労働法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 4
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 営業社員など労働時間を管理できない社員に対する労働時間管理は!?

    2014年12月28日

    社員の労働時間を管理しなければならないことはわかっていても、外回りの営業だったり、直行直帰だったりして、なかなか労働時間の管理ができない場合がありますね。

    しかし、厚生労働省の通達や裁判実務では、社員の労働時間の管理は会社の責任であるとされています。労働時間の管理をいい加減にしていては、社員から突然、残業代を請求されるかもしれません。

    「労働時間を管理しろと言われてもうちは外回り営業の社員が多いから管理なんてできないよ。社員のために直行直帰も許可しているし。営業職としての手当てがついているから問題ないはずだ。」とおっしゃる方がいるかもしれません。

    しかし、営業手当をつけているだけでは、その外回り営業職の社員がたとえば「毎日夜遅くまで営業で歩き回っていた」と主張して残業代を請求してくるリスクを完全に排除することはできません。

    では、このように会社が社員の仕事の実態や労働時間を正確に把握することが困難な場合は、どうすればよいでしょうか?

    「事業場外みなし労働時間制」という制度があります。

    事業場外みなし労働時間制は、次の2つの要件を満たす場合に、その社員は所定の時間分、仕事をしたとみなすことができるという制度です。

    ①社員が労働時間の全部、または一部について、事業場の外で業務に従事していたこと
    ②その労働時間の算定が困難であること

    この制度を活用すれば、会社は、労働時間の算定が難しい営業職の社員などに対して、残業代の支払を回避できることになります。

    もっとも、外回りの営業職社員などであっても、事業場外みなし労働時間制を適用することができないケースもありますので注意が必要です。裁判例上、「随時会社の指示を受けながら労働している場合」などは、社員の労働時間の算定が困難であるとはいえないため、前述②の要件を満たさず、事業場外みなし労働時間制を適用することができないとされているのです。

    過去の裁判例としては、「阪急トラベル・サポート事件」があります。

    事案の概要としては、旅行会社が企画・催行する国内・国外ツアーのために派遣業者から派遣されたツアー添乗員の添乗業務の遂行について、ツアー添乗員から会社に対し、未払時間外割増賃金等が請求された事案でした。

    その中で、会社側は事業場外みなし労働時間制の適用を主張し、時間外割増賃金等の支払義務がないことを主張しました。

    外回り営業職社員などと同じく、ツアー中の添乗員の行動の詳細を把握することは困難ですから、事業場外みなし労働時間制の適用があるようにも思えます。

    しかしながら、裁判所は、事業場外みなし労働時間制の適用はない、と判断しました。

    その理由は、以下のとおりです。

    ①添乗員が旅行会社から各ツアーの出発から帰着までの詳細な行程とその管理の仕方を指示されている
    ②そのできるだけの順守を守らなければならない
    ③実際の行程についても添乗報告書に詳細に記載して提出しなければならない
    ④海外ツアーの場合は国際通話可能な携帯電話を持たされ、行程変更等の場合には会社への連絡・相談を必要とされていた

    以上より、労働時間の算定が困難とはいえないとして、事業場外みなし労働時間制の適用を否定しました。

    外回り営業職の社員であれば、例えば訪問先や営業の方法などについて、会社から逐一指示を受けている場合は、随時会社から指示を受けながら労働していると言えるので、事業場外みなし労働時間制の適用できません。

    これに対し、単に連絡できる環境にいるだけ、あるいは実際に必要なときに事務的な連絡が行われるだけなら、随時会社の指示を受けながら労働しているとはいえませんので、事業場外みなし労働時間制の適用は可能です。

    最近は、社員が携帯電話を所持していることが当たり前になっていますので事業場外みなし労働時間制を適用できるか否かは、慎重に検討する必要があります。

    なお、事業場外みなし労働時間制を導入するには、労働基準法上、過半数労働組合または労働者の過半数の代表者と協定を締結し届け出なければならないとされています。

    安易に制度設計をして、後で社員に訴えられると、多額の支払が生じることになりますので、制度設計前には、必ず弁護士に相談されることをおすすめします。

    みらい総合法律事務所へのご相談は、こちらから。
    http://roudou-sos.jp/

  • 業務委託なのに、残業代を支払う!?

