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  • パワハラで和解金6,000万円!?

    2015年04月05日

    パワハラ自殺による損害賠償訴訟が後を絶ちません。
    今回は、大阪での事例です。

    「積水ハウス、パワハラ自殺和解金6千万円支払い」(2015年4月2日 読売新聞)

    「積水ハウス」の社員だった男性(当時35歳)が自殺したのは、上司のパワハラが原因だったとして、両親が慰謝料など約9280万円の損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁でありました。

    男性は2010年8月以降、兵庫県西宮市内の事務所で客からの苦情対応などを担当。
    上司から、部下の指導が不十分との理由で「死んでしまえ」、「クビにするぞ」などと日常的に罵倒されるようになり、2011年9月1日に行方不明に。
    6日後、大阪市内の淀川で溺死しているのが見つかったということです。

    神戸西労働基準監督署は、心理的負荷で適応障害を発症したことが自殺につながったと認定。
    そこで、両親は2013年2月に提訴。

    同社側は「指導のための叱責はあったが、罵倒はしていなかった」などとして請求棄却を求めていたようですが、和解金6000万円を支払う条件で和解しました。

    同社は、「円満に解決するために和解したが、コメントは控えたい」としているということです。
    パワハラについては以前にも解説しています。
    詳しい解説はこちら⇒「これは、酷い!パワハラ自殺で5790万円」
     https://taniharamakoto.com/archives/1743

    パワハラが起きると、会社は多額の損害賠償金を支払わなければいけなくなる可能性があります。

    なぜなら、会社には「職場環境配慮義務」や「使用者責任」があるからです。

    職場環境配慮義務とは、会社には従業員との間で交わした雇用契約に付随して、職場環境を整える義務があるということです。
    社員等にパワハラやセクハラなどの被害が発生した場合、職場環境配慮義務違反(債務不履行責任)として、会社はその損害を賠償しなければいけません。(民法第415条)

    使用者責任とは、会社には社員が第三者に対して加えた損害を賠償する責任があるということです。(民法第715条)
    また、パワハラは、損害賠償金支払いだけでなく、対外的な信用棄損や社員の士気低下など、さまざまなダメージを会社に与えます。
    【パワハラ防止のための事前対策】
    では、会社がパワハラを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?
    まずは、事前対策が重要です。

    「パワハラを防ぐための5つの措置」
    ①会社のトップが、職場からパワハラをなくすべきという明確な姿勢を示す。
    ②就業規則をはじめとした職場の服務規律において、パワハラやセクハラを行った者に対して厳格に対処するという方針や、具体的な懲戒処分を定めたガイドラインなどを作成する。
    ③社内アンケートなどを行うことで、職場におけるパワハラの実態・現状を把握する。
    ④社員を対象とした研修などを行うことで、パワハラ防止の知識や意識を浸透させる。
    ⑤これらのことや、その他のパワハラ対策への取り組みを社内報やHPなどに掲載して社員に周知・啓発していく。

    また、被害者などからの相談窓口や関係部署の設置、問題解決の体制の整備、社員への研修や講習なども事前に行っておくべきです。
    【パワハラ発生後の事後対応】
    しかし、事前対策をしていたにも関わらずパワハラが起きてしまったら、どう対応したらいいでしょうか?

    会社が取るべき事後対応の流れをまとめておきます。
    問題の発生から解決までには、次の6つのプロセスがあります。

    ①事実の発覚
    相談窓口などに本人や同僚などの第三者から相談が持ち込まれます。

    ②関係者からのヒアリング
    担当者が事実関係の把握のためにヒアリングをします。
    これは相談者と、パワハラ行為をしたとされる者の双方に対して行い、場合によっては周囲の第三者にも行います。
    行為が行われた状況や、行為が継続的だったかなどについても聴き取りを行います。
    このとき、プライバシーの保護、および協力者への不利益がないようにしなければいけません。

    ③事実確認の有無に関する判断
    ヒアリング後、パワハラ行為があったかどうかについて判断します。

    ④担当機関などによる協議
    パワハラの事実があったと判断された場合、人事部などの担当部署等で加害者に何らかの処分を下すかどうかの協議をします。

    ⑤処分の決定とその後の措置
    担当部署での協議の結果、懲戒処分なしとなった場合は、その旨を被害者に説明したうえで関係改善に向けた援助、配置転換、被害者が被った不利益の回復などの措置をとります。
    同時に、パワハラ行為を行った者への研修・教育を行います。

    加害者に懲戒処分を下すことが決まった場合は、就業規則の規定に従い、けん責、出勤停止、論旨解雇、懲戒解雇などの懲戒処分を下します。
    この場合も、被害者に対して上記のように必要な措置をとるのは言うまでもありません。

    ⑥再発防止措置
    今後の再発防止に向けた措置をとらなければいけません。
    社内報やウェブサイトなどに、パワハラやセクハラ行為があってはならないこと、万が一発生した場合は厳正な処分を下すことなどを記載して全社員に周知します。
    また、研修や講習を実施して社員への啓発にも努めます。
    ところで、今回の事例では、会社側は「上司からの教育や指導による叱責だ」、「罵倒はしていない」と主張しているようです。

    実際、社員の能力不足や職務怠慢の場合、会社は社員を教育指導して、注意などは段階を踏んで対応してからでないと解雇などはできないことになっています。
    また、通常の仕事上の叱責はパワハラにはなりません。

    それが度を超え、人格に対する攻撃などになるとパワハラと認定されます。
    しかし、その判断はなかなか難しいため、訴訟に発展するケースが増えています。

    万が一、パワハラによるトラブルが起きた場合は、被害者側も会社側も専門家などに相談することをお薦めします。
    労働トラブルのご相談はこちらまで⇒「弁護士による労働相談SOS」
    http://roudou-sos.jp/

