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  • 学校での柔道事故で8150万賠償命令【国家賠償法】

    2015年10月01日

    オリンピックの競技にもなっている柔道は日本で生まれた武道であることは、みなさんもご存知でしょう。

    歴史を紐解けば、そもそもは12世紀以降に武士たちの合戦で用いられた武芸の中から江戸時代に「柔術」として発展。
    時は下り、明治期に学習院の講師だった嘉納治五郎が各技を整理、体系化して「柔道」と名付け、1882(明治15)年に講道館を創設。
    その後、競技としての柔道が普及していったようです。

    学校教育に導入されたのは、1950(昭和25)年からで、現在では全国の中学校で必修、高校の多くでも必修科目となっており、部活動も盛んに行われています。
    しかし、柔道による生徒の事故が後を絶たないという問題も指摘されています。

    今回は、子供を持つ親が心配な学校での事故に関する損害賠償問題について解説します。

    「柔道練習で後遺症、学校側に8150万賠償命令」(2015年8月20日 読売新聞)

    2009年、広島県尾道市の私立尾道高校で、柔道部の練習中に頭を打ち、高次脳機能障害などの重い後遺症が残ったとして当時1年の男性(21)と両親が同校を運営する尾道学園に計約1億4400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決がありました。

    裁判官は、「事故を防ぐための適切な措置を講じる義務に違反した」として、同学園に計約8150万円の支払いを命じたようです。

    判決によると、男性は2009年4月に入部。
    翌年5月の練習中に乱取りをしていて、頭を畳に強打。
    急性硬膜下血腫などで、記憶障害や言語障害などの高次脳機能障害や視野狭窄が残ったということです。
    【学校での子供の死傷事故では給付金が支払われる】
    学校(保育所)の管理下における子供の事故、災害では、通常の場合、学校が加入している日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(医療費、障害・死亡見舞金)が支払われます。

    ここで重要なのは、「学校(保育所)の管理下」ということです。
    授業中(保育所における保育中を含む)、部活動や課外授業中、休憩時間(始業前、放課後を含む)、通学(通園)中は、学校の管理下になります。

    しかし、この災害共済給付金だけでは損害賠償金額をすべて賄えないことが多いものです。
    その場合、被害者や親は誰に請求すればいいのでしょうか?
    【学校には代理監督者責任と使用者責任がある】
    被害者や親は、学校に損害賠償請求することができます。

    なぜなら、法律的には、学校は親に代わって子供を監督する立場であるため、「代理監督者責任の義務」があるからです。

    また、教職員の故意または過失によって生じた事故では、その使用者として学校が損害賠償義務を負うことになります。

    その場合、公立校であれば国家賠償法、私立校ならば民法715条が適用されます。

    「国家賠償法」
    第1条
    1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
    「民法」
    第715条(使用者等の責任)
    1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
    なお、損害賠償請求に関しては第709条が適用されます。

    第709条(不法行為による損害賠償)
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
    【柔道では脳への重度の障害が残る事故が多いという事実】
    日本スポーツ振興センターにおける災害共済給付のデータによると、平成10~21年度の集計では、中学・高校での体育の授業、および運動部活動における死亡・重度の障害事故の発生件数は以下のようになっています。

    「中学・高校での体育の授業における死亡・重度の障害事故の発生件数」
    ・陸上競技/87人
    ・水泳/24人
    ・バスケットボール/17人
    ・サッカー/16人
    ・器械体操等/10人
    ・柔道/9人
    ・バレーボール/8人
    「中学・高校での運動部活動における死亡・重度の障害事故の発生件数」
    ・柔道/50人
    ・野球/35人
    ・バスケットボール/33人
    ・ラグビー/31人
    ・サッカー/26人
    ・陸上競技/19人
    ・バレーボール/14人
    ・テニス/14人
    柔道の体育の授業での安全管理については一定の成果が出ているようですが、部活動での死傷事故の件数はもっとも多くなっています。

    特に柔道の場合、受け身が上手くできなかったことによる頭部や頸部へのケガが多く、一生涯介護を要するような重度の後遺症を負うこともあります。

    交通事故の被害者の場合でもそうですが、頭部の場合、外傷はなくても激しく揺さぶられることで内部の脳自体への損傷や出血が起きることがあります。
    そうした場合、重篤な障害が残るというケースが多いのです。

    もちろん、柔道を悪者にするわけではありませんが、やはり武術ですから相応の危険性があるのは当然でしょう。
    今後、国には、学校でのスポーツによる子供の事故例の分析、原因の究明、予防対策等をしっかりお願いしたいと思います。

    また、運動会や体育祭の組み体操でピラミッドが崩れ、生徒が重軽傷を負う事故も起こっています。
    学校側は十分な注意が必要です。

    関連記事 http://news.yahoo.co.jp/pickup/6176079

    なお、あってはならないことですが、万が一の事故の場合の損害賠償請求では専門的な知識が必要となりますので、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

    ご相談はこちらから⇒http://www.bengoshi-sos.com/school/