    2014年12月28日

    正社員にすると、労働法の色々な規制がかかってきたり、残業代を支払う義務が発生したり大変なので、正社員ではなく、「業務委託」という形にして仕事を委託している会社が少なからずあるようです。

    会社は、社員が残業をした場合には、当然残業代を支払う必要がありますが、業務委託先に対しては、委託先が長時間働いたとしても残業代を支払う必要はありません。

    例えば、個人事業主として、自己所有のトラックを持ち込んで輸送業務に従事する運転手や、建設業における一人親方などに対しては、会社は残業代を支払う必要はありません。

    そのため、会社は、社員を雇用するのではなく、業務委託の形式で作業させることで、残業代の支払いを免れて人件費を削減することができます。

    しかし、当該社員(ないし業務委託先)が、会社が残業代の支払義務を負う「労働者」であることを否定するためには、単に当該社員(ないし業務委託先)と会社との契約の名称を「業務委託契約」や「請負契約」などとしておけば良いというわけではありません。

    この「労働者」性が否定されるためには、当該社員(ないし業務委託先)が、実態として、「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」ではないことが必要であります。

    いくら「業務委託契約」を締結していても、実態が「労働者」とみなされると、残業代を支払う義務が発生する、ということです。

    そして、この労働者性の判断基準ですが、

    ・時間・場所の拘束の有無、程度(拘束の程度が強ければ労働者性を肯定する事情と評価されます

    ・契約に対する諾否の事由の有無(自由がなければ労働者性を肯定する事情と評価されます)

    ・契約内容の遂行に当たっての指揮命令の有無(指揮命令に従っている場合には労働者性を肯定する事情として評価されます)

    ・経費の負担の有無(受託者が経費を負担するような場合には労働者性を否定する事情として評価されます)

    等の種々の事情を考慮して判断されます。

    したがって、例えば、自己所有のトラックを持ち込んで業務に従事する運転手であっても、会社の仕事しかすることができず、始業・就業時間が決まっており、経費も会社持ちであるような場合には、会社は運転手からの残業代の請求を拒むことができません。

    また、例えば、独自に飲食業を営む者としての立場でクラブとの間で入店契約を締結したホステスについては、業界の慣習や所得税の申請において個人事業主として扱われているとしても、クラブへの出店が義務付けられていることや、クラブからの報酬が事業者性を認める程高額でないこと、衣装代はホステスの負担であるものの、その他の経費はクラブ側が負担していることなどを理由に、クラブはホステスからの残業代の請求を拒むことはできないとした裁判例もありますので、注意が必要です。

    会社が雇用契約ではなく、業務委託契約の形式をとっている場合、往々にして、当該社員(ないし業務委託先)の残業時間は長時間となってしまっているのが実情です。

    そのため、もし当該社員(ないし業務委託先)が会社が残業代を支払わなければならない「労働者」であるとされてしまうと、会社は、非常に多額の残業代の支払いを余儀なくされてしまう場合が多いです。

    このようにならないよう、会社は、「業務委託契約」を締結する場合には、上述のさまざまな事情を考慮して、就労のさせ方を慎重に検討する必要があるでしょう。

    このあたりは、法律の素人では判断が難しいので、弁護士に相談することをおすすめします。

    みらい総合法律事務所へのご相談は、こちらから。
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  • 会社に労働組合が来たら?

