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  • 不当解雇を弁護士に相談するメリット

    2019年01月24日

    働いていたら、突然解雇されることがあります。
    そんな時、従業員としたらパニックになるでしょう。
    通常、従業員は、給料をもらうことによって生活をしています。解雇される、ということは給料がなくなるわけですから、生活できなくなってしまいます。
    養うべき家族がいる場合などは、さらに大変な事態になってしまいます。
    突然解雇された場合には、色々な疑問が頭にわいてきます。

    こんな解雇は無効ではないか?不当な解雇ではないか?

    不当解雇かどうかは、誰が決めるの?

    不当解雇の判断基準は?

    不当解雇を弁護士に相談するのはあり?

    不当解雇で請求できる慰謝料額は?

    不当解雇の裁判は大変?

    突然の解雇に、どのように対処したらよいのか、解雇された時に弁護士に相談した方がいい理由などについて紹介していきます。

    1 解雇の前提には労働契約がある

    従業員と会社との間には、「労働契約」「雇用契約」があります。
    労働契約は、従業員が労働力を会社に提供し、その対価として給与を支払ってもらう契約です。
    労働条件については、労働条件通知書、労働契約書、就業規則などに記載されますが、中には、何も書類を作成しないで口頭だけで取り決めてしまう会社もあるようです。もちろん労働基準法違反です。
    解雇すると、この労働契約が破棄されることになります。

    2 解雇とは?

    解雇とは、会社が従業員に対し、労働契約を一方的に破棄する行為です。
    労働契約が破棄されると、従業員は給料をもらうことができなくなります。給料で生活している従業員にとっては死活問題となります。
    もちろん、会社は、従業員を自由に解雇できるわけではありません。
    一定の場合には、解雇が無効になり、従業員は職場復帰をしたり、未払い給与を払ってもらったり、場合によっては、慰謝料請求をすることができます。
    しかし、現実には、解雇事由がないのに、会社が従業員を解雇してしまっている例も多いように思います。

    3 退職との違い

    解雇と異なる概念に「退職」があります。
    どちらも労働契約を終了させるものですが、どのような違いがあるでしょうか。
    解雇は、先ほど説明したように、会社が一方的に労働契約を破棄するものであり、従業員の意思とは無関係です。
    これに対し退職は、従業員が自ら退職届け等を提出するなどして、労働契約を解消することです。基本的に従業員の意思がないと、退職は成り立ちません。
    このように、解雇と退職は「それが従業員の意思にもとづくものか」という点で違いがあることになります。
    退職は、従業員の意思に基づくものなので、後から「不当解雇だ」と言っても裁判所は取り合ってくれません。
    会社は、従業員を解雇する前に、「退職勧奨」といって、自ら退職するよう説得することがあります。このときに説得に応じて、自ら退職届を提出して退職すると、後で翻意して「解雇だった」といっても、争うのは難しくなってしまいます。
    したがって、やめたくないのであれば、退職勧奨されたとしても、決してそれに応じてはいけない、ということになります。

    4 解雇の3種類

    解雇には3種類があります。

    普通解雇
    整理解雇
    懲戒解雇

    それぞれについて説明していきます。

    普通解雇とは、懲戒解雇ではない解雇のことです。
    たとえば従業員の勤務態度や能力、病気などを理由に解雇するケースが該当します。
    普通解雇は、解雇の要件が厳しく判断されます。
    要件を満たさないときは、「不当解雇」と判断され、無効になります。

    整理解雇とは、いわゆるリストラ解雇のことです。
    会社の経営状態が著しく悪化し、そのまま雇用を維持すると会社が倒産してしまうおそれがあるような場合に行われます。
    整理解雇が有効になるためにも、厳しい要件を満たすことが必要です。
    要件を満たさないと、やはり「不当解雇」となり、無効になります。

    懲戒解雇は、従業員が重大な問題を起こして会社の規律を維持するために行うような解雇です。
    たとえば、会社のお金を横領したり、刑事事件を起こしたり、というような場合です。
    懲戒解雇をするには、就業規則等に定めが必要であり、要件を満たさない懲戒解雇は、やはり「不当解雇」として無効になります。

    5 解雇が有効になるための要件とは

    では、3種類の解雇は、どのような要件で有効になるのでしょうか。

    普通解雇の要件
    普通解雇は、以下の要件を満たさないと、不当解雇として、解雇が無効となります。

    適正手続
    普通解雇が有効になるためには、解雇の適正な手続きが守られることが必要です。
    労働基準法では、会社側は従業員を解雇するとき、30日前に解雇予告をするか、その日数に足りない場合には解雇予告手当を払うことを要求しています。

    解雇権濫用法理
    普通解雇には、解雇権濫用法理があります。
    解雇権濫用とは、「解雇理由の客観的合理性」と「解雇手続きの社会的相当性」がないにもかかわらず解雇してしまうことです。そのような場合には、解雇権を濫用したとして、解雇が無効になります。
    たとえば「態度が反抗的で気に入らない」「他の従業員と比べて成績が少し悪い」「遅刻や欠勤が多い」という程度の理由では解雇できません。たとえば、勤務態度不良の社員がいる場合に、何度も注意指導し、改善の機会を与えたにもかかわらず、改善の余地がなく、「それ以上雇用関係を続けることが、客観的にみて不可能」という程度にならないと解雇できないと考えましょう。

    整理解雇

    整理解雇の4要素
    整理解雇では「解雇の4要素」があり、4つの要素を検討して整理解雇が不当かどうかを判断していきます。

    (1)人員整理の必要性
    整理解雇が有効になるためには、会社にとって整理解雇が必要であることです。多少経営状態が悪くなっているだけでは、まだ人員整理が必要とはいえません。

    (2)解雇回避努力
    整理解雇をする前に、会社は、解雇を回避するための努力をしなければなりません。
    たとえば資産を売却したり、他の合理化策を検討しなければなりません。

