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従業員の転落死事故と会社の安全配慮義務とは!?

 >従業員の転落死事故と会社の安全配慮義務とは!?

2017年11月22日

危険度の高い仕事の現場では、従業員のケガや死亡などの重大事故が起きる可能性が高まります。

今回は、従業員の転落死事故と会社の責任について解説します。

「高所作業中に男性社員が転落死、マリンフードと副工場長を書類送検」(2017年11月17日 産経新聞)

泉大津労働基準監督署は、高所作業に必要な危険防止措置をとらなかったとして、大阪府豊中市の食品製造業と同社の40代男性副工場長を労働安全衛生法違反の疑いで書類送検しました。

事故が起きたのは、2017年7月17日午前8時半頃。
同社泉大津工場の倉庫で、50代の男性社員が在庫品の管理をする際、高さ約5・5メートルの作業台から転落して死亡しました。

報道によると、書類送検容疑は、作業台に手すりを設置するなど、転落を防止する対策を講じなかったとしています。

 

【労働安全衛生法はとは?】
労働安全衛生法は、1972年に施行された法律です。
労働災害(労災)の防止など、労働者の安全と衛生についての基準を定めており、事業者に対して労災防止の事前予防のための安全衛生管理措置を定め、遵守を義務づけています。

かつては、職場における労働者の安全と衛生については労働基準法に規定されていましたが、これらを分離して独立させたのが本法ということなります。

 

「労働安全衛生法」
第1条(目的)
この法律は、労働基準法と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

 

第3条(事業者等の責務)
1.事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

 

「事業者の講ずべき措置等」について規定している条文は次のものです。

第21条
1.事業者は、掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

2.事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

 

第24条
事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

 

これに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役、又は50万円以下の罰金に処されます。(第119条)

労働安全衛生法は、会社に対して安全衛生における一定の措置を講ずるように義務づけているものです。
そのため、会社は義務であるのをわかっているのに一定の措置を講じていなかったという場合に、今回のケースのように会社と責任者が労働安全衛生法違反に問われます。

【労働災害(労災)とは?】
労働者(従業員)が、業務に起因して負傷(ケガ)、疾病(病気)、障害(後遺症)、死亡に至ることを「労働災害(労災)」といいます。

労災には大きく2つあり、業務中の労災は「業務災害」、通勤中の交通事故などによるケガや病気などは「通勤災害」となります。

労災が発生した場合、会社が労災手続きを行い、労災が認定された場合には、被害にあった労働者に労災給付金が支給されます。
これは、労災には「労働基準法」と「労働者災害補償保険法(労災保険法)」により災害補償制度があるからです。

しかし、労災給付金ですべての損害賠償金をカバーできるわけではありません。

その場合、労働者やその遺族は、会社に対して民事上の損害賠償請求をすることができます。
なぜなら、会社には労働者に労働させる際にはケガや病気、死亡事故を防ぐために安全に配慮する義務=「安全配慮義務」があるからです。

詳しい解説はこちら⇒
「安全配慮義務を怠ると会社は損害賠償請求される!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1965/

会社がこれを怠った場合には、民事において不法行為責任や安全配慮義務違反として、労働者や遺族は正当な損害賠償金を請求することができることになります。

また、ここまで見てきたように、会社には従業員の安全と衛生を守る義務があるのですから、業務の安全の徹底には慎重な対応が必要になります。

いずれにせよ、法的な対応や手続きは難しいので、労災問題が起きた場合は労災に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

会社側からのご相談はこちらから⇒
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労働者やご遺族の方で会社に対する損害賠償を検討している場合のご相談はこちらから⇒
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スポーツクラブで管理監督者残業代判決

 >スポーツクラブで管理監督者残業代判決

2017年10月11日

「なんにも専務」、「宴会部長」、「おとぼけ課長」…世の中には、さまざまな役職がありますが、今回は「名ばかり管理職」について法的に解説します。

「“名ばかり管理職”認定 コナミスポーツ、東京地裁」(2017年10月7日 日本経済新聞)

コナミスポーツクラブ(東京)の元支店長の女性が、権限や裁量のない「名ばかり管理職」だったとして、未払い残業代など約650万円の支払いを求めた訴訟の判決が6日、東京地裁でありました。

裁判長は、女性が人員不足でフロント業務などに従事し、恒常的に時間外労働を余儀なくされていたと認定。
「裁量が相当制限され、管理監督者の地位にあったとは認めらない」と指摘し、同社に残業代約300万円と労働基準法違反への「制裁金」に当たる付加金90万円の支払いを命じました。

判決によると、女性は、1989(平成1)年に入社。
2007(平成19)年から都内などで支店長やマネジャーを務め、2015年に退職したということで、判決後の記者会見では、「会社の労働環境は変わっていない。判決が私のように苦しんでいる人のためになればいい」と話したということです。

 