  • セクハラに対する懲戒処分について最高裁判決

    2015年03月06日

    先日、あるセクハラ行為に関する裁判で、最高裁による判決が出ました。

    今まで、セクハラ裁判では最高裁まで争われるケースは珍しかったのですが、今回の判決を受けて、セクハラに対する企業側の対応に「厳格化」が求められていくことになりそうです。

    「“セクハラ処分は有効”=無効判断の二審破棄―水族館職員の上告審・最高裁」(2015年2月26日 時事通信)

    大阪市の水族館「海遊館」の運営会社で行われたセクハラ行為に対して、
    懲戒処分を受けた管理職の男性2人が会社の処分を不当だとして訴えた裁判について、最高裁は「処分は無効」とした2審の判決を破棄。

    「職場内で女性に強い不快感や嫌悪感を与える発言を1年余りにわたって繰り返しており、不適切だ」、「今回のセクハラ行為の多くは第三者のいない状況で行われており、会社側が事前に警告や注意ができたとは言えない」として、会社が下した出勤停止と降格の懲戒処分は重過ぎるものではないと結論づけました。

    今回の事案について、簡単に時系列でまとめます。

    【セクハラ裁判の経緯】
    ・2010年11月~2011年12月にかけて、水族館の運営会社の管理職だった男性2人が、20~30代の派遣社員の女性人名に対してセクハラ発言を繰り返す。

    ・訴訟でセクハラと認定された発言の一部
    「俺の性欲は年々増すねん」
    「夫婦間は、もう何年もセックスレスやねん」
    「結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで」
    「もう、お局さんやで。怖がられてるんちゃうん」
    「男に甘えたりする?」
    「地球に2人しかいなかったらどうする?」

    ・派遣社員の女性2人が会社に被害を申告。その後、1人が派遣会社を辞め職場から去る。
    会社側は男性2人に事情を聴取し、弁解を聞いたたうえで2012年2月、それぞれ30日間と10日間の出勤停止を命令し、課長代理から係長に降格処分。
    男性2人は、「セクハラ発言には当たらない」、「事前に注意や警告もなく処分したのは不当」だとして提訴。

    ・1審の大阪地裁では、「上司という立場でありながら、繰り返しセクハラ行為をしており悪質」、「処分は社会通念上、妥当」だとして請求を棄却。

    ・しかし、2審の大阪高裁では、「女性が男性らに明確に抗議しておらず、会社側が男性らに適切な指導をしたかも疑問だ」と指摘。「処分は重すぎて無効」と判断。

    ・これを受けて会社は、「抵抗や抗議が困難な上下関係の中で非公然と行われたセクハラ行為。事前に注意や警告をすることが難しいセクハラ行為の特殊性を考慮していない」として上告。
    今回の最高裁の判決に至る。
    では次に、「何をするとセクハラになるのか」、「会社はどのような対応をとるべきなのか」について考えていきます。
    【セクハラとは?】

    そもそも、「セクシャルハラスメント」という言葉、概念は1970年代初めにアメリカで生まれたとされているようです。

    日本でセクハラという言葉が使われるようになったきっかけは、1986年に起きた「西船橋駅ホーム転落死事件」。
    加害者となった女性を支援する団体が使い始めたとされています。

    その後、1997年の「男女雇用機会均等法」の改正で性的嫌がらせへの配慮が盛り込まれ、範囲の拡大等の改正を経て現在に至ります。
    【セクハラの定義】
    「男女雇用機会均等法」では、セクハラを以下のように定めています。

    「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」(11条1項)

    つまり、セクハラとは、「職場において行われる」、「労働者の意に反する」、「性的な言動」ということになります。
    【セクハラの判断】
    職場でのセクハラにあたるかどうかの判断には、次の3点を検討します。

    ①「職場において行われるものかどうか」
    職場とは当然、社員等(労働者)が所属する会社の事務所などの「働く場所」です。
    しかし、注意が必要なのは、法律上は会社の事務所だけでなく、労働者が業務を遂行する場所も「職場」とみなされるという点です。
    たとえば、取引先の会社の事務所、打ち合わせでの飲食店、顧客の自宅なども職場となります。

    ②「労働者の意に反するものかどうか」
    厚生労働省の「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」では、セクハラには「対価型」と「環境型」があるとしています。

    〇対価型セクハラ
    職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること。

    典型的な例として以下のようなことが挙げられます。
    ・女性社員に性的関係を強要した社長が拒否されたため社員を解雇した。
    ・出張中の車中で上司が部下の体を触り抵抗されたために不利益な降格や配置転換を行った。
    〇環境型セクハラ
    性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること。

    典型的な例として以下のようなことが挙げられます。
    ・上司のセクハラ的言動のため部下が苦痛に感じ就業意欲が低下した。
    ・労働者が抗議したのに上司が事務所内にヌードポスターを掲示しているために苦痛を感じ業務に専念できない。

    ③「行われた言動が性的なものかどうか」
    性的な言動の具体例としては以下のものなどがあげられます。

    〇性的な事実関係を尋ねること
    〇性的な内容の情報を意図的に流布すること
    〇性的な冗談やからかい
    〇食事・デートなどへの執拗な誘い
    〇個人的な性的体験談を話すこと
    〇性的な関係を強要すること
    〇必要なく身体に触ること
    〇わいせつな図画(ヌードポスターなど)を配布、掲示すること
    〇強制わいせつ行為、強姦等
    【会社が受ける損害】
    パワハラと同様、セクハラが行われた場合、会社には社員に対して以下のような義務や責任があります。

    〇「職場環境配慮義務」
    会社は、従業員との間で交わした雇用契約に付随して、職場環境を整える義務=職場環境配慮義務を負います。
    社員等にパワハラやセクハラなどの被害が発生した場合、職場環境配慮義務違反(債務不履行責任<民法第415条>)として、会社はその損害を賠償しなければいけません。

    〇「使用者責任」
    ある事業のために他人を使用する者は、被用者(社員)が第三者に対して加えた損害を賠償する責任があります(民法第715条)。
    ところで今回のケースでは、被害者女性が上司と会社を訴えたというものではなく、セクハラ行為をした社員が懲戒処分を不当として会社を訴えたというものです。

