子供が子供に飛び降りを強要…法的責任は誰にある? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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子供が子供に飛び降りを強要…法的責任は誰にある?

2016年07月21日

今回は、子供が子供にケガを負わせた場合、誰の責任が問われるのか、という問題について法的に解説します。

「小2脅され飛び降り重傷 上級生の親に賠償命令」(2016年7月19日 産経新聞)

東京都江東区のマンションで、2学年上の上級生の少女から脅され、飛び降りて重傷を負った小学2年生の女児と両親が、上級生の両親に対して計3000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が言い渡されました。

報道によると、事件が起きたのは、2013(平成25)年。
学校でのトラブルが原因で、上級生が女児(当時8歳)を9階建てのマンション屋上(高さ約26メートル)に誘い出し、「飛び降りないと殺すぞ、ここから落ちてしんでしまえ」と脅したところ、女児が飛び降り、足や胸の骨を折るなどの重傷を負ったということです。

判決では、上級生の少女には聴覚障害があり、両親は学習支援の専門機関に継続的に通わせ、熱心に教育していたと認めたものの、過去にも少女が別の児童に暴力行為をしたことがあったことから、「問題行動の傾向を把握し、さらに専門家に相談すべきであり、対応が不十分だった」と指摘。
加害少女の両親に約1000万円の損害賠償を命じたということです。
まず、民法における損害賠償について条文を見てみます。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
次に、子供の責任能力について見てみます。

第712条(責任能力)
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
民法上、未成年者の損害賠償責任については、その未成年者に物事の是非善悪を理解する能力がある場合には、その未成年者本人が賠償義務を負うことになります。
しかし、その能力がない場合には賠償の責任を負わないとされています。

責任能力の有無については、その境界線は11~12歳あたりとされ、これより年齢が低い子供は、通常は責任能力が否定されます。

今回のケースでは、事件当時、加害少女は9歳か10歳と思われるので、本人に責任を負わせることはできない、と判断されているものと思われます。

そうすると、誰が責任を負うのでしょうか?

次の条文を見てみましょう。

第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
1.前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
この条文により、事理弁識能力がない子供が第三者に加えた損害を賠償する責任は、親などの監督義務者にあるとされるわけです。

ちなみに、2015年に出された最高裁判決では、子供が蹴ったサッカーボールが道路に転がり、バイクで通りかかった男性を転倒させケガを負わせた事件について、親の監督責任はないとの判断が示されたものもあります。

詳しい解説はこちら⇒
「子供が起こした事故は誰の責任? 最高裁判決」
https://taniharamakoto.com/archives/1929

なお、学校での子供の事故については監督責任者が変わり、被害者の児童や親は、学校に損害賠償請求することになります。

詳しい解説はこちら⇒
「学校での人間ピラミッドや組み体操事故の法的責任は?」
https://taniharamakoto.com/archives/2062

子供を持つ親御さんは、道義的にはもちろんのこと法的にも責任を問われますので十分注意していただきたいと思います。
子供の事故に関するご相談はこちらから⇒
http://www.bengoshi-sos.com/aboutfee/903