    (3)人員選定の合理性
    整理解雇が有効になるためには、解雇する人員を選定する選択基準の合理性が必要とされています。恣意的な人員選定は許されません。
    一般的には一定の高年齢を基準にする、給料が高額の人を基準にする、などの選定がされます。

    (4)手続きの妥当性
    手続の妥当性も必要です。労働組合と協議したり、説明会を開いたり、など、手続保障も要求されています。

    また、整理解雇のケースでも、解雇予告や解雇予告手当は必要です。

    懲戒解雇

    懲戒権の濫用

    懲戒解雇は従業員に重大な問題がある場合にされますが、その場合にも、解雇の合理性や相当性が必要となります(労働契約法15条)。
    従業員が重大な問題を起こしたとしても、懲戒解雇は重すぎる、というような場合には、不当解雇として無効になります。
    たとえば、製造業の内勤社員が交通事故を起こして罰金刑になった、という場合「刑事事件を起こした」ということで懲戒解雇できるかといえば、それは難しいでしょう。しかし、会社のお金を横領して執行猶予付の懲役刑になった、ということであれば懲戒解雇は有効になるでしょう。
    会社が従業員を懲戒解雇するには、必ず就業規則で懲戒解雇に関する規程をおいておく必要があります。懲戒に関する定めがないと、懲戒解雇はできない、ということになります。

    不当解雇

    会社が従業員を解雇したときに「不当解雇」として無効になるのは、以下のようなケースです。

    解雇事由の無効

    解雇事由が無効になるケースがあります。
    たとえば思想や信条、性別などを理由とする解雇は無効です。
    妊娠出産をしたことを理由とする解雇は無効です。
    解雇をするには、正当な事由が必要である、ということです。

    解雇権の濫用

    先ほど説明したように普通解雇の場合、「解雇の合理性、社会的相当性」が必要です。また、整理解雇の場合、「整理解雇の4要素」が問われます。懲戒解雇の場合には懲戒権の濫用は許されません。
    これらの場合には、不当解雇として、解雇が無効になります。

    手続

    普通解雇の場合、解雇予告を行っておらず、解雇予告手当も支払っておらず解雇の手続き的要件を満たしていない場合、即時に解雇の効力は発生していませんが、解雇通知後30日が経過した時点もしくは解雇通知後に解雇予告手当を支払ったときに、解雇の効果が発生すると考えられています(昭和35年3月11日)。

    解雇が無効にあった事例

    トラストシステム事件

    派遣社員のシステムエンジニアが、派遣先でメールを私的利用したり私的に要員派遣業務をあっせんした事例において、裁判所は、メールの使用は服務規律に違反するけれども過大に評価できるものではなく、要員の私的なあっせんについては明確に事実認定できず、職務遂行能力も解雇が必要なほど低いとは言えないとして、解雇を無効と判断しました。

    三井倉庫港湾事件

    「必ず会社の労働組合に加入すべき」というユニオンショップ協定のある会社において、その労働組合を脱退して別の労働組合に加入した従業員が解雇された事例で、裁判所は、ユニオンショップ協定によって従業員に特定の労働組合への加入を強制することは許されないとして、会社による解雇は解雇権の濫用として無効とされました。

    解雇されたら?

    会社から不当解雇されたら、次のように対処します。

    解雇理由証明書の発行を求める

    解雇されたら、会社に対し「解雇理由証明書」の発行を求めます。解雇理由証明書とは、会社が考える「解雇理由」を書いた書類で、要求された場合には、会社は、この解雇理由証明書を発行しなければなりません。
    後で不当解雇を主張するとき、まずは会社がなぜ解雇したのか、の理由を知らなければなりません。なぜなら、解雇が無効、というためには、解雇の要件を満たしていないことを主張しなければならないためです。
    そのために、解雇理由を明らかにし、「その理由では解雇の要件を満たしていませんよ」と主張することになります。

    証拠集め

    次に不当解雇の証拠集めを行います。
    就業規則
    解雇通知書
    解雇理由証明書
    労働契約書
    労働条件通知書
    メール、メモ、業務日報など
    録音

    内容証明郵便

    いよいよ会社に対し、不当解雇を主張する段階です。
    後で証拠に残るように、「内容証明郵便」という郵便で送ります。内容証明郵便で送れば、配達記録がついて、「確かに送った」という証拠になりますし、どのような内容で送ったかも証明できます。
    内容としては、解雇無効と地位確認、未払賃金、場合によっては慰謝料や損害賠償を求めることになります。

    労働審判

    内容証明郵便を送っても解決できない場合には、調停や労働審判を申し立てて裁判所で解決を目指します。
    労働審判は、裁判よりも迅速に解決を目指すことができます。
    弁護士に依頼して労働審判を申し立てるようにしましょう。

    裁判

    労働審判でも解決できない場合には、最終的に労働裁判をして解決します。労働審判をせずにいきなり裁判を起こすこともできます。裁判は弁護士に依頼して行うようにしましょう。

    不当解雇を弁護士に相談するメリット

    不当解雇されたら、なるべく早めに弁護士に相談した方がよいでしょう。

    自分の場合は、不当解雇かどうか弁護士に相談する

    解雇されたとき、それが不当解雇なら訴えて復職したり、慰謝料を請求できたりします。しかし、自分の場合が不当解雇なのか、あるいは適法な解雇なのか、自分で判断することは難しいでしょう。
    法律の問題ですから、やはり弁護士に相談して不当解雇かどうか、弁護士に判断してもらうことをおすすめします。

    弁護士に証拠の集め方を相談する

    先ほど書いたように、不当解雇されたら、証拠を集める必要があります。それも裁判で有利になるような証拠が必要です。裁判で有利になるかどうかは、裁判に携わっている弁護士に相談するのが最も有効な手段です。
    証拠の集め方を弁護士に相談するようにしましょう。

    弁護士に交渉依頼する

    従業員が自分で内容証明郵便を作成したり、元の上司や社長と交渉するのは精神的に大変でしょう。
    弁護士に依頼すると、弁護士が代理人として書類作成や交渉窓口になってくれますので、精神的に楽です。