【管理監督者とは?】
名ばかり管理職、という言葉が広く知られるようになったのは、2008年1月に判決があった「日本マクドナルド割増賃金請求事件判決」がきっかけでした。

この訴訟は、マクドナルドの店長が、労働基準法が定める「管理監督者」に当たるかどうかが争われたもので、店長は管理監督者には当たらないと主張して、未払い残業代を求めました。

判決では、原告の主張通り、店長は管理監督者には当たらないとして、日本マクドナルドに過去2年分の未払い残業代など約750万円の支払いが命じられました。

今回の訴訟でも、同じ問題が争われているのですが、では管理監督者の何が問題となっているのか、まずは条文を見てみましょう。

「労働基準法」
第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

2 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

 

つまり、労働基準法上は、監督または管理の立場にある者=管理監督者は、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されないので、残業代を支払う必要がない、ということになります。

 

【名ばかり管理職の何が問題なのか?】
労働者側からすれば、実際は管理監督者といっても名ばかりのもので、給与などで相応の待遇を受けておらず、労働時間の自由裁量も認められておらず、権限や裁量が相当限定されている。
それにもかかわらず、時間外労働を強いられ、おまけに残業代も支払われない、これは納得いかないという問題が起きてきます。

一方、使用者側とすれば、多くの会社が人件費抑制に苦労しているのが現実です。
残業が発生するのは避けられないが、かといって法律の通りに残業代を支払うと利益が出ない、経営を圧迫するというような悩みを持っている経営者もいるでしょう。

そのため、一律に「部長以上は管理監督者」としたり、「課長・店長以上は管理監督者」として就業規則で定め、その者達には、残業代を支払わない、という扱いをしている会社があります。

しかし、この取り扱いは非常に危険です。

労働基準法上、「管理監督者」といえるための要件はかなり厳しいからです。

厚生労働省の通達では、管理監督者といえるためには次の4つの要件が必要となります。

1.事業主の経営に関する決定に参画(関与)していること
2.労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
3.自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
4.一般の従業員に比べ、その地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること

これらの要件を満たさないと「管理監督者」とはいえないため、会社は従業員に通常の残業代を支払う義務が生じます。

過去の判例では、次のようなものが管理監督者ではないとされています。

・信金の支店長代理
・工事現場の現場監督者
・飲食店の料理長
・飲食店の店長
・バス会社の統轄運行管理者兼運行課長
・製造業の会社の本社主任と工場課長
・コンビニエンスストアの店長
・カラオケ店の店長
・不動産業の営業本部長
・広告代理店の部長
・税理士法人の管理部長

また、会社として注意が必要なのは、今回のケースのように元従業員に訴えられ裁判となった場合、未払い残業代に付加金もプラスされて2倍の金額を支払わなければならなくなる可能性もあることです。

詳しい解説はこちら⇒
「2倍!2倍!未払い残業代の付加金とは?」
https://taniharamakoto.com/archives/1889/

会社側としては、「管理監督者」を定めている場合には、それが法律上「管理監督者」として有効なのかどうか、一度見直してみる必要があります。

従業員側としては、未払い残業代を会社に対して請求することができます。
泣き寝入りすることなく、訴訟を提起するという方法もあるので、その場合は弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

 

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給料不払いで社長が逮捕。

 >給料不払いで社長が逮捕。

2017年9月11日

今回は、支払う側にも受け取る側にも大切な賃金に関する法律を解説します。

「給与未払い、出頭拒否で経営者逮捕 彦根労基署」(2017年9月8日 産経新聞)

彦根労働基準監督署は、滋賀県の建築工事会社の代表取締役の男(58)を最低賃金法違反の疑いで逮捕し、法人としての同社を書類送検したと発表しました。

男は、正社員とパート社員2人に対し、2016(平成28)年2~4月分の給与計約80万円を支払わなかったようで、「営業不振で支払えなかった」と容疑を認めているということです。

同労基署は、「同法違反容疑での逮捕は珍しい。出頭要請に応じないなど、逃亡や証拠隠滅の可能性があった」としています。

 

【最低賃金法とは?】
最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定産業に従事する労働者を対象に定められた「特定最低賃金」があり、使用者は、いずれかのうち高いほうの最低額以上を労働者に支払わなければいけません。

「最低賃金法」
第4条(最低賃金の効力)
1.使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

 

これに違反した場合、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

また、最低賃金に関する違反があった場合、労働者は労働基準監督署等に訴えることができます。

第34条(監督機関に対する申告)
1.労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。
2.使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

【労働基準監督官とは?】
労働基準監督署は、「労働基準法」や「最低賃金法」などの労働基準関係法令に基づいて、労働者の最低労働基準や職場の安全衛生を守るために企業を調査・監督します。

法律が守られていなければ使用者を指導することになりますが、企業への立ち入り調査(臨検)などをするのが厚生労働省の専門職員である「労働基準監督官」です。

計画的に対象企業を選定して調査することを「定期監督」といい、労働者からの申告・告発を受けて調査することを「申告監督」といいます。

労働基準監督官は、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法などの法律違反について、「刑事訴訟法」に規定する司法警察員の職務を負っているため、警察と同じような権限を行使することができます。

