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  • 「純然たる第三者間取引」の誤解を解く

    2019年08月26日

    中小企業の株の売買において、価額算定を誤ると、時価取引ではないとして、課税の対象になります。

    この点について、「純然たる第三者間取引であれば否認されることはない」と言われることがあります。

    しかし、これは不正確です。

    この見解の根拠は、「法人税法基本通達逐条解説」(税務研究会)の「9-1-14」に関する次の一節と思われます。

    「なお、本通達は、気配相場の無い株式について評価損を計上する場合の期末時価の算定という形で定められているが、関係会社間等においても気配相場のない株式の売買を行う場合の適正取引価額の判定に当たっても、準用させることになろう。
    ただし、純然たる第三者間取引において種々の経済性を考慮して定められた取引価額は、たとえ上記したところの異なる価額であっても、一般に常に合理的なものとして是認されることになろう。」

    そして、国税不服審判所平成11年2月8日裁決において、課税庁側の主張として、「法人税法上、売買取引における取引価額については、それが純然たる第三者間において種々の経済性を考慮して定められた価額であれば、一般には常に合理的なものとして是認されるが、本件譲渡のように、親会社と子会社の代表者との譲渡で純然たる第三者間の取引ではなく、かつ、その合意価額が合理的に算定されていないと認められる場合には、当事者間の合意があったとしてもその合意価額は客観的交換価値を示すものとは認められない。」とされていますので、課税庁は、この見解に依拠しているものと思われます。

    そこで、時価を作り出すために、本来意図する株取引の前に、純粋第三者間取引をかませて、「時価」を作りだそう、と考える人が出てきます。

    しかし、この方法を採用すると、後日の税務調査で否認され、もし、税理士が助言した場合には、税理士損害賠償に発展する恐れがあります。

    なぜなら、ここで注意すべきなのは、上記基準は、「純然たる第三者間取引」であれば、それだけで時価と認定されるわけではない、ということです。

    時価と認められるためには、要件がもう一つ加わります。

    (1)純然たる第三者間取引であること

    (2)取引価格が種々の経済性を考慮して定められたこと

    つまり、純然たる第三者間取引であるだけではダメで、(2)の要件を満たして、はじめて合理的なものとして、是認される、ということになります。

    この点について、東京地裁平成19年1月31日判決(税務訴訟資料257号順号10622)では、納税義務者が親族関係のない独立第三者間取引であると主張したのに対し、裁判所は、譲渡価格が譲渡人と納税義務者との間でのせめぎ合いにより形成された客観的価値ではないとして、納税者敗訴判決をしています。

    したがって、「純然たる第三者間取引」であっても、それだけで安心せず、その取引価格が、きちんと売主と買主の経済合理性に根ざしたせめぎ合いによって決定されたかどうか、を確認しておく必要があります。

    そして、その交渉過程を証拠化して、保存していく必要があると思います。

  • 重加算税と青色申告承認取消処分との関係

    2019年08月12日

    青色申告承認の取消は、法人税法127条、所得税法150条に規定しています。法人税法127条1項は、次のような規定です。

    第百二十一条第一項(青色申告)の承認を受けた内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡って、その承認を取り消すことができる。

    そして、同項3号は、

    その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること

    とされており、重加算税の要件である隠ぺい仮装が要件となっています。

    所得税法も同旨の規定です。

    重加算税の隠ぺい又は仮装と、青色申告承認取消の隠ぺい又は仮装は、一般的に同義と理解されています。

    青色申告制度は、帳簿書類を備え付け、それに取引を記帳している納税者が少ない状況の中で、昭和24年のシャウプ勧告に基づいて、昭和25年に取り入れられたものです。

    その趣旨は、

    「青色申告承認の制度は、納税者が自ら所得金額及び税額を計算し自主的に申告して納税する申告納税制度のもとにおいて、適正課税を実現するために不可欠な帳簿の正確な記帳を推進する目的で設けられたものであって、適式に帳簿書類を備え付けてこれに取引を忠実に記載し、かつ、これを保存する納税者に対して特別の青色申告書による申告を承認し、青色申告書を提出した納税者に対しては、推計課税を認めないなどの納税手続上の特典及び各種準備金、繰越欠損金の損金算入などの所得計算上の特典を与えるものである。」(最高裁昭和49年9月20日判決、刑集28巻6号291頁、TAINS Z999-9019)

    とされています。

    重加算税は、国税通則法第68条1項で、「重加算税を課する。」と規定し、重加算税の賦課要件を備えた時には、合法性の原則により、税務署長には裁量の余地はなく、重加算税賦課決定をしなければならないのに対し、青色申告承認の取消処分は、「その承認を取り消すことができる。」として、税務署長に裁量の余地を認める規定の仕方をしています。

