東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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従業員の転落死事故と会社の安全配慮義務とは!?


2017年11月22日

危険度の高い仕事の現場では、従業員のケガや死亡などの重大事故が起きる可能性が高まります。

今回は、従業員の転落死事故と会社の責任について解説します。

「高所作業中に男性社員が転落死、マリンフードと副工場長を書類送検」(2017年11月17日 産経新聞)

泉大津労働基準監督署は、高所作業に必要な危険防止措置をとらなかったとして、大阪府豊中市の食品製造業と同社の40代男性副工場長を労働安全衛生法違反の疑いで書類送検しました。

事故が起きたのは、2017年7月17日午前8時半頃。
同社泉大津工場の倉庫で、50代の男性社員が在庫品の管理をする際、高さ約5・5メートルの作業台から転落して死亡しました。

報道によると、書類送検容疑は、作業台に手すりを設置するなど、転落を防止する対策を講じなかったとしています。

 

【労働安全衛生法はとは?】
労働安全衛生法は、1972年に施行された法律です。
労働災害(労災)の防止など、労働者の安全と衛生についての基準を定めており、事業者に対して労災防止の事前予防のための安全衛生管理措置を定め、遵守を義務づけています。

かつては、職場における労働者の安全と衛生については労働基準法に規定されていましたが、これらを分離して独立させたのが本法ということなります。

 

「労働安全衛生法」
第1条(目的)
この法律は、労働基準法と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

 

第3条(事業者等の責務)
1.事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

 

「事業者の講ずべき措置等」について規定している条文は次のものです。

第21条
1.事業者は、掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

2.事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

 

第24条
事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

 

これに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役、又は50万円以下の罰金に処されます。(第119条)

労働安全衛生法は、会社に対して安全衛生における一定の措置を講ずるように義務づけているものです。
そのため、会社は義務であるのをわかっているのに一定の措置を講じていなかったという場合に、今回のケースのように会社と責任者が労働安全衛生法違反に問われます。

【労働災害(労災)とは?】
労働者(従業員)が、業務に起因して負傷(ケガ)、疾病(病気)、障害(後遺症)、死亡に至ることを「労働災害(労災)」といいます。

労災には大きく2つあり、業務中の労災は「業務災害」、通勤中の交通事故などによるケガや病気などは「通勤災害」となります。

労災が発生した場合、会社が労災手続きを行い、労災が認定された場合には、被害にあった労働者に労災給付金が支給されます。
これは、労災には「労働基準法」と「労働者災害補償保険法(労災保険法)」により災害補償制度があるからです。

しかし、労災給付金ですべての損害賠償金をカバーできるわけではありません。

その場合、労働者やその遺族は、会社に対して民事上の損害賠償請求をすることができます。
なぜなら、会社には労働者に労働させる際にはケガや病気、死亡事故を防ぐために安全に配慮する義務=「安全配慮義務」があるからです。

詳しい解説はこちら⇒
「安全配慮義務を怠ると会社は損害賠償請求される!?」
http://taniharamakoto.com/archives/1965/

会社がこれを怠った場合には、民事において不法行為責任や安全配慮義務違反として、労働者や遺族は正当な損害賠償金を請求することができることになります。

また、ここまで見てきたように、会社には従業員の安全と衛生を守る義務があるのですから、業務の安全の徹底には慎重な対応が必要になります。

いずれにせよ、法的な対応や手続きは難しいので、労災問題が起きた場合は労災に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

会社側からのご相談はこちらから⇒
http://roudou-sos.jp/flow/

労働者やご遺族の方で会社に対する損害賠償を検討している場合のご相談はこちらから⇒
http://www.rousai-sos.jp/soudan/flow.html

スポーツクラブで管理監督者残業代判決


2017年10月11日

「なんにも専務」、「宴会部長」、「おとぼけ課長」…世の中には、さまざまな役職がありますが、今回は「名ばかり管理職」について法的に解説します。

「“名ばかり管理職”認定 コナミスポーツ、東京地裁」(2017年10月7日 日本経済新聞)