第32条(労働基準監督官の権限)
1.労働基準監督官は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、使用者の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問をすることができる。

 

これに違反した場合も、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金になります。

労働基準監督官の仕事の流れは通常、次のように進められます

①企業を訪問
②立ち入り調査/臨検(使用者や労働者への事情聴取、帳簿の確認など)
③法律違反が認められた場合、「文書指導」、「是正勧告」、「改善指導」、「使用停止命令」などを実施
④企業からの是正・改善報告を受けて、是正・改善が確認できれば指導は終了
⑤是正・改善が認められない場合、再度監督を実施し、重大・悪質な場合は送検

また、労働基準監督官には次のような権限が与えられています。

・事業場への予告なしの立ち入り調査(臨検)
・帳簿書類の提出要求と確認
・使用者や労働者への尋問
・使用者や労働者への報告・出頭命令
・監督指導
・法令違反者の送検・逮捕

労働基準関係法令に違反したにもかかわらず、改善が認められない使用者など(社長のほか、一定の権限を与えられている取締役や部長、課長など)は、通常では送検で済むものですが、今回のように出頭要請に応じなかったり、逃亡や証拠隠滅の可能性があるなど悪質なケースでは逮捕に至る場合もあるわけです。

社長が逮捕されたとなれば、会社の業績全体に大きなダメージを負うことになってしまいます。

労働基準監督署を甘くみてはいけません。
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労災はパートやアルバイトにも適用されるのか?

 >労災はパートやアルバイトにも適用されるのか?

2017年5月14日

今回は、パートやアルバイトの労災について解説します。

Q)ある会社でアルバイトとして働いています。先月、業務中にケガをしてしまい入院、治療が必要で働けない状態になってしまいました。そこで労災申請について会社に相談したところ、「非正規雇用の人は労災保険の給付対象ではない」、「働けないなら辞めてもらう」と言われました。収入もなく、将来も不安だらけです。どうしたらいいのでしょうか?

A)労災は正社員だけではなく、アルバイトでもパートでも適用されます。

労働者が業務に起因して負傷(ケガ)、疾病(病気)、障害(後遺症)、死亡に至った場合を、労働災害(労災)といいます。

労災には、大きくわけると2種類があり、業務中のものを「業務災害」、通勤中の交通事故等によるケガなどを「通勤災害」といいます。

また、労働基準法により、会社(使用者)は従業員(労働者)が仕事上で病気やケガをした場合には療養補償や休業補償をすることが義務づけられています。

「労働基準法」
第75条(療養補償)
1.労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2.前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。
第76条(休業補償)
1.労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。
ここで問題となるのは、事業主にケガをした従業員に対する補償をする能力がないケースです。

その場合、従業員はケガをしたうえに働けず、収入が途絶えてしまいます。
さらに補償も受けられないならば、経済的に困った状態に陥ってしまうでしょう。

そこで、従業員が労災にあった時には確実に補償が受けられるようにするために、国が法律で「労災保険制度」というものを定めています。
つまり、労災にあった従業員は給付金を請求することができるわけです。

「労働者災害補償保険法」
第2条
労働者災害補償保険は、政府が、これを管掌する。
では次に、パートやアルバイト、契約社員など正規雇用ではない場合にも労災が適用されるかという問題ですが、こちらも条文を見てみましょう。

「労働基準法」
第9条(定義)
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
つまり、法律ではパートやアルバイトも含むすべての労働者が、労災保険の補償対象になると規定しているわけです。

経営者や法務・人事担当者の中には、非正規雇用者は労災保険の給付対象ではないと思っている人が見受けられますが、これは間違いですから十分に注意していただきたいと思います。

また、労災が起きた場合、会社は所轄の労働基準監督署に「労働者死傷病報告書」を提出しなければいけません。
これを怠ったり、虚偽の報告をした場合は犯罪になる可能性があります。

詳しい解説はこちら⇒「労災隠しは犯罪です」
https://taniharamakoto.com/archives/2025/

なお、労災保険で労働者の損害がすべて填補されない場合などの事情によっては、従業員は会社に対して損害賠償請求をすることもできます。
これは、会社には従業員に労働させる際、ケガや病気を防ぐために安全に配慮する義務=「安全配慮義務」があるからです。

詳しい解説はこちら⇒
「安全配慮義務を怠ると会社は損害賠償請求される!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1965/

いずれにせよ、労災問題が起きた場合は、労災に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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労基法と休憩時間

 >労基法と休憩時間

2017年5月7日

今回は、労働時間と休憩時間について解説します。

Q)私が勤務している会社では仕事が忙しく、休憩時間もろくに取れません。とても損をしている気がします。休めない休憩時間の分を給料に上乗せしてもらうような方法はないでしょうか?