    この点について、大阪高裁昭和38年12月26日判決(TAINS Z037-1259)は、「青色申告書提出承認を取消すべきか否かについて同法は税務署長に合理的な範囲内に於て裁量権を与えている」としています。

    この裁量権に基づき、国税庁平成12年7月3日課法 2-10「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」は、次のように定めています。

    3 隠ぺい、仮装等の場合における青色申告の承認の取消し
    (青色申告の承認を取り消す場合) 
    (1) 青色申告の承認を受けている法人につき、次のいずれかに該当する場合には、(5)の場合を除き、法第127条第1項第3号の規定によりその該当することとなった事業年度以後の事業年度について、その承認を取り消す。

    イ 無申告のために所得金額の決定をした場合又は所得金額の更正をした場合において、その事業年度の当該決定又は更正後の所得金額(以下「更正所得金額」という。)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額(以下「不正所得金額」という。)が、当該更正所得金額の50%に相当する金額を超えるとき(当該不正所得金額が500万円に満たないときを除く。)。

    ロ 欠損金額を減額する更正(所得金額があることとなる更正を含む。)をした場合において、その事業年度の当該更正により減少した部分の欠損金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく金額(以下「不正欠損金額」という。)が、当初の申告に係る欠損金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額。以下「申告欠損金額」という。)の50%に相当する金額を超えるとき(当該不正欠損金額が500万円に満たないときを除く。)。

    この通達により、隠ぺい又は仮装があった場合でも、隠ぺい又は仮装の事実に基づく不正所得金額や不正欠損金額が、更正所得金額や申告欠損金額の

    (1)50%以下の場合

    (2)不正所得金額や不正欠損金額が500万円未満である場合

    は、青色申告承認は取り消されない、ということになります。

    (計算例)
    当初申告所得金額 1000万円
    更正後の所得金額 2500万円
    隠ぺい又は仮装に基づく更正に基づく不正所得金額 500万円

    隠ぺい又は仮装に基づく更正に基づく不正所得金額は500万円なので、(2)の要件は満たしませんが、

    (1)により、青色申告承認取消にならない場合

    =2500万円✕50%=1250万円以下の場合ということになり、本件では、隠ぺい又は仮装に基づく更正による増差所得金額は500万円なので、青色申告承認取消にならない、ということになります。

    (1)(2)どちらかの要件を満たせば、課税実務上、青色申告承認の取消にはならない、ということになります。

    個人についての通達は、国税庁平成12年7月3日課法 4-17「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」です。

    そして、税務署長の合理的な裁量は、無制限に認められるわけではありません。

    横浜地裁平成17年6月22日判決(税資255号順号10060頁)は、「青色申告制度の趣旨及び青色申告承認の取消しの意義に適合しない目的や動機に基づいて青色申告承認取消処分がされたり、裁量権の行使が、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮してされたために、その判断が上記の観点から合目的的かつ合理的なものとして許容される限度を超え、著しく不当である場合には、その青色申告取消処分は、税務署長に委ねられた裁量権の範囲を逸脱し、又はその濫用があったものとして、違法となるものと解すべきである」として、一定の場合には、信義則・裁量権の逸脱、濫用として、処分が違法となる場合があることを判示しました。

    したがって、たとえ隠ぺい又は仮装があり、それを理由として青色申告取消処分がなされた場合であっても、その処分が信義則・裁量権の逸脱、濫用ではないか、が検討されることになります。

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  • 重加算税の「隠ぺいし、又は仮装した」とは?

    2019年08月12日

    重加算税は、国税通則法68条に規定されています。

    同条1項の重加算税の賦課要件は、

    ①過少申告加算税の賦課要件が満たされる場合に、
    ②納税者が
    ③国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、
    ④その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき
    ⑤納税申告書を提出したとき

    と分解することができます。

    ここでは、③の「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、」に関する事例を解説します。

    国税通則法68条1項に規定する「‥‥の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ペいし、又は仮装し」たとは、最高裁判決により定義されてはいませんが、和歌山地裁昭和50年6月23日判決(TAINS Z082-3588)が、「不正手段による租税徴収権の侵害行為を意味し、「事実を隠ペい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏することを、「事実を仮装」するとは、所得.財産あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲することをいい」いずれも行為の意味を認識しながら故意に行うことを要するものと解すべきである。」として以降、概ねこのように解されています。

    また、大阪高裁平成3年4月24日判決(TAINS Z183-6701)は、「『隠ぺい・仮装』とは、租税を脱税する目的をもつて、故意に納税義務の発生原因である計算の基礎となる事実を隠匿し、又は、作為的に虚偽の事実を付加して、調査を妨げるなど納税義務の全部または一部を免れる行為を」いう、としています。

    国税庁は、「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点178頁)において、「『隠蔽』とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、また『仮装』とは、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいう(名古屋地裁昭和55年10月13日判決)」としています。

    「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」では、次のような行為が隠ぺい仮装の具体例として挙げられています。