    通常、会社が社員に対して懲戒処分を下す場合、何度も注意して是正を求めることが前提となります。
    そのため、今回のケースでは会社の注意が十分だったかどうかも争点となっていました。

    そうした状況も含め、会社がとるべきセクハラ防止策には次のことが挙げられます。
    【会社がとるべきセクハラ防止策】
    ①「会社の方針の明確化及びその周知・義務」
    ・就業規則を含めた服務規律を定めた文書や社内報、パンフレット、ウェブサイトなどにセクハラ防止の方針を明文化して、研修や講習などの社員教育を徹底する。
    ・セクハラを行った者への懲戒規定を定め、その内容を社員に周知する。

    ②「相談対応の明確化」
    ・相談窓口の設置や担当者を明確にして周知する。
    ・相談を受けた場合のマニュアルや体制を整備する。

    ③「セクハラ事案の事後処理の迅速化と適切化」
    ・セクハラ被害にあった者と行為を行った者双方から聞き取りを行う。
    ・被害者と行為者双方への迅速かつ適切な対応。(紛争解決に向けた調停や配置転換、懲戒処分など)

    ④「相談者・行為者のプライバシー保護」
    ・プライバシー保護のための適切な措置。
    ・相談者や証言者が不利益にならないための措置など。
    さて、今回の判決では、会社はセクハラ禁止文書の作成や、全従業員の研修参加への義務づけなどに取り組んでいたことを認めています。

    また、管理職としてセクハラ防止を部下に指導すべき立場の人間がセクハラ行為を繰り返していたことを非難し、同時に会社側の事前把握の困難さを認めています。

    この判決の意義としては、セクハラ行為に対して会社が注意指導を前提とせず、初めから懲戒処分を科すことが許される場合があることを認めたところにあります。

    これからは、企業側にも、すべてのビジネスパーソンにも、セクハラは違法であるという認識と知識、そして高い倫理観と真摯な姿勢が求められる時代であることを理解してほしいと思います。
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  • パワハラと教育的指導の境界線とは?

    2015年02月28日

    仕事への意欲が湧かないとき。
    何かのトラブルを抱えて落ち込んでいるとき。

    そんなときは、「言葉の魔法」にかかりたいと思うことがあります。
    身近な人からのアドバイスや、先人や偉人の名言に救われたり、元気が出てくることがありますね。

    しかし逆に、会社や職場で「言葉の暴力」を浴びせられたら、どうでしょうか?

    最悪の場合には、心と体に変調をきたして仕事を続けられなくなってしまう人もいます。

    先日、言葉の暴力がパワハラと認定された裁判がありましたので、解説します。

    「“威圧され適応障害”…看護師長のパワハラ認定」(2015年2月26日 読売新聞)

    北九州市の病院に看護師として勤めていた女性(30歳代)が、元上司によるパワーハラスメントで適応障害になったとして、病院の運営元や元上司を相手取り、約315万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が福岡地裁小倉支部でありました。

    判決によると、女性は病院に勤務していた2013年4~5月頃、子供がインフルエンザにかかったり、高熱を出したりしたため、上司だった看護師長に早退を申し出たところ、有給休暇が残っていたにも関わらず、元上司は「もう休めないでしょ」、「子供のことで職場に迷惑をかけないと話したんじゃないの」などと発言。

    女性は、ミスを叱責されたこともあり、食欲不振や不眠から、同年11月に適応障害と診断されて休職。
    その後、2014年3月に退職したようです。

    裁判官は、看護師長の言動について、「部下という弱い立場にある原告を過度に威圧し、違法」と認定。
    被告に約120万円を支払うよう命じたということです。

     

    近年、パワハラに関する報道が増えていますが、そもそも何をするとパワハラになるのか? すべてのビジネスパーソンは正確に認識しておく必要があるでしょう。

    そこで、今回もう一度、パワハラについて復習しておきたいと思います。

    【パワハラとは?】
    厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」では、以下のように定義されています。

    「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」

    「上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。」

    つまり、パワハラが成立するには次の3つの要件が認められるか検討していくことになります。

    ・それが同じ職場で働く者に対して行われたか
    ・職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に行われたものであるか
    ・業務の適正な範囲を超えて、精神的・肉体的苦痛を与え、また職場環境を悪化させるものであるか
    【パワハラにあたる6つの行為】
    具体的には、以下の6つがパワハラとなる行為とされています。

    ①身体的な攻撃(暴行・傷害)
    ②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
    ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
    ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
    ⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
    ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

    今回の事案は、②の言葉の暴力による「精神的な攻撃」ということになります。
    【パワハラによって発生する会社の損害とは?】
    パワハラが行われた場合、今回の事案のように民事裁判では、被害者は損害賠償を求めて訴訟を起こすことができます。
    それは、会社には社員に対して以下のような義務や責任があるからです。

    「職場環境配慮義務」
    会社は、従業員との間で交わした雇用契約に付随して、職場環境を整える義務=職場環境配慮義務を負います。
    社員等にパワハラやセクハラなどの被害が発生した場合、職場環境配慮をきちんとしていていないと、義務違反(債務不履行責任<民法第415条>)として、会社はその損害を賠償しなければいけません。

    「使用者責任」
    ある事業のために他人を使用する者は、被用者(社員)が第三者に対して加えた不法行為による損害を賠償する責任があります(民法第715条)。

    今回の事案のように、社員(看護師長)が別の社員(看護師)に対して損害を与えたと認められれば、その責任を会社が負い、損害を賠償しなければならなくなる場合があります。
    【パワハラを防ぐための5つの措置】
    パワハラを防ぐための措置として、次の5つが挙げられます。