A)労働基準法では、従業員の1日における労働時間と休憩時間が定められています。規定通りに従業員に休憩を与えていないのであれば、会社は労働基準法違反に問われる可能性があります。また、従業員は休憩時間に労働していた分の賃金を請求できます。
【労働基準法とは?】
「労働基準法」は、1947(昭和22)年に制定された法律です。
会社に比べて立場の弱い労働者の保護を図ることを目的として、会社が守らなければいけない最低限の労働条件などについて定めています。
【休憩時間とは?】
会社が従業員に自由に利用させなければいけないもので、次のように規定されています。

第34条(休憩)
1.使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
2.前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
3.使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
【労働時間と休憩時間の違いとは?】
では、労働時間と休憩時間の違い、その境界線はどこにあるのでしょうか?
労働時間については次のような判例があります。

「労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」
(三菱重工業長崎造船所事件 最高裁一小平成12年3月9日民集54巻3号801頁)

詳しい解説はこちら⇒「仕事中の待機時間に賃金は発生するのか?」
https://taniharamakoto.com/archives/1949/

今回の質問内容からだけでは、どのような労働状況なのか詳しくはわかりませんが、従業員が会社の指揮命令下に置かれた時間は労働時間になるわけですから、休憩時間にもかかわらず会社(上司)からの命令・指示で働かされて休憩できないような状況であれば、会社は労働基準法に違反していると考えられるでしょう。

会社は、従業員の労働時間だけでなく休憩時間もしっかりと管理することが求められます。

近年、労働基準法違反については労働基準監督署が取り締まりを強化しているようです。悪質な違反については書類送検され、刑事罰を受けることになりかねません。

労使双方がお互いに尊重し合いながら、未来志向でともに発展していくことができる労働環境を目指していただきたいと思います。

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従業員への罰金制度は法律違反です。

 >従業員への罰金制度は法律違反です。

2017年4月25日

今回は、従業員のミスや欠勤などに対して罰金を課すと、会社や社長などが逮捕、書類送検される可能性があるということについて解説します。

Q)私の会社では「罰金制度」があります。遅刻や欠勤、営業成績などで罰金を取られるのです。上司などは、ゲーム感覚のようにとらえている部分もあるようなのですが、正直、私は納得がいきません。従業員から罰金を取ることは法律的には違法ではないのでしょうか?

A)使用者は労働者に対して罰金を支払わせる契約を結ぶことはできません。もし罰金を課している会社があれば、労働基準法違反に問われる可能性があります。
労働基準法は、会社に比べて立場の弱い労働者の保護を図ることを目的として1947(昭和22)年に制定された法律で、会社が守らなければいけない最低限の労働条件などについて定めています。

では、今回の質問に関係する条文を見てみましょう。

「労働基準法」
第16条(賠償予定の禁止)
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
これに違反した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。

たとえば、従業員が無断欠勤をしたり、何らかのノルマを課して達成できなかった場合に罰金を取るといったことをすると、使用者として社長や店長などが逮捕、書類送検される可能性があるわけです。

近年、こうした罰金制度に関する労働基準法違反の報道が相次いでいるので、以下にまとめておきます。
2016年8月、人気の喫茶店チェーン店で、アルバイトがオーダーのミスをしたり、辞める1ヵ月前に報告しなかった場合や無断欠勤した場合に罰金を課していた店舗があったことが発覚。
2017年1月、コンビニチェーン大手の東京都武蔵野市の加盟店が、風邪で欠勤したアルバイトの女子高生(16)から9350円の罰金を取っていたことが発覚。
女子生徒は、1月後半に風邪のため2日間、計10時間を欠勤したところ、給与明細に「ペナルティ」、「9350円」と書かれた付箋が貼られていた。
親会社の広報センター担当者は、「加盟店の法令に対する認識不足で申し訳ない」、「労働者に対して減給の制裁を定める場合、減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が賃金総額の10分の1を超えてはならない、と定めた労基法91条(制裁規定の制限)に違反すると判断した」として、加盟店に返金を指導した。
2017年2月、コンビニチェーン大手の名古屋市北区の加盟店でアルバイトの急な欠勤に罰金を課していたとして、愛知県警は中国籍の夫婦で経営者の男(37)と店長の女(37)を労働基準法(賠償予定の禁止)違反の疑いで書類送検した。
容疑者の2人は、「急にバイトが休むと、自分たちが穴埋めをしなければいけない。自由な時間が欲しかった」という理由で、10~30代のバイト男女5人に「急に欠勤した場合は1回1万円の罰金を徴収する」との契約を結ばせていた。
実際、欠勤したバイトはいなかったとみられるが、1人には3回遅刻した罰金として、計3万円を支払わせたという。
2017年2月、中古車販売大手会社内で、自動車保険の契約について月間目標額が定められ、目標を下回った販売店の店長が上回った店長に現金を支払うことが慣行になっていたことが発覚。
同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた。
社長は社内メールで、「罰金を払うということは、店長としての仕事をしてないということだ!」、「罰金を払い続けて、店長として(中略)恥ずかしくないか!」などと記載していたという。
ところで、この労働基準法第16条は、条文にあるように「損害賠償額を予定する契約をしてはならない」としていることに注意が必要です。