    ・二重帳簿の作成

    ・帳簿書類の隠匿、虚偽記載等

    ・特定の損金算入又は税額控除の要件とされる証明書その他の書類の改ざん、虚偽の申請書提出

    ・簿外資産の利息収入、賃貸料収入等の果実の不計上

    ・簿外資産による役員賞与その他の費用の支出

    ・同族会社を名義貸し等で非同族会社にすること

    いずれにしても、単なる過少申告では重加算税賦課要件を満たしません。隠ぺい仮装行為が必要ということです。

    この点、最高裁平成7年4月28日判決は、「重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要する。」としています。

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  • 重加算税で押さえておくべき最高裁判決7選

    2019年08月11日

    今回は、重加算税で押さえておくべき最高裁判決をご紹介しておきます。

    重加算税賦課要件は、国税通則法68条に規定されています。その1項は、次のような規定です。

    「第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額・・・に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。」

    条文上の要件を分解すると、以下のようになります。

    ①過少申告加算税の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)

    ②納税者が

    ③その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、

    ④隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していた

    以上の要件を満たすと、効果として、隠ぺい又は仮装した部分に相当する税額につき、過少申告加算税に代えて、35%の割合を乗じた重加算税が課せられます。

    重加算税が賦課された際には、当該重加算税賦課決定が適法になされたのか、あるいは違法なのか、について判断しなければなりませんが、そのためには、重加算税に関して出されている最高裁判決を押さえておく必要があります。

    そこで、重加算税に関して押さえておくべき最高裁判決7選をご紹介します。

    【ルール1】 隠ぺい又は仮装行為と過少申告行為との関係

    重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要する(最高裁平成7年4月28日判決)

    【ルール2】 つまみ申告について

    (1)各確定申告の時点において、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図を持っており

    (2)必要に応じ事後的にも隠ぺいのための具体的工作を行うことも予定して、

    (3)会計帳簿類から明らかに算出し得る所得金額の大部分を脱漏し、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出した

    というような事情が認められる場合には、重加算税の賦課要件を満たすことになる(最高裁平成6年11月22日判決)。

    【ルール3】 納税者自身の積極的な行為がない場合

    納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の右賦課要件が満たされる(最高裁平成7年4月28日判決)。

    【ルール4】 税理士が隠ぺい又は仮装行為をした場合

    納税者と税理士との間に事実を隠ぺいし、又は仮装することについて意思の連絡があったと認められる場合には、賦課要件を満たすことになる(最高裁平成17年1月17日判決)。

    【ルール5】税理士が納税者に無断で隠ぺい又は仮装行為をした場合

    以下の場合には、隠ぺい仮装行為を納税者本人の行為と同視できるとして、重加算税の賦課要件を満たす、ということになる(最高裁平成18年4月20日判決)

    (1)納税者において当該税理士が隠ぺい仮装行為を行うこと若しくは行ったことを認識し、又は容易に認識することができたこと

    (2)法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたこと

    (3)納税者においてこれを防止せずに隠ぺい仮装行為が行われたこと

    (4)に基づいて過少申告がされたこと

    【ルール6】 隠ぺい、仮装と過少申告との因果関係

    隠ぺい、仮装行為と過少申告との結果との間に因果関係が存することを意味する(最高裁昭和62年5月8日判決)

    【ルール7】 過少申告の認識

    納税者が故意に課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではない(最高裁昭和62年5月8日判決)。

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  • 税務調査における争点整理表と納税者主張整理書面

    2019年06月29日

    今回は、税務署の内部書類である「争点整理表」についてです。

    【争点整理表とは?】

    争点整理表とは、争訟が見込まれる等の事案において作成するものですが、平成24年6月27日国税庁長官「署課税部門における争点整理表の作成及び調査審理に関する協議・上申等に係る事務処理手続について(事務運営指針)」(TAINSコードH240627課総2-21)によると、争点整理表には、

    ・事実経過

    ・争点の概要

    ・争点に係る法律上の課税要件

    ・調査担当者の事実認定(又は法令解釈)その事実、証拠書類等

    ・納税者側の主張、その事実、証拠書類等

    ・審理担当者等の意見

    を記載することとされています。

    どういう場合に作成するかですが、形式基準として、次の場合に作成するものとされています。

    次の処分等が見込まれる事案

    (イ)重加算税賦課決定

    (ロ)増額更正・決定

    (ハ)青色申告承認の取消し

    (ニ)更正の請求に理由がない旨の通知

    (ホ)偽りその他不正な行為による6年前・7年前の年分(事業年度)への遡及

    (ヘ)調査着手後6ヶ月以上の長期仕掛事案

    (ト)以上の事案以外で、署の定める重要事案審議会の署長付議対象に該当することが見込まれる修正申告若しくは期限後申告対象事案又は過怠税賦課決定処分対象事案

    したがって、後日、重加算税賦課決定が見込まれる事案においては、必ず「争点整理表」が作成されることがわかります。

    【争点整理表に基づく事実認定】

    また、事実認定については、「抽出した課税要件に照らして、調査によって抽出した証拠(相手方の主張を含む。)について事実関係時系列表により整理を行い、直接証拠(事実を直接示している証拠)や間接証拠(事実の存在を推認できる証拠)から事実認定を行う。なお、税務当局が認定した事実及び主張する事実については、全てその根拠(証拠)が必要であり、税務当局側が立証責任を負うこととなる」(留意点)とされています。