    ①会社のトップが、職場からパワハラをなくすべきという明確な姿勢を示す。
    ②就業規則をはじめとした職場の服務規律において、パワハラやセクハラを行った者に対して厳格に対処するという方針や、具体的な懲戒処分を定めたガイドラインなどを作成する。
    ③社内アンケートなどを行うことで、職場におけるパワハラの実態・現状を把握する。
    ④社員を対象とした研修などを行うことで、パワハラ防止の知識や意識を浸透させる。
    ⑤これらのことや、その他のパワハラ対策への取り組みを社内報やHPなどに掲載して社員に周知・啓発していく。
    さて、ここまでパワハラについて解説してきましたが、それでも会社の社長や部下を持つ管理職の人たちからは、こんな声が聞こえてきそうです。

    「パワハラについては理解できたけれど、なんでもかんでもパワハラに
    されて訴えられたら、たまらない」

    「ミスをした社員をしかるのは当然でしょう。仕事上の叱責までパワハ
    ラにされたら、どうしていいのか…」
    実際、厚生労働省が公表した、「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」によると、総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争の相談内容では「いじめ・嫌がらせ」が59,197件と、「解雇」や「退職」をおさえ、2年連続で最多となりました。
    いかにパワハラやセクハラの相談が増えているかがわかります。

    しかし、たとえばパワハラとなる行為の中でも、業務への過大な要求や過少な要求などは、業種や企業文化などによっても差異があるため、業務上の適正な指導との線引きや判断が難しいものです。

    法的な基準としては、「平均的な心理的耐性を持った人」が肉体的・精神的に苦痛を感じるかどうかが判断基準とされていますが、以下のポイントにも注意をして対策をとっていただきたいと思います。

    ・行為が行われた状況
    ・行為が継続的であるかどうか
    ・会社が相談や解決の場(相談窓口など)を設置したかどうか
    ・パワハラ行為を行った者への研修・教育を行ったか
    ・懲戒処分の決定とその後の措置は適切だったか

    なお、社員の能力不足や職務怠慢の場合、会社は社員を教育指導してからでないと解雇などはできないことになっているので、通常の仕事上の叱責はパワハラにはならないことは覚えておいてください。

    最近は、仕事上で叱責すると、すぐに「パワハラだ!」と言われることがありますが、仕事上の叱責はパワハラにはなりません。

    それが度を超え、人格に対する攻撃などになると、はじめてパワハラになるのです。

    パワハラ問題が起きてしまうと、被害者の肉体的・精神的苦痛はもちろん、会社にとっても大きな損害となってしまいます。

    判断・対応が難しい場合には、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
    労働トラブルのご相談はこちらまで⇒「弁護士による労働相談SOS」
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  • 2倍!2倍!未払い残業代の付加金とは?

    2015年02月26日

    2015年も、労働トラブルに関する報道が相次いでいます。
    今回は、未払い残業代の「付加金」について解説します。

    「佐川急便で残業代未払い 付加金も命じる 東京地裁」(2015年2月20日 産経新聞)

    佐川急便の元運転手2人が、「残業代の一部が未払いだ」として割増賃金などの支払いを会社に求めた訴訟の判決で、東京地裁は、制裁金に当たる付加金も含め計約215万円の支払いを命じました。

    元運転手の2人は、平成21年11月~24年に佐川急便の都内の営業所に勤務。
    IDカードで出退勤時刻を管理していたが、「記録上の時間より早く出勤し、遅く帰宅する日もあった」と主張していたようです。

    裁判官は、2人が通勤に使っていた高速道路の料金所通過記録と、記録上の出退勤時刻に差があることなどから、「記録上の時間は必ずしも実際の勤務時間を反映していない。営業所の勤務時間の管理が適切ではなかった」と指摘したということです。
    【未払い残業代の付加金とは?】
    労働に関する法律の中に「労働基準法」があります。
    これは、会社が守らなければいけない最低限の労働条件を定めたもので、会社に比べて立場の弱い労働者の保護を図る目的があります。

    この中に「法定労働時間」が定められています(第32条)。
    会社(使用者)が、社員(労働者)を働かせることができる労働時間は、原則として一週間で40時間、かつ1日8時間(法定労働時間)までというものです。
    (※ただし、36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出れば、労働者が法定労働時間を超えて働いても労働基準法には違反しません)

    この基準以上の時間、つまり法定労働時間外の勤務をさせたとき、会社(使用者)は社員(労働者)に「割増賃金」を支払わなければいけません(第37条)。

    割増賃金は、時間外労働(残業)、休日労働、深夜労働などによって発生します。
    今回の事案では、元社員が会社に管理され、記録されていた出退勤時間より実際は早く出勤し、遅く帰宅していたとして、その時間分の残業代が認められたわけですが、判決の中に「付加金」というものがありました。

    では、この「付加金」とは一体何でしょうか?
    条文を見てみましょう。

    「労働基準法」
    第114条(付加金の支払)
    裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第7項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から2年以内にしなければならない。
    付加金とは、簡単にいうと違反を犯したことへの制裁金ということになります。

    ところで、民事で労働者側が「未払い残業代」による訴訟を起こし、訴えが認められた場合、会社(使用者)が支払うものには次の3つがあります。

    ①「未払い残業代の支払い」
    認定された残業代の未払い分の全額を支払わなければいけません。

    ②「付加金の支払い」
    裁判所が必要と認めた場合、未払い残業代と同額を上限とした付加金を支払わなければいけません。
    会社側の違反が悪質な場合などでは、全額が認められるケースも多くあります。

    付加金は会社への制裁金という意味合いがあるため、裁判で判決までいったときに初めて付加されます。

    また、付加金は違反があったときから2年以内に請求しなければ無効となります。
    なお、「労働審判」では付加金はつかないので注意が必要です。

    ③「遅延損害金の支払い」
    未払い残業代と付加金には利息がつきますが、これを「遅延損害金」といいます。

    利息の利率は、社員(労働者)が在職中であれば6%、退職している場合は14.6%と2倍以上になります。
    人気アニメ『セーラームーン』では、「月に代わっておしおきよ!」の名セリフが有名ですが、未払い残業代で裁判にまで至ってしまった場合、会社(使用者)は法律におしおきされてしまいますから、経営者の方は十分注意してください。