    弁護士相手だと会社も真剣になる

    従業員本人が会社に対して「不当解雇」と主張したり内容証明郵便を送ったりしても、会社側が真剣に対応してくれないことがあります。しかし、弁護士が代理人として出てくると、裁判を予想しますので、会社も弁護士に依頼したり、真剣に対応することになります。

    弁護士に法的手続を依頼する

    会社と交渉をしても合意できない場合には、労働審判や労働裁判により、強制的な手続に移行します。
    これらの法的手続は素人では難しいので、やはり弁護士に依頼することになるでしょう。

    以上、不当解雇を弁護士に相談するメリットを説明してきました。

    更に詳しく知りたい人は、こちらを参考にしてください。

    不当解雇を弁護士に相談した方がよい7つの理由
    https://roudou-sos.jp/kaikopoint/

    多くの解雇は無効です。
    https://roudou-sos.jp/kaiko/

  • 爆発労災事故の被害者や遺族は慰謝料請求できるのか?

    2018年02月01日

    今回は、化学品工場で起きた爆発事故について、法的責任は誰にあるのか、また被害者や遺族が損害賠償請求するにはどうすればいいのか、について解説します。

    「タンク爆発3人書類送検 洗浄中4人死傷、埼玉」(2018年1月30日 産経新聞)

    埼玉県の化学品製造業の工場でタンクが爆発し作業員4人が死傷した事故で、埼玉県警は同社の担当課長と社員2人の男性計3人を業務上過失致死容疑で書類送検し、熊谷労働基準監督署は30日、労働安全衛生法違反の疑いで、同社と現場責任者の担当課長(43)をさいたま地検に書類送検しました。

    事故が起きたのは、2016(平成28)年1月3日午前1時頃。
    タンク内に付着した銀を洗い落とす作業中に爆発が発生し、42歳と22歳の派遣社員2名が硝酸中毒で死亡、社員2人も軽傷を負ったというものです。

    同県警によると、書類送検容疑は、タンクの洗浄に使う硝酸の濃度を確認するなどの適切な管理をせずに過剰に注入したことで、タンク内に大量の窒素酸化物を発生させ、爆発で2人を死亡させたなどとしています。

    今回のように、業務に起因した事故によって従業員が傷害を負ったり、死亡した場合、刑事、労災、民事の3つが関わってきます。

    刑事事件

    刑事事件においては、会社や責任者は業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります。

    「刑法」
    第211条(業務上過失致死傷等)
    1.業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

    労働災害(労災)

    労働者(従業員)が、業務に起因して負傷(ケガ)、疾病(病気)、障害(後遺症)、死亡に至ることを「労働災害(労災)」といいます。

    業務中の労災は「業務災害」、通勤中の交通事故などによるケガや病気などは「通勤災害」となります。

    労災が発生した場合、「労働基準法」と「労働者災害補償保険法(労災保険法)」により災害補償制度があるため、会社が労災手続きを行ない、労災が認定された場合には、被害にあった労働者に労災給付金が支給されることになります。

    民事のおける損害賠償請求

    被害者の損害賠償金を労災給付金ですべてカバーできればいいのですが、重傷事故や死亡事故の場合は労災給付金だけでは足りないという事態が発生します。

    その場合、被害者は会社や現場の責任者などに対して損害賠償請求することができます。
    なぜなら、会社には「安全配慮義務」があるからです。

    安全配慮義務とは、会社が労働者に対して負うもので、ケガや病気、死亡事故などがないように安全な状態で労働させる義務のことです。

    「労働契約法」
    第5条
    使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

    会社が安全配慮義務に違反し、その結果として労働者に損害が発生した場合は、会社には労働契約の債務不履行に基づく損害賠償義務が生じます。

    ただし、会社が債務不履行に基づく損害賠償義務を負担するには、会社に過失があることが必要です。
    そして、過失があるといえるためには、結果が予見でき(予見可能性)、かつ、その結果を回避することが可能(結果回避可能性)であることが必要となります。

    つまり、爆発事故による労災損害賠償請求訴訟においては、「会社の過失の有無」が争われることになるのです。

    爆発事故が争われた裁判例

    「荏原製作所事件」
    市に勤務し、ゴミ処理プラントで灰出し作業をしていた労働者が突然の灰の爆風を浴びて、約7.5メートル下の構内地面に落下し、脊椎損傷、性機能不全、顔面やけど、両眼内異物混入の傷害を負った事件。

    労働者は、雇用主とともに、本件プラントを建設した企業に対し、損害賠償請求をした。

    第一審判決では、予見可能性が争いとなったが、裁判所は本件プラントの設計思想、設計の前提条件、当時の技術常識、当時の業界が到達している技術レベルからすれば爆発事故を予見できたとは認められない、として予見可能を否定した。

    控訴審判決では、本件プラントの建設会社に対しては、作業員が手摺りを越えて地面に墜落する危険があることは予見可能であり、墜落防止用措置を設置する義務を怠ったとして、民法709条に基づく損害賠償責任を認めた。
    また、雇用主に対しては、本件事故当時、就業中に灰ブリッジが発生し、これを除去しなければ操業に支障が生じ、そのためには作業員が高所作業をする必要があるのに、十分な墜落防止設備を備えていない瑕疵があったとして、民法717条、国家賠償法2条により損害賠償責任を認めた。

    その結果、雇用主および建設会社の連帯損害賠償責任を認め、合計で、3985万2188円の賠償金の支払いを命じた。

    第一審:大阪地裁平成3年10月21日判決(労判655-31)
    控訴審:大阪高裁平成6年4月28日判決(判例タイムズ878-173)

    まとめ

    爆発事故による損害賠償責任が認められるには、次の4点を検討する必要があります。

    ①なぜ爆発が起こったのか⇒爆発事故の原因の特定
    ②会社は爆発事故を予見することが可能であったか
    ③会社は爆発事故を回避することが可能であったか
    ④設備が土地工作物である場合には、その設置または保存に瑕疵があったか

    これらの検討の結果、会社に安全配慮義務違反が認められる場合には、被害者と遺族は会社に対して損害賠償請求ができる可能性があります。

    いずれにしても、法的な対応や手続きは難しいので、労災問題が起きた場合は労災に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

    爆発事故について、詳しくはこちら⇒爆発事故による労災の慰謝料額は?

