避するために適切な措置をとる注意義務があります。

そして任意の活動である部活動よりも高度の注意義務を負っている、と考えられます。

さらに、柔道は、「武道」であり、身体接触を伴うものですから、それ自体すでに生徒の生命身体に危険がおよぶことが予見されるものです。

したがって、柔道を授業で実施する教師としては、生徒に対し、生徒の心身に危険が生じないよう適切に指導するとともに、危険を回避するために適切な措置をとる注意義務があるといえます。

また、教育活動の一環として行われる学校の課外のクラブ活動(部活動)においては,生徒は担当教諭の指導監督に従って行動するのであるから、担当教諭は、できる限り生徒の安全にかかわる事故の危険性を具体的に予見し,その予見に基づいて当該事故の発生を未然に防止する措置を採り、クラブ活動(部活動)中の生徒を保護すべき注意義務を負います(最高裁平成18年3月13日判決)。

そして、教師がこれらの注意義務に違反し、そのために生徒が怪我、あるいは死亡した場合には、民間学校の場合には、教師個人に不法行為に基づく慰謝料など損害賠償責任が発生します。

また、民間学校の場合は、学校も債務不履行に基づく損害賠償責任や教師の使用者として、使用者責任が発生します。

国公立学校の場合には、国家賠償法に基づき、国や地方公共団体に損害賠償責任が発生します。

では、過去の事例で、学校における柔道事故で、どのような裁判が行われたか、見ていきましょう。

【松山地裁平成5年12月8日判決】

中学校三年生の体育の授業において、担当教諭の指示により柔道部員である生徒が大内刈りを掛け、受け身を失敗した相手の生徒に頭部外傷を負わせた学校事故。生徒は、頭蓋骨形成術施行のため、頭に強い衝撃を加えることがないようにしなければならず、日常生活が制約され、視力が低下するなどの後遺症が残ったため、国家賠償法に基づき、地方公共団体に対して、4873万2492円の損害賠償を求めて提訴しました。
判決では、教諭の注意義務として、「教諭としては、原告の体力及び運動能力が一般の生徒に比し劣っている上、原告がそれまでに柔道の経験がなく、受け身の練習をしたとはいえ、その練習時間も少なく、しかも、技を掛けて受け身をした経験がないため、技に対応して受け身をすることについては未熟であることを認識しており、現に、原告を含め生徒六人が福島に一回目に大内刈りを掛けられたときには上手に受け身をすることができなかったことを十分に分かっていたのであるから、原告に対しては受け身のしやすい大腰等の技を掛けて受け身の練習を行わせるべきであり、また、技を掛けて受け身の練習を行わせるときには、柔道の指導方法を学んでいた野本教諭が自ら技を掛けるべきであった」と認定しました。

その上で、「教諭は、少し柔道の心得のあるとはいえ、同じ三年生の福島に命じて、初心者にとっては受け身が必ずしも容易ではなく、受け身をしっかりと行わなければ頭部を打つ危険性を内在する大内刈りを掛けさせて受け身の練習を行わせ、技を掛けられた生徒全員が受け身に失敗していることを知りながら、福島に対して、「中途半端に技を掛けるな。」、「まだ受け身の不十分な生徒もいるから、相手の右袖を軽く持っておいてやれ。」と指示し、原告らに対しては「踏ん張ってはいかん。」と指示しただけで、原告ら生徒に二回目も同じ技を掛けさせたため、原告が受け身を失敗し、本件事故が発生したものである。したがって、野本教諭には、初心者の原告に受け身の練習をさせるに当たり、初心者にとっては受け身が必ずしも容易ではなく、受け身をしっかりと行わなければ頭部を打つ危険性を内在する大内刈りを掛けさせるのは適切ではなく、これを選択したこと自体に誤りがあるだけでなく、自ら技を掛けず、少し柔道の心得がある福島に大内刈りを掛けさせた点についても、前記注意義務に違反しており、野本教諭には、本件事故発生について過失がある」と判断して、損害賠償義務を認めました。

その結果、裁判所は、地方公共団体に対し、1892万1547円の損害賠償を命じました。
【東京高裁平成25年7月3日判決】

高校における部活動である柔道部に1年生として在籍していた生徒が,柔道大会の県予選会の前に行われたウォーミングアップ練習において他の柔道部員に投げられた際、急性硬膜下血腫を発症した学校事故。生徒には四肢麻痺で常時介護を要する重度の後遺障害が残ったので、学校に対し、合計2億5000万円余の損害賠償を求めて提訴しました。