    2倍得をするならいいですが、2倍のお金を支払わなければいけない可能性もあるのですから、労働時間に関して経営者の方は、社員の勤務時間の管理をきちんと行い、法律を順守することが大切です。

    残業代請求が認められるかどうかは、かなり難しい法律問題となりますので、労働者も、会社も、適切な専門家などに相談をした方がよいでしょう。

    労使双方が、お互いを尊重しながら、社員は働きやすい環境で十分能力を発揮することで、会社の業績も上がり、会社も社員もお客さんも得をする、まさに「三方よし」となることを願っています。

    未払い残業代の問題のご相談はこちら⇒
    http://roudou-sos.jp/

  • 給料不払いの代償~刑事訴追

    2015年02月14日

    ことわざに、「ただより高いものはない」というものがあります。

    通常は、ただで物をもらったら、そのお返しでかえってお金を使うことになるとか、ただの裏側には有利になるように取り計らってほしいという相手の打算、意図があるから、よろこんでばかりいると面倒なことになる、というような意味で使われますね。

    ところが今回、ただで社員に仕事させていた会社の社長が、とんでもない高い代償を払うはめになってしまったという事件が起きたようです。
    一体、どんな代償を払ったのでしょうか?

    「8人が3ヵ月タダ働き…賃金不払い容疑で建設業者書類送検」(2015年2月10日 産経新聞)

    札幌中央労働基準監督署は、昨年2月に事実上倒産した札幌市北区の建設業の社長(56)と法人としての同社を、最低賃金法違反(賃金不払い)の疑いで書類送検しました。

    社長の男は、本社と関東営業所(埼玉県)に勤務する従業員計8人に平成25年12月から26年2月まで3ヵ月分の給料を出さず、北海道や埼玉県の最低賃金に当たる計約260万円を支払わなかったようです。

    昨年1月、関東営業所の従業員が川越労働基準監督署に相談して発覚したようですが、社長は「経営が悪化し、支払えなかった」と供述しているということです。
    給料の不払いについては以前、解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒「給料の不払いが犯罪になる!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1395

    「金がないから払えない」とは、一見もっともな理屈にも思えますが、法律の前ではそんなことは通用しません。

    社員への給料不払いは、「最低賃金法」という法律に抵触します。

    第4条(最低賃金の効力)
    1.使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
    第34条(監督機関に対する申告)
    1.労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

    簡単にまとめると、以下のようになります。

    〇社長は、従業員に対して国で決められた「最低賃金」よりも多く給料を支払わなければいけない。
    〇賃金が支払われなければ、労働者は労働基準監督署に訴えることができる。
    〇違反した場合は、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金。

    ところで、厚生労働省が公表した統計データによれば、平成23年4月から平成24年3月までの間に、賃金不払いの是正を指導され割増賃金を100万円以上支払った企業は1312社で、支払われた割増賃金の合計額は、じつに145億9957万円にものぼります。

    また、今回のように社員の労働基準監督署への相談や内部告発は年々増加していて、2012年の「労働基準監督年報」によれば、受理した件数で最も多いのが賃金未払いに関するもので、全体の85.6%にも及んでいます。

    さらに、近年では会社と社員の間で、残業代の未払いに関する労働トラブルも増えています。

    「労働基準法」で定められた時間外労働に対しては、当然、会社は社員に残業代を支払わなければいけません。

    もちろん、社員などの労働者は、残業代をもらえず、ただ働きして泣き寝入りすることはありませんし、社長や経営陣は、残業代の未払いは違法であることを理解しなければいけません。

    裁判に発展すれば、未払い分と同等の「付加金」も追加され、2倍の金額を支払わなければならなくなる可能性があります。
    さらには、今回のようにメディアで全国に社名が報道されたり、取引先との信用、信頼は地に落ちてしまうでしょう。

    労働トラブルは、経営者にとっては不名誉なことですし、会社にとっては大損害になりかねません。

    昔の人は本当にいいことを言ったものです。
    会社の経営についても、「ただより高いものはない」のかもしれません。

    経営者の方には法令順守の徹底と、社員を守るという責任を今一度、自問自答して確認していただきたいと思います。
    「何を捨てるかで誇りが問われ、何を守るかで愛情が問われる」
    (スティーブ・ジョブズ/アメリカの実業家。アップル社の共同創立者のひとり)

    労働問題に関する相談は、こちらから⇒ http://roudou-sos.jp/

  • なんと、違法残業の会社が半数以上!?

    2015年01月30日

    およそ1年前の2013年12月に、厚生労働省が若者の使い捨てなどが疑われる、いわゆる「ブラック企業」についての実態調査を行ったことについて解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒
    「8割以上の企業が労働基準法違反!あなたの会社は?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1239

    5111の事業所に対して監督・調査を実施した結果、82%にあたる4189事業所で何らかの労働基準関係法令違反が見つかった、というものでした。

    さて、1年経って状況はどう変わったでしょうか?

    「2304事業所で違法残業 厚労省が是正指導」(2015年1月27日 共同通信)

    厚生労働省は、2014年11月に実施した「過重労働解消キャンペーン」における重点監督の実施結果について取りまとめ公表しました。

    これは、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業所や、若者の「使い捨て」が疑われる事業所など、労働基準関係法令の違反が疑われる事業所に対して集中的に実施したもので、対象は全国の4561の事業所。

    その結果、約半数の2304事業所で、時間外労働に必要な労使協定を結ばないなどの違法な残業をさせており、是正を指導したということです。

    違法な残業をさせていた事業所で、最も長く働いていた従業員の時間外労働が、過労死ラインとなる月100時間超だったのは715事業所におよび、中には月200時間を超えたケースもあったということです。