  • 労災転落事故で損害賠償請求

    2018年01月30日

    今回は、派遣社員の仕事中の転落による死亡事故について、刑事事件と労災、民事における損害賠償の各面から解説します。

    「派遣社員転落死、運送会社を在宅起訴 検察審査で不起訴不当」(2018年1月25日 産経新聞)

    2015(平成27)年、大阪府の梱包会社の倉庫で派遣社員の女性(当時46歳)が転落死した事故について、大阪地検は、安全管理を怠り女性を死亡させたとして、労働安全衛生法違反と業務上過失致死の罪で同社の取締役(58)を在宅起訴し、法人としての同社も同法違反罪で起訴しました。

    起訴状によると、被告は労働者の指揮監督や安全管理を担当していたが、同年7月18日、作業の危険を防止する対策を怠ったことで、台車で商品の運搬をしていた女性が倉庫2階から転落し、同24日に頭蓋内損傷により死なせたとしています。

    この事故については、大阪地検が不起訴処分(嫌疑不十分)にしていたところ、2017(平成29)年10月、大阪第1検察審査会が「証拠の評価に納得できない点がある」と「不起訴不当」を議決し、地検が再捜査していたということです。

    会社(事業者)は、従業員(労働者)の労災事故を防止しなければいけません。

    「労働安全衛生法」
    第24条
    事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

    これに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役、又は50万円以下の罰金に処されます。(第119条)

    また、刑事事件としては、業務中の労働者にケガや死亡の事故が発生した場合、事業者は業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります。

    「刑法」
    第211条(業務上過失致死傷等)
    1.業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

    労災(労働災害)とは、業務を起因として労働者がケガや病気、後遺症による障害を負ったり、死亡に至ることです。

    労災が発生した場合、会社が労災手続きを行ないます。
    労災が認定された場合には、被害にあった労働者に労災給付金が支給されます。

    しかし多くの場合、ここで問題が発生します。
    重大なケガや死亡事故のケースでは、労災給付金で被害者の損害賠償金すべてをカバーできるわけではないからです。

    このようなケースにおいて、労働者やその遺族は、民事において会社に対して損害賠償請求をすることができる場合があります。

    ここでは、過去の裁判例を見てみましょう。

    「大阪高等裁判所 平成28年4月28日判決」
    労働者が足場の解体工事に従事していたところ、足場から墜落して、両手関節粉砕骨折等の傷害を負い、両手関節の可動域制限の後遺障害(併合第9級)が残った事案で、裁判所は、雇用主である会社および元請会社に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償として、また、雇用主会社の代表取締役に対して、会社法429条1項に基づく損害賠償請求として1230万4477円の支払を命じました。

    親網の安全帯の取り付け設備を設置する等、墜落を防止するための措置を講じていなかった、という理由です。

    「福岡地方裁判所 平成26年12月25日判決」
    雇用主会社と雇用契約を締結し、派遣先会社のプラントに派遣されて業務に従事していた労働者が、安全帯をつけずにパイプレンチでスクリューとモーターの連結部分を回す作業に従事していたところ、乗っていた道板が折れ、約3m30cmの高さからコンクリート土間に墜落し、脊柱圧迫骨折の傷害を負い、脊柱に中程度の変形を残すものとして後遺障害等級8級、背部痛として後遺障害等級12級、左下肢の疼痛として、後遺障害等級14級に相当する後遺障害を残しました。

    この事案で、裁判所は、雇用主会社と派遣先会社の責任を認め、連帯して695万2807円を支払うよう命じました。

    道板が労働者の体重に耐え得るものかあらかじめ確認し、安全でない道板を撤去し、より頑健かつ安全なものと交換する等の義務や、道板上で作業しないこと及び作業時に安全帯を使用することについて労働者が遵守するよう管理監督すべき義務を怠った、というのが理由です。

    会社が労働者に労働させる際には、ケガや病気、死亡事故を防ぐために安全に配慮する義務=安全配慮義務があります。(労働契約法第5条)
    また、使用者としての使用者責任もあります。(民法第715条)

    従業員や遺族は、民事において不法行為責任や安全配慮義務違反として損害賠償金を請求することができます。

    労災問題が起きた時は、法的な対応や手続きは難しいので、労災に詳しい弁護士に相談するのがいいと思います。

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    労働者やご遺族の方で会社に対する損害賠償を検討している場合のご相談はこちらから
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  • 従業員の転落死事故と会社の安全配慮義務とは!?

    2017年11月22日

    危険度の高い仕事の現場では、従業員のケガや死亡などの重大事故が起きる可能性が高まります。

    今回は、従業員の転落死事故と会社の責任について解説します。

    「高所作業中に男性社員が転落死、マリンフードと副工場長を書類送検」(2017年11月17日 産経新聞)

    泉大津労働基準監督署は、高所作業に必要な危険防止措置をとらなかったとして、大阪府豊中市の食品製造業と同社の40代男性副工場長を労働安全衛生法違反の疑いで書類送検しました。

    事故が起きたのは、2017年7月17日午前8時半頃。
    同社泉大津工場の倉庫で、50代の男性社員が在庫品の管理をする際、高さ約5・5メートルの作業台から転落して死亡しました。

    報道によると、書類送検容疑は、作業台に手すりを設置するなど、転落を防止する対策を講じなかったとしています。

     

    【労働安全衛生法はとは?】
    労働安全衛生法は、1972年に施行された法律です。
    労働災害(労災)の防止など、労働者の安全と衛生についての基準を定めており、事業者に対して労災防止の事前予防のための安全衛生管理措置を定め、遵守を義務づけています。

    かつては、職場における労働者の安全と衛生については労働基準法に規定されていましたが、これらを分離して独立させたのが本法ということなります。

     