つまり、賠償額を予定する契約を禁止しているのであって、従業員に損害賠償請求することを禁止するものではないため、たとえば従業員のミスによって会社に損害が生じた場合は、会社がその賠償を従業員に求めることは違法ではないということです。

また、会社としては、「ノーワーク・ノーペイ」の原則から考えれば、従業員が遅刻や無断欠勤した場合は、その間は働いていないので、当然その分の給料は支払わなくてもいいということになります。
就業規則に、「遅刻や無断欠勤、仕事のミスなどの場合は減給する」と記載することで対応すればいいでしょう。

なお、罰金を給料から天引きした場合は、労働基準法第24条(賃金の支払)に問われる可能性があります。

労働基準法第24条では、賃金の支払いには次の「5つの原則」を定めています。

・通貨払いの原則
・直接払いの原則
・全額払いの原則
・毎月1回以上払いの原則
・一定期日払いの原則

つまり、給料やアルバイト代は天引きせずに、労働者に対し、直接、全額を支払わなければいけないので使用者側には気をつけてほしいと思います。

万が一、労働トラブルが起きた場合は、まずは一度、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

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店長は名ばかり管理職?(残業代あり)

 >店長は名ばかり管理職?(残業代あり)

2017年2月21日

企業では、これまで会社を支え、発展させてきた功労者である会長が、退任後に名誉会長と呼ばれることがあります。

また、社長や取締役、顧問、相談役などを務めた人が名誉顧問になることもあります。

こうした肩書は、名誉職や栄誉職とも呼ばれ、実質的な権限や責任は持ちませんが、当然一目置かれる存在であったり、中には依然として実質的な権力を掌握している名誉会長という人もいるでしょう。

一方、会社で管理職に出世したはいいがそれは名前ばかりで、実際には何の権限はなく、おまけに仕事量だけは多いのに残業代はカットされて給料が上がらず働いている、という人もいるかもしれません。

今回は、こうした「名ばかり管理職」問題について解説します。

「ほっともっと店長は管理職? “名ばかり”認め、未払い残業代支払い命令 静岡」(2017年2月17日 産経新聞)

持ち帰り弁当チェーンの「ほっともっと」の元店長(30代・女性)が、「ほっともっと」の店長は権限や裁量のない「名ばかり管理職」で、残業代が支払われなかったのは違法だとして、運営会社「プレナス」(福岡市)に未払い賃金など511万円と懲罰的付加金の支払いを求めた訴訟の判決がありました。

運営会社側は、「店長は経営に責任を持つ管理監督者」と主張しましたが、これに対し静岡地裁は、「アルバイトの採用などで限定的な権限しかなく、店舗運営は本社のマニュアルに従っていた」、「元店長は勤務実態や権限から、管理監督者に当たるとはいえない」として、運営会社側に約160万円の支払いを命じたということです。
さて、この訴訟では元店長が「労働監督者」に当たるかどうかが争点となりました。

なぜなら、労働基準法上、「労働監督者」(監督もしくは管理の地位にある者)に該当する社員に対しては、会社は残業代を支払う必要がないからです。

「労働基準法」
第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

2 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
会社は、管理監督者の制度を有効に活用することで残業代を圧縮することができます。
それは、管理監督者に該当する社員に対して残業代を支払わなくてもよいことになっているからです。

しかし、管理監督者と管理職の違いを曖昧に解釈して、単に会社の役職である管理職、たとえば課長職や店長などの人を管理監督者とみなして残業代を払わないといった、いわゆる「名ばかり管理職」の問題が起きています。

この、名ばかり管理職が社会的に問題化したのは2008年でした。

日本マクドナルドが直営店の店長を管理監督者とみなして残業代を払っていなかったのは違法だとして、埼玉県内の男性店長(当時46歳)が未払い残業代など約1350万円を求めて訴訟を提起。

1月、東京地裁は、「職務内容から店長は管理監督者とはいえない」との判決を下し、未払い残業代の支払いを命じたというものでした。

では、会社として問題にならずに、この制度を有効に活用するにはどのような点に注意しなければいけないのでしょうか。

裁判上、管理監督者は「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者」に限定されています。

そして、その判断基準には次の要素が必要とされます。

① 事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
② 自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
③ 一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること

この要件に照らし合わせれば、実際に管理監督者と認められるのは極めて限定的と言わざるを得ません。

ちなみに、過去の判例では次の者たちは「管理監督者ではない」と認定されています。

・バス会社の統轄運行管理者兼運行課長
・広告代理店の部長
・不動産業の営業本部長
・税理士法人の管理部長
・飲食店の料理長
・カラオケ店の店長
・信金の支店長代理
・コンビニエンスストアの店長
・製造業の会社の本社主任と工場課長