    2014年12月28日

    ある日突然、会社の受付に、労働組合がやってくることがあります。

    手には労働組合と団体交渉をすることを要求する文書を持ち、「社長と話したい」と言ってきます。

    すったもんだの末、彼らは文書を置いて立ち去ります。

    「当社には労働組合はないはずだが、あれは何だったんだろう?」

    経験がない社長さんはそう思うかもしれません。団体交渉の要求書には、団体交渉を希望する日時が書いてありますが、仕事も忙しいし、できれば交渉を拒否したいところです。

    この場合、労働組合からの団体交渉を拒否したら、どうなるでしょうか?

    労働者の団体交渉は、憲法28条に「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と定められているように、労働者の団体交渉の権利は、憲法によって保障された権利です。

    そのため、会社には、団交応諾義務があり、正当な理由なく団体交渉を無視することは「不当労働行為」として法律上禁止されています(労働組合法7条2号)。

    団体交渉の拒否が「不当労働行為」となるのは、会社が正当な理由なく団体交渉を拒否する場合です。

    会社に団体交渉を拒否する正当な理由がある場合には、団体交渉を無視しても不当労働行為ではないので違法ではありません。

    しかし、残念ながら業務が忙しい、は、理由にはなりません。

    会社に組合がなかったとしても、従業員が外部の労働組合に加入した場合には、その労働組合からの団体交渉を受けなければなりません。

    従業員を解雇し、その解雇した元従業員が労働組合に加入し、「解雇撤回」を求めて団体交渉を求めてきている場合、「もう従業員ではないから、団体交渉に応じる義務がないのではないか?」と思うかもしれません。

    しかし、その場合も、「従業員たる地位があるかないか」が交渉事項になるので、やはり団体交渉を拒否することができません。

    では、実際、会社が正当な理由がなく、団体交渉を無視すると、どうなってしまうのでしょう。

    この場合、組合は、

    ①都道府県労働委員会に救済を申し立てるか、
    ②裁判所に救済を求め会社に不法法行為に基づく損害賠償を請求するか、
    ③2つとも行うか、

    ということになるでしょう。

    労働委員会とは、学識経験者などにより形成される公益委員、労働組合の推薦に基づく労働委員、使用者団体の推薦に基づく使用者委員からなる行政機関です。

    会社は委員会の指定する期限までに答弁書を提出しなければなりません。

    申立書を受領後、原則として10日以内に答弁書を提出することが求められています。

    答弁書を提出せず、期日にも出頭しない場合には、会社の不利に判断される恐れがあります。

    答弁書の作成等、不当労働行為の審査手続きには、専門的な知識が必要なので、労使トラブルが発生した場合なるべく早い段階で専門家に相談し、反論のための準備をしっかり整えておくことが必要です。

    労働委員会が不当労働行為ではないと判断すると、申立棄却の命令が出されますが、会社が正当な理由なく団体交渉を拒否したと判断されてしまうと、労働委員会が救済命令として、「団体交渉に応ぜよ」という内容の命令をだします。

    この命令が確定した場合、なおも団体交渉を無視すると、50万円以下の過料に処せられます(労働組合法32条)。

    次に裁判についてですが、組合は、労働委員会への不当労働行為の救済申立てと並行して、あるいは別個に、裁判所に救済を申し立て、不法行為に基づく損害賠償を請求することもできます。

    いずれにしても、団体交渉の要求が来た場合、拒否できるかどうか、人数は何人にするか、誰が参加するか、何回応じればいいのか、内容としてどこまで応ずるべきなのか、交渉が妥結した場合、書面はどうするか、決裂したらどうすればいいか、など、難しい問題があります。

    その際は、ご相談いただければと思います。

    また、団体交渉が来たら、すぐに動かなければいけません。その時のために、顧問弁護士が必要と言えるでしょう。

    みらい総合法律事務所では、そんな経営者のご相談を承ります。

    ご相談は、こちら。
    http://roudou-sos.jp/

  • セクハラで3,000万円の賠償請求!?