    【争点整理表に納税者主張を記載させる方法】

    納税者としては、重加算税賦課決定を回避するためには、この争点整理表における「納税者側の主張」「事実、証拠書類等」に自らの主張を正確に記載させることが重要なポイントなるものと思われます。

    そのために有効なのが、「納税者主張整理書面」です。

    書面で主張していかないと、調査担当者の側から見た「納税者側の主張」しか争点整理表に記載されず、審理担当者もそれを前提にして意見をします。

    しかし、書面で主張及び証拠を提出しておけば、それが争点整理表に記載され、審理担当者も納税者側の正確な主張を検討した上で、重加算税賦課決定をするかどうかの意見を付するものと考えられます。

    ぜひ、ご活用いただきたいと思います。

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  • 従業員の行為による重加算税は二段階論法

    2019年06月29日

    今回は、重加算税に関する裁決例をご紹介します。

    国税不服審判所平成21年9月9日裁決(TAINS J78-3-20)です。

    (事案)

    印刷の請負及び製本紙器の製作などを目的とする株式会社の本社工場生産管理課長又は生産管理部生産管理課長が、請求人の所有する余剰紙を請求人に無断で売却し、その売却代金を受領したにもかかわらず、個人的な飲食、ゴルフ、旅行等の遊興費に費消して、請求人の売上に計上していなかった行為が、請求人の隠ぺい又は仮装にあたる、とされたものです。

    (裁決の要旨)

    ●元課長は、本件各事業年度において、経営に従事する立場にはない

    ●本件紙取引の対象となった支給紙の払出しの指示を出す業務を行ってはいたものの、印刷用紙の保管及び管理に関する業務を遂行する職務及び権限を請求人から与えられていなかった

    ●本件余剰紙を自己の判断で売却する権限を有していなかった

    ●本件紙取引は、元課長が、請求人から窃取した本件余剰紙を、架空会社の名義を使用して売却したものである

    ●請求人は、印刷の請負及び製本紙器の製作等を目的とし、印刷用紙の販売を目的としていない

    ●本件各事業年度において、請求人が所有・管理していた、本件余剰紙以外の印刷用紙が他に販売された事実はなく、外注先に対し有償で支給された事実もなかった

    ●買取人は、本件紙取引が請求人との取引であるとは認識していなかった

    ⇒以上のことを総合考慮すれば、本件紙取引に係る収益は、請求人の売上げとはいえない。

    判断の要点は、以下のとおりです。

    ●印刷用紙の販売は納税者の業務の範囲内か

    ●従業員は販売する権限を持っていたか

    ●買取人は納税者との取引として認識したいたか

    そして、ここがポイントですが、本件は重加算税に関する裁決例として紹介されますが、実は、「実質所得者課税」に関する論点であるということです。

    「隠ぺい・仮装」については判断されておらず、「誰の収益か」が問題となっている、ということです。

    このように、従業員の行為が問題となるケースでは、「隠ぺい・仮装」の前に、「実質所得者課税」について検討し、その後に「隠ぺい・仮装」があったかどうか、が検討される、という二段階構造になっていることに注意が必要です。

    このような問題意識は、口頭でのやり取りではなかなか気づかず、書面化することで明確になり、課税庁の誤りも明らかになってくると思います。

    参考にしていただければと思います。

    そんな時は、納税者側から、積極的に書面を提出していくのが有効です。

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  • 立証責任で課税庁が敗訴した裁判例

    2019年06月23日

    課税要件事実に関する立証責任については、「所得の存在及びその金額について決定庁が立証責任を負うことはいうまでもないところである」(最高裁昭和38年3月3日判決、月報9巻5号668頁)とされており、課税庁に立証責任があるのが原則です。

    したがって、課税庁は税務調査によって事実を調査し、証拠を収集し、課税処分をする場合には、後日処分取消訴訟などで争われたとしても、立証に成功すると判断することが必要となります。この判断を誤り、後日の処分取消訴訟等で立証に失敗した場合には、課税処分が違法となります。