このように、要件としては厳しいものであるため、会社が残業代を支払いたくないがために社員を形式的に管理監督者にすることはできません。

会社としては、今回のケースのように元社員に訴えられ裁判となった場合、未払い残業代に付加金もプラスされて2倍の金額を支払わなければならなくなる可能性もあるので注意が必要です。

また、未払い残業代については、従業員側としては泣き寝入りすることなく訴訟を提起するという方法があることは覚えておいたほうがいいと思います。

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土下座強要がパワハラと認定された事例

 >土下座強要がパワハラと認定された事例

2016年10月27日

今回は、土下座の強要がパワーハラスメント(パワハラ)に認定されたという報道について解説します。

この問題、じつはさまざまな争点をはらんでいる可能性があります。

「同僚への土下座強要はパワハラ 日本郵便に賠償命令」(2016年10月26日 西日本新聞)

2011年に福岡県内の郵便局員の男性(当時41歳)が突然死したことについて、原因は当時の郵便局長から受けたパワハラだとして、遺族が日本郵便に1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が福岡高裁でありました。

判決によると、男性局員はうつ病で休職中の2011年12月に致死性不整脈で死亡。
同年の5月と10月には、局長から「いつ辞めてもらってもいいくらいだ」、「あんたが出てきたら皆に迷惑」などと言われたとしています。

これについては、2016年3月にあった1審の福岡地裁小倉支部判決と同様に、今回の福岡高裁もパワハラと認定。
1審判決では220万円の支払いを命じていましたが、今回の判決では330万円の支払いを命じました。

また、2011年6月に男性局員を含む複数の局員が参加した朝礼で、局長が別の局員を土下座させた行為についても、「その場にいたすべての職員に対する安全配慮義務に違反する」としてパワハラと認定しました。

一方、パワハラと死亡の因果関係については、一審判決と同様に今回も認めなかったということです。
【パワハラとは?】
パワハラについては、次のように定義されています。

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」

「上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。」
(厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」より)

パワハラが成立するための要件としては次の3つがあげられます。

①それが同じ職場で働く者に対して行われたか
②職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に行われたものであるか
③業務の適正な範囲を超えて、精神的・肉体的苦痛を与え、また職場環境を悪化させるものであるか

さらに、パワハラとなる行為としては次の6つがあります。

①身体的な攻撃(暴行・傷害)
②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

パワハラが行われた場合、今回の事案のように民事裁判では、被害者は損害賠償を求めて訴訟を起こすことができます。
それは、会社には社員に対して「職場環境配慮義務」と「使用者責任」
があるからです。

職場環境配慮義務とは、従業員との間で交わした雇用契約に付随して、会社には職場環境を整える義務があるというものです。
社員等にパワハラやセクハラなどの被害が発生した場合、職場環境配慮義務違反(債務不履行責任<民法第415条>)として、会社はその損害を賠償しなければいけません。

使用者責任とは、ある事業のために他人を使用する者は、被用者(社員)が第三者に対して加えた損害を賠償する責任があるというものです。
(民法第715条)
【パワハラと過労死の関係とは?】
労働者の業務中の負傷、疾病、障害、死亡を「労働災害」(労災)といいます。

また、通勤中でのケガ、病気などを「通勤災害」、業務中のものを「業務災害」ともいいます。

業務災害では、業務と労働者の負傷、疾病、障害、死亡との間に因果関係がある場合に労災と認められます。
その際には、2つの基準を中心に判断されます。

・業務遂行性=労働者が使用者の支配下にある状態
・業務起因性=業務に内在する危険性が現実化し、業務と死傷病の間に一定の因果関係があること。

業務災害のうち、病気によるものを「疾病災害」といい、近年増えている過労死は、長時間の過重労働等が起因となって、脳血管疾患や虚血性心疾患を発症して死に至るものとされています。
今回の事案では、パワハラはあったが、そのパワハラと突然死の因果関係について証明があったとまでは言えなかったということだと思われます。
【パワハラは刑事事件になる可能性もある?】
ところで、相手に土下座をさせると「強要罪」に問われる可能性もあります。

「刑法」
第223条(強要)
1.生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
相手に義務のない土下座などを行わせると民事だけでなく、刑事事件として強要罪で逮捕される可能性があるので、十分注意してほしいと思います。
職場でのパワハラでは、しばしば教育的指導と境界線が問題になることがありますが、今回の事案のように相手の自由を奪い、脅迫し、土下座を強要するなど、とても指導とはいえないでしょう。

人の上に立つリーダーや指導者の立場にある人は、相手に義務のない強要をしていないか、今一度、自分の言動を見つめ直してみるのもいいかもしれません。
労働トラブルのご相談は、こちらから⇒「弁護士による労働相談SOS」
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労働基準法違反で会社だけでなく部長と店長も書類送検!

