店長は名ばかり管理職?(残業代あり) | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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店長は名ばかり管理職?(残業代あり)

2017年02月21日

企業では、これまで会社を支え、発展させてきた功労者である会長が、退任後に名誉会長と呼ばれることがあります。

また、社長や取締役、顧問、相談役などを務めた人が名誉顧問になることもあります。

こうした肩書は、名誉職や栄誉職とも呼ばれ、実質的な権限や責任は持ちませんが、当然一目置かれる存在であったり、中には依然として実質的な権力を掌握している名誉会長という人もいるでしょう。

一方、会社で管理職に出世したはいいがそれは名前ばかりで、実際には何の権限はなく、おまけに仕事量だけは多いのに残業代はカットされて給料が上がらず働いている、という人もいるかもしれません。

今回は、こうした「名ばかり管理職」問題について解説します。

「ほっともっと店長は管理職? “名ばかり”認め、未払い残業代支払い命令 静岡」(2017年2月17日 産経新聞)

持ち帰り弁当チェーンの「ほっともっと」の元店長(30代・女性)が、「ほっともっと」の店長は権限や裁量のない「名ばかり管理職」で、残業代が支払われなかったのは違法だとして、運営会社「プレナス」(福岡市)に未払い賃金など511万円と懲罰的付加金の支払いを求めた訴訟の判決がありました。

運営会社側は、「店長は経営に責任を持つ管理監督者」と主張しましたが、これに対し静岡地裁は、「アルバイトの採用などで限定的な権限しかなく、店舗運営は本社のマニュアルに従っていた」、「元店長は勤務実態や権限から、管理監督者に当たるとはいえない」として、運営会社側に約160万円の支払いを命じたということです。
さて、この訴訟では元店長が「労働監督者」に当たるかどうかが争点となりました。

なぜなら、労働基準法上、「労働監督者」(監督もしくは管理の地位にある者)に該当する社員に対しては、会社は残業代を支払う必要がないからです。

「労働基準法」
第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

2 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
会社は、管理監督者の制度を有効に活用することで残業代を圧縮することができます。
それは、管理監督者に該当する社員に対して残業代を支払わなくてもよいことになっているからです。

しかし、管理監督者と管理職の違いを曖昧に解釈して、単に会社の役職である管理職、たとえば課長職や店長などの人を管理監督者とみなして残業代を払わないといった、いわゆる「名ばかり管理職」の問題が起きています。

この、名ばかり管理職が社会的に問題化したのは2008年でした。

日本マクドナルドが直営店の店長を管理監督者とみなして残業代を払っていなかったのは違法だとして、埼玉県内の男性店長(当時46歳)が未払い残業代など約1350万円を求めて訴訟を提起。

1月、東京地裁は、「職務内容から店長は管理監督者とはいえない」との判決を下し、未払い残業代の支払いを命じたというものでした。

では、会社として問題にならずに、この制度を有効に活用するにはどのような点に注意しなければいけないのでしょうか。

裁判上、管理監督者は「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者」に限定されています。

そして、その判断基準には次の要素が必要とされます。

① 事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
② 自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
③ 一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること

この要件に照らし合わせれば、実際に管理監督者と認められるのは極めて限定的と言わざるを得ません。

ちなみに、過去の判例では次の者たちは「管理監督者ではない」と認定されています。

・バス会社の統轄運行管理者兼運行課長
・広告代理店の部長
・不動産業の営業本部長
・税理士法人の管理部長
・飲食店の料理長
・カラオケ店の店長
・信金の支店長代理
・コンビニエンスストアの店長
・製造業の会社の本社主任と工場課長

このように、要件としては厳しいものであるため、会社が残業代を支払いたくないがために社員を形式的に管理監督者にすることはできません。

会社としては、今回のケースのように元社員に訴えられ裁判となった場合、未払い残業代に付加金もプラスされて2倍の金額を支払わなければならなくなる可能性もあるので注意が必要です。

また、未払い残業代については、従業員側としては泣き寝入りすることなく訴訟を提起するという方法があることは覚えておいたほうがいいと思います。

会社側からのご相談はこちらから⇒http://roudou-sos.jp/flow/

労働者の方のご相談はこちらから⇒http://roudou-sos.jp/zangyou2/