コナミスポーツクラブ(東京)の元支店長の女性が、権限や裁量のない「名ばかり管理職」だったとして、未払い残業代など約650万円の支払いを求めた訴訟の判決が6日、東京地裁でありました。

裁判長は、女性が人員不足でフロント業務などに従事し、恒常的に時間外労働を余儀なくされていたと認定。
「裁量が相当制限され、管理監督者の地位にあったとは認めらない」と指摘し、同社に残業代約300万円と労働基準法違反への「制裁金」に当たる付加金90万円の支払いを命じました。

判決によると、女性は、1989(平成1)年に入社。
2007(平成19)年から都内などで支店長やマネジャーを務め、2015年に退職したということで、判決後の記者会見では、「会社の労働環境は変わっていない。判決が私のように苦しんでいる人のためになればいい」と話したということです。

 

【管理監督者とは?】
名ばかり管理職、という言葉が広く知られるようになったのは、2008年1月に判決があった「日本マクドナルド割増賃金請求事件判決」がきっかけでした。

この訴訟は、マクドナルドの店長が、労働基準法が定める「管理監督者」に当たるかどうかが争われたもので、店長は管理監督者には当たらないと主張して、未払い残業代を求めました。

判決では、原告の主張通り、店長は管理監督者には当たらないとして、日本マクドナルドに過去2年分の未払い残業代など約750万円の支払いが命じられました。

今回の訴訟でも、同じ問題が争われているのですが、では管理監督者の何が問題となっているのか、まずは条文を見てみましょう。

「労働基準法」
第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

2 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

 

つまり、労働基準法上は、監督または管理の立場にある者=管理監督者は、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されないので、残業代を支払う必要がない、ということになります。

 

【名ばかり管理職の何が問題なのか?】
労働者側からすれば、実際は管理監督者といっても名ばかりのもので、給与などで相応の待遇を受けておらず、労働時間の自由裁量も認められておらず、権限や裁量が相当限定されている。
それにもかかわらず、時間外労働を強いられ、おまけに残業代も支払われない、これは納得いかないという問題が起きてきます。

一方、使用者側とすれば、多くの会社が人件費抑制に苦労しているのが現実です。
残業が発生するのは避けられないが、かといって法律の通りに残業代を支払うと利益が出ない、経営を圧迫するというような悩みを持っている経営者もいるでしょう。

そのため、一律に「部長以上は管理監督者」としたり、「課長・店長以上は管理監督者」として就業規則で定め、その者達には、残業代を支払わない、という扱いをしている会社があります。

しかし、この取り扱いは非常に危険です。

労働基準法上、「管理監督者」といえるための要件はかなり厳しいからです。

厚生労働省の通達では、管理監督者といえるためには次の4つの要件が必要となります。

1.事業主の経営に関する決定に参画(関与)していること
2.労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
3.自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
4.一般の従業員に比べ、その地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること

これらの要件を満たさないと「管理監督者」とはいえないため、会社は従業員に通常の残業代を支払う義務が生じます。

過去の判例では、次のようなものが管理監督者ではないとされています。

・信金の支店長代理
・工事現場の現場監督者
・飲食店の料理長
・飲食店の店長
・バス会社の統轄運行管理者兼運行課長
・製造業の会社の本社主任と工場課長
・コンビニエンスストアの店長
・カラオケ店の店長
・不動産業の営業本部長
・広告代理店の部長
・税理士法人の管理部長

また、会社として注意が必要なのは、今回のケースのように元従業員に訴えられ裁判となった場合、未払い残業代に付加金もプラスされて2倍の金額を支払わなければならなくなる可能性もあることです。