    では、「立証した」とは、どういうことなのか、あるいは、「立証していない」というのはどういうことなのでしょうか。

    実際の裁判例で見てみましょう。

    東京高裁平成15年1月29日判決のアルゼ事件があります。

    事案としては、納税者Xが、A社からパチスロ機のメイン基板合計6万6455枚を1枚当たり1万4000円で購入し、これらをB社に対し1枚当たり8万円で販売する取引をして43億8603万円の売買利益を得ていたにもかかわらず、米国法人C社がこの取引をしていたかのように仮装し、同取引によって得た所得等を申告しなかったとして、消費税及び地方消費税について、それぞれ更正処分及び重加算税賦課決定処分をした事案です。

    課税庁は、本件各取引が、売買契約の内心的効果意思のない通謀虚偽の意思表示によるもので無効であるにもかかわらず、取引があるように仮装したものである、と主張しました。

    課税町に立証責任がある、ということは、この「通謀虚偽表示」と、「取引の仮想」を立証する責任がある、ということです。

    裁判所は、各種証拠を検討した上で、本件各取引が、「いずれも通謀虚偽の意思表示によるものであって、被控訴人が明立から明立基板を購入しこれをECJに販売したものであると認めることはできず、他に、これを認めることができる的確な証拠はない。」として、納税者勝訴判決をしました。

    本裁判例では、裁判所が、重加算税の課税要件事実の主張立証責任が国にあることを前提とした上で、重加算税の課税要件事実の立証が成功しなかったとして、立証責任により国敗訴判決をしたものと理解しています。

    また、主張立証責任が問題となった事例に、東京高裁平成27年3月25日判決(判例時報2267号24頁)のIBM事件があります。有名な事件です。

    上告審は上告不受理決定です。

    この事案は、日本IBMの全株式を保有していた納税者Xが、自己の保有する日本IBMの株式を日本IBMに譲渡した上で、Xと日本IBMが連結納税者制度の適用を選択しました。株式譲渡によりXには約4000億円の損失が発生していたことから、当時の法制度によると、日本IBMが国内で事業活動を行うことによる所得何年にもわたり繰越欠損金と相殺されて、課税されない状態が続くことになりました。

    そこで、課税庁は、法人税法132条の同族会社の行為計算否認規定を適用して、課税処分を行ったというものです。

    法人税法132条は、「税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。」と規定しています。

    本件では、一連の行為が、「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となる」に該当するかどうかが争われたものです。

    裁判所は、「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となる」かどうかの判断基準として、「法人税法132条1項の趣旨に照らせば、同族会社の行為又は計算が、同項にいう『これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの』か否かは、専ら経済的、実質的見地において当該行為又は計算が純粋経済人として不合理、不自然なものと認められるか否かという客観的、合理的基準に従って判断すべきものと解される〔最高裁昭和53年4月21日第二小法廷判決・訟務月報24巻8号1694頁(最高裁昭和53年判決)、最高裁昭和59年10月25日第一小法廷判決・集民143号75頁参照〕」と規範を定立しました。

    その上で、本件一連の行為が、独立当事者間の通常の取引と異なるものであり、経済的合理性を欠くとの国の主張について、「本件各譲渡が、本件税額圧縮・・・の実現のため、被控訴人の中間持株会社化・・・・と一体的に行われたという控訴人の主張は、本件全証拠によっても認めることができないというほかない」と判示し、また、本件一連の行為が、全体として独立当事者間の通常の取引と異なるものであり、経済的合理性を欠くとの国の主張について、「そもそも、控訴人は、本件各譲渡が独立当事者間の通常の取引と異なると主張しているのにもかかわらず、独立当事者間の通常の取引であれば、どのような譲渡価額で各譲渡がされたはずであるのかについて、何ら具体的な主張立証をしていない」として、主張立証責任を理由に納税者勝訴の判決をしました。

    したがって、税務調査において、調査担当者から税務処理を否認された場合でも、課税庁の主張する課税要件に該当するかどうかの立証責任は課税庁にあることを明確にし、その上で、課税要件事実が立証しきれているかどうかを吟味する必要があります。

    とは、言っても、「立証しきれているかどうか」は、どうやって判断するか、わからない、という疑問があるかもしれません。

    これは、「証明度」の問題です。

    事実をどの程度、証拠によって「証明」すれば、裁判所に事実を認定してもらえるのか、とうい問題です。

    証明度に関しては、有名な判決があります。「ルンバール事件判決」です。

    ルンバ-ル事件判決(最高裁昭和50年10月24日判決、民集29巻9号1417頁)は、化膿性髄膜炎に罹患した幼児の治療として、医師が「ルンバール」という治療をした後に幼児にけいれん発作等及び知能障害等の病変が生じたことについて、同病変等がルンバール施術のショックによる脳出血によるものと認定できるかどうかが争われた事案です。

    この事案において、最高裁は、証明度について、「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである」と判示しています。