    2014年12月28日

    最近、セクハラに対する社会的非難が高まっています。

    セクハラをした役員や社員を処分するのは当然ですが、会社がセクハラに対する対応を間違った場合、大変なことになってしまいます。

    今回ご紹介するのは、会社役員の女性支店長2名に対する「セクハラ」行為により、会社が3,000万円を超える賠償義務を負うことになった事例です。

    事実はこうです。Y会社の専務取締役Yが、女性支店長ミー(仮名)を上司の立場を利用して呼びだした上で異性と付き合っているのかを問いただし、それを否定すると「それならいいんだ。前にも言ったけど、商品みたいで言い方は悪いが、君は僕の芸術なんだよ。」といいま
    した。

    さらにYは、付き合っていることを疑っていた社員に直接電話をして「君とミーが付き合っていると聞いたが本当か。システム室から聞いているぞ。本当ならやめてくれ。」などの行動に出ました。

    また、Yは、別の日にミーを電話で呼びだし、他の社員がいないところで後継者の地位をちらつかせながら、「君は僕のことが好きだろう。後継者になるということイコール男女関係があるのは当たり前だ。」などといって肉体関係を持つように求めました。

    その後、ミーが別の日に専務Yに対して、先日肉体関係を迫ったことの理由を尋ねると、「君は独身だから性的欲求は解消されていないと思ったからだ。」「最後にお願いがあるんだ。もう気持ちを表に現さない。だから最後にキスさせてくれ。」などと言って、接吻を迫りました。

    そこで、ミーが会社に対してYのセクハラ行為を訴えたところ、Yは自己保身のために、セクハラ行為を否定するだけでなく、他の社員に対してミーが淫乱であるなどと繰り返し述べて、職場環境を悪化させ、ミーの職場復帰を不可能なものにしました。

    さらに同時期にYは、Yがミーと肉体関係を持つために、ミーと親しい女性支店長ケイ(仮名)に対しても上司の立場を利用して、車で迎えに来るように命じ、車の中でミーのことを監視することにした旨を述べるともに、ケイがミーに対し、「専務のことが好きなんでしょ。抱かれれば。」などとYがミー肉体関係を持てるように協力するよう要請しました。

    ケイがこれを拒絶し会社に対してセクハラ行為を訴えると、Yは、自己のセクハラを否定するだけでなく、他の社員に対して、ケイが「不倫をして仕事をとっている」「あいつは淫乱だ」などと言ったりして、職場環境を悪化させ、ケイの職場復帰も不可能なものにしました。

    裁判所は、このYのミー及びケイに対する行為を不法行為であると認定し、これらの行為が会社の内部で、会社の専務取締役という立場で行われていたことから、会社にも賠償義務(使用者責任)があると認定されました。

    会社は、ミーとケイがセクハラ行為による被害を訴えたことによって会社を混乱させたとして減給処分としていたことから、それまで支払われていた給与と減給後の給与の差額について支払いを命じられたほか、Yのセクハラ行為がなければあと1年間は働けたとして、1年分の給与についても支払いを命じられました。

    結局、会社は、2人に対し、3,000万円を超える支払いを命じられることになったのです。

    皆さん、いかがだったでしょうか。

    一人の専務取締役の軽率なセクハラ行為により、会社が3,000万円を超える賠償義務を負うこととなったのです。

    このようなセクハラ行為が社内で起こらないようにするには、専門家とともに、普段からの社員教育や相談窓口の設置、セクハラがあったときの懲戒制度(就業規則への明記)などのセクハラ防止の社内体制づくりを早急にしなければいけません。

    また、セクハラが発覚した後の事後対応も重要です。

    今回も対応を間違ってしまったところに、多額の賠償金が科せられた原因があります。

    そうしないと、知らないところで3,000万円を超える賠償義務を突然負って、倒産の危機に陥る可能性があることをご理解いただけたと思います。
    みらい総合法律事務所では、セクハラ防止のための研修・社内制度の確立・社員からの通報窓口などをお受けしております。