判決では、生徒の柔道の技術が未熟であり、前日に脳震盪と診断されていること、練習相手である柔道部員との技能差、体格差が大きく、試合前であるから、試合に準ずる態度で臨むことが予見できたのであるから、生徒を練習に参加させないか、参加させるとしても、生徒の安全を確保するために適切な指導をすべきであったのに、それを怠った、という過失を認定しました。

その結果、裁判所は、学校に対し、1億8000万円余の損害賠償を命じました。

このように、柔道は、武道であり、それ自体に危険を発生させるものであり、その実施には、生徒の生命身体に対する細心の注意を払った適切な指導が要求されます。

それにもかかわらず、生徒が怪我をし、場合によっては死亡した場合には、教師に安全配慮義務がある可能性があり、その場合には、学校あるいは国や地方公共団体に損害賠償責任が発生します。

重篤な後遺障害が発生する場合には、慰謝料など損害賠償額も高額になります。

柔道による学校事故が発生した場合には、弁護士にご相談ください。

ご相談は、こちらから。
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子供が子供に飛び降りを強要…法的責任は誰にある?

 >子供が子供に飛び降りを強要…法的責任は誰にある?

2016年7月21日

今回は、子供が子供にケガを負わせた場合、誰の責任が問われるのか、という問題について法的に解説します。

「小2脅され飛び降り重傷 上級生の親に賠償命令」(2016年7月19日 産経新聞)

東京都江東区のマンションで、2学年上の上級生の少女から脅され、飛び降りて重傷を負った小学2年生の女児と両親が、上級生の両親に対して計3000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が言い渡されました。

報道によると、事件が起きたのは、2013(平成25)年。
学校でのトラブルが原因で、上級生が女児(当時8歳)を9階建てのマンション屋上(高さ約26メートル)に誘い出し、「飛び降りないと殺すぞ、ここから落ちてしんでしまえ」と脅したところ、女児が飛び降り、足や胸の骨を折るなどの重傷を負ったということです。

判決では、上級生の少女には聴覚障害があり、両親は学習支援の専門機関に継続的に通わせ、熱心に教育していたと認めたものの、過去にも少女が別の児童に暴力行為をしたことがあったことから、「問題行動の傾向を把握し、さらに専門家に相談すべきであり、対応が不十分だった」と指摘。
加害少女の両親に約1000万円の損害賠償を命じたということです。
まず、民法における損害賠償について条文を見てみます。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
次に、子供の責任能力について見てみます。

第712条(責任能力)
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
民法上、未成年者の損害賠償責任については、その未成年者に物事の是非善悪を理解する能力がある場合には、その未成年者本人が賠償義務を負うことになります。
しかし、その能力がない場合には賠償の責任を負わないとされています。

責任能力の有無については、その境界線は11~12歳あたりとされ、これより年齢が低い子供は、通常は責任能力が否定されます。

今回のケースでは、事件当時、加害少女は9歳か10歳と思われるので、本人に責任を負わせることはできない、と判断されているものと思われます。

そうすると、誰が責任を負うのでしょうか?

次の条文を見てみましょう。

第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
1.前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
この条文により、事理弁識能力がない子供が第三者に加えた損害を賠償する責任は、親などの監督義務者にあるとされるわけです。

ちなみに、2015年に出された最高裁判決では、子供が蹴ったサッカーボールが道路に転がり、バイクで通りかかった男性を転倒させケガを負わせた事件について、親の監督責任はないとの判断が示されたものもあります。

詳しい解説はこちら⇒
「子供が起こした事故は誰の責任? 最高裁判決」
https://taniharamakoto.com/archives/1929

なお、学校での子供の事故については監督責任者が変わり、被害者の児童や親は、学校に損害賠償請求することになります。

詳しい解説はこちら⇒
「学校での人間ピラミッドや組み体操事故の法的責任は?」
https://taniharamakoto.com/archives/2062

子供を持つ親御さんは、道義的にはもちろんのこと法的にも責任を問われますので十分注意していただきたいと思います。
子供の事故に関するご相談はこちらから⇒
http://www.bengoshi-sos.com/aboutfee/903

学校の野球部活動での事故で県に賠償命令

 >学校の野球部活動での事故で県に賠償命令

2016年5月18日

高校の部活動中の事故により後遺症が残ったとして、被害者が損害賠償請求していた訴訟の判決が出たようです。

「部活中、打撃投手の頭部に打球…県に賠償命令」(2016年5月14日 読売新聞)