    厚生労働省は、今後も長時間労働が疑われる事業所への監督を徹底する方針だとしています。
    ちなみに、「過労死ライン」とは、健康障害リスクが高まるとする時間外労働時間を指すもので、厚生労働省によると月80時間。
    1ヵ月の労働日数を20日とした場合、1日に4時間の時間外労働が続く状態をいいます。

    過労死の労災認定基準として、脳血管疾患及び虚血性心疾患等について、「発症前1ヵ月間におおむね100時間又は発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる」とされています。

    さて、1年前に公表された資料では、以下のような結果でした。

    〇違法な時間外労働があったもの:2241事業場(43.8%)
    〇賃金不払残業があったもの:1221事業場(23.9%)
    〇過重労働による健康障害防止措置が実施されていなかったもの:71事業場(1.4%)

    また、「健康障害防止措置」と「1か月の時間外・休日労働時間が最長の者の実績」についての結果は以下のとおりです。

    〇過重労働による健康障害防止措置が不十分なもの:1120事業場(21.9%)
    〇労働時間の把握方法が不適正なもの:1208事業場(23.6%)
    〇1か月の時間外・休日労働時間が80時間超:1230事業場(24.1%)
    〇うち100時間超:730事業場(14.3%)
    次に、今回の調査を具体的に見ていきましょう。

    「主な違反内容」
    ①違法な時間外労働があったもの:2304事業所(50.5%)

    そのうち、時間外労働の実績がもっとも長い労働者の時間数が、
    月100時間を超えるもの/715事業場(31.0%)
    そのうち、月150時間を超えるもの:153事業所(6.6%)
    そのうち、月200時間を超えるもの:35事業所(1.5%)

    ②賃金不払残業があったもの:955事業所(20.9%)

    ③過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:72事業所(1.6%)
    「主な健康障害防止に係る指導の状況」
    何らかの労働基準関係法令違反があった3811事業所のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業所数

    ①過重労働による健康障害防止措置が 不十分なため改善を指導したもの:2535事業所(55.6%)

    そのうち、時間外労働を月80時間以内に削減するよう指導したもの:
    1362事業所(53.7%)

    ②労働時間の把握方法が不適正なため指導したもの:1035事業所(22.7%)

    ※業種別では、製造業がもっとも多く1032人、次いで商業802人、以下、その他の事業、接客娯楽業、保健衛生業の順となっています。
    報道にはありませんでしたが、今回公表された資料によると、何らかの労働基準関係法令違反があったのは、3811事業所で、全体の83.6%にも及ぶということですから、1年前の82%と比較して改善されたどころか、増加していることがわかります。

    ちなみに、厚生労働省によれば、重点監督は、数多く寄せられた情報の中から過重労働の問題があることについて、より深刻で詳細な情報のあった事業所を優先して対象としている、ということです。

    そのため、相対的に違反のあった事業所の割合が高くなっているということだと思いますが、それにしても相変わらず労働問題の「種」を社内に抱えている会社や経営者の方が多いのが実情のようです。

    最近では、未払い残業代請求、長時間労働、不当解雇、パワハラ、セクハラなどの労働トラブル関連の報道がない日はない、というほどマスメディアでも取り上げられています。

    会社としては、未払残業代やそれに付随する付加金などの支払いのために予期せぬ出費を強いられ、最悪の場合は倒産の可能性もあります。
    また、会社名が世間に公表されたり、取引先との信用を失うなど労働問題は、会社にとって大きな損失になりかねないという事実を経営者の方には今一度知っていただきたいと思います。

    あなたの会社が抱える労働問題の「種」は、もしかして、時限爆弾かもしれませんよ……。

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  • セクハラの賠償金が1300万円!?

    2015年01月22日

    昨年11月、あるセクハラ裁判で異例の高額賠償金による和解が成立していたことがわかりました。

    「“数字未達なら彼女になれ” アデランス、社内セクハラ1300万円で和解」(2015年1月20日 産経新聞)

    かつら製造・販売の最大手「アデランス」の兵庫県内の店舗に勤務していた元従業員の女性が、大阪市内の店舗の店長だった男性従業員から繰り返しセクハラを受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、退職を余儀なくされたとして同社に計約2700万円の損害賠償を求めた訴訟で、同社が女性に解決金1300万円を支払うなどの内容で2014年11月28日、和解していたことがわかりました。

    報道によると、女性が兵庫県内で勤務していた2008年3月、大阪市内の店舗の店長だった男性従業員が指導目的で来店。
    「数字を達成できなかったら彼女になるか、研修もしくは転勤だ」と脅すなどし、無理やりキスをしようとしたり、体を触ったりするセクハラを繰り返したようです。

    女性が被害届を出そうとしたところ、同社の幹部から止められ精神的に不安定になり休職し、2010年1月にはPTSDと診断。
    同社は、いったん女性を特別休暇扱いとし、その後に給与の支払いを停止。女性は2011年9月に退職したということです。

    和解の内容は、会社が女性に和解金1300万円を支払う他、①同社は解決金の半額650万円について男性従業員に負担を求める、②男性従業員の在職期間中、原告が居住する京阪神地域を勤務地や出張先にしないよう努める、などとなっているようです。

    なお、このセクハラについては地元の労働基準監督署が労災認定し、休業補償給付などの支給を決定しているとのことです。
    会社がセクハラをした役員や社員を処分するのは当然ですが、セクハラに対する対応を間違ってしまうと、大変なことになってしまいます。
    では、どのような対応をとればいいのでしょうか?