詳しい解説はこちら⇒
「2倍!2倍!未払い残業代の付加金とは?」
http://taniharamakoto.com/archives/1889/

会社側としては、「管理監督者」を定めている場合には、それが法律上「管理監督者」として有効なのかどうか、一度見直してみる必要があります。

従業員側としては、未払い残業代を会社に対して請求することができます。
泣き寝入りすることなく、訴訟を提起するという方法もあるので、その場合は弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

 

会社側からのご相談はこちらから⇒http://roudou-sos.jp/flow/

労働者の方のご相談はこちらから⇒http://roudou-sos.jp/zangyou2/

給料不払いで社長が逮捕。


2017年9月11日

今回は、支払う側にも受け取る側にも大切な賃金に関する法律を解説します。

「給与未払い、出頭拒否で経営者逮捕 彦根労基署」(2017年9月8日 産経新聞)

彦根労働基準監督署は、滋賀県の建築工事会社の代表取締役の男(58)を最低賃金法違反の疑いで逮捕し、法人としての同社を書類送検したと発表しました。

男は、正社員とパート社員2人に対し、2016(平成28)年2~4月分の給与計約80万円を支払わなかったようで、「営業不振で支払えなかった」と容疑を認めているということです。

同労基署は、「同法違反容疑での逮捕は珍しい。出頭要請に応じないなど、逃亡や証拠隠滅の可能性があった」としています。

 

【最低賃金法とは?】
最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定産業に従事する労働者を対象に定められた「特定最低賃金」があり、使用者は、いずれかのうち高いほうの最低額以上を労働者に支払わなければいけません。

「最低賃金法」
第4条(最低賃金の効力)
1.使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

 

これに違反した場合、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

また、最低賃金に関する違反があった場合、労働者は労働基準監督署等に訴えることができます。

第34条(監督機関に対する申告)
1.労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。
2.使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

【労働基準監督官とは?】
労働基準監督署は、「労働基準法」や「最低賃金法」などの労働基準関係法令に基づいて、労働者の最低労働基準や職場の安全衛生を守るために企業を調査・監督します。

法律が守られていなければ使用者を指導することになりますが、企業への立ち入り調査(臨検)などをするのが厚生労働省の専門職員である「労働基準監督官」です。

計画的に対象企業を選定して調査することを「定期監督」といい、労働者からの申告・告発を受けて調査することを「申告監督」といいます。

労働基準監督官は、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法などの法律違反について、「刑事訴訟法」に規定する司法警察員の職務を負っているため、警察と同じような権限を行使することができます。

第32条(労働基準監督官の権限)
1.労働基準監督官は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、使用者の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問をすることができる。

 

これに違反した場合も、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金になります。

労働基準監督官の仕事の流れは通常、次のように進められます

①企業を訪問
②立ち入り調査/臨検(使用者や労働者への事情聴取、帳簿の確認など)
③法律違反が認められた場合、「文書指導」、「是正勧告」、「改善指導」、「使用停止命令」などを実施
④企業からの是正・改善報告を受けて、是正・改善が確認できれば指導は終了
⑤是正・改善が認められない場合、再度監督を実施し、重大・悪質な場合は送検

また、労働基準監督官には次のような権限が与えられています。

・事業場への予告なしの立ち入り調査(臨検)
・帳簿書類の提出要求と確認
・使用者や労働者への尋問
・使用者や労働者への報告・出頭命令
・監督指導
・法令違反者の送検・逮捕

労働基準関係法令に違反したにもかかわらず、改善が認められない使用者など(社長のほか、一定の権限を与えられている取締役や部長、課長など)は、通常では送検で済むものですが、今回のように出頭要請に応じなかったり、逃亡や証拠隠滅の可能性があるなど悪質なケースでは逮捕に至る場合もあるわけです。

社長が逮捕されたとなれば、会社の業績全体に大きなダメージを負うことになってしまいます。

労働基準監督署を甘くみてはいけません。
労働問題のご相談はこちらから⇒ http://roudou-sos.jp/

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