2011年5月、某県立高校の1年生だった男性が、野球部の練習中、グラウンドで打撃投手を務めていた際に右側頭部に打球を受け、頭蓋骨骨折などの重傷を負った。

日本高野連は打撃練習時に投手にヘッドギアを着用することを義務付けているが、男性は頭部を保護するヘッドギアを装着していなかったという。

男性は脳挫傷などの後遺症が残ったとして、県に約2400万円の損害賠償を求めて提訴していた。

静岡地裁の判決では、「職務上の注意義務に違反して事故を生じさせた」として教諭の過失を認定。
「指導教諭は注意義務に違反し、職務行為の違法性が認められる」として、県に約890万円の支払いを命じた。
大切な子供の人生が一瞬のうちに暗転してしまう学校での死傷事故。
一体、誰に責任があるのでしょうか? 損害賠償請求は誰に対して行うべきなのでしょうか?
【学校での事故によるケガには災害給付金が支払われる】
通常、学校や保育所の管理下における子供の事故、災害では、学校や保育所が加入している独立行政法人日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(医療費、障害・死亡見舞金)が支払われることになります。

・災害共済給付金には、医療費の他、障害見舞金または死亡見舞金が含まれます。

・学校や保育所の管理下とは、授業中(保育中)、部活動や課外授業中、休憩時間(始業前、放課後を含む)、通学(通園)中をいいます。
しかし、大きなケガのため重い障害を負った場合など、災害共済給付金だけでは損害賠償金額をすべて賄えないことが多いという問題があります。

その場合、被害者と親御さんは学校に損害賠償請求することができます。
【使用者責任とは?】
学校で起きた事故で子供が死傷した場合、損害賠償請求する相手として、まず担当教員や部活の顧問教員を想定する方もいると思います。

しかし、その教員を雇用しているのは学校であり、学校には「使用者責任」があるため、教職員の故意または過失によって生じた事故では、使用者である学校も損害賠償義務を負うことになります。

公立校であれば「国家賠償法」、私立校ならば「民法第715条」が適用されます。
損害賠償請求に関しては、「民法第709条」が適用されます。

「国家賠償法」
第1条
1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

今回、県に賠償命令が下されたのは、教員が県立高校の公務員だった、ということですね。

部活動については、「学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、顧問の教諭を始め学校側に生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務のあることを否定することはできない」(最高裁昭和58年2月18日判決)とされています。

したがって、部活動において生徒が怪我をした場合、学校側が生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき注意義務を怠った場合には、教師や学校に損害賠償責任が発生することになります。

今回については、日本高野連は打撃練習時に投手にヘッドギアを着用することを義務付けているが、男性は頭部を保護するヘッドギアを装着していなかった、ということで、顧問の教師らの指導監督が不十分であった、と認定されたものと思われます。

【学校で起きた死亡・重度の障害事故の発生件数】
次に、平成10~21年度における、中学・高校での体育の授業、および運動部活動での死亡・重度の障害事故の発生件数について、日本スポーツ振興センターが公表している災害共済給付のデータから見てみましょう。

「中学・高校での体育の授業における死亡・重度の障害事故の発生件数」
・陸上競技/87人
・水泳/24人
・バスケットボール/17人
・サッカー/16人
・器械体操等/10人
・柔道/9人
・バレーボール/8人
「中学・高校での運動部活動における死亡・重度の障害事故の発生件数」
・柔道/50人
・野球/35人
・バスケットボール/33人
・ラグビー/31人
・サッカー/26人
・陸上競技/19人
・バレーボール/14人
・テニス/14人

格闘技である柔道や、硬いボールを使用する野球などで事故が多く発生していることが読み取れます。

もし、授業中、課外活動中などにお子さんが怪我をしたような場合には、加害者である生徒などの他に、教師や学校にも損害賠償できる可能性があることを憶えておきましょう。

そして、そのような場合には、法律が認めているわけですから、泣き寝入りする必要はありません。

弁護士などの専門家に相談して、慰謝料など適切な損害賠償金を手にするための対応をされることをお勧めします。

ご相談はこちらから⇒「弁護士による学校事故SOS」
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学校での人間ピラミッドや組み体操事故の法的責任は?

 >学校での人間ピラミッドや組み体操事故の法的責任は?