    また、労働トラブルでお悩みの経営者様の相談を承ります。

    相談は、こちらから。
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  • 減給は自由にできません【労働】

    2014年12月28日

    社員の給料最初、会社と社員の合意で定められます。

    その後は、会社の給与規定などに基づき変動してゆくのが通常です。

    社員の給料が上がる時にはトラブルは発生しませんが、社員の給料を下げようとした時は、労使トラブルが勃発します。

    会社が、社員の給料を下げたいと考える理由としては、会社の経営状況による場合や、社員自身が原因である場合など様々です。

    今回は、社員の給料を下げる場面として、

    ①経営難を理由として給料を下げる場合
    ②人事考課・人事異動の結果として給料が下がる場合
    ③懲戒処分として減給をする場合

    に分けて説明したいと思います。

    ①経営難を理由として給料を下げる場合

    経営難を理由として社員全体の給料を下げる場合には、社員の同意なしには行えないのが原則です。

    労働条件を社員に不利益に変更するには、原則として社員の同意が必要となるためです。

    もっとも、会社が就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、変更後の就業規則を社員に周知させ、かつ、その内容が下記要素から考えて合理的である場合には許されます。

    (1)社員の受ける不利益の程度
    (2)労働条件の変更の必要性
    (3)変更後の就業規則の内容の相当性
    (4)労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情

    会社の存続自体が危ぶまれたり、経営危機による雇用調整が予想されるなどといった状況にあるときは、労働条件の変更による人件費抑制の必要性が極度に高い上、労働者の被る不利益という観点からみても、失職したときのことを思えばなお受忍すべきものと判断されます。

    そのような場合には、多数の労働者が反対している場合であっても、就業規則の変更により給料を下げることが許されるといえます。

    ②人事考課・人事異動の結果として給料が下がる場合

    まず、年度ごとの人事考課等の結果として給料の額が減額することについては、あくまで賃金の計算方法に過ぎず、人事考課制度の枠内で行うのであれば、裁量権の濫用に当たらない限りは問題なく行うことができます。

    次に、人事権の行使として、成績不振を理由として、部長が社員に降格する場合や、部長が係長に下がる場合など、人事権に基づく役職や職位の降格の場合には、雇用契約の上で使用者の当然の権限として認められるものであり、人事権の濫用にあたらない限り問題なく行うことができるといえます。
    ③懲戒処分として給料を下げる場合

    まず、懲戒処分として減給をする場合には、懲戒処分の前提として、次の要件が必要です。

    (1)就業規則に懲戒処分の規定があること
    (2)就業規則が社員に周知されていること
    (3)就業規則で定められる懲戒事由に該当する行為があったこと
    (4)当該処分が労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であること

    特に、減給は、労働者の生活への影響が大きいことから、十分な理由が必要となると考えるべきでしょう。

    さらに、減給処分が有効であったとしても、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えて減給をすることは法律上禁止されています。

    会社の側としては、もっと下げられるのではないかと考えられている方も多いと思いますので注意をしなければなりません。

    以上、社員の給料を下げる場面として3つに分けて説明をしてきました。

    どちらにしても、給料を下げることは、社員の生活に与える影響が大きく、後に紛争となるケースも少なくありませんので、専門家と相談をしながら慎重にすすめるとよいでしょう。

    労働相談は、こちらから。
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  • 社労士限定の勉強会を開催します。

    2014年12月22日

    2015年1月16日(金)18時~19時30分に、社労士限定の勉強会を開催します。

    タイトルは、

    「固定残業代を極める~弁護士の解説セミナー」

    です。

    近時、固定残業代制度を採用する企業が急速に増えています。

    企業側としては、見た目の給与を高額にしつつ、時間外手当の増大を抑制できるというメリットがあります。

    労働者としても、能力のある労働者は効率よく仕事をして残業なしに帰っても、能力が低く残業をせざるを得ない労働者と同額の賃金を得ることができる、というメリットがあります。