    そして、経験則を用いて、病変等がルンバール施術のショックによる脳出血によるものと認定しました。

    この裁判例から、証明度について次のことが言えることになります。

    ①立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではない

    ②経験則に照らして全証拠を総合検討する

    ③因果関係については高度の蓋然性を証明する

    ④通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる

    したがって、税務調査において、課税庁から納税者の税務処理を否認された場合には、課税等が主張する課税要件事実が、収集された証拠により、この証明度に達しているかを吟味する必要があります。

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  • 課税庁が文理解釈を誤った裁判例

    2019年06月16日

    憲法30条は、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」とし、84条で、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」として、租税法律主義を定めています。

    そして、租税法律主義は、課税要件法定主義、課税要件明確主義を要請します。

    課税要件は、納税義務ないし租税債務が成立するための要件です。

    課税要件法定主義および課税要件明確主義からは、納税義務を成立されるための要件は、法律又はその具体的・個別的委任による政省令等で定められることが必要であり、かつ、その定めは可能な限り一義的で明確である必要があります。さらに、その明確に定められた要件は、その文理に従って解釈されなければなりません。

    したがって、租税法規の解釈は、文理解釈が原則となります。

    過去には、課税庁が、文理解釈を誤ったことにより、納税者が勝訴した裁判例がいくつかあります。

    最高裁平成22年3月2日(百選第6版13事件)のホステス源泉所得税事件は、パブクラブを経営する納税者が、使用しているホステスに対して半月ごとに支払う報酬にかかる源泉所得税を納付するに際し、5000円に半月間の全日数を乗じて各月分の源泉所得税額を算出し、それに基づいて計算した額を納付していたところ、税務署長が、半月間の全日数ではなく、実際の出勤日数を乗ずべきであるとして納税告知および不納付加算税の賦課決定を行った事案です。

    この事案では、所得税法施行令322条の「当該支払金額の計算期間」が問題となりました。

    この「期間」についての法解釈について最高裁は、「一般に、『期間』とは、ある時点から他の時点までの時間的隔たりといった、時的連続性を持った概念であると解されているから、施行令322条にいう『当該支払金額の計算期間』も、当該支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までという時的連続性をもった概念であると解するのが自然であり、これと異なる解釈を採るべき根拠となる規定は見当たらない」「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではなく・・・・『当該支払金額の計算期間』は、本件各集計期間の全日数となるものというべきである」として、納税者勝訴判決を出しました。

  • 税務調査の事実認定は誰が立証責任を負担するか

    2019年06月15日

    ここでは、税務調査における事実の立証責任を取り上げます。

    立証責任は、訴訟において、事実があるかどうか認定できない、という場合に、いずれか一方の当事者が負う不利益又は負担のことです。

    最高裁判決は、所得税事案に関し、「所得の存在及びその金額について決定庁が立証責任を負うことはいうまでもないところである」(最高裁昭和38年3月3日判決、月報9巻5号668頁)としており、課税要件事実の主張立証責任は国にあるとしています。

    したがって、税務調査において、課税要件事実を課税庁が立証できなければ、課税できない、ということになります。

    下級審判例でも、一貫して、課税要件事実は、課税庁側にある、とされています。

    ●「本件算定方法が租税特別措置法66条の4第2項第2号ロ所定の再販売価格基準法に準ずる方法と同等の方法に当たることは、課税根拠事実ないし租税債権発生の要件事実に該当するから、上記事実については、処分行政庁において主張立証責任を負うものというべきである」(東京高裁平成20年10月30日判決)

    ●「本件においては、特定外国子会社等に当たるA社が措置法40条の4代4項所定の適用除外要件のうちの実体基準及び管理支配基準を満たすか否かが争点となっているところ、課税庁の属する被告側がA社が上記の各適用除外要件を満たさないことを主張立証する必要がある」(東京地裁平成24年10月11日判決)

    ●「国外に所在する子会社等の実体の把握についても、もともと、税金訴訟では、納税者側の事情が主張立証の対象となることが多い(国の事情や純然たる第三者の事情が主張立証となることは、通常は、想定されない)のであるから、主張立証責任を決めるに当たって、証拠への近さは、あまり重視すべきではないと考えられる」(東京高裁平成25年5月29日判決)

    これに対し、必要経費などについては、納税者の領域内にあり、また、証拠を保全しておくことはそれほど困難ではないことが多いので、その立証は容易なことが多いと思われます。したがって、国側において、経費の不存在について一定の立証をした場合には、納税者が立証可能なはずなのに、合理的な立証ができないときは、国の立証が成功した、と判断される場合もありえます。

    したがって、課税要件事実の立証責任が国にあるとしても、納税者としても、積極的に立証活動を展開していくことが必要です。

    裁判例においても、以下のようなものがあります。

    ●「必要経費について、控訴人が行政庁の認定額をこえる多額を主張しながら、具体的にその内容を指摘せず、したがって、行政庁としてその存否・数額についての検証の手段を有しないときは、経験則に徴し相当と認められる範囲でこれを補充しえないかぎり、これを架空のもの(不存在)として取り扱うべきものと考える」(広島高裁岡山支部昭和42年4月26日判決行集18巻4号614頁)