    「労働安全衛生法」
    第1条(目的)
    この法律は、労働基準法と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

     

    第3条(事業者等の責務)
    1.事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

     

    「事業者の講ずべき措置等」について規定している条文は次のものです。

    第21条
    1.事業者は、掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

    2.事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

     

    第24条
    事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

     

    これに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役、又は50万円以下の罰金に処されます。(第119条)

    労働安全衛生法は、会社に対して安全衛生における一定の措置を講ずるように義務づけているものです。
    そのため、会社は義務であるのをわかっているのに一定の措置を講じていなかったという場合に、今回のケースのように会社と責任者が労働安全衛生法違反に問われます。

    【労働災害(労災)とは?】
    労働者(従業員)が、業務に起因して負傷(ケガ)、疾病(病気)、障害(後遺症)、死亡に至ることを「労働災害(労災)」といいます。

    労災には大きく2つあり、業務中の労災は「業務災害」、通勤中の交通事故などによるケガや病気などは「通勤災害」となります。

    労災が発生した場合、会社が労災手続きを行い、労災が認定された場合には、被害にあった労働者に労災給付金が支給されます。
    これは、労災には「労働基準法」と「労働者災害補償保険法(労災保険法)」により災害補償制度があるからです。

    しかし、労災給付金ですべての損害賠償金をカバーできるわけではありません。

    その場合、労働者やその遺族は、会社に対して民事上の損害賠償請求をすることができます。
    なぜなら、会社には労働者に労働させる際にはケガや病気、死亡事故を防ぐために安全に配慮する義務=「安全配慮義務」があるからです。

    詳しい解説はこちら⇒
    安全配慮義務を怠ると会社は損害賠償請求される!?

    会社がこれを怠った場合には、民事において不法行為責任や安全配慮義務違反として、労働者や遺族は正当な損害賠償金を請求することができることになります。

    また、ここまで見てきたように、会社には従業員の安全と衛生を守る義務があるのですから、業務の安全の徹底には慎重な対応が必要になります。

    いずれにせよ、法的な対応や手続きは難しいので、労災問題が起きた場合は労災に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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  • スポーツクラブで管理監督者残業代判決

    2017年10月11日

    「なんにも専務」、「宴会部長」、「おとぼけ課長」…世の中には、さまざまな役職がありますが、今回は「名ばかり管理職」について法的に解説します。

    「“名ばかり管理職”認定 コナミスポーツ、東京地裁」(2017年10月7日 日本経済新聞)

    コナミスポーツクラブ(東京)の元支店長の女性が、権限や裁量のない「名ばかり管理職」だったとして、未払い残業代など約650万円の支払いを求めた訴訟の判決が6日、東京地裁でありました。

    裁判長は、女性が人員不足でフロント業務などに従事し、恒常的に時間外労働を余儀なくされていたと認定。
    「裁量が相当制限され、管理監督者の地位にあったとは認めらない」と指摘し、同社に残業代約300万円と労働基準法違反への「制裁金」に当たる付加金90万円の支払いを命じました。

    判決によると、女性は、1989(平成1)年に入社。
    2007(平成19)年から都内などで支店長やマネジャーを務め、2015年に退職したということで、判決後の記者会見では、「会社の労働環境は変わっていない。判決が私のように苦しんでいる人のためになればいい」と話したということです。

     

    【管理監督者とは?】
    名ばかり管理職、という言葉が広く知られるようになったのは、2008年1月に判決があった「日本マクドナルド割増賃金請求事件判決」がきっかけでした。

    この訴訟は、マクドナルドの店長が、労働基準法が定める「管理監督者」に当たるかどうかが争われたもので、店長は管理監督者には当たらないと主張して、未払い残業代を求めました。

    判決では、原告の主張通り、店長は管理監督者には当たらないとして、日本マクドナルドに過去2年分の未払い残業代など約750万円の支払いが命じられました。

    今回の訴訟でも、同じ問題が争われているのですが、では管理監督者の何が問題となっているのか、まずは条文を見てみましょう。

    「労働基準法」
    第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
    この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

    2 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

     

    つまり、労働基準法上は、監督または管理の立場にある者=管理監督者は、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されないので、残業代を支払う必要がない、ということになります。

     

    【名ばかり管理職の何が問題なのか?】
    労働者側からすれば、実際は管理監督者といっても名ばかりのもので、給与などで相応の待遇を受けておらず、労働時間の自由裁量も認められておらず、権限や裁量が相当限定されている。
    それにもかかわらず、時間外労働を強いられ、おまけに残業代も支払われない、これは納得いかないという問題が起きてきます。

    一方、使用者側とすれば、多くの会社が人件費抑制に苦労しているのが現実です。
    残業が発生するのは避けられないが、かといって法律の通りに残業代を支払うと利益が出ない、経営を圧迫するというような悩みを持っている経営者もいるでしょう。

    そのため、一律に「部長以上は管理監督者」としたり、「課長・店長以上は管理監督者」として就業規則で定め、その者達には、残業代を支払わない、という扱いをしている会社があります。

    しかし、この取り扱いは非常に危険です。

    労働基準法上、「管理監督者」といえるための要件はかなり厳しいからです。

    厚生労働省の通達では、管理監督者といえるためには次の4つの要件が必要となります。

    1.事業主の経営に関する決定に参画(関与)していること
    2.労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
    3.自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
    4.一般の従業員に比べ、その地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること

    これらの要件を満たさないと「管理監督者」とはいえないため、会社は従業員に通常の残業代を支払う義務が生じます。

    過去の判例では、次のようなものが管理監督者ではないとされています。

    ・信金の支店長代理
    ・工事現場の現場監督者
    ・飲食店の料理長
    ・飲食店の店長
    ・バス会社の統轄運行管理者兼運行課長
    ・製造業の会社の本社主任と工場課長
    ・コンビニエンスストアの店長
    ・カラオケ店の店長
    ・不動産業の営業本部長
    ・広告代理店の部長
    ・税理士法人の管理部長

    また、会社として注意が必要なのは、今回のケースのように元従業員に訴えられ裁判となった場合、未払い残業代に付加金もプラスされて2倍の金額を支払わなければならなくなる可能性もあることです。

    詳しい解説はこちら⇒
    2倍!2倍!未払い残業代の付加金とは?