    「男女雇用機会均等法」には、事業主がセクハラ対策として講ずるべき措置等が定められています。
    主なものは以下の通りです。

    〇事業主の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に対してその方針を周知・啓発すること。
    〇相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること。
    〇相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、適正に対処すること。
    〇相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

    また、セクハラとなる言動には以下のようなものがあげられます。

    〇性的な事実関係を尋ねること
    〇性的な内容の情報を意図的に流布すること
    〇性的な冗談やからかい
    〇食事・デートなどへの執拗な誘い
    〇個人的な性的体験談を話すこと
    〇性的な関係を強要すること
    〇必要なく身体に触ること
    〇わいせつな図画(ヌードポスターなど)を配布、掲示すること
    〇強制わいせつ行為、強姦等

    事業者が上記のような講ずべき措置を怠った場合は、厚生労働大臣の行政指導(男女雇用機会均等法29条)の対象となるほか、勧告に従わなかった場合の企業名の公表(男女雇用機会均等法30条)、都道府県労働局長による紛争解決の援助の対象となる(男女雇用機会均等法16条)とされています。

    また、民事訴訟になってしまうと、被害者である社員は今回のように会社に対して責任の追及と賠償請求をすることができます。

    ちなみに、被害者の訴えによりセクハラが刑事事件になれば、行為者(加害者)は、傷害罪(刑法第204条)、強要罪(刑法第223条)、名誉棄損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)、場合によっては、暴行罪や強制わいせつ罪、強姦罪などに問われる可能性があります。

    さて、これらを踏まえ、社内でセクハラ問題があったときは、まず事業主の方は以下の3点について検討することが重要です
    ①職場において行われたものか
    ②労働者(被害者)の意に反するものか
    ③行われた言動が性的なものかどうか

    ただし、内容が内容だけに、慎重に事実確認を行う必要があります。

    まずは、被害者から事情聴取をすることになりますが、女性が被害者の場合には、女性上司が事情聴取するなど、精神的な配慮が必要となります。

    その後、加害者とされる社員から事情聴取をします。

    ここで事実関係が十分に認定できない場合には、他の社員などへの事情聴取となりますが、この事情聴取が原因で社内で情報が拡散し、被害者の精神的被害が拡大してしまうおそれがありますので、第三者への事情聴取については慎重な判断が必要です。

    そして、セクハラがあったことが確認できた時は、被害者の気持ちに配慮した人事的な措置を行うとともに、加害者に対する懲戒処分を検討することになります。

    あわせて、社内での再発防止措置を講ずる必要もあるでしょう。

    対応を間違うと、使用者責任で損害賠償金を負担しなければいけなくなります。

    従業員がやった行為なのに、会社が責任を問われるわけですね。
    「現場で起こったことだから」、「現場に任せていた」、は通用しないのです。

    日本はアメリカのような訴訟社会ではないですが、今後は労働問題に関する紛争が増え、より多様化・複雑化していく可能性があります。
    また、損害賠償金も高額化していく可能性もあります。

    今まで築いてきた会社の信頼や信用、また高額賠償金を失うことのないように、経営者の方は社内体制を整え、備えておく必要があるでしょう。

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  • 内定取消は、自由にできない!?

    2014年12月28日

    会社が新規学卒者の内定を取り消したというニュースが新聞を賑わすことも少なくありませんが、果たして内定を出した後に、業績悪化を理由としてその内定を取り消すことは可能なのでしょうか。

    そこで、今回は、業績悪化を理由とした内定の取消しが可能か、可能であるとするとどのような場合なのかを考えていきたいと思います。

    まず、会社が採用内定を出すとどのような効力を生じるかについては、一般的には、入社日を始期とし、さらに誓約書に基づいた解約権が留保された労働契約が成立すると考えられています。

    採用内定時に提出を求める誓約書には、学校を入社前に卒業できなかった場合や経歴に重大な誤りがある場合、病気等により就労することができない場合等の記載がされ、このような場合には内定取消しとなっても異議を述べないとされていることが一般的です。

    では、誓約書に「会社の業績が悪化した場合」と記載がされている場合に、誓約書に基づいて解約権を自由に行使することができるのでしょうか。

    この点については、判例(大日本印刷事件・最2小判昭和54年7月20日・労判323号19頁)は、「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」と言っています。

    したがって、採用内定取消しが有効となるかについては、客観的に合理的で社会通念上相当として是認できる事由があるか否かがポイントとなり、業績悪化を理由として採用内定を取り消す場合の有効性の判断にあたっては、整理解雇に準じて、

    ①人員削減の必要性、
    ②解雇回避努力を尽くしたこと、
    ③人選に合理性があること、
    ④取消しに至る手続に妥当性があること

    が検討されることになります。

    つまり、採用内定の取消しにあたっては、そもそも採用内定時に業績の悪化についてどの程度予測ができたのかどうかや、社内のリストラ等の内定取消し回避のためにどのような努力が尽くされたのかなども専門的な判断が必要となります。

    また、採用内定の取消しは、内定者のその後の就職活動や生活に与える影響が大きいことから、後に紛争となるケースも少なくありませんので、弁護士と相談をしながら慎重にすすめるべきでしょう。

    みらい総合法律事務所へのご相談は、こちら。
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  • 会社の1億円の損害より1,000円のネコババの方が重い?

    2014年12月28日

    社員のミスによって会社に損害が生じてしまうことはよくあることです。

    もっとも、その損害が多額である場合、例えば会社に1億円の損害がでてしまったとしましょう。会社は、ミスをした社員を即刻クビ、すなわち、懲戒解雇したいと考えるでしょう。

    しかし、会社に巨額の損失が生じてしまったというだけで直ちに懲戒解雇してしまうと、実は、解雇が無効(つまり、クビにできない)であるとされてしまう可能性が高いのです。

    そうであるにもかかわらず、不用意に懲戒解雇してしまうと、会社は、社員が変わらずに会社に在籍していたものとして解雇がなかったのと同様の給料を支払わなければならず、解雇したことによってかえって会社が損をしてしまうということになりかねないので、注意が必要です。

    有効に懲戒解雇するためには、解雇することが、社員の行為の性質・態様等に照らして社会通念上相当なものである必要があります。

    そして、社員のミスによって会社に損害が生じたことを理由に懲戒解雇することが社会通念上相当なものであるかは、会社の事業の性格、規模、社員の業務の内容、労働条件、勤務態度、ミスの態様、ミスの予防若しくは損害の分散についての会社の配慮の程度といった事情を考慮して総合的に判断されます。