    ●「被告が右の調査に基づく一応の立証を尽くした以上、被告の認定しえた額を超える多額を主張する原告が具体的にその支払額、相手方等を明らかにしえない限り、本件各土地の売買により発生した譲渡所得が原告に帰属するものと認められてもやむを得ないというべきである」(岡山地裁昭和44年7月10日判決、判例時報590号29頁)

    また、一般経費については国に立証責任を課すものの、特別経費については、納税者に立証責任がある、とする裁判例があります。

    (利息について)
    「一般に必要経費の点も含め課税所得の存在については課税庁に立証責任があると解されるが、必要経費の存在を主張、立証することが納税者にとって有利かつ容易であることに鑑み、通常の経費についてはともかくとして、利息のような特別の経費については、その不存在につき事実上の推定が働くものというべく、その存在を主張する納税者は右推定を破る程度の立証を要するものと解するのが公平である。」(大阪高裁昭和46年12月21日判決、税務訴訟資料63号1233頁)

    (訴訟費用について)
    「所得の存在およびその金額について課税庁が立証責任を負うことはいうまでもないから、必要経費についても課税庁に立証責任があると解されるが、必要経費の存在を主張、立証することは納税者にとって有利かつ容易であるところからすると、公平の観念に照らし、通常の経費についてはともかく、訴訟費用のような特別の経費、すなわち、事実上不存在の推定が働くような特別の経費については、その存在を主張する納税者が石推定を破る程度の立証を要するものと解するのが相当である」(神戸地裁昭和53年9月22日判決、訴訟月報25巻2号501頁)

    貸倒損失についても、「貸倒損失は、通常の事業活動によって、必然的に発生する必要経費とは異なり、事業者が取引の相手方の資産状況について十分に注意を払う等合理的な経済活動を遂行している限り、必然的に発生するものではなく、取引の相手方の破産等の特別の事情がない限り生ずることのない、いわば特別の経費というべき性質のものである上、貸倒損失の不存在という消極的事実の立証には相当の困難を伴うものである反面、被課税者においては、貸倒損失の内容を熟知し、これに関する証拠も被課税者が保持しているのが一般であるから、被課税者において貸倒損失となる債権の発生原因、内容、帰属及び回収不能の事実等について具体的に特定して主張し、貸倒損失の存在をある程度合理的に推認させるに足りる立証を行わない限り、事実上その不存在が推定されるものと解するのが相当である。」(仙台地裁平成6年8月29日判決、訟月41巻12号3093頁、仙台高裁平成8年4月12日判決、税務訴訟資料216号44頁)とされています。

    しかし、この貸倒損失に関する裁判例の判断には疑問です。

    法人税基本通達9-6-1は、貸倒損失の要件として、「(4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額」としていますが、金融機関は別として、法人が通常の商取引をするに際し、相手方の決算書等の交付を受けることはほとんどありません。また、取引の相手方が資産超過か債務超過かを知りうる手段は少ないでしょう。したがって、「債務者の債務超過の状態が相当期間継続」していることについて、立証は困難と言わざるをえません。反対に、課税庁においては債務者に対して質問検査を行うことによって債務者が債務超過であるかどうかを立証するのは容易であるといえるでしょう。

    また、同通達9-6-2は、「法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。」としていますが、「債務者の資産状況、支払能力」などは、課税庁の方が調査を容易にでき、かつ、立証が容易であるように思います。反面、納税者においては、債務者の資産状況や支払能力などを調査し、立証するのは困難な場合が多いように思われます。
    したがって、貸倒損失について全て納税者が立証責任を負担するというのは妥当ではなく、貸倒の理由に応じて適切に立証責任を分配していくのが妥当だと考えます。

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  • 税務調査でも法的三段論法に当てはめる

    2019年06月15日

    法的三段論法とは

    裁判所が判決を出す時には、法的三段論法にあてはめて結論を出します。また、課税庁が更正をするときにも、法的三段論法を適用することとなります。

    三段論法とは、たとえば、「動物は死ぬ」、「ゾウは動物である」、「ゆえに、ゾウは死ぬ」というように大前提、小前提、結論という三段階の推論のことです。

    これを法律の適用過程に応用したのが法的三段論法で、法規範を大前提とし、事実を小前提として、法規範に事実を当てはめて判決という結論を出すことになります。

    税務調査においても、法的三段論法の考え方に従って行われます。

    「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)第2章1の1」では、「調査とは、国税・・・に関する法律の規定に基づき、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で当該職員が行う一連の行為(証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)をいうことに留意する。」とされています。