    会社側としては、「管理監督者」を定めている場合には、それが法律上「管理監督者」として有効なのかどうか、一度見直してみる必要があります。

    従業員側としては、未払い残業代を会社に対して請求することができます。
    泣き寝入りすることなく、訴訟を提起するという方法もあるので、その場合は弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

     

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  • 給料不払いで社長が逮捕。

    2017年09月11日

    今回は、支払う側にも受け取る側にも大切な賃金に関する法律を解説します。

    「給与未払い、出頭拒否で経営者逮捕 彦根労基署」(2017年9月8日 産経新聞)

    彦根労働基準監督署は、滋賀県の建築工事会社の代表取締役の男(58)を最低賃金法違反の疑いで逮捕し、法人としての同社を書類送検したと発表しました。

    男は、正社員とパート社員2人に対し、2016(平成28)年2~4月分の給与計約80万円を支払わなかったようで、「営業不振で支払えなかった」と容疑を認めているということです。

    同労基署は、「同法違反容疑での逮捕は珍しい。出頭要請に応じないなど、逃亡や証拠隠滅の可能性があった」としています。

     

    【最低賃金法とは?】
    最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定産業に従事する労働者を対象に定められた「特定最低賃金」があり、使用者は、いずれかのうち高いほうの最低額以上を労働者に支払わなければいけません。

    「最低賃金法」
    第4条(最低賃金の効力)
    1.使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

     

    これに違反した場合、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

    また、最低賃金に関する違反があった場合、労働者は労働基準監督署等に訴えることができます。

    第34条(監督機関に対する申告)
    1.労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。
    2.使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

     

    【労働基準監督官とは?】
    労働基準監督署は、「労働基準法」や「最低賃金法」などの労働基準関係法令に基づいて、労働者の最低労働基準や職場の安全衛生を守るために企業を調査・監督します。

    法律が守られていなければ使用者を指導することになりますが、企業への立ち入り調査(臨検)などをするのが厚生労働省の専門職員である「労働基準監督官」です。

    計画的に対象企業を選定して調査することを「定期監督」といい、労働者からの申告・告発を受けて調査することを「申告監督」といいます。

    労働基準監督官は、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法などの法律違反について、「刑事訴訟法」に規定する司法警察員の職務を負っているため、警察と同じような権限を行使することができます。

    第32条(労働基準監督官の権限)
    1.労働基準監督官は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、使用者の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問をすることができる。

     

    これに違反した場合も、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金になります。

    労働基準監督官の仕事の流れは通常、次のように進められます

    ①企業を訪問
    ②立ち入り調査/臨検(使用者や労働者への事情聴取、帳簿の確認など)
    ③法律違反が認められた場合、「文書指導」、「是正勧告」、「改善指導」、「使用停止命令」などを実施
    ④企業からの是正・改善報告を受けて、是正・改善が確認できれば指導は終了
    ⑤是正・改善が認められない場合、再度監督を実施し、重大・悪質な場合は送検

    また、労働基準監督官には次のような権限が与えられています。

    ・事業場への予告なしの立ち入り調査(臨検)
    ・帳簿書類の提出要求と確認
    ・使用者や労働者への尋問
    ・使用者や労働者への報告・出頭命令
    ・監督指導
    ・法令違反者の送検・逮捕

    労働基準関係法令に違反したにもかかわらず、改善が認められない使用者など(社長のほか、一定の権限を与えられている取締役や部長、課長など)は、通常では送検で済むものですが、今回のように出頭要請に応じなかったり、逃亡や証拠隠滅の可能性があるなど悪質なケースでは逮捕に至る場合もあるわけです。

    社長が逮捕されたとなれば、会社の業績全体に大きなダメージを負うことになってしまいます。

    労働基準監督署を甘くみてはいけません。
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  • 労災はパートやアルバイトにも適用されるのか?

    2017年05月14日

    今回は、パートやアルバイトの労災について解説します。

    Q)ある会社でアルバイトとして働いています。先月、業務中にケガをしてしまい入院、治療が必要で働けない状態になってしまいました。そこで労災申請について会社に相談したところ、「非正規雇用の人は労災保険の給付対象ではない」、「働けないなら辞めてもらう」と言われました。収入もなく、将来も不安だらけです。どうしたらいいのでしょうか?

    A)労災は正社員だけではなく、アルバイトでもパートでも適用されます。

    労働者が業務に起因して負傷(ケガ)、疾病(病気)、障害(後遺症)、死亡に至った場合を、労働災害(労災)といいます。

    労災には、大きくわけると2種類があり、業務中のものを「業務災害」、通勤中の交通事故等によるケガなどを「通勤災害」といいます。

    また、労働基準法により、会社(使用者)は従業員(労働者)が仕事上で病気やケガをした場合には療養補償や休業補償をすることが義務づけられています。

    「労働基準法」
    第75条(療養補償)
    1.労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
    2.前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。
    第76条(休業補償)
    1.労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。
    ここで問題となるのは、事業主にケガをした従業員に対する補償をする能力がないケースです。

    その場合、従業員はケガをしたうえに働けず、収入が途絶えてしまいます。
    さらに補償も受けられないならば、経済的に困った状態に陥ってしまうでしょう。

    そこで、従業員が労災にあった時には確実に補償が受けられるようにするために、国が法律で「労災保険制度」というものを定めています。
    つまり、労災にあった従業員は給付金を請求することができるわけです。

    「労働者災害補償保険法」
    第2条
    労働者災害補償保険は、政府が、これを管掌する。
    では次に、パートやアルバイト、契約社員など正規雇用ではない場合にも労災が適用されるかという問題ですが、こちらも条文を見てみましょう。