    しかし、近時、裁判例では、この固定残業代制度が適用される要件を厳しく判断する判例が相次いでおり、

    また、最高裁平成24年3月8日判決のテックジャパン事件で補足意見が出されたこともあり、
    専門家の間でも有効性についての議論が分かれているところです。

    そこで、固定残業代制に関する判例を総ざらいするとともに、これが有効となるような要件について、勉強会をしたいと思います。

    当事務所は、社労士の先生方のリーガルスキルの向上に寄与し、労使トラブルを撲滅することによって、日本経済に貢献したいと考えています!奮ってご参加ください。

    定員20名でしたが、もう26名のお申し込みをいただいたので、定員30名に増員しました。

    お申し込みはお早めに。

    http://myhoumu.jp/seminar/roudou08.html

  • 労働審判が申し立てられたら?

    2014年12月20日

    ★労働審判が申し立てられたら?【経営者向け】

    会社に突然、労働審判申立書が届く場合があります。

    多くは解雇・退職した労働者や残業代支払を求める労働者からです。

    その場合、会社は、ただちに対応を迫られることになります。

    裁判は、1年くらいかけてゆっくり進んでいきますが、労働審判はかなりのスピードで進んでいき、準備を周到にしないと不利に展開してしまうためです。

    労働審判制度は原則として3回という限られた期日で審理を終結することとなっており、第1回期日から実質的な審理を行うために、労働審判を申し立てられた者にも、提出期限までに、予想される争点、争点に関する重要な事実、争点ごとの証拠を記載した答弁書、証拠書類の提出が求められます。

    第1回期日で証拠調べを終えてしまい、解決してしまうこともあるくらいです。

    裁判とはスピード感が圧倒的に違うのです。

    ですから、会社としては、労働審判申立書が届いたら、ただちに対処する必要があります。

    そして、労働法は知識がないと、全く戦いになりません。

    営業社員に残業代請求をされた時に、「成績を上げない社員に残業代など払う必要がない。逆に給料泥棒だ」などと言っていると、負けてしまいます。

    すぐに弁護士に依頼し、すぐに会社側の戦略を決め、すぐに証拠を集めていかなければならないのです。

    その点は、くれぐれもご注意ください。

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  • 社員の給料を下げられない?

    2014年12月15日

    ★社員の給料を下げられない場合とは?

    社員の給料最初、会社と社員の合意で定められます。

    その後は、会社の給与規定などに基づき変動してゆくのが通常です。

    社員の給料が上がる時にはトラブルは発生しませんが、社員の給料を下げようとした時は、労使トラブルが勃発します。

    会社が、社員の給料を下げたいと考える理由としては、会社の経営状況による場合や、社員自身が原因である場合など様々です。

    今回は、社員の給料を下げる場面として、

    ①経営難を理由として給料を下げる場合
    ②人事考課・人事異動の結果として給料が下がる場合
    ③懲戒処分として減給をする場合

    に分けて説明したいと思います。

    ①経営難を理由として給料を下げる場合

    経営難を理由として社員全体の給料を下げる場合には、社員の同意なしには行えないのが原則です。

    労働条件を社員に不利益に変更するには、原則として社員の同意が必要となるためです。

    もっとも、会社が就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、変更後の就業規則を社員に周知させ、かつ、その内容が下記要素から考えて合理的である場合には許されます。

    (1)社員の受ける不利益の程度
    (2)労働条件の変更の必要性
    (3)変更後の就業規則の内容の相当性
    (4)労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情

    会社の存続自体が危ぶまれたり、経営危機による雇用調整が予想されるなどといった状況にあるときは、労働条件の変更による人件費抑制の必要性が極度に高い上、労働者の被る不利益という観点からみても、失職したときのことを思えばなお受忍すべきものと判断されます。