 >労働基準法違反で会社だけでなく部長と店長も書類送検!

2016年10月4日

ある大手飲食チェーンで、労働基準法違反のため、部長と店長までが書類送検されたという報道がありました。

主な違反は、違法な時間外労働と残業代の未払い、さらに36協定の不備ということです。

「“すし半”のサト、違法残業月111時間 容疑で書類送検 大阪労働局」(2016年9月29日 産経新聞)

大阪労働局は、飲食チェーン大手のサトレストランシステムズ(大阪市中央区、東証1部、「和食さと」、「さん天」、「すし半」などを展開)が、従業員に違法な時間外労働をさせ、残業代の一部を支払わなかったとして、法人としての同社と、「さん天」事業推進部長、店長4人を労働基準法違反の疑いで書類送検しました。

報道によると、2015(平成27)年、本社と大阪府内の「すし半」、「和食さと」計4店で、従業員7人に対し最長で1ヵ月に111時間の時間外労働をさせ、そのうち2店では3人に割増賃金の一部(計約30万円)を所定支払日に支給しなかった容疑としています。

また、時間外労働の限度(1ヵ月に40時間)に関する労使協定(36協定)を店舗ごとに結んで労働基準監督署に届け出ていたが、労働者代表の選出に不備があり、有効な協定として認められていなかったようです。

同社は調査委員会を設置し、全店舗で未払い賃金を精査。
延べ653人に、2014(平成26)年~2015(平成27)年分の未払い賃金、計約4億円を支払ったということです。
「労働基準法」は、労働者の労働契約や労働時間、休日、賃金、安全などの労働条件の最低基準について規定しています。
労働者と使用者の双方が守るべき重要な法律なのですが、違反事例が後を絶たないのが現状です。

労働基準法では、1週40時間、1日8時間しか労働者を働かせてはいけないことになっており、それ以上働かせた場合は、割増賃金を支払わなければなりません。

時間外労働をさせて割増賃金(残業代)を支払わなかった場合、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。
・「36協定」(第36条)
会社は、過半数組合または過半数代表者との書面による労使協定を締結
し、かつ行政官庁にこれを届けることにより、その協定の定めに従い労働
者に時間外休日労働をさせることができます。
第36条に規定されているため、これを36協定といいます。

届け出をしないで時間外労働をさせた場合、労働基準法違反で6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。

なお、現行では労使が36協定を結んだ場合の残業時間の上限は、厚生労働相の告示により「1ヵ月45時間」という基準が定められていますが、例外規定があり、「特別の事情」について労使の合意があれば上限を守らなくてもよい、ということになっています。
今回のケースでは、36協定により1ヵ月に40時間の残業と決めていたにもかかわらず、中には111時間も残業をさせていた従業員がおり、しかもその協定自体に不備があり、おまけに残業代もきちんと支払っていなかったわけですから、労働基準法違反を指摘されるのは当然でしょう。

しかし、労働基準法違反で法人としての会社が書類送検される事例はよくありますが、部長と店長までが書類送検されるというのは、過去の事例から見ても珍しいケースといえます。

ではなぜ、そうした結果になったのかといえば、違反行為が悪質だったからだと思われます。

別の報道によれば、大阪労働局はこれまでも複数の店舗に対して労務管理を改めるように指導してきたにもかかわらず改善が見られなかったため、2015年12月に強制捜査に踏み切り、実態の把握を進めていたとしています。

また、違法な残業は過労死の問題にもつながる可能性があります。
厚生労働省が通達している「過労死ライン」では、1ヵ月の残業時間が80時間を超えると過労死のリスクが高まるとされています。

さらに、過労死の労災認定基準としては、脳血管疾患及び虚血性心疾患等について、「発症前1ヵ月間におおむね100時間又は発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる」とされていることからも、会社の行為は従業員の過労死につながりかねない悪質なものと判断されたのだと思います。
ところで、こうした未払い残業代について、労働者である従業員の方は会社を相手に民事で訴訟を起こすことができます。

訴えが認められれば、従業員の方は、本来手にするべき残業代を受取ることができます。

同時に、会社(使用者)としては次の3つを支払わなければいけません。

①「未払い残業代の支払い」
認定された残業代の未払い分の全額を支払わなければいけません。

②「付加金の支払い」
裁判所が必要と認めた場合、未払い残業代と同額を上限とした付加金を支払わなければいけません。
会社側の違反が悪質な場合などでは、全額が認められるケースも多くあります。

③「遅延損害金の支払い」
未払い残業代と付加金には利息がつきますが、これを「遅延損害金」といいます。
利息の利率は、社員(労働者)が在職中であれば6%、退職している場合は14.6%と2倍以上になります。
今回のケースでは、会社のこうした支払い金のトータルが約4億円にものぼったということです。