    「労働基準法」
    第9条(定義)
    この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
    つまり、法律ではパートやアルバイトも含むすべての労働者が、労災保険の補償対象になると規定しているわけです。

    経営者や法務・人事担当者の中には、非正規雇用者は労災保険の給付対象ではないと思っている人が見受けられますが、これは間違いですから十分に注意していただきたいと思います。

    また、労災が起きた場合、会社は所轄の労働基準監督署に「労働者死傷病報告書」を提出しなければいけません。
    これを怠ったり、虚偽の報告をした場合は犯罪になる可能性があります。

    詳しい解説はこちら⇒「労災隠しは犯罪です」
    https://taniharamakoto.com/archives/2025/

    なお、労災保険で労働者の損害がすべて填補されない場合などの事情によっては、従業員は会社に対して損害賠償請求をすることもできます。
    これは、会社には従業員に労働させる際、ケガや病気を防ぐために安全に配慮する義務=「安全配慮義務」があるからです。

    詳しい解説はこちら⇒
    「安全配慮義務を怠ると会社は損害賠償請求される!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1965/

    いずれにせよ、労災問題が起きた場合は、労災に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

    会社側からのご相談はこちらから⇒
    http://roudou-sos.jp/flow/

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  • 労基法と休憩時間

    2017年05月07日

    今回は、労働時間と休憩時間について解説します。

    Q)私が勤務している会社では仕事が忙しく、休憩時間もろくに取れません。とても損をしている気がします。休めない休憩時間の分を給料に上乗せしてもらうような方法はないでしょうか?

    A)労働基準法では、従業員の1日における労働時間と休憩時間が定められています。規定通りに従業員に休憩を与えていないのであれば、会社は労働基準法違反に問われる可能性があります。また、従業員は休憩時間に労働していた分の賃金を請求できます。
    【労働基準法とは?】
    「労働基準法」は、1947(昭和22)年に制定された法律です。
    会社に比べて立場の弱い労働者の保護を図ることを目的として、会社が守らなければいけない最低限の労働条件などについて定めています。
    【休憩時間とは?】
    会社が従業員に自由に利用させなければいけないもので、次のように規定されています。

    第34条(休憩)
    1.使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
    2.前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
    3.使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
    【労働時間と休憩時間の違いとは?】
    では、労働時間と休憩時間の違い、その境界線はどこにあるのでしょうか?
    労働時間については次のような判例があります。

    「労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」
    (三菱重工業長崎造船所事件 最高裁一小平成12年3月9日民集54巻3号801頁)

    詳しい解説はこちら⇒「仕事中の待機時間に賃金は発生するのか?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1949/

    今回の質問内容からだけでは、どのような労働状況なのか詳しくはわかりませんが、従業員が会社の指揮命令下に置かれた時間は労働時間になるわけですから、休憩時間にもかかわらず会社(上司)からの命令・指示で働かされて休憩できないような状況であれば、会社は労働基準法に違反していると考えられるでしょう。

    会社は、従業員の労働時間だけでなく休憩時間もしっかりと管理することが求められます。

    近年、労働基準法違反については労働基準監督署が取り締まりを強化しているようです。悪質な違反については書類送検され、刑事罰を受けることになりかねません。

    労使双方がお互いに尊重し合いながら、未来志向でともに発展していくことができる労働環境を目指していただきたいと思います。

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  • 従業員への罰金制度は法律違反です。

    2017年04月25日

    今回は、従業員のミスや欠勤などに対して罰金を課すと、会社や社長などが逮捕、書類送検される可能性があるということについて解説します。

    Q)私の会社では「罰金制度」があります。遅刻や欠勤、営業成績などで罰金を取られるのです。上司などは、ゲーム感覚のようにとらえている部分もあるようなのですが、正直、私は納得がいきません。従業員から罰金を取ることは法律的には違法ではないのでしょうか?

    A)使用者は労働者に対して罰金を支払わせる契約を結ぶことはできません。もし罰金を課している会社があれば、労働基準法違反に問われる可能性があります。
    労働基準法は、会社に比べて立場の弱い労働者の保護を図ることを目的として1947(昭和22)年に制定された法律で、会社が守らなければいけない最低限の労働条件などについて定めています。

    では、今回の質問に関係する条文を見てみましょう。

    「労働基準法」
    第16条(賠償予定の禁止)
    使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
    これに違反した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。

    たとえば、従業員が無断欠勤をしたり、何らかのノルマを課して達成できなかった場合に罰金を取るといったことをすると、使用者として社長や店長などが逮捕、書類送検される可能性があるわけです。

    近年、こうした罰金制度に関する労働基準法違反の報道が相次いでいるので、以下にまとめておきます。
    2016年8月、人気の喫茶店チェーン店で、アルバイトがオーダーのミスをしたり、辞める1ヵ月前に報告しなかった場合や無断欠勤した場合に罰金を課していた店舗があったことが発覚。
    2017年1月、コンビニチェーン大手の東京都武蔵野市の加盟店が、風邪で欠勤したアルバイトの女子高生(16)から9350円の罰金を取っていたことが発覚。
    女子生徒は、1月後半に風邪のため2日間、計10時間を欠勤したところ、給与明細に「ペナルティ」、「9350円」と書かれた付箋が貼られていた。
    親会社の広報センター担当者は、「加盟店の法令に対する認識不足で申し訳ない」、「労働者に対して減給の制裁を定める場合、減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が賃金総額の10分の1を超えてはならない、と定めた労基法91条(制裁規定の制限)に違反すると判断した」として、加盟店に返金を指導した。
    2017年2月、コンビニチェーン大手の名古屋市北区の加盟店でアルバイトの急な欠勤に罰金を課していたとして、愛知県警は中国籍の夫婦で経営者の男(37)と店長の女(37)を労働基準法(賠償予定の禁止)違反の疑いで書類送検した。
    容疑者の2人は、「急にバイトが休むと、自分たちが穴埋めをしなければいけない。自由な時間が欲しかった」という理由で、10~30代のバイト男女5人に「急に欠勤した場合は1回1万円の罰金を徴収する」との契約を結ばせていた。
    実際、欠勤したバイトはいなかったとみられるが、1人には3回遅刻した罰金として、計3万円を支払わせたという。
    2017年2月、中古車販売大手会社内で、自動車保険の契約について月間目標額が定められ、目標を下回った販売店の店長が上回った店長に現金を支払うことが慣行になっていたことが発覚。
    同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた。
    社長は社内メールで、「罰金を払うということは、店長としての仕事をしてないということだ!」、「罰金を払い続けて、店長として(中略)恥ずかしくないか!」などと記載していたという。
    ところで、この労働基準法第16条は、条文にあるように「損害賠償額を予定する契約をしてはならない」としていることに注意が必要です。