    そのような場合には、多数の労働者が反対している場合であっても、就業規則の変更により給料を下げることが許されるといえます。

    ②人事考課・人事異動の結果として給料が下がる場合

    まず、年度ごとの人事考課等の結果として給料の額が減額することについては、あくまで賃金の計算方法に過ぎず、人事考課制度の枠内で行うのであれば、裁量権の濫用に当たらない限りは問題なく行うことができます。

    次に、人事権の行使として、成績不振を理由として、部長が社員に降格する場合や、部長が係長に下がる場合など、人事権に基づく役職や職位の降格の場合には、雇用契約の上で使用者の当然の権限として認められるものであり、人事権の濫用にあたらない限り問題なく行うことができるといえます。
    ③懲戒処分として給料を下げる場合

    まず、懲戒処分として減給をする場合には、懲戒処分の前提として、次の要件が必要です。

    (1)就業規則に懲戒処分の規定があること
    (2)就業規則が社員に周知されていること
    (3)就業規則で定められる懲戒事由に該当する行為があったこと
    (4)当該処分が労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であること

    特に、減給は、労働者の生活への影響が大きいことから、十分な理由が必要となると考えるべきでしょう。

    さらに、減給処分が有効であったとしても、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えて減給をすることは法律上禁止されています。

    会社の側としては、もっと下げられるのではないかと考えられている方も多いと思いますので注意をしなければなりません。

    以上、社員の給料を下げる場面として3つに分けて説明をしてきました。

    どちらにしても、給料を下げることは、社員の生活に与える影響が大きく、後に紛争となるケースも少なくありませんので、専門家と相談をしながら慎重にすすめるとよいでしょう。

    労働相談は、こちら
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  • これは、酷い!パワハラ自殺で5790万円

    2014年12月03日

    パワー・ハラスメント(パワハラ)による損害賠償訴訟の判決のニュースが頻発していているので、解説しておきたいと思います。

    労働者にとっては精神的損害が、使用者側の企業にとっては経済的損失が大きい事例が増えています。

    「“バカ”“使えねえな”店長は自殺…ブラック企業、驚愕パワハラ実態」(2014年11月28日 産経新聞)

    東京都渋谷区のステーキチェーン「ステーキのくいしんぼ」の店長だった男性(当時24歳)が自殺した原因は、過酷な長時間労働とパワー・ハラスメントにあるとして、ステーキ店を経営する(株)サン・チャレンジに対して両親が損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は11月、同社側に約5790万円の賠償を命じました。

    判決などによると、男性は同社に勤務していた父親に誘われ平成19年5月にアルバイトとして採用され、間もなく正社員に。
    その後、父親は同社の方針に疑問を感じ退社。
    ところが男性は、「もう少し頑張ってみる」と会社に残ったといいます。

    しかし、平成22年11月に遺書を残し、店舗の入るビルの非常階段で首をつって自殺。
    渋谷労働基準監督署は、平成24年に自殺を労災認定していたということです。

    判決では、驚愕のパワハラの実態が明らかにされました。

    〇パワハラをしていたのは複数の店舗指導するエリアマネージャーの男性で自殺した男性の上司だった。
    〇ミスをするたびに「バカ」「使えねえな」と叱責し、尻や頬、頭などを殴る。
    〇社長や幹部が出席する「朝礼」でさらし者にする。
    〇シャツにライターで火をつける
    〇自殺直前の7ヵ月の残業時間は、1日あたり12時間を超え、月平均190時間超、最大で230時間、月の総労働時間は平均560時間。
    〇7ヵ月間に与えられた休日は2日間のみで、残業代もボーナスも支払われなかった。
    〇たまの休日にも電話で使い走りを命じたり、仕事後に無理やりカラオケや釣りにつきあわせた。
    〇職場恋愛の交際相手が発覚すると、「別れたほうがいい」と干渉。上司に隠れて交際を続けると「嘘をついた」と叱責。