2015年10月2日

秋たけなわ。
全国各地の学校では運動会や体育祭が行われているでしょう。

そんな中、大阪の中学校の体育祭で、生徒が重軽傷を負うという事故が起きたようです。

学校での子供の重傷事故は、一体、誰の責任になるのでしょうか?
法的に解説します。

「体育祭“10段ピラミッド”崩れ6人重軽傷」(2015年10月1日日テレNEWS24)

大阪府八尾市の市立中学校で行われた体育祭で、組体操のピラミッドが崩れ、生徒6人が重軽傷を負いました。

事故が起きたのは9月27日。
1年生から3年生の男子生徒157人が参加した10段のピラミッドが崩れ、下から6段目の右端にいた1年生の男子生徒が右腕を骨折する重傷、5人が打撲するなどの軽傷とのことです。

生徒の1人の証言では、練習でも1度も成功したことがなかったようで、八尾市教育委員会は今後検証を行い、対策を検討するとしています。
「人間ピラミッド」は体育祭の大トリとして、成功すれば観客も生徒たちも大いに盛り上がるものです。
しかし、2012(平成24)年には全国の小・中学校で合わせて約6500件の組体操での事故が起きており、2013(平成25)年にはさらに増えて約8500件もの事故が起きているとことから、近年、その危険性が指摘され、問題となっていました。

ちなみに、10段の場合、高さは約7メートル、一番下にいる子供1人の背中には約200キロの重さがのしかかるそうですから、相当に危険な競技だと言わざるを得ないでしょう。

ところで、学校で起こった子供の重傷事故は誰の責任になるのかというと、それは当然、学校の責任となります。

以前にも解説しました。

詳しい解説はこちら⇒ 「学校での柔道事故で8150万賠償命令【国家賠償法】」
https://taniharamakoto.com/archives/2031

学校(保育所)の管理下における子供の事故、災害では、通常の場合、学校が加入している日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(医療費、障害・死亡見舞金)が支払われます。

「学校(保育所)の管理下」とは、授業中(保育所における保育中を含む)、部活動や課外授業中、休憩時間(始業前、放課後を含む)、通学(通園)中などです。

しかし、この災害共済給付金だけでは損害賠償金額をすべて賄えないことが多いため、さらに被害者や親は学校に損害賠償請求することができます。

その場合、公立校であれば国家賠償法、私立校ならば民法715条が適用されます。

「国家賠償法」
第1条
1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
法律上、学校は親に代わって子供を監督する立場であるため、「代理監督者責任の義務」があります。
そのため、教職員の故意または過失によって生じた事故では、その使用者として学校が損害賠償義務を負うことになるのです。

過去にあった組体操による事故の訴訟では、ほとんどの場合で教員の責任が認められ学校側が敗訴しています。
「教員と学校は危険性に十分留意すべき」で、「事故を防ぐための適切な措置を講じる義務に違反した」と判断されるわけです。

十段もの人間ピラミッドをやれば、ピラミッドが崩れ、下にいる生徒の身体に危険が及ぶのは当然予想できます。

したがって、ピラミッドに参加させる生徒各自の体力、精神力、体調などを正確に把握し、その配置にも細心の注意を払う必要があります。

さらには、途中で事故が起こっても対処できるよう適切に教員を配置しておく必要もあります。

今回は、それらの義務を怠ったといえるでしょうから、学校の損害賠償責任が認められるのではないでしょうか。

ちなみに、1993(平成5)年、福岡地裁では学校の設置者に対して1億円超の損害賠償支払いの命令が出されています。
ある高校の授業で、8段の人間ピラミッドの練習中にピラミッドが崩れ、一番下にいた生徒が脊髄損傷などの障害を負った事故でした。

人間ピラミッドの中学校の最高記録は10段だそうですが、これだけ危険性が指摘され、実際に事故も起きているのですから、教育委員会や学校、教員、保護者は考えを変えて早急に対応するべきでしょう。

なお今回、事故が起きた八尾市の隣の大阪市では、9月1日に事故防止のため、ピラミッドの段数は5段まで、タワーの段数は3段までに制限することなどを正式に発表していました。
また、愛知県長久手市では3月、人間ピラミッドの段数を4段までに制限したようです。

スポーツの秋。
今年も全国で、組み体操を体育祭の種目として予定している学校があるでしょう。

しかし、事故が起きて痛く苦しい思いをするのは教員ではなく、子供たちであること、そして、生命の危険を冒してまで高さを競う必要はないということを、大人には今一度考えてほしいと思います。