    したがって、税務調査において、調査官から否認指摘があった際には、その指摘が法的三段論法に照らして正しいかどうかを検討することになります。

    たとえば、納税者が離婚の際に不動産を財産分与した場合について、財産分与による所有権の移転は、譲渡所得が発生しないとして所得税の確定申告をした時に、税務調査の結果、不動産の財産分与も所得税法上の「資産の譲渡」に該当するとして、更正を行うこととします。

    この場合には、法的三段論法にあてはめ、(1)所得税法にいう「資産の譲渡」とは、有償無償を問わず資産を移転させるいっさいの行為をいう(最高裁昭和50年5月27日判決、百選第6版42)、(2)財産分与は、資産を配偶者に移転するものである、(3)ゆえに、財産分与も「資産の譲渡」に該当する、という結論を出し、資産の増加益に関して更正を行うこととなります。

    更正を行う際の法規範、事実、法規範への事実の当てはめ、の三段階のいずれかに誤りがあれば、更正にも誤りがあることになります。したがって、税務調査の際には、法的三段論法の三段階において誤りがないかどうか、検討する必要があります。

    法規範とは

    法規範というのは、租税法規の条文を意味するのはもちろんですが、条文だけでは、その意味内容を確定することはできません。

    たとえば、所得税法33条の「資産の譲渡」といっても、どの範囲のものが「資産」に含まれるのか、「譲渡」は有償に限るのか、無償の譲渡も含まれるのか、については条文からは明らかでないので、それらを解明することが必要です。それが、法解釈となります。法解釈とは、「実定法の規範的意味内容を解明する作業」をいうとされています。

    法解釈には、文理解釈・論理解釈・歴史的解釈・目的論的解釈、など複数の技法があります。

    ここでは、文理解釈のみ説明します。

    文理解釈とは、法規の文字・文章の意味をその言葉の使用法や文法の規則に従って確定することによってなされる解釈です。

    憲法30条は、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」とし、84条で、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」として、租税法律主義を定めています。

    そして、租税法律主義は、課税要件法定主義、課税要件明確主義を要請します。課税要件は、納税義務ないし租税債務が成立するための要件です。課税要件法定主義および課税要件明確主義からは、納税義務を成立されるための要件は、法律又はその具体的・個別的委任による政省令等で定められることが必要であり、かつ、その定めは可能な限り一義的で明確である必要があります。さらに、その明確に定められた要件は、その文理に従って解釈されなければなりません。

    したがって、租税法規の解釈は、文理解釈が原則となります。

    ホステス報酬に係る源泉徴収について争われた事案において、最高裁平成22年3月2日(百選第6版13事件)は、「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではなく、原審のような解釈を採ることは、・・・文言上困難」と判示し、所得税法施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」について、「当該支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までという時的連続性を持った概念であると解するのが自然」であると判示しています。

    事実(小前提)

    更正を行う際には、法解釈の各技法によって租税法規の規定の意味内容を解明し、それに事実を当てはめる作業を行います。

    したがって、更正にあたっては、必ず事実を認定する作業が行われることになります。

    しかし、場合によっては、事実があるかどうか認定できない、という場合もあります。このような場合に、いずれか一方の当事者が負う不利益又は負担のことを「立証責任」といいます。

    そして、事実認定においては、立証責任を負担する当事者が、「どの程度まで立証」すれば、証明できたことになるのか、という「証明度」も考える必要があります。立証責任を負担する者の立証が、証明度に達しないときは、その主張する事実が認定できず、不利益又は負担を負うことになります。

    課税庁が更正をする際には、後日、処分取消訴訟において勝訴できることを前提としています。そして、課税庁が立証責任を負担する事実について、証明度に達する立証ができない時は、更正処分が取り消されることになりますので、事実認定は重要な作業ということになります。

    米国関係会社を経由した迂回取引かどうかが争われたアルゼ事件において、東京高裁平成15年1月29日判決は、提出された証拠によっては、国の主張する事実を「認めることはできず、他に、これを認めることができる的確な証拠はない」として、立証責任により、国側敗訴判決を出しました。

    したがって、税務調査において、課税庁が納税者の税務処理を否認する旨の主張をしている際には、課税庁が収集した証拠によって、課税庁の主張する税務処理の課税要件事実の立証が証明度に達しているかどうかを吟味することが必要となってきます。

    法適用(当てはめ)

    法を適切に解釈し、事実を適切に認定しても、法規範に事実を認定するあてはめが違法となる場合があります。

    納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したことにつき国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるかどうかが争われた事案において、法解釈が正しく、事実も国の主張どおりであるとしても、通達を変更した際には、通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ、これが定着するよう必要な措置を講ずべきものである」として、それを怠っていたことを理由として、国側の主張を認めなかった最高裁平成18年10月24日判決(判例時報1955号37頁)があります。

    税務調査における攻防は口頭でやり取りされることが多いと思いますが、課税要件該当性を判断するには、必ず三段論法に当てはめることが必要となります。

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