    裁判で上司は、「日頃から親しくしており、指導やじゃれ合いを超えた行為はなかった」と主張。
    しかし、東京地裁の判決では、「暴行や暴言、プライベートに対する干渉、業務とは関係ない命令など、社会通念上相当と認められる限度を超えるパワハラを恒常的に行っていた」、「自殺の理由はパワハラや長時間労働以外にはない」と一蹴。

    また、「自殺した本人に過失はなかった」として過失相殺による賠償額の減額を認めなかったことで、原告側代理人は「自殺をめぐる訴訟で過失相殺を認めないのは異例」としています。
    以前、パワハラについて解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒「職場のいじめは、法律問題です。」

    職場のいじめは、法律問題です。

    厚生労働省の公表では、パワハラの定義とは以下のようになります。

    「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」
    また、パワハラの分類として以下のものが挙げられています。

    ①身体的な攻撃(暴行・傷害)
    ②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
    ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
    ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
    ⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
    ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

    ①~③は、業務の適正な範囲内であることは考えにくいので、原則としてパワハラに該当すると考えられますが、④~⑥については業種や企業文化などによっても差異があるため、業務上の適正な指導との線引きが難しく具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右される部分があると考えられます。

    今回は、民事裁判でしたが、さらに、パワハラは刑事事件として罪に問われる可能性もあります。

    肉体的暴力によってケガをさせれば「傷害罪」(刑法第204条)、仮に言葉の暴力で「電車に飛び込んで死ね!」などと言って相手を自殺させた場合には「自殺教唆罪」(刑法第202条)に問われるかもしれません。

    いずれにせよ経営者側には、職場でのパワハラに対する認識をそろえ、その範囲を明確にする取り組みを行うことが望まれます。

    そのうえで、以下のようなパワハラ防止策を講じる必要があります。
    ・「トップによる、パワハラを職場からなくすべきである旨のメッセージ」
    ・「就業規則・労使協定・ガイドライン等によるルールの作成」
    ・「従業員アンケート等による実態の把握」
    ・「研修などの教育」
    ・「組織の方針や取組についての周知・啓発」
    ・「相談窓口等の設置」
    ・「再発防止措置等」
    パワハラは「職場のいじめ」では済まされない問題です。
    社内でパワハラ行為があれば、社員側も経営者側も不幸な結果が待っています。

    双方が互いに認め合い仕事をすることができれば、幸福な結果が待っているでしょう。
    会社は業績が上がり、社員は誇りとやる気を持って仕事に打ち込めるはずです。

    「人が本当に下劣になると、他人の悪口を言うことしか喜びをみいだせなくなる」(ゲーテ)

    もし、社内でパワハラの事実があるようであれば、不都合な事実から目をそらさず、隠ぺいなどせず、問題が大きくなる前に弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

    ご相談はこちらまで⇒「弁護士による労働相談SOS」
    http://roudou-sos.jp/

  • 運送業界向け労働法セミナー開催

    2014年11月28日

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    2014年11月27日に、運送会社向けの労働法セミナーを開催しました。

    多数の運送会社様に受講していただきました。

    特にトラック運転手の長時間労働の問題、残業代請求問題、傭車契約などが問題になりがちです。

    傭車契約が雇用契約と判断されるようなことがあると、大変ですね。

    内容は、以下のとおりです。

    ・運送会社で注意すべき労働者の時間管理

    ・運送会社における残業代請求対策

    ・就業規則で注意するポイント

    ・懲戒処分・退職で注意すべきポイント

    ・傭車契約で注意すべきポイント

    ・運送会社企業の問題社員にどう対処べきか?

    今後も、人事労務に関するセミナーを実施することにより、労使トラブルを解決し、日本経済に貢献したいと思います!

    労働相談は、こちら
    http://roudou-sos.jp/