    そもそも、社員のミスは、もともと企業経営の運営自体に付随、内在化するものであって、業務命令自体に内在するものとして会社がリスクを負うべきであると考えられています。

    「その仕事を、その社員ができるものと判断して任せた会社の判断ミスでしょう」

    と言われるのです。

    したがって、会社の損害が巨額であったというだけでは、懲戒解雇することが社会通念上相当であるとされる可能性は低いでしょう。

    懲戒解雇が有効となるには、社員が度重なる注意にもかかわらずミスを繰り返した結果損失が巨額となったなど、社員のミスが悪質な態様の場合に限定されるでしょう。

    これに対して、会社の損害は1,000円だけであるが、社員がスーパーのレジからお金をネコババしたような場合はどうでしょうか。

    横領は、企業秩序を乱すことはもとより、財務面で会社の存立を危うくさせるおそれをはらむものであり、重大な企業秩序違反です。

    会社の損害は1,000円だけですが、スーパーなどの小売業は日銭で回っていますから、たとえ1,000円であっても、会社は社員を懲戒解雇することができると考えられます。

    先ほどのミスが「過失」に基づくものであるのに対し、1,000円のネコババは、窃盗罪という立派な犯罪であることも違いますね。

    裁判例においても、例えば、タクシーのメーターの不倒行為やバス運転手の運賃手取り行為は、会社の収入源を奪う極めて重大な企業秩序違反行為として、解雇が有効と判断されています。

    このように懲戒解雇することができるかどうかは、会社の損害の金額だけでなく、さまざまな事情を考慮して判断しなくてはなりませんので、懲戒解雇するにあたっては慎重な検討が必要です。

    懲戒解雇をする前には、必ず顧問弁護士に相談することをおすすめします。

    みらい総合法律事務所へのご相談は、こちら。
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  • 営業社員など労働時間を管理できない社員に対する労働時間管理は!?

    2014年12月28日

    社員の労働時間を管理しなければならないことはわかっていても、外回りの営業だったり、直行直帰だったりして、なかなか労働時間の管理ができない場合がありますね。

    しかし、厚生労働省の通達や裁判実務では、社員の労働時間の管理は会社の責任であるとされています。労働時間の管理をいい加減にしていては、社員から突然、残業代を請求されるかもしれません。

    「労働時間を管理しろと言われてもうちは外回り営業の社員が多いから管理なんてできないよ。社員のために直行直帰も許可しているし。営業職としての手当てがついているから問題ないはずだ。」とおっしゃる方がいるかもしれません。

    しかし、営業手当をつけているだけでは、その外回り営業職の社員がたとえば「毎日夜遅くまで営業で歩き回っていた」と主張して残業代を請求してくるリスクを完全に排除することはできません。

    では、このように会社が社員の仕事の実態や労働時間を正確に把握することが困難な場合は、どうすればよいでしょうか?

    「事業場外みなし労働時間制」という制度があります。

    事業場外みなし労働時間制は、次の2つの要件を満たす場合に、その社員は所定の時間分、仕事をしたとみなすことができるという制度です。

    ①社員が労働時間の全部、または一部について、事業場の外で業務に従事していたこと
    ②その労働時間の算定が困難であること

    この制度を活用すれば、会社は、労働時間の算定が難しい営業職の社員などに対して、残業代の支払を回避できることになります。

    もっとも、外回りの営業職社員などであっても、事業場外みなし労働時間制を適用することができないケースもありますので注意が必要です。裁判例上、「随時会社の指示を受けながら労働している場合」などは、社員の労働時間の算定が困難であるとはいえないため、前述②の要件を満たさず、事業場外みなし労働時間制を適用することができないとされているのです。

    過去の裁判例としては、「阪急トラベル・サポート事件」があります。

    事案の概要としては、旅行会社が企画・催行する国内・国外ツアーのために派遣業者から派遣されたツアー添乗員の添乗業務の遂行について、ツアー添乗員から会社に対し、未払時間外割増賃金等が請求された事案でした。

    その中で、会社側は事業場外みなし労働時間制の適用を主張し、時間外割増賃金等の支払義務がないことを主張しました。

    外回り営業職社員などと同じく、ツアー中の添乗員の行動の詳細を把握することは困難ですから、事業場外みなし労働時間制の適用があるようにも思えます。

    しかしながら、裁判所は、事業場外みなし労働時間制の適用はない、と判断しました。

    その理由は、以下のとおりです。

    ①添乗員が旅行会社から各ツアーの出発から帰着までの詳細な行程とその管理の仕方を指示されている
    ②そのできるだけの順守を守らなければならない
    ③実際の行程についても添乗報告書に詳細に記載して提出しなければならない
    ④海外ツアーの場合は国際通話可能な携帯電話を持たされ、行程変更等の場合には会社への連絡・相談を必要とされていた

    以上より、労働時間の算定が困難とはいえないとして、事業場外みなし労働時間制の適用を否定しました。

    外回り営業職の社員であれば、例えば訪問先や営業の方法などについて、会社から逐一指示を受けている場合は、随時会社から指示を受けながら労働していると言えるので、事業場外みなし労働時間制の適用できません。

    これに対し、単に連絡できる環境にいるだけ、あるいは実際に必要なときに事務的な連絡が行われるだけなら、随時会社の指示を受けながら労働しているとはいえませんので、事業場外みなし労働時間制の適用は可能です。

    最近は、社員が携帯電話を所持していることが当たり前になっていますので事業場外みなし労働時間制を適用できるか否かは、慎重に検討する必要があります。

    なお、事業場外みなし労働時間制を導入するには、労働基準法上、過半数労働組合または労働者の過半数の代表者と協定を締結し届け出なければならないとされています。

    安易に制度設計をして、後で社員に訴えられると、多額の支払が生じることになりますので、制度設計前には、必ず弁護士に相談されることをおすすめします。

    みらい総合法律事務所へのご相談は、こちらから。
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