学校事故の相談は、こちらから。

http://www.bengoshi-sos.com/school/

学校での柔道事故で8150万賠償命令【国家賠償法】

 >学校での柔道事故で8150万賠償命令【国家賠償法】

2015年10月1日

オリンピックの競技にもなっている柔道は日本で生まれた武道であることは、みなさんもご存知でしょう。

歴史を紐解けば、そもそもは12世紀以降に武士たちの合戦で用いられた武芸の中から江戸時代に「柔術」として発展。
時は下り、明治期に学習院の講師だった嘉納治五郎が各技を整理、体系化して「柔道」と名付け、1882(明治15)年に講道館を創設。
その後、競技としての柔道が普及していったようです。

学校教育に導入されたのは、1950(昭和25)年からで、現在では全国の中学校で必修、高校の多くでも必修科目となっており、部活動も盛んに行われています。
しかし、柔道による生徒の事故が後を絶たないという問題も指摘されています。

今回は、子供を持つ親が心配な学校での事故に関する損害賠償問題について解説します。

「柔道練習で後遺症、学校側に8150万賠償命令」(2015年8月20日 読売新聞)

2009年、広島県尾道市の私立尾道高校で、柔道部の練習中に頭を打ち、高次脳機能障害などの重い後遺症が残ったとして当時1年の男性(21)と両親が同校を運営する尾道学園に計約1億4400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決がありました。

裁判官は、「事故を防ぐための適切な措置を講じる義務に違反した」として、同学園に計約8150万円の支払いを命じたようです。

判決によると、男性は2009年4月に入部。
翌年5月の練習中に乱取りをしていて、頭を畳に強打。
急性硬膜下血腫などで、記憶障害や言語障害などの高次脳機能障害や視野狭窄が残ったということです。
【学校での子供の死傷事故では給付金が支払われる】
学校(保育所)の管理下における子供の事故、災害では、通常の場合、学校が加入している日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(医療費、障害・死亡見舞金)が支払われます。

ここで重要なのは、「学校(保育所)の管理下」ということです。
授業中(保育所における保育中を含む)、部活動や課外授業中、休憩時間(始業前、放課後を含む)、通学(通園)中は、学校の管理下になります。

しかし、この災害共済給付金だけでは損害賠償金額をすべて賄えないことが多いものです。
その場合、被害者や親は誰に請求すればいいのでしょうか?
【学校には代理監督者責任と使用者責任がある】
被害者や親は、学校に損害賠償請求することができます。

なぜなら、法律的には、学校は親に代わって子供を監督する立場であるため、「代理監督者責任の義務」があるからです。

また、教職員の故意または過失によって生じた事故では、その使用者として学校が損害賠償義務を負うことになります。

その場合、公立校であれば国家賠償法、私立校ならば民法715条が適用されます。

「国家賠償法」
第1条
1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
なお、損害賠償請求に関しては第709条が適用されます。

第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
【柔道では脳への重度の障害が残る事故が多いという事実】
日本スポーツ振興センターにおける災害共済給付のデータによると、平成10~21年度の集計では、中学・高校での体育の授業、および運動部活動における死亡・重度の障害事故の発生件数は以下のようになっています。

「中学・高校での体育の授業における死亡・重度の障害事故の発生件数」
・陸上競技/87人
・水泳/24人
・バスケットボール/17人
・サッカー/16人
・器械体操等/10人
・柔道/9人
・バレーボール/8人
「中学・高校での運動部活動における死亡・重度の障害事故の発生件数」
・柔道/50人
・野球/35人
・バスケットボール/33人
・ラグビー/31人
・サッカー/26人
・陸上競技/19人
・バレーボール/14人
・テニス/14人
柔道の体育の授業での安全管理については一定の成果が出ているようですが、部活動での死傷事故の件数はもっとも多くなっています。

特に柔道の場合、受け身が上手くできなかったことによる頭部や頸部へのケガが多く、一生涯介護を要するような重度の後遺症を負うこともあります。

交通事故の被害者の場合でもそうですが、頭部の場合、外傷はなくても激しく揺さぶられることで内部の脳自体への損傷や出血が起きることがあります。
そうした場合、重篤な障害が残るというケースが多いのです。

もちろん、柔道を悪者にするわけではありませんが、やはり武術ですから相応の危険性があるのは当然でしょう。
今後、国には、学校でのスポーツによる子供の事故例の分析、原因の究明、予防対策等をしっかりお願いしたいと思います。

また、運動会や体育祭の組み体操でピラミッドが崩れ、生徒が重軽傷を負う事故も起こっています。
学校側は十分な注意が必要です。

関連記事 http://news.yahoo.co.jp/pickup/6176079

なお、あってはならないことですが、万が一の事故の場合の損害賠償請求では専門的な知識が必要となりますので、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

ご相談はこちらから⇒http://www.bengoshi-sos.com/school/

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