    つまり、賠償額を予定する契約を禁止しているのであって、従業員に損害賠償請求することを禁止するものではないため、たとえば従業員のミスによって会社に損害が生じた場合は、会社がその賠償を従業員に求めることは違法ではないということです。

    また、会社としては、「ノーワーク・ノーペイ」の原則から考えれば、従業員が遅刻や無断欠勤した場合は、その間は働いていないので、当然その分の給料は支払わなくてもいいということになります。
    就業規則に、「遅刻や無断欠勤、仕事のミスなどの場合は減給する」と記載することで対応すればいいでしょう。

    なお、罰金を給料から天引きした場合は、労働基準法第24条(賃金の支払)に問われる可能性があります。

    労働基準法第24条では、賃金の支払いには次の「5つの原則」を定めています。

    ・通貨払いの原則
    ・直接払いの原則
    ・全額払いの原則
    ・毎月1回以上払いの原則
    ・一定期日払いの原則

    つまり、給料やアルバイト代は天引きせずに、労働者に対し、直接、全額を支払わなければいけないので使用者側には気をつけてほしいと思います。

    万が一、労働トラブルが起きた場合は、まずは一度、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

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  • 店長は名ばかり管理職?(残業代あり)

    2017年02月21日

    企業では、これまで会社を支え、発展させてきた功労者である会長が、退任後に名誉会長と呼ばれることがあります。

    また、社長や取締役、顧問、相談役などを務めた人が名誉顧問になることもあります。

    こうした肩書は、名誉職や栄誉職とも呼ばれ、実質的な権限や責任は持ちませんが、当然一目置かれる存在であったり、中には依然として実質的な権力を掌握している名誉会長という人もいるでしょう。

    一方、会社で管理職に出世したはいいがそれは名前ばかりで、実際には何の権限はなく、おまけに仕事量だけは多いのに残業代はカットされて給料が上がらず働いている、という人もいるかもしれません。

    今回は、こうした「名ばかり管理職」問題について解説します。

    「ほっともっと店長は管理職? “名ばかり”認め、未払い残業代支払い命令 静岡」(2017年2月17日 産経新聞)

    持ち帰り弁当チェーンの「ほっともっと」の元店長(30代・女性)が、「ほっともっと」の店長は権限や裁量のない「名ばかり管理職」で、残業代が支払われなかったのは違法だとして、運営会社「プレナス」(福岡市)に未払い賃金など511万円と懲罰的付加金の支払いを求めた訴訟の判決がありました。

    運営会社側は、「店長は経営に責任を持つ管理監督者」と主張しましたが、これに対し静岡地裁は、「アルバイトの採用などで限定的な権限しかなく、店舗運営は本社のマニュアルに従っていた」、「元店長は勤務実態や権限から、管理監督者に当たるとはいえない」として、運営会社側に約160万円の支払いを命じたということです。
    さて、この訴訟では元店長が「労働監督者」に当たるかどうかが争点となりました。

    なぜなら、労働基準法上、「労働監督者」(監督もしくは管理の地位にある者)に該当する社員に対しては、会社は残業代を支払う必要がないからです。

    「労働基準法」
    第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
    この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

    2 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
    会社は、管理監督者の制度を有効に活用することで残業代を圧縮することができます。
    それは、管理監督者に該当する社員に対して残業代を支払わなくてもよいことになっているからです。

    しかし、管理監督者と管理職の違いを曖昧に解釈して、単に会社の役職である管理職、たとえば課長職や店長などの人を管理監督者とみなして残業代を払わないといった、いわゆる「名ばかり管理職」の問題が起きています。

    この、名ばかり管理職が社会的に問題化したのは2008年でした。

    日本マクドナルドが直営店の店長を管理監督者とみなして残業代を払っていなかったのは違法だとして、埼玉県内の男性店長(当時46歳)が未払い残業代など約1350万円を求めて訴訟を提起。

    1月、東京地裁は、「職務内容から店長は管理監督者とはいえない」との判決を下し、未払い残業代の支払いを命じたというものでした。

    では、会社として問題にならずに、この制度を有効に活用するにはどのような点に注意しなければいけないのでしょうか。

    裁判上、管理監督者は「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者」に限定されています。

    そして、その判断基準には次の要素が必要とされます。

    ① 事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
    ② 自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
    ③ 一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること

    この要件に照らし合わせれば、実際に管理監督者と認められるのは極めて限定的と言わざるを得ません。

    ちなみに、過去の判例では次の者たちは「管理監督者ではない」と認定されています。

    ・バス会社の統轄運行管理者兼運行課長
    ・広告代理店の部長
    ・不動産業の営業本部長
    ・税理士法人の管理部長
    ・飲食店の料理長
    ・カラオケ店の店長
    ・信金の支店長代理
    ・コンビニエンスストアの店長
    ・製造業の会社の本社主任と工場課長

    このように、要件としては厳しいものであるため、会社が残業代を支払いたくないがために社員を形式的に管理監督者にすることはできません。

    会社としては、今回のケースのように元社員に訴えられ裁判となった場合、未払い残業代に付加金もプラスされて2倍の金額を支払わなければならなくなる可能性もあるので注意が必要です。

    また、未払い残業代については、従業員側としては泣き寝入りすることなく訴訟を提起するという方法があることは覚えておいたほうがいいと思います。

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