場合によっては、会社は未払い残業代の2倍以上の金額を従業員に支払わなければいけません。
さらに、複数の従業員ともなれば、これは大変な金額になってしまいます。
体力の乏しい会社などは、会社存亡の危機に陥ってしまいかねない事態でしょう。

そうした危機に陥らないためにも、「悪しき慣例」として長時間労働が当然とはならないよう、会社と経営陣には法律を遵守した経営が求められます。

また万が一、残業代の未払いがある従業員の方は泣き寝入りする必要はありません。
弁護士に相談するなどして、適正な残業代を受取るべきだと思います。

未払い残業代に関する相談は、こちらから⇒ http://roudou-sos.jp/zangyou2/
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過労死の認定基準と損害賠償について法律解説

 >過労死の認定基準と損害賠償について法律解説

2016年5月29日

近年、「過労死」の報道を目にすることが多くなりました。

そこで今回は、増加する過労死と労働災害(労災)の関係について、法的に解説します。

 

「労災」とは労働災害の略で、労働者が業務に起因して負傷(ケガ)、疾病(病気)、障害(後遺症)、死亡に至ったもののことをいいます。

労災は、おもに「業務災害」(業務中に起きたもの)と「通勤災害」(通勤中の交通事故などによるケガや病気など)の2つに分けられます。

この業務災害のうち、病気によるものを「疾病災害」というのですが、その中でも、遺伝や生活習慣などにより、その労働者にもとから内在していた私病が業務起因で発症、または増悪して死亡に至るものを「過労死」といいます。

対象となる病気には、次のようなものがあります。

「脳血管疾患」
①脳内出血(脳出血)
②くも膜下出血
③脳梗塞
④高血圧性脳症

「虚血性心疾患等」
①心筋梗塞
②狭心症
③心停止(心臓性突然死を含む。)
④解離性大動脈瘤
次に、過労死の認定基準について見てみます。

業務災害が認定されるには、業務と労働者の負傷、疾病、障害、死亡との間の因果関係において、次の2つの基準を中心に判断されます。

「業務遂行性」……労働者が使用者(会社)の支配下にある状態
「業務起因性」……業務に内在する危険性が現実化し、業務と死傷病の間に一定の因果関係があること

さらに、過労死については厚生労働省が通達している「過労死ライン」がひとつの目安とされています。

過労死ラインとは、健康障害リスクが高まるとする時間外労働時間を指すもので、次のような基準となっています。

1.発症前の1ヵ月ないし6ヵ月間にわたって、時間外労働が、1ヵ月あたりおおむね45時間を超えて時間外労働長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる。

2.発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性は強い。

3.発症前1ヵ月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性は強い。

現在の労働行政においては、おおむね80時間がひとつの目安とされています。

たとえば、1日8時間勤務として1か月の労働日を20日とした場合、1日4時間の時間外労働をして、1日12時間勤務が続く状態です。
これが、発症前の2ヵ月ないし6ヵ月続いた場合、過労死と認定される可能性が高くなるのです。
最後に、労災給付と損害賠償について見てみます。

労災が認定された場合、「労働基準法」と「労働者災害補償保険法(労災保険法)」により国から補償を受けることができます。
この制度のメリットは、健康保険とは違って労働者に自己負担額がないことだといえます。

労働者が死亡した場合の補償には次のような労災給付があります。

「遺族補償年金」/労働者が死亡した場合、遺族に支給されるもの
「葬祭給付」/労働者が死亡した場合、支給される葬祭費

さらに、ここで忘れてはいけないのは、ご遺族の方は会社に対して損害賠償請求できる場合があることです。

なぜなら、会社には、労働者に労働させる際にはケガや病気を防ぐために安全に配慮する義務=「安全配慮義務」があるからです。
これを会社が怠った場合には、労働者側は正当な損害賠償金を請求することができるのです。

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮を」しなければいけません(労働契約法5条)。

また、最高裁昭和59年4月10日判決(川義事件)は、「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し、又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」がある、としています。

そして、東京高裁平成11年7月28日判決・システムコンサルタント事件では、使用者(会社)は、「労働時間、休憩時間、休日、休憩場所などについて適正な労働条件を確保し、さらに、健康診断を実施したうえ労働者の年齢、健康状態などに応じて従事する作業時間および内容の軽減、就労場所の変更等適切な措置を採るべき義務」を負うとされています。

使用者(会社)がこの義務に違反して、労働者に過酷な労働をさせ、それがきっかけとなって労働者の基礎疾患を増悪させ、それによって死亡させたという因果関係が肯定されるような時は、損害賠償義務が発生します。

しかし、ここで大きな問題があります。
それは、被害者やご遺族の方にとって労災の手続きや損害賠償請求は法的な知識がないと難しいということです。

そうした場合は、弁護士などの専門家に相談、依頼することをお勧めします。

万が一、労災にあってしまった場合には、こちらからご相談ください。
http://www.rousai-sos